右目
私の右目はどこへ…
高校生活が退屈で仕方がない彼と過去に囚われたままの彼女。
彼女の過去には一体、何があったのか。
あの子に会うまで後二時間
とある日常。
なんにもない平凡な春。
今日から進級すると言うのに皆浮かれている。
「鈴木くん。今日も一人?」
「まぁ…」
そんな他愛のない会話をするしかないのだ。
高校2年生になると流石にうきうき感などなくなる。
「退屈…。」
そう。毎日が退屈だ。
「当真。また、あの子か~。」
「別に関心なんてないよ。」
「あっそ。」
どうやら、皆勉強などには興味がないらしい。
「きょうは新しい後輩が増えるな~!」
…とそんなものもつかの間だ。
くだらない恋愛をしてくだらない遊びをしてだらけるだけなのか。
そんな事で高校生活が終わるのか。
「まったく、くだらない」
「それ、口癖だよね。」
「うるさい。」
あの子に会うまで後0時間
いつもと変わらない公舎。
騒いでいる新しい後輩たち。
「あぁ~。俺たちも最初はこんな感じだったよね~」
「…うん。」
懐かしい思い出。
そんなものとっくの昔に忘れた。
「ねぇ…ちょっとだけでいいから新入生、見に行かない?」
「はぁ!?なに言ってんだおまえは!!公舎も違うのに俺たちが入れるわけ…「いいから、いいから!!」
言われるがまま渋々と入る。
そこはまるで、自分たちが去年いたとは思えないぐらい違う光景だった。
「…なんか、変わっちゃったね。」
「うん。」
生徒たちは俺たちを見て驚く。
なにしろ年上は立ち入り禁止なのだから…
「あの…すみませんがここ上級生立ち入り禁止ですよ。」
「あっ!!ごめんごめん!!おっと…君はかわいい子だね~今度俺と遊びにでも…」
「行くぞ、健太。」
本当にこいつはろくな事しかしないんだから…
でも、あの子…
右目に眼帯してたな…
キーンコーンカーンコーン
本当に地味なチャイム。
まぁ予鈴のチャイムなんか地味とか関係ないんだけどね…
「あっ!!とうまっ!とうま!!!」
健太は目を輝かせてこちらを見ている。
きっとよからぬことだろう…
「あっ!!こっち向いた!!!おーい!!!」
「…誰に手ふってんだ?」
「今朝のあの子!!おーい!!あれ?無視されちゃった…」
あたりまえだろ。
あんな大声でみっともない。
恥ずかしいにもほどがある。
「健太。もうやめとけ。あの子、嫌がってる。ほら逃げた。」
「あ…」
眼帯のあの子は友達の所へすぐに逃げて行ってしまった。
でも…なぜか気になってしまう。
眼帯のあの子が。
「生徒会長?」
「うんっ!!生徒会長なんだって!!」
どうやらあの子はリーダーシップがあるらしい…
入学早々やるな…
「とうまー!!!遊びにいこっ!!}
「佳奈。何回も断ったはずだ。」
「え~。」
べたべたべたべたと、まったくもって無理な女。
「あっ!!おーい!!」
…あの子だ。
眼帯のあの子。
「ちょっ健太!!」
健太はあの子にむかって走って行ってしまった。
「なぁに~好きな子でもできたの?」
「ちがう。」
断じてない。
一目ぼれなど。
「あっ!じゃあ私もう行くね!!またねっ!とーま!!」
くっっっそ気持ち悪い。
「どうまぁぁぁぁぁぁっ」
「うわっなんだよ」
「あの子がとーまに話あるってーーーーぇぇぇぇぇ」
ヤキモチかよ。
どうたら健太は一目ぼれってやつか。
彼女もそれなりに扱いがひどい…
「あの…話って…?」
念願のあの子との会話。
ずっと気になっていた。
どうして入学早々、学級委員になったのか。
どうしていつも…
眼帯をつけているのか。
右目