TIME LAG I LOVE YOU〜時空を超えた愛〜【第一章〜夜中の邂逅〜Part5】
何故、家出少女がいないかとたずねた交番の警察官現れるのか?
「うっ、朝か、まぶしいな。」
窓から日差しが射し込んでいる。どうやらこの日差しで起きた様だ。結局思い当たらなかった。真理なんて知らない。何故俺がこの名前に固執するのか?それが分からない。
ところで、今何時だ?今日は晴れているな。まてよ、
「何で日差しが射し込んでいる?カーテンは閉めていたはずだぞ。」
何かこの台詞を何回もくり返した記憶がある。
「お目覚めになりましたか。谷山隆さん」
俺に誰かが声をかけている。「はい?」っと言って俺は声の方を向く。そこには人の良さそうな中年の警官がいた。あの時、俺が家出少女を聞きに言った時の警官だ。
「山本真理。都内某高校2年生、1991年6月7日生まれ。両親は某有名企業取締役役員。好きな食べ物は日清カップヌードル。嫌いな食べ物は沢庵。得意学習科目、理科、不得意学習科目、家庭科。世界初携帯型タイムマシン開発者。」
俺には何を言っているのかさっぱり分からない。ただ、山本真理、そこの人名が引っ掛かった。
人の良さそうな警官は何やらだらだらとまだ話している。何言ってんだ?こいつ?頭おかしいぞ。こいつも昨日のスーツ男の仲間か?
「おい、誰だよ、お前、」
男は話しを一旦止めて
「あぁ?お前っての誰だ?俺の事か?俺なら利川武だ、お前に呼び捨てされる筋合いは無いぞ、口を慎めこの馬鹿が。」
って、何だこいつ、めちゃくちゃ口悪いぞ!としかわたけし?初めて聞いたぞ、そんな名前。
「ふざけるな、何だよ、いきなり馬鹿とか言いやがって、てめぇ警官だろ、一般人に対する口のきき方か?」
「お前には呆れているよ。まんまと山本真理をTSRに渡すなんて、そんな奴を馬鹿と呼ぶ以外になんて呼べばいいんだよ?教えろこの馬鹿。」
はぁ?さっぱり意味が分からないぞ。TSRに渡す?何だTSRって?
俺はなぁそんな単語に思い当たる節なんてねぇぞ。英語の単語なんてもう100覚えているかどうかだ。
「お前はすっかりTSRに記憶を消されているな、どうだ?山本真理という名前に心当たりは無いのか?答えろ馬鹿。」
「あぁ、俺の名前は谷山隆だ!谷山と呼べ、そうしたら答えてやる。」
「谷山、お前は山本真理と言う名前に心当たりは無いのか!面倒くさい奴だな。」
「知らねぇよ、そんな名前。いいから帰れ!」
男は溜息一つこぼし、仕方ねぇな、とか何とか言って、
「目を覚ませこの野郎!!」
その後、俺の後頭部に激しい衝撃が襲った。
目の前の世界が暗転してフェードアウトして行く。
「おい、おい、起きろ、この馬鹿、起きろ、」
ムカつく奴の声が響く。痛みも頭の中に響く。体がグワングワンと誰かに揺すられている。
〜ここにいてもいいのかなぁ〜
「ハッ!」
俺は目を覚ました。
「真理さんは、真理さんはどこだ!?」
利川は一瞬、面食らった様だが、それも本当に一瞬だけ。
「落ち着け、馬鹿、やっと思い出したか、奴らも段々と手の込んだやり方してくるじゃねぇか。」
落ち着いていれるか、馬鹿はお前だ!
思い出した、何もかも!あの時、真理さんと一緒にみそ汁を飲んでいた時、突然入ってきた長身で黒いスーツを着た男、あれ?でもあの日は銭湯に行った次の日だから、2月7日か、あれ?でも1月16日にもあの銀縁眼鏡の男が俺の部屋に来たような?あれ?
「俺の部屋にあの男が来たのは2月7日?いや、1月16日?どっちだ!何でごちゃ混ぜになっている!」
「落ち着け、おそらくお前の記憶が混乱しているんだ、時間が経てばおのずと間違いの記憶が薄れて消えていく、それまでの辛抱だ、おそらく1月16日に棚田が来たのはダミーメモリー、偽の記憶、作られたく記憶だ、奴が来たのはお前の話からすると2月7日だ。」
ダミーメモリー?何だそりゃ?たなだって誰だ?あの長身銀縁眼鏡男か?
「お前は災難だったな、こんな面倒に巻き込まれるなんて、しかし助かった、お前のあの情報が無ければ山本真理の居所を突き止められなかったからな。その辺は助かった、」
「あんたは誰だ?一体何が起こっているんだ?はぐらかさずに答えろ!」
「落ち着けって言っているだろ、まず俺の言う事を聞け!」
はい、そうします。
「まず、山本真理は、さっき言ったように携帯型タイムマシンの発明者だ。しかし、タイムマシン自体はもう既に出来ていた、具体的にいつ誰が発明したのかは不明だ。2010年現在、文字通り不明。しかし旧タイムマシンはエネルギー充電に約1ヶ月かかるうえ、時間指定しても一ヶ月二ヶ月のタイムラグが発生する代物だ。TSRの連中はその旧タイムマシンを使って時間を再構成しようとしている。我々は旧タイムマシンを「OTM」と呼んでいる。オー、ティ、エムだ。そして山本真理の発明したタイムマシンを「NTM」と呼んでいる。エヌ、ティ、エムだ。NTMの利点は、携帯出来る事、操作が簡単、大量生産可能、と言ったところだ。全てにおいてOTMよりNTMの方が優れている。OTMを使うとなると、行った時代にエネルギー充電装置が無ければ元いた時代へ帰れない。しかし、NTMは一回の時間溯航のエネルギーは単三電池一本でまかなえる。」
意味不明だな、俺には理解出来ない。こいつは何の為に俺にこんな事言ってやがる?とっとと真理さんに会わせろ、この野郎、よく覚えちゃいないがあの銀縁眼鏡男を取っ捕まえて、真理さんを奪回しなければ!
俺は真理さんに安全を約束したはずだ、あのにあの銀縁眼鏡男に真理さんをまんまと渡すなんて、確かに俺は馬鹿かもな。
「ふ、はは、ははははは!」
利川は気味の悪い目をして、笑う俺を見る。
「何気持ち悪く笑ってやがる。精神崩壊しちまったのか?」
「お前の言っている事は意味が分からん、だが、間違いが一つあるぞ。」
「何だ?言ってみろ。」
俺はあの時の気持ちを思い出して、
「真理さんは家庭科は不得意じゃない。俺のこの舌が保証する。だから家庭科が不得意学習科目なわけねぇぞ!あのみそ汁は最高だった!」
俺は思いっきりそう叫んだ。
「馬鹿か?お前は?」
あぁ、真理さんを守ってやれなかった大馬鹿もんだ。
「で、行くのか?行かないのか?」
「行くのか?ってどこへ?」
「山本真理を助けにだ。」
どうやら、俺の頭には選択肢は一つか浮かばなかった。その辺は捨てたもんじゃないな、俺の脳も。
答え>行く。
「あぁ行くさ、真理さんを助ける為なら何処へだっていくさ、本州飛び出して、四国、九州、北海道、どっかの孤島や沖縄、アメリカ、カナダ、ロシア、中国、」
「何を言ってやがる?誰がアメリカへ行くと言った?あぁ?ふざけるな、この馬鹿。俺たちが行くのは、TSRの足跡をたどって、山本真理を奪還するまでだ。」
すると、利川は警官の制服のポケットからボールペンを取り出した。いや、まて、これはまさか、
上についているクリックするボタン、小さなダイヤル。
「何だ物珍しそうに見てやがるな?山本真理から教えてもらえなかったのか?これがNTMだ。まだ2010年現在世界に三台しか無い。俺の手を握れ、」
そう言って、左手を差し出す。
俺が握るとカリカリ、と何やらダイヤルを利川はいじり、かちっとクリックした。
ピカッと一瞬、光り、俺の視界がフェードアウトした。
気がつくと、俺は真っ暗闇の中に立っていた。ふと右隣を見ると利川が俺の手を握って立っている、慌てて手を離し、俺は今何処にいるのかを考えた。ちょっとだけ光っているのは街灯の様だ。よって今は夜だろう。そして寒い。
真っ暗闇の中周りをぐるっと見渡す。わずかな光りで照らされる黄色い滑り台、寂れたブランコ、色が剥げたジャングルジム。ぐるっと囲んでいるフェンス。その向こうの大きな建物
ここは近所の公園だ。俺はたぬき荘から徒歩約2分くらいの公園にいる。ってことはフェンス越しの大きな建物はスーパー大木か?
制服姿の利川は右手の時計の目をやり、
「今は、西暦1988年、2月7日午前3時ちょうどだ。多少ズレたがお前はもといた時代に戻ってきた訳だ。お前は2月7日の午前11時45分に棚田に1月16日へ飛ばされ、記憶を書き換えられ、その時代のデータを再構成された訳だ、よって飛ばされた時代の1988年1月16日はこの世界へは続いていない、完全に切り離されたパラレルワールドになっている。お前は、お前が過ごしていた基準となる正常な時代へ帰還出来た、もう一度聞く、お前はこれ以上深入りするのかしないのかどっちだ?」
ご高説ありがとな、でも俺はもう決めてんだ。深入りだと?あぁ、大いに結構だ、してやるよ。俺はなもう一度彼女に会わなければダメ人間になっちまう。
俺は前に彼女と別れても同じ生活に戻るだけだと思っていた。でもなぁ、それは彼女が安全な親元に戻ったらって話だ。訳の分からん組織に連れて行かれたまま、同じ生活へ戻るわけにはいかない。彼女を連れ戻して、訳の分からん組織に復讐してやるまで、俺は真理さんを捜し続けてるさ、
このまま終わりになんて出来るわけない。
「言ったはずだ、俺は真理さんを助けにいくと。」
「そうかい、じゃまず、」
そう言って利川は公園のベンチへむかいそのままベンチに寝っ転がった。
一体どんな意味なのか分からずにいると、
「お前は寝ないのか?まだ予定時刻まで6時間以上あるんだぞ、少し眠っとけ。」
「っておい!早くアパートへ戻らなくちゃ、あの銀縁眼鏡男が来ちまうぞ!」
「馬鹿、声がでかい、静かにしろ今何時だと思ってやがる。今お前の部屋に行ったらまだ何も知らないお前と山本真理がいるんだぞ、鉢合わせになったらどう説明する?少しは考えろ。」
あぁなるほど、そう言う事か、
「寝る前に教えろ。」
利川は面倒くさそうに俺とは逆方向に寝返り打ち、「寒いな、」と呟いてから、
「何をだ?」と言った。
「いや、だから全部だ全部、大体ここが2月7日って証拠は何処にある?まだ俺はお前の話を信じられねぇんだよ、ってかお前は誰だ?真理さんとどういう関係なんだ?答えろ、おい、」
てめぇとは付き合いきれん、そんなことを言って利川はぐうぐうと眠った。何だ?もう寝たのか?おい起きろ、起きろって、そう言いながら俺は利川の体を揺する、しかしいっこうに起きる気配はない、本当に眠ったのか?早過ぎるだろ。
「うぅ、寒っ」
確かにこいつの言う通り寒い。安物冬用パジャマじゃ凍え死んでしまう。
ん?
「どっかで聞いたよな、凍え死ぬって台詞、」
そんな事は一旦置いといて、
こいつの話を信じるとするなら、こいつは未来からやってきたって事になるな、(いやこいつも?って事になるのか真理さんも未来から来たとするなら)一旦整理しよう。こいつが言っている事が本当だとしたら、こいつは2010年から来たという事になる。月日不明。で、真理さんは2008年11月10日から、で、ここは1988年2月6日、あぁ時間系列並べが非常にややこしい。20年、もしくは22年後の人と俺はこうして会っているのか?でもなぁ、これは本当の事かもしれないぞ。
いくら近いとはいえ、こんな短時間で俺の部屋からこの公園まで移動できるはずが無い。しかもいきなり昼から夜へだ、薬で眠らせられたって事も考えられるが小説じゃあるまいし、
でもあの時、部屋でピカッと光った一瞬の閃光何だろ?まさかあれってボールペンじゃなくてペンライト?まさか、あんなに外が晴れていたんだぞ、その太陽の日差しをも凌ぐ光りだったぞあれは、
どれ俺も眠くなってきたぞ、いや、これはヤバい方の睡魔だ、俺はこの寒さで眠くなってきた。本当に凍えて死んでしまいそうだ、都内公園で不審な凍死死体発見って記事が新聞に載っちまうぞこりゃ。
とりあえず、どっか寒さを防げる場所へ行かなけりゃ、
真っ先に頭の中に浮かんだのはたぬき荘だった。しかし、利川の話が本当なら俺の部屋に行ったら何も知らない俺と真理さんがいる、(あくまでこいつの話を信じるなら)
俺は歩き出していた、何処へ?
答え>たぬき荘、201室へだ。
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