あっぷあっぷ

実際のことなので、前倒しができません。
別に甥っこをネタにするつもりはなく、大きくなったら見せてみよう、と心にとどめ置いたことどもですが、一部紹介させていただきとうございます。

―君はプリンス―

 生まれる前から

 あなたの名前は決まってた

 ああ、あなたのママの夢がふくらむ

 それと一緒に あなたも大きくなった

 愛されるために生まれた あなたに捧げよう

 I  LOVE  YOU!


 あなたのママは ダイナマイツ
 
 その美貌と 愛嬌でパパを虜にした

 そうして誠実な愛を育んだ

 初孫(あなたのことよ)ができて 

 脳梗塞で腫瘍をとったばかりで

 横になっているしかなかった おじいさまは 

 話し 立ち上がった

 たいへんな思いを胸に

 つらいつらい、リハビリに耐えて

 あなたに出会うために たたかった

 あなたを一目見んがため

 その腕に抱きたいがため


 あなたは奇跡の子

 みんなの希望

 世界へとはばたく子

 あなたはプリンス

 忘れないで みんなの愛を 


 それぞれの愛を――

―御年0歳―

 一歳にも満たなかった 幼き日々を

 
 あなたは覚えているでしょうか?

 
 流れた子を持つ伯母様は あなたのことを


「いいなァ、いいなァ」と涙ぐんで見守ってました


 そういったことはよくあることで

 でも人々の心は それぞれ



 伯母様が「いいなア」と言った命は


 みんなの優しさに包まれ


 期待され
 

 そのときが来るまで 決して


 この世から失われてはならないものなのです


 だから 泣きわめいてでも


 命の危機には 大人をお呼びなさい


 まだ、あなたの知らない人も


 見知っている人も みんなが


 待ち望んだ 大切なたいせつな 命なのだから……

―紙おむつ卒業!―

 あなたのママはあなたのことに

 どれだけ気を遣ったろう

 紙おむつを布オムツに替えて

 時々はおばあさまの手を借りて


 まるでおばあさまは

 あなたのそばにいたい

 あなたのそばで暮らしたい

 というほど


 それは

 毎日のように

 あなたのため

 あなたのママのために

 実家から通い詰めて
 
 毎日が 忙しそうで

 うれしそうだった

 

 布オムツは手が掛かる

 それでも あなたとふれあうために

 ママは選んでそうした

「まあいいこちゃんね、よく出たね」

 と言って、あなたを気持ちよく過ごせるように

 あなたのおばあさまも、かつてそうしたように

―抱いてください―

「いいなァ、いいなァ」


 とばかり言って、あなたを見つめて抱っこした、


 あなたの伯母さまは、急にそのあと赤ちゃんができて。


 最初は心音もなくって、伯母さま自身も気づかなかった。


 でも今度こそ! 


 旦那さまと


 二人の赤ちゃんを抱いてください


 奇跡は起こる……


 何度でも!


 努力に勝るものもなく、希望も、絶望もなく叶えられる夢などないのです。


 ああ、あなた方の見る未来はどんなだろう


 思いはせずにはいられない


 あなたがたの将来に、幸あらんことをお祈りいたします。


 ああ、あなたはどんな御顔?


 近頃の新生児は生まれてすぐ、目をあいてきょろきょろ。


 でも一番大好きなのはママ


 そう、伯母さまはママになるの


 もう一人のママに……


 おめでとう。


 そう言ってあげて?

 
 おめでとう。


 と、もう一人の伯母は涙したのです

―あなたのいない世界で―

 あなたのいない部屋は空虚で


 なにもかも失ったかのように


 静かだ。


 ねえ、知ってる?


 新生児には唇がない


 ママにミルクをもらって下唇ができる


 本当のことよ


 あなたには今上唇がある


 これはパパがかわいがってくれてる証拠


 愛して、愛されて


 見守られ……


 そうして大きくなってゆくの


 きっとパパもママも


 あなたのためにほほえんでくれるから


 ぐずるのはわたくしといるときだけにしてね


 ママはあなたが大好き


 パパもママごとあなたが大好き


 一生懸命、そんな愛を築くの……

秘密

 こんなことがありました


 恥ずかしいのだけど わたくしは


 結婚願望がない


 なのにこう言いました


「もしもわたくしが太ったブタなら
 こう考えたでしょう。
 『ひと』として種の保存は至上の命題です」


 と……わたくしはやせていたので豚にはならず、


 人生に意味はない。意味なら自分で見つけるものだ、と考えておりましたが、その相手はそれを気に食わないと思ったらしいんです。


 当然のように言ったのです


 むろん、本音ではありましたが


 わたくしには 子供を産んだことがない


 だから、責められて言い返しました


「あなた、女子に
『あなたは種の保存を心がけていますか』と
 
 尋ねてみては? きっと反感を買うから」と


 申し上げたのですよ


 ああ、気持ちが良かった


 今頃彼はどんな反論を考えているのかと考えると


 おかしくて、おかしくて


 でもね、わたくしだって


 あなたがたのように、父に、そして母に


 この身からうまれた赤児を


 抱いてほしい、と思わなかったことは


 ないのです


 これが、わたくしの内緒でないしょの秘密です

―生誕百日目―

 お祝いにはあなたのお父様とお母様


 そして両家のおじい様、おばあ様が立ち会うイベント


 ごちそうを用意して、ゆくわけなのですが


 わたくしは伯母なので参加ならず


 むこうの伯母君も参加ならず


 うん、特別目立ったところのないお顔をして


 むしろ成長が楽しみのあなた


 ご存じかしら?


 全てに平均的なお顔が黄金律と言って


 将来、美形と呼ばれるの


 期待しておりますわ


 だってわたくしは美しいものには弱いの


 飴だってなんだって


 あなたのお母様が否と言いさえしなければ差し上げる


 だけどわたくしは人様が聞いたらびっくりするほどなにも知らない


 こんな行事があるだなんて


 なのにただただ、あなたに会えないのを寂しく思いました。


 両家にとっての初孫はこちらにとっては外孫だから


 あちらの跡継ぎ様です。


 あなたのことです。


 こちらのおじい様とおばあ様は寂しいんじゃないかって思っていたけれど


 とんでもない


 おくびにも出さない


 そんなことより鯛を調理したり


 いろんな用意をして


 初めてのことなのに大人ってすごい


 大人なのにわたくしは思いました


 ちゃんとした大人って偉いのです


 でもやっぱり初めてだから大わらわでしたよ


 内緒ですけれどね

あぷあぷ

 お乳をあげるとき


 細く、勢いよく飛び出る液体に


 あっぷあっぷして


 あえいでいた、あなた


 あなたのお母様は笑ってらして


 もうあなたにお乳をやることが


 当たり前ってお顔をしてらした


 でも、


「体中のエネルギーを吸いとられるー(笑)」


 とも、いってらして


「ああ、母親は身を切るように子にお乳をやるのだ」


 と、無邪気なままのわたくしは思いました。


「お乳あげると疲れて、眠くなる」


 と言って、実家で休みに来たはいいけれど


 みんなが、あなたに夢中で寝てられなかったみたい


 あなたはプリンスだから、お母様は大変でしたのよ?


 女王気質は昔からだけれど、こんなにも彼女はクイーンのままで


 私たちをなごませてくれる。


 カワイイとばかり思っていた末っ子が、一番の場所を取る。


 これはもう、昔のことからで


 わたくしは当然のように彼女を甘やかしました


 かわいいそばかすが何。


 きれいで性質の良さそうな一重が何。


 こんな宝物を地上に生み出したのですよ


 彼女はクイーンです。


 もはや両家にとって当たり前のように


(でもね、お乳をさして巨乳ーと言ったら照れて「昔からよ」なんて言ってた。秘密よ)

あっぷあっぷ

赤ちゃんて、直接親の影響下にありますので、はらはらいたします。で、そんな私がうまくだっこなどできるはずもなく、眉間にしわ寄せてるのに、わたくしの両親が面白がってるのか、抱いてやれ、と言うので、抱いてみたら雄猫と変わらない重さでびっくりしました。いまは五カ月になり、デブ猫よりは重くなったそうです。
赤ちゃんてあっという間に大きくなりますね。そういうことが書きたかったです。

あっぷあっぷ

赤ん坊に気難しい顔をして接すると、泣きわめくのでわたくしなどは一気に挙動不審に陥ってしまいます……甥といっても姉妹とおなじく他人の始まりですからね。 ついついおどおどしてたら、もう人見知りする様子を見せるので、それもすごいなと。だってまだ四カ月のことですよ! 子どもの気持ちってわからないや。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-01-10

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. ―君はプリンス―
  2. ―御年0歳―
  3. ―紙おむつ卒業!―
  4. ―抱いてください―
  5. ―あなたのいない世界で―
  6. 秘密
  7. ―生誕百日目―
  8. あぷあぷ