こころ


「つきがかけた」

見えてるよ。僕にも。

「つきが、かけた」

うん。悲しいことだけど。

「つきが、」

何度もいわないでくれ。耳が痛い。

「つき、」

聞きたくないんだ。

僕はいつだってそうなんだ。
聞きたくないから、ふさいでるんだ。
何でわかってくれないんだ。
聞きたくないんだ。

「月が欠けたよ」

知っている。

「君が見ているそれは」

知っているよ。
欠けている。

「君が見ているのは」

知ってるんだ。

「気づいてる?」

気づいてる。
僕が見ているのは、君が見ているものじゃない。
つきはかけていなかったんだよ。

「欠けていたのは、それだったんだ」

見ないでくれ。
かけらを誰かが拾ってくれるまで。

こころ

今僕は一人きりでいる。
これは、今の僕自身の心そのものである。

とても孤独で、何かが足りていない気がする。

何もいらない。
だから、何かがほしい。

こころ

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-04-17

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