保冷剤


保冷剤が溶けきってグニャグニャで機能しなくなって用無しで能無しで死んだ感覚が凄く愛おしく感じる。


あゝ、アレルギーが。アレルギーがまだオサマラナイ。

これで保冷剤いくつめかしら。
もう数えるのもそろそろ飽きてきたわ。

アタシはアレルギー持ちで、アレルギーが出ると患部を保冷剤で冷やすといいと人伝てに聞いて、それからアレルギーが出ると保冷剤で患部を冷やすようになった。


ただ、アレルギーは思いの外しつこくて、保冷剤一つが溶け切る頃にはおさまっていなくて、予備の保冷剤でまた患部を冷やし出すの。それを気が遠くなるほど繰り返す。


毎晩ベッドに入るとアレルギーが出るの。


アタシの冷凍庫には保冷剤がいくつもストックしてあって、
保冷剤しか入ってなくて、、
保冷剤がギッシリビッチリそれはそれは規則正しく整列してあって、、、



あ。

朝。


また保冷剤と共に朝を迎えてしまった。
アレルギーはいつものようにおさまっていた。


アタシはいつものように着替えて鏡向いてお化粧をして、、真っ赤なルージュを引いてペロッと唇を舐めて魅せて完璧。
今日のアタシもとっても綺麗。


アタシのアレルギー気になる?


あのね、アタシはとっても大好きなのに、アタシの事をとっても大嫌いな人がいてね、泣いても縋ってもどうしてもキスしてくれないから、その人の舌切り落としちゃった。

そしてそれをアタシの舌に縫い合わせたの。
24時間365日永遠に濃厚にしつこいくらいキスできるように。

そしたら貴女、よっぽどアタシの事が嫌いだったのね。毎晩ごねるの。嫌だ嫌だってアレルギー起こすの。
そんなとこも可愛くてアタシは大好きなんだけどね。

その人の本体?そんなの知らないわ。
アタシはただ彼女とキスがしたかっただけなの。

保冷剤

保冷剤

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-11-03

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted