ずいぶんと昔の話 1
僕が高校生の頃の話。
当時すごく好きだった後輩の女の子と一緒に帰ったときの話。
思い出話。
その日も今日くらいすごく寒い日で、僕は彼女に「冬は好き?」って聞いた。そしたら彼女は笑った。「ナンセンスですよ。先輩」と笑った。
「嫌い、って事?」
「違います。好きでも嫌いでも無い。って事です」
何か話しでもしなきゃ、って気持ちで振った話題だったんだけど、思わぬ展開だった。
「だって、私がどれだけ冬を嫌いでも、先輩がどんなに冬を好きでも、冬は長くもならないし、短くもならないし、これ以上寒くもならないし、これ以上暖かくもならないんですよ」
そりゃそうだけど。さ。
沈黙。
冬は沈黙が長く感じる。
冬の一秒は長い。
「それに」
と、彼女の方が沈黙に負けたようだった。
「サンタクロースって本当はいないんですよ」
僕は笑った。「知ってるよ、そんな事。それに、僕は冬が嫌いなんだ」
「何でですか?」
彼女は本当に、その理由を知りたがっているようだった。冬を嫌う理由ってものがどんなものか興味あるようだった。
「寒いから」と答える。そしたら彼女は笑った。「シンプルすぎますよ。先輩」と笑った。
そんな彼女に最近会った。
「地球温暖化」
彼女は急にそんな事を言った。
「先輩が冬を嫌うせいでシロクマやペンギンが困ってるみたいですよ」
彼女が言うには地球温暖化の原因が僕にあるらしい。
「僕が冬を嫌いでも、好きでも、気温は上がったり下がったりしないんじゃなかったの?」
僕が答えると「あの時はそう思ってたんですけどね」
「それに、今は冬も別に嫌いじゃないんだけど」
「何でですか?こんなに寒いのに?」
僕は笑ってごまかした。
ずいぶんと昔の話 1
昔書いた三題噺です。
お題は「サンタ」「地球温暖化」「ナンセンス」でした。
書いた時は冬でした。季節外れの発表になってしまったのは恥ずかしいけど、まぁ、いいや。