三題噺 ―1―
本文
……んんっ。……今、何時だ。
鳥のさえずりで目が覚め、窓辺の時計へ視線を移す。
時計の針は、8時を少し過ぎた頃を指していた。
やっぱり寝坊したな。まぁ、いいか。面白い話だったし。
欠伸を噛み殺しながら、枕元に散乱している本を眺めた。
いったん本を読み始めると、時間を忘れるのは相変わらずだ。
――次の日が休日の時にしかできないが、贅沢な過ごし方だ。
ベッドから起きて、キッチンへと向かう。
目覚ましに、コーヒーを。
ケトルに水をいれ、火にかける。
沸騰するまでに、コーヒーの準備を済ませる。
蒸気が出てきたところで、火を消す。
熱湯をコーヒーに回しかける。
部屋中に良い香りが漂う。
出来たてをコップに注ぎ、まずは一杯。
……旨い。
。
。
。
……さぁ。今日は何をしようか。
特に予定はない。
……ひたすら本を読む日にでもするか。
書庫に向かおうとすると、ノックの音が聞こえた。
コンコン。……コンコン。
誰だろうか。軽く返事をし、玄関へと歩みを変えた。
。
。
。
扉を開けると、カゴいっぱいの野菜と本が置いてあった。
側には、メモがあり――。
本を貸してくださり、ありがとうございました。
お礼は何がいいのかわからなかったので、貸して貰った
本を参考にしました。またオススメの本を貸して下さい。
―さよ―
あぁ。さよさんか。……もう。お礼とかいいのにな。
それしても、もう読み終わったのか。
そう呟きながら、とある狐が悪戯したことを反省して栗
や松茸を届ける物語と、時間泥棒と少女の不思議な物語
綴った本を手に取る。
。
。
。
ひとまずカゴを持って家に入る。
ごはんのメニューを考えることに。
葉物はざっくりと刻んで、オリーブオイルと鷹の爪と
ニンニクで炒めて、ペペロンチーノに。ほかの野菜は
ゴロゴロに切って、ミネストローネにするか。
せっかくの新鮮な野菜だ。十分に堪能させてもらおう。
さて、次はどんな本をさよさんに貸したものかと思案
しながら、キッチンへ向かった。
三題噺 ―1―
今回のお題は「コップ、鷹、泥棒」でした。
どこに出てきたかわかりましたか?
さてと、本の題名の答え合わせです。
1冊目は、新見南吉さんの「ごんぎつね」、
2冊目は、ミヒャエル・エンデさんの「モモ」です。