ほのぼのの

1日目

放課後の校舎裏親友を探していると、告白現場を目撃。
僕は咄嗟に身を隠した。
「お・・・俺と、つきあってくださいっ!」
「良いですよ~」
女はそう言うと、どこから出したのかフェイシングで使う剣を持っている。
「・・・え?」
男は理解できず、口を開閉させている。
まるで金魚のようだ。
そのそばで女は空を突いている。
どうやら、「付き合う」を「突き合う」と勘違いしているようだ。
「あ・・・あの・・・・・」
「はい?」
「しっ、失礼します!!」
男はそう言って泣きながら走り去っていった。
そりゃそうだよな、本気の告白をあしらわれたようなもんだからな。
女はなぜか地面を見つめている。
「空」
僕は前に進み出て、女・・・親友の名前を呼ぶ。
僕に気付いた空は僕の顔を見るなり、
「G」
と言った。
「・・・僕は部屋の隅でカサカサする黒光り生物なのか」
「あ、違った。見てるだけできしょいモザイクさん」
「人として扱ってくれ!」
「んー・・・じゃあ・・・」
空は剣を草むらに放り投げ捨て、散々悩み、
「メイド」
と一言。
「性別違うんだけど!?せめて執事とか言おうよ!!はぁ・・・空、僕の名前知ってるよね・・・?」
「G」
「違うって!ゴキさんはもう置いといて!!」
僕は半泣きで空に訴える。
「冗談だよ、紅太」
そう言って笑い、
「帰ろう」
と言った。


どうして僕と空が彼氏彼女ではなく親友なのか。
周りの友人達にいつも聞かれる。
僕と空の答えは決まって、『おじいちゃん(おばあちゃん)みたいだから』だ。
帰り道、ラブラブカップルが歩いている。
いいなぁ・・・と思ってしまう自分がいる。
ふと気付くと、空が僕の顔を見つめていた。
そして、急に歩行ペースを早めた。
「お・・・おい、空?」
僕は空についていくように歩くと、空はカップルとすれちがう数十メートル前で僕の方へ振り返り、
「ねぇ、紅太!私、柿の種が食べたいな♪」
と、とても16歳の美少女が言いそうにない事を言い出した。
空とすれちがったカップルの男は
「うわ・・・あの子超可愛いのに好みおっさんみたいだな」
と言ってドン引きしていた。
「紅太。所詮人は見た目じゃなくて中身が大事なんだよ。見た目じゃなくて趣味とか性格を含めて好きになるべきだと私は思うんだよね」
空は顎に手をあて、そう言った。
そして転けた。
空は起き上がり、
「紅太の全部を好きになってくれる人、いつかるといいね。」
と言って笑った。
「空にもできるといいな。」
僕も笑った。
その日は夕日が綺麗だった。

ほのぼのの

ほのぼのの

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-10-31

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