惑星ジャナップ1(謎の黒マスク男)

惑星ジャナップ1(謎の黒マスク男)

惑星ジャナップに現れた謎の黒マスクの男の話し。

今は、誤字・脱字などを訂正している段階です。

プロローグ

「号外だぁ‼︎号外だよう‼︎」
一人の青年が惑星駅前で、新聞の号外を人々に向かってばら撒いている。
「惑星ジャナップの王とその家族が、墜落死したんだ‼︎」

「何だって⁉︎」
人々が、ばら撒かられた号外を読み漁る。
「夏の避暑地に向かう途中で、飛行船が墜落したってよ!」
「時期王の王子の死体がまだ見つかって無いんだって…!」
人々が口々に、騒ぎ出した。
「惑星ジャナップは、これからどうなるの?」
「この星に何か悪影響があるんじゃないのか⁉︎」


この一大ニュースは、銀河中に響き渡った。

巨大ギャング『ディストラクション』


ここは惑星ジャナップのスラム街。
一人の黒ずくめの服装に身を包んでいる男が、苛つきながら歩いている。
彼の顔の下半分は黒革のマスクで隠れている。
「汚い汚い、実に不衛生だ…。」

そんな彼が街角を曲がろうとした時、突然大柄な男とぶつかった。
胸のドクロのシルバーバッチが目に入った。
「すまない。」
彼は素っ気なく謝った。
「おい、ちょっと待てよオラ。」
「何だ?」
黒マスクの男は相手を睨みつけた。
それに対し相手も睨み返してきた。
「はぁ?お前バカか?見りゃわかるだろがよ!骨が折れちまったんだよ!」

黒マスクの男が相手を見ると、相手はニタニタと笑っていた。
「どう見ても、骨は折れていない様だが。」
「はぁ?折れたんだよ、俺の心の骨がな!」
黒マスクの男は大男の全身を眺めた。
「その割には、笑顔だな。」
「テメェの目がおかしいだけだ慰謝料とっとと払いやがれ。」
「生憎、そんな金持って無い。」

彼のこの言葉に、相手は怒鳴った。
「テメェ!この俺を誰だと思ってる⁉︎かの有名な巨大ギャング『ディストラクション』の幹部スミス様だぞ⁉︎」
彼は首を捻った。
「ディス…?…そんな下らん組織の名前なんか知らんな。」
それが引き金となり、相手はとうとうキレた。

「テ…テメェ…相当、痛い目に合いたいみテェだな…!?こうなったらボス直々に殺して貰うことになるぞ‼︎」
大柄な男は、彼の首根っこを掴んで、こう言った。
「死にながら神様に祈るんだな‼︎」
黒マスクの男はボソッと呟いた。
「私は死なない。」

しかし、その言葉はスミスとやらの耳には入らなかった。
彼は大声で他の仲間を呼んでいた最中だったからだ。
「おい!こいつを処刑場まで連れていけ!」
「はい!」数人の男が黒マスクの男をとらえた。やはり全員ドクロのシルバーバッチを付けていた。
スミスは引き続き指示を下した。「ボスを呼べ!この糞野郎をボスに処刑してもらう!」

ボス

「はぁ。」
ため息をつきながら、黒マスクの男は処刑場と呼ばれている場所を見渡した。
彼はその中心部にいる。

彼が連れて来られたのは、スラム街のランドマークタワーの中心部の広間。そこには、大勢のディストラクションのメンバーが居た。メンバーは、種族や老若男女問わずと言った感じで、広間はごった返していた。全員、ドクロバッチを付けている。

彼をここに連れて来たスミスは、静粛にと手を挙げた。
「このマスク男は、この俺様の心の骨を折った。これは、決して許される事ではない!」
メンバーは一斉に拍手を送った。
「その上、このマスク男は我らディストラクションの存在を知らないと来た‼︎みんな、こいつを許しても良いのか⁉︎」
広場に居る全員が「許さないぞ‼︎」と怒鳴り始めた。

スミスが、大声で「そこで大罪を犯した、このマスク男をボス直々に処刑して貰う事にした‼︎」と言うと、広場が拍手喝采の不協和音を奏でた。
所々で「きゃー!ボスの処刑ショーよ!」という女性たちの黄色い声が響いた。

すると、どこからともなく「…うるさいなぁ。」という声が聞こえてきたではないか。
メンバーが一斉に、「ボス!」と歓喜の声を上げた。

気がつくと、黒マスクの男の目の前に白髪の少年が現れた。少年が、彼の顔をじっと覗く。
「君が、スミスくんの心の骨を折った犯人さぁん?面白いマスクしてるねぇ。」
どうやらこの少年がボスらしい。
「ボス!ボス!」というコールが広場に響き渡った。
黒マスクの男はジッと少年を見つめた。
「お前が、ここのボスなのか?どうみても、15歳位の子供だな。私を馬鹿にしているのか?」
それに対して、ディストラクションのボスが笑って答えた。
「み〜んな、始めは同じ事を言うよぅ〜。でも、子供だからって甘く見ないでよねぇ〜、マスクく〜ん。」
「私の名前はマスクくんではない、白髪。」
「僕の名前はぁ、白髪じゃぁないんだぁよねぇ〜。」
ギャングのボスは、髪をかきながら欠伸をした。
「んじゃぁ、冥土のお土産に僕の名前を教えてあげるぅ。僕の名前は、ディッパー。このディストラクションのボスだよぉ。ちゃぁんと覚えてぇ、あの世に逝ってねぇ?」
ディッパーは黒マスクの男の首筋に鋭利なナイフを突きつけた。
だが、黒マスクの男は顔色一つ変えていない。
「あの世には行かないが、私も名を教えてやろう。私の名はダニエルだ。忘れても構わんぞ。」

ギャングのボス、ディッパーは大笑いした。
「ダニエルくぅ〜ん?君、これからこのボスである僕にぃ、処刑されるんだよぉ?わかってるぅ?」
「私は死なない。」
「い〜や、君は死ぬんだよぉ?」

マスクの男、ダニエルはニヤリと笑みを浮かべた。いや、笑みを浮かべているのが彼の目元を見れば解る。
「なら、試してみるか?」


ダニエルを不自由にさせていた縄が解けた。これが、処刑開始の合図らしい。死ね死ねコールが広場に響く。
「ダニエルくぅ~んに告ぐ~ぅ!君はぁ~、切り裂きのぉバラバラのぉ刑だ~ぁよぉ~っ!」

ディッパーは、両手のナイフをダニエルに向けて大きく振りかざした。
そして「1・2・3☆」と唱えるやいなや、一瞬でダニエルの身体をバラバラにした。

大量の血飛沫がとび散ると共に、処刑を見ていたメンバー達が「ボス・バンザイ‼︎」とお祭り騒ぎを始めた。
バラバラになった、ダニエルの死体をそのまま放置して、、、。

死体

ダニエルを処刑した夜、ディッパーはタワーの食堂で夜食を平らげだ。
「お~いしかった~ぁ。」
給仕のおばさんことマリリンが、ディッパーの白髪を撫でる。
「ねぇボス、今日の処刑は特別キレイだったわぁ。」
「ありがと〜、マリリンちゃぁん。僕も楽しかったよぉ。」

彼女は悔しい表情を浮かべた。
「でも、あの黒マスク男、ディストラクションのことを知らなかったなんて信じられない!許せない!だって私たちの組織は惑星ジャナップで最大のギャング集団なんだもの。」
「そ~ぉだよねぇ~。処刑した今でも許せないよ~。」
「でも、今更あいつのことをとやかく言うのも尺な気がするのだけど。」
今度はディッパーはマリリンの頭を撫でた。
「今度また、同じような奴がいたらキレイに処刑してあげるよ。」
「そうね。そのときは、また華麗な処刑を見せてちょうだいね。」
「うん。期待しててぇ~!」
そう言って、ディッパーは食堂を後にした。

食堂を後にしたディッパーはあることを思い出した。
「あ!そういえばぁ、バラバラダニエルくんをまだぁ、捨ててなかったっけぇ?」
ディッパーは面倒くさそうに、ダニエルを処刑した広場に向かう。

その途中、広場から「たった助けてぇ〜‼︎」と声が聞こえた。
「ん?なぁんだろ〜う?」ディッパーは処刑場の様子が変だと気が付き、少しだけ早足で広場に向かった。


彼は広場で、瀕死状態の幹部達を目の当たりにした。
「み、みんな?!なぁに?!ど〜うしたの?何があったのぉ?!」

辺りを見渡したディッパーは、在るべき物が無い事に気が付いた。
バラバラになったダニエルの死体がないのだ。

「あれぇ?バラバラダニエルくんはぁ?お~い、死~んだダニエルくぅーん。何処だぁい?」彼は独り言でダニエルの死体を探し始めようとした。

すると何処からか、死んだはずのダニエルの声がした。
「勝手に私を死なすな、白髪。」
「え?!」
ディッパーが、後ろを振り向くと、バラバラにした筈のダニエルが生きて、立っている。
ダニエルは不気味な笑みを浮かべた。
「言ったはずだ、私は死なないと。」

ダニエルVSディッパー

ダニエルの鞭が、ディッパーを襲った。
「ほらほら、どうした?さっき私を処刑したようにもう一度、私をバラバラにしてみないのか?」
両手でナイフを掴み、攻撃から逃れようとするディッパー。
(何でぇ、生きているのぉ?)

ダニエルの鞭の先には、鋭利な刃物の様な物が付いていて、鞭が当たる度に当たった箇所が切れる。
「もう!いたいってばぁ‼︎」
ディッパーがダニエルの攻撃を避け、懐に入った。
「お望み道理~もう一度、バ~ラバラにしてあげるぅ‼︎」
ディッパーが両手のナイフで、ダニエルを切りつける。
ダニエルの溝うちから血が飛び出した。

「やったぁ~!だいぶ深く斬ったよぉ~!これで動けないねぇ~!」
ディッパーがナイフを振り下した。
しかし、ダニエルはそれをなんなく避け切ったのだ。
「あ〜れ?!なんでぇ~?!」
ディッパーが狼狽えているその隙にダニエルの鞭がディッパーの懐に入り、彼の体は鞭の嵐の餌食となった。
「うわぁぁぁ!」

ディッパーは床に倒れこんだ。
ピシィッ!と甲高い鞭の音が薄暗い処刑場に鳴り渡る。
「ふん。これがディストラクションのボス、ディッパーの実力か。大した事ないな。」
ダニエルはディッパーの頭を踏みつけた。
「く…。ま…まだだよぉ~…。」
ディッパーはダニエルの左脹脛にナイフを刺した。
「…ほう…。まだやる力があるのか。」
「そ~だよぉ~…。だってぇ…僕はぁ…巨大ギャング『ディストラクション』のボスなんだからねぇ~…」
そう言うなり、ディッパーはダニエルの左脚を切り裂いた。

左脚を失くしたダニエルは体のバランスを崩した。
その隙に、ディッパーは立ち上がる。
「だぁ~かぁ~らぁ~言ったじゃぁん。子供だからって甘く見ないでよねぇ〜ってぇ。」
ディッパーはバランスを崩したダニエルの首を撥ねた。

「ば~いば~い。ダニエルくぅ~ん。」
ディッパーはダニエルから背を向けた。

しかしその瞬間、今度はディッパーの身体が宙に浮いた。
「ぐぁはぁっ⁉︎」
ダニエルの鞭がディッパーの首を絞め、天井にぶら下がっている。
(?!)

ディッパーの目の前にはダニエルが何とも無かったように怪我一つなく立っている。
(確かに首を撥ねたはずなのにぃ…?!)

「何度も言わせるな。私は死なない。」
「ぐはっ…!」(なんで?!どうなってるの?!)

ダニエルは、天井でもがき苦しむディッパーの姿を見上げながら、大声で言った。
「ディストラクションのボス、ディッパー!組織もろどもこのダニエルの配下になれ!さすれば、命は助けてやろう!」

ディッパーはもがきながら反抗した。
「じょ…冗談じゃないよぉ…!!」
「・・・なら、仕方ない。お前にはここで死んでもらおう!」

潔癖症

翌朝、ダニエルはディッパーを叩き起こした。
「おい、ディッパー、起きるんだ。」
「い〜や〜だぁ。」
ディッパーは床で丸くなった。
それにイラついたダニエルはディッパーを蹴った。
「いったぁ~い。なにするのぉ~?」
「もうお前のギャングは私の物だ。つまり、お前は私の手下だ。だから、命令に従え。」
起き上がり、頭をかきながらディッパーは返事をした。
「ちぇ〜、解ったよぉ〜ダニエルぅ。」
「ダニエル様と呼べ。」

ディッパーは、後悔した。
昨日の晩に首を絞められた苦しみで、自分の巨大ギャング丸ごと正体不明の黒マスク男、ダニエルに渡してしまった事を。

「早速、最初の命令だ。」
「なぁに?ダニエル様ぁ~?」
目を擦りながら、ディッパーはご主人様の命令を待つ。

ダニエルは大きく息を吸い込んだ。
「一刻も早くこのタワーを全て清潔にしろっ!!私は汚いのが大嫌いなんだ!!ここは不衛生過ぎる!!部下を総動員させて、このタワー全てを清潔にしろ!!これは絶対だ!!さもなくばお前たち全員の命を貰うぞ!!」


「ボスぅ、ここの何処が不衛生なんっすかぁ?」
金髪の子供が、掃除をしながらディッパーに聞いた。
「ここの全てだってぇ。ある人が言ってたぁ~。」
ディッパーは、窓を拭きながら質問に答えた。
「ボス、ある人って?」
「ある人はぁ、ある人ぉ。キールくんや、み〜んなが知らない方が良い人だよぉ。」
「なんでっすか?」
「う〜ん。心臓に悪いからぁ。」

ディストラクションのメンバー達には、昨日の話しはしない様に、硬くダニエルに禁止されている。

「まぁ、みんなボスの事が好きだから掃除してるんっすけどね。みんなビックリしてますよ、ボスが潔癖症になっちゃったんじゃないかって。」
「あははぁ、実はぁ、そうだったりしてぇー。」
「マジっすか⁉︎」
キールは脚立から落ちそうになった。
「あははぁ。どうだろうねぇ。」
「も〜、ボスったら、ハッキリして下さいよ。」
「ごめんねぇ〜。」


一週間かけて、タワーの大掃除をしたディストラクションのメンバー達は、ヘロヘロになっていた。
ディッパーがもう良いだろうと、ダニエルにオッケーを貰う為にご主人様の部屋(元ディッパーの私室)にヘトヘトな足取りで赴いた。

「ダニエル様ぁ~!もう、み~んなヘトヘトだよ〜。」
紅茶を嗜んでいたダニエルが、そっとティーカップを置いた。
「まぁまぁだな。」
「へ?」間の抜けた声がディッパーの口から出た。

「まぁまぁだと言ったんだ。」
恐る恐るディッパーはご主人様に尋ねる。
「えっとぉ…。それってぇ、どういうことぉ~?」
「今の状態をキープしろって事だ。」
それを聞いたディッパーが、愕然とする。
「え〜⁉︎」
「文句を言うな!コレでも百歩も譲ってやってるんだ!」
「え〜!?」
「部下全員に、今の状態をキープしろと命令して来い!」
「え〜!?え~?!」とディッパーは反抗した。
しかし「さっさと行け!」ダニエルに彼を部屋から追い出された。

その事を聞いたディストラクションのメンバー全員が、愕然とした事は言うまでもない。

新たな戦力を求めて

謎のマスク男、ダニエルが巨大ギャング『ディストラクション』を密かに配下にしてから、一か月。彼は、紅茶を嗜みながら考え事をしていた。
「新たな戦力が欲しいな…。」


「新しい部下が欲しいですって?」
「うん、そうなんだよぉ、マリリン。何かぁこう、特殊な力を持った人が良いんだけどねぇ。」
なんとか綺麗に保っているタワーの食堂で、ディッパーと給仕のおばさんマリリンが話している。
「だったら、源ジィ(ゲンじぃ)に聴いてみたらどうかしらん?」
源ジィとは、部下達にあまり知られてないが、ディストラクションの設立当初からいる仙人みたいな老人だ。
「そうだねぇ、源ジィに聴いてみるよぅ〜。ありがと〜マリリン。」
「どういたしまして、ボス。」マリリンはディッパーに投げキッスをした。


源ジィは、タワーの麓で薪木をしている。
「よう、ボス。何か用かい?」気さくに老人がボスであるディッパーに話しかけた。
「うん、そうなんだ。」
ディッパーが訳を話すと「ふーむ。」と源ジィは暫く空を眺めた。
「心当たりぃ~あるぅ~?」
「…そうだなぁ。そういえば、このスラムの郊外にある森の中に魔術師がおるという噂があるな。」
「本当に?」ディッパーは目を輝かせた。
反対に源ジィの顔が曇った。「…実はの…一つだけ難点があってなぁ…。」


「盲目の魔術師?」
「そうなんだよぅ。源ジィが言うにはぁ~、盲目の為に家から出れないんだってぇ。」
ご主人様の部屋(元ディッパーの私室)に、ダニエルとディッパーだけがいる。これは、ここ1カ月のいつもの風景だ。ちなみにディッパーだけが床に座っている。

「…採用だ。」ぼそりとダニエルが呟いた。
「ほへ?」
「採用だ。その魔術師を私の部下にする。」
それを聞いたディッパーは驚きのあまり大声で叫んだ。
「嘘でしょ〜?!」

「ちょっと待ってぇ~!盲目の魔術師なんだよ?!外に出れないんだよ〜ぅ!?」ディッパーはご主人に反対した。
「そんなの簡単な話だ。ただ単外に出すだけだ。」
そう言って、ダニエルは窓から飛び降りた。
「あ!」ディッパーは窓から下を見下ろした。
(ここ10階…。)ディパーは普通にドアから出て行くことにした。

盲目の魔術師

「来ちゃったぁ…。」ディッパーは、顔を両手で覆った。
「とうとう、森の中の魔術師さん家に来ちゃったぁ…。」
「どうした?グズグズするな。」
ダニエルは、魔術師が居るという小屋の扉を叩いた。
「呪われちゃったらぁ、どぉ〜するのぉ?」
「私は呪われないから、大丈夫だ。」
「それじゃなくてぇ、僕が呪われちゃう〜!」

2人が言い合いをしていると、自然と扉が開いた。

「あの、どちら様ですか?」中から、家主が現れた。
「あのぉ、君が盲目の魔術師さぁん?」
「そうですけど…。何か私に用でも?」
特殊な目隠しをした少女が2人の前に立っている。

「失礼ながら、あなたの噂を聴いて来た。」
「そーそー、君がお外に出れないってぇ、聴いてねぇ。」
2人は少女の足元を見た。足が床に付いていない。
「はぁ。確かにそうですけど、外に出たく無いの。」

「なぁんでぇ?お外は楽しいよ〜。」ディパーが両腕を広げて、くるくる回ってみせる。
そのディパーの言動が、少女を怒らせた。
「外に出て、また身体の一部分を奪われるくらいなら、家にいた方が安全だわ!!」
彼女は木の杖を手にし横に大きく振った。

VS魔術師

ドカーン!
ダニエルとディッパーの2人はドアと共に吹っ飛んだ。
「くっ…!」ダニエルは鞭をその大木に巻き付け難を逃れたが、「うわぁ?!」ディッパーは大木に体を打ちつけられてしまった。

「今度は私の体の何所が欲しいの?!腕?!」彼女は今度は杖を縦に振った。
空から大きな岩が落ちてくる。
ドコーン!
「なっ?!」2人は何とかそれを避けた。

「初めて魔術師とやらを見るが、こんな力があるとはな…!」ダニエルは鞭を構えながら言った。
「だから言ったじゃぁ~ん!呪われるってぇ~!」ディッパーは泣きそうになりながら両手にナイフを持った。
「ふん。私は死なないから平気だ。」
「僕は死ぬから平気じゃな~ぁい!!」
「ぶつくさ言うな!」
「ぶつくさ言うよぅ!」

魔術師の少女は高らかに杖を挙げながら叫んだ。
「それじゃぁ何?!私の脳みそが欲しいの?!私のデータが全て解るし、星一つの値段になるものね?!」

地下

 ダニエルは、部下が増えた事を誠に喜ばしく想っていた。
しかし、車椅子のメイベルをスラム街のランドマークタワーに住まわせるのも色々と手間がかかる。
しかも、これからはここの(今や表面だけの)ボスであるディッパーも、連れ回すつもりだ。
「しかたないか・・・。」


「ダニエル様ぁ、僕たちを何処に連れてく気ぃ?」
メイベルの車椅子を押しながらスラム街を歩くディッパーがボヤいた。
「ボヤくな、ディッパー。もうすぐ着く。」
「何処に行くの?」メイベルが先を歩くダニエルに訪ねた。
「着けばわかる。」
黙々とスラム街の東へ進むダニエルの後を、不思議そうに2人は付いて行った。

行き止まりに来た時、ダニエルはおもむろに路面の石畳をリズミカルに叩いた。
カタンッ。と軽い音が鳴ると、人が入れるほどの穴が石畳に空いた。
「着いたぞ。今から中に入る。」
「え?この中が目的地なのぉ?」ディッパーが、恐る恐るダニエルに聞くと「そうだ。」と即答された。
「まず、私から入る。お前たちは後から来い。」
「ちょっとぉ?!」ディッパーが、ダニエルを止めようとしたが、既に本人は中に入ってしまった。
「私達も入りましょう。」車椅子を魔法で縮めて、メイベルがダニエルの後に続いた。
「んもう!どうなってもいいや!」ディッパーも決意を固めて、穴の中に入った。


どすん!
「いったぁ〜!」尻餅を着いたディッパーが声を上げる。
「うん?ここは、、、家?」
薄暗い辺りを見回すと、白を基調とした家具などが置かれているのに気がつく。
「ここは私の秘密の地下基地だ。今日から、お前達には此処を拠点として貰う。」
ダニエルは、手を2回叩いた。すると、「お帰りなさいませ、ダニエル様。」奥から数人の声がした。
「明かりを付けろ。それと、私の部下達を連れてきたから紹介したい。」
「かしこまりました。」
基地に灯りが付いた。


「うぎゃぁぁぁぁぁっ!!!」ディッパーが慌てふためいた。
「・・・珍しいわね。」ディッパーとは逆にメイベルは、落ち着いている。
彼らの前には何と、巨大なゴキブリ達が執事の格好をして、2本足で立っていたのだった!
ダニエルはさも当たり前のように凄い事を言った。
「彼らはここの執事兼番人だ。私がDNA改造をして生み出した。因みに、全員オスだ。」
「へえ。」メイベルはゴキブリ執事を一体、魔法で近づかせ触れてみた。「別に、不潔そうでは無いみたいね。」
「当たり前だ、彼らには生まれた時から《清潔第一》という教訓を叩き込んだのだからな。」
それを聞いても、気が気ではないディッパーは、彼らを直視出来ないままだ。

「彼らはディッパー、お前の仲間達よりも清潔だぞ。」
「うそだぁ。」ディッパーは丸くなって抗議する。
「その証拠に、チリ一つ無いぞ。」
ダニエルは、棚の隅を指でなぞった。

「何だコレは!!!」

秘密基地

「私が1カ月、留守にしてた間に随分腑抜けたな‼︎」
「誠に申し訳ありません!」
「こんなに棚の隅にホコリが溜まってるとはな‼︎」
憤怒しているダニエルの指先には、1㎜程のホコリが付いている。
「お許し下さい!」
「お前達をこんなに不潔にするように、強調した覚えは無い‼︎」

ディッパーは段々、土下座している執事(ゴキブリ)達に同情し始めた。
(たった1㎜のホコリの為に、土下座までするなんて…‼︎)
「待ってぇ!彼らだって、ここをズッと掃除してるんでしょ?そんなに怒ると可愛そうだよぉ。」
ディッパーの静止で、ダニエルは怒鳴るのをやめた。
「ふん。まぁいい。今日は私の部下達をお前達に紹介する為に、来たんだからな。ディッパー、先ずはお前から自己紹介しろ。」
ディッパーとメイベルは、それぞれ自己紹介を済ませた。

「よろしくお願いいたします。」執事達が挨拶した。
その中でとりわけ腰が低い執事が「私がここの執事長で御座います。」と自己紹介した。
「お二人のお部屋はご用意しております。そこに、私物を置いて寛いで下さいませ。」

ダニエルの地下の秘密基地は、とにかく広い。執事長に案内された部屋も、ディッパーの元私室の4倍はある。
「ディッパー様とメイベル様のお部屋はお向かいどうしで、ダニエル様の寝室もこの近くで御座います。食事は、ダイニングで。バスはそれぞれのお部屋に完備しております。」
「ありがとぅ〜!」ディッパーは、感激した。
「お礼はご主人様にして下さい。ここの地下基地は、全てご主人様自身でお造りになられたのですから。」
「全て?」メイベルが驚いた。
「はい。そうで御座います。私共はただ、此処を清潔に保つ事と此処を守る事だけやってるだけですからね。ご主人様は偉大ですよ。」
「あのマスクくん、そんなに凄いのぉ?」
ディッパーの質問に、執事長は微笑んだ。
「ええ、貴方がたもその内、実感することでしょう。」
「ふーん。」


メイベルは、魔法で私物を全て部屋に持ち込んだ。
「ホント、私の小屋よりも広いのね、この部屋。」
メイベルは盲目だが、物や生物の発する波動で、その物の本質を捉える。
「ベッドなんて、生まれて初めて・・・!」
雲の上にいるかのような感覚に、癒されていた。
「ダニエルが、どんな目的で私の力を借りたいのか分からないけど・・・。今までの不自由な暮らしより、全然良い!」
メイベルは、そのままベッドに体を沈めていた。


一方、ディッパーは一旦タワーに戻っていた。
「うーん。全部持ってっちゃうと、みんなに怪しまれるしぃ。うーん。重要な物だけを持っていく事にしよう。」
ディッパーは大きめのリュックに荷物を詰め込んで、基地に行く事にした。

タワーから出た時、源ジィと合った。
「よぉ、ボス。んな大荷物で、何処行くんだ?登山か?」
「あぁ、うん。そんなところかなぁ?」
嘘がバレないうちに、さっさと行こうとするディッパーを源ジィの一言が止めた。
「なぁ、ボス。お前さん、ここ1っヶ月変だぜ?何か隠してねーか?」
ディッパーは慌てて弁解する。「なぁーんにも、隠してないよぉ!」
源ジィはディッパーの瞳を覗いて「そうかい。」と呟いてどっかに行った。
(ば、バレてないよねぇ・・・?)
ディッパーは、早足で基地に向かった。

反旗を翻す

初めての秘密基地での夕食中、ダニエルがナイフとフォークを置いた。
「2人に聞いて貰いたい話がある。」
「何だよぉ、急に改まってぇ。」ディッパーがステーキをほうばりながら聴いた。
「お前達2人をこの私の部下にし、この秘密地下基地に入れた、本当の理由をこれから話す。」
ゴクリ…。ディッパーが、ステーキと一緒に唾を飲み込んだ。

「お前達2人をこの私の部下にし、この秘密地下基地に入れた、本当の理由。それは、この星の腐敗した王政を成敗することだ。」
「?!」メイベルがフォークを床に落とした。「それって、現ジャナップ星王に反旗を翻すって事?」
「そうだ。」
「ん?どういう事ぉ?今のこの星の王様を殺すってぇ事ぉ?」話に付いてけてないディッパーが無理やり話をまとめた。
「ざっくり言えばそうだ。そこに、現王族達も含まれるがな。」
「確かに、腐敗した王政には皆憤慨しているわ。だけど、何であなたがソレを企てたの?」
「前ジャナップ星王と、現ジャナップ星王に、個人的にも恨みがあるからだ。」
「・・・へぇ?」この間の抜けた声の主は、ディッパーである。
「でも、まって・・・!」メイベルの静止を振り切り、ダニエルは立ち上がり声を高らかに上げた。

「今、此処に宣言する!我ダニエル、その部下のディッパーとメイベルは、この星ジャナップの腐敗した王政を成敗する『セイント・クロス団』を設立することを!!」
(えー?!マジかぁ~!?)これがダニエルの部下、二人の心の叫びだった・・・。

「だいたい、先ず!マスクくんの素性が判らないから、そんな危険犯せないよぉ!」
「ディッパーの言うとおりだわ!確かにあなたに力を借すと言ったけど・・・、反乱の為だなんて!!」
2人は口々に反対意見をダニエルい言った。
しかし、
「黙れ!!もう宣言したんだ!!それに、お前たちは私の部下だ!!私の命令に従え!!」
2人は異口同音に「嫌だ!!」と叫んだ。


「うぅ・・・。」体中が、切り傷と酷いミミズ腫れで痛む。
(・・・ダニエルに・・・私の死の魔術が効かなかった・・・!)
「うぐ・・・。」ディッパーも、大量の血を流して倒れている。
(あの巨大ギャングのボスである、ディッパーも確実に彼を殺してたのに・・・!)
「何だ?もう動けないのか?」頭上からダニエルの声が重くのしかかって来た。
(この人は・・・不死者なの⁉︎)
「痛い目に遭いたくなかったら、このダニエル様に大人しく従うんだ。」
(そうじゃないと・・・辻褄が合わない・・・!)
「さぁ、このダニエル様に従うと言え!」
(不死者相手にいくら殺しに掛かってもキリが無いわよね・・・。)
「・・・わかったわ・・・。従う。」
「・・・従うよぅ・・・。」
2人の言葉に満足したダニエルは、執事たちに彼らの手当を任せて、自室に戻った。


真夜中、ダニエルは起きていた。
(憎き前王と現王・・・!!どれほど奴らに苦汁を舐めさせられたか・・・!!)
「王よ、今に見ていろ・・・!我らが『セイント・クロス団』、必ずお前を成敗してやる・・・!!」

こうして、現ジャナップ星王に反旗を翻す『セイント・クロス団』が結成された。

惑星ジャナップ1(謎の黒マスク男)

最後まで読んで頂き誠にありがとうごいます。
よろしければ、誤字脱字などが有れば教えて下さい。

惑星ジャナップ1(謎の黒マスク男)

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • アクション
  • SF
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-11-07

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. プロローグ
  2. 巨大ギャング『ディストラクション』
  3. ボス
  4. 死体
  5. ダニエルVSディッパー
  6. 潔癖症
  7. 新たな戦力を求めて
  8. 盲目の魔術師
  9. VS魔術師
  10. 地下
  11. 秘密基地
  12. 反旗を翻す