君は僕のもの


やあ、ただいま!
ごめんね遅くなって、はは、そんなに怒らないでよ。
買い物のついでに君にケーキを買って帰ろうと思ったんだけどさ、イチゴとチョコどっちの方が好きかなあって悩んでたらこんな時間になっちゃった。

あ、ケーキ?
もちろん二つとも買ったよ、当たり前じゃないか。
今日は僕らの記念すべき日なんだから。

そんなに見ないでよ、恥ずかしいだろ?
今日買ったもの?
えっとね、糸鋸だろ、マスクにゴーグル、あとビニールシート!
やっぱりこういう工具ってたいていのものが家にないと、必要な時不便だって身に染みたよ。
今日は大変だったからね、明日はもっと段取りよく出来ると思うんだ。
君に喜んでもらえるようにがんばるから楽しみにしててね。


よし、ケーキもワインも、ディナーも準備オッケイだ。
じゃあ改めて、ええっと、これからもよろしく、乾杯!

もう笑わないでよ、こういうの苦手なんだ、知ってるだろ?
はは、でも君の笑った顔を見てると初めて出会った時のことを思い出すよ。
え、忘れた?
ひどいなあ、ほら、一年の時じゃないか、四月の、学校のカフェテラスで、思い出した?
そうそう、君は友達とコーヒーを飲んでて、僕は馬鹿みたいにずっと君を見つめてた。

だってこんなに綺麗な子がいるなんてってびっくりしたんだよ。
本当だって、信じてよ、ね?

髪をかきあげたり足を組みかえたりする仕草がすごくセクシーで同い年だなんて信じられなかったぐらいだもの。
そして君は僕に気がついてこう言ったんだ。
なあに?って。

そこから僕らの全てが始まった。

僕はどこにでもいるような目立たないタイプの人間だったから、なかなか君にアプローチ出来なかったよね。
そして君はそんな僕にやきもきして、なんなのよってよく怒られたなあ。
でも呆れて置いていったりせずに、君は僕をちゃんと待っていてくれた。
ほんとにありがとう、君がいないと僕はどうしていいか分からなくなるよ。


でも。
僕は今だに許してないんだからね?
君が卒業パーティーにあいつと行ったこと!

確かに恥ずかしくて中々誘えなかった僕も悪いとは思うよ?
だからってあんなやつと行くことないじゃないか。
馬鹿みたいに筋肉を強調させてさ、胡散臭い真っ白な歯を見せてにやにや笑うやつだぜ?

君は他の女みたいにキャーキャー騒ぎ立てたりしないって信じてたのに。
うっとりした顔しちゃってさ、僕すごく傷付いたんだからね?

まあでも許してあげるよ。
君が愛してるのは僕だって知ってるからね。

ふふ、嬉しい?
これからは、ずっと一緒にいられるんだ。
君に寂しい思いをさせたりしないし、永遠に大切にするって誓うよ。

あれ、なんだか今のプロポーズみたいじゃなかった?
まあ同じことだよね、今もこれからも僕らは変わらない。

邪魔者はいなくなった訳だし、そろそろディナーを楽しもうか。

ううん、さっきからパトカーのサイレンがうるさいなあ。
なにか事故でもあったのかな?
だんだんと音が大きくなってる気がするんだけど。

もう本当にうるさいな。


でもせっかくの記念日だもの、気にせずに食べようよ、ね?



ああ、なんておいしそうな、 き  み  !

君は僕のもの

君は僕のもの

僕はずっと君を見ていて、君もずっと僕を見ていた。大丈夫、僕はちゃあんと分かってるから、ね?

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-11-05

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted