冬の温もり

――これは、ある冬の物語。

本編

――これは、ある冬の物語。



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――冬。
それは、僕にとって楽しみな季節。


冬休み。補習帰りの雪道を歩いて、
彼女が会いに来る。厳しい寒さに
凍えながらも嬉しそうに、彼女は
白い息を吐きながら、駆けてくる。
その足音を僕は心待ちにしている。
彼女が来るのはそろそろだろうか。



あぁ。チャイムが鳴った。彼女が
やってきた合図だ。僕の火照った
からだが一層熱を持つ。うっすら
汗ばんできた。彼女に嫌われない
だろうか。少し心配になってきた。



勉強してとっても疲れているのに
そんな素振りをちっとも見せない。
少し照れながら僕を呼ぶ声がする。



僕は薄手の白い上着を纏い、彼女
の元へ。彼女の冷たい手を、僕が
温める。嬉しそうな彼女の笑顔が
見えた。



「えへへ。補習を頑張ったご褒美
 にって、楽しみにしてたんだよ」
――彼女の弾んだ声が僕へと届く。



あまりの嬉しさに照れている僕の
姿を見て、彼女は微笑む。そして
次の瞬間には、彼女の顔が間近に
迫っていた。



まだ心の準備まだできていないと
動揺している僕に彼女の柔らかい
唇が触れる。もう我慢できないの
と甘くとろける声と共に僕は――。









「ふふっ。やっぱり冬休みの補習
 の後にはこれよね。……本当に
 おいしい。ほかほかの肉まん!」



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おまけ

――これは、ある冬の物語。



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――冬。
それは、私にとって楽しみな季節。



冬休み。補習帰りの雪道を歩いて、
私はあの場所へと向かう。厳しい
寒さに凍えながらも、これからの
ことを考えると嬉しくなり、私は
白い息を吐きながら、駆けていく。



私の足音は次第に早くなっていく。
あの場所は、もうそろそろのはず。



ドアの前に立つとチャイムが鳴り
自動ドアが開いた。暖房が効いた
店内に入り、私はお目当てを探す。
ケースを覗いてみるといい具合に
ほかほかしている肉まんが見えた。



補習疲れが一気に出てきて、私の
体が空腹を訴えてくる。レジの人
に音を聞かれていないか少し心配。



一刻も早くお腹を満たしたい思い
を隠しつつ、列に並ぶ。すぐに私
の順番になった。注文を言おうと
した矢先、くぅーっとお腹の虫が
切なそうに鳴いた。真っ赤な顔を
しながら私は、レジのお兄さんに
注文をした。



お兄さんはトングで、ほかほかに
なっている肉まんをつかんで手際
よく包んで手渡してくれた。受け
取ると肉まんの熱が冷え切った私
の手を徐々に温めていく。



……さぁ。またお腹の虫が鳴かない
うちに早くお店から出て。それから。
私は嬉しくて満面の笑みを浮かべた。



「えへへ。補習を頑張ったご褒美
 にって、楽しみにしてたんだよ」
――私は袋の温もりを手にして呟く。



自分へのご褒美を見た瞬間、私は
もう食欲を抑えきれず、帰り道に
歩きながら食べることにした。



……ぐ~ぅ。再びお腹が訴え始める。
もう我慢できないのと、それを私は
頬張って――。









「ふふっ。やっぱり冬休みの補習
 の後にはこれよね。……本当に
 おいしい。ほかほかの肉まん!」



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冬の温もり

ASKノベルゲームメーカーで行われた30分企画(お題:肉)で制作したものが、本編となっております。おまけは、投稿後によくわからないとコメントを戴いたので補足説明(ネタばらし)として制作した作品です。

冬の温もり

とある冬の日の僕と彼女の物語。 ――ぜひ、ご賞味くださいませ。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-10-29

Copyrighted
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Copyrighted
  1. 本編
  2. おまけ