山の君

山の君

今日もあの山に登りたい。

今日もあの山に登りたい。そんなことを思う日々。


あの山はどんな子?
かわいいのか、かっこいいのか。
面白いのか、冷たいのか。才色兼備か、八方美人か。
君のどんな1面を見せてくれるのか、未知なる君を見てみたいなぁ。
そんな君に会いたいなぁ。

…なんてことを思うほど、山はつくづく人の様のように成しているのようで知りたくなり、行きたくなる。
「かっこよくて(顔) シュッとしてて(容姿) 天気は雨で風が強くてご機嫌ななめ(性格)」のように。
擬人化した顔が容姿が性格が、まだ見ぬ山を知りたくなる。


事前に調べて、いざ会いに行く。
それは試験勉強のように、過去出題された問題集を解き明かし、本番の試験で答え合わせをする作業のようだ。たぶん、100点満点中50点取れていれば良いほう。
それくらいいざ山に登ると、新しい発見の連続ばかりで、想定できないことだらけ。裏切られて喜び嬉しい。


登っている瞬間の山と景色と匂い。
裏切られた瞬間、カメラを向けてシャッターを切る。瞬間を逃さまいと、ついシャッターを切りすぎる。でも、どの写真もオリジナルの一点モノ。
暗く、明るく、目で見る色と違うウソみたいな色合い。そのどれもがどんなシーンだったのか、見るたびに思い出す。
だから、是非とも僕のことをもっと裏切ってくださいな。そして、もっとシャッターを切らせてほしいよ。


登る行為は人生そのもののよう。
登って頂上、そして下山しスタート地点へ。
まるでおぎゃーと生まれてから、遊びやら学業やら仕事やらと、紆余曲折なことが還暦まで続くことが頂上までの道のり。下山からスタート地点は、老後の少し時間にゆとりができる道のり。
登りは時間かかって、下りは少し短い。そんなところも似てるのかも。


それらが合わさり、僕は君に会いにいく。
だから、今日もあの山に登りたい。

山の君

山の君

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-11-06

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