純情可憐な砂糖菓子
星屑の遺言
あなたによってどうぞ粉々にしてください
くだらない自我とプライドと言うものを
あなたのカラダに収まるならば実態など何の意味がありましょう
何時ぞやの天才科学者が星の恋慕を発見致しました
私はその恋慕によって今、滅びゆくところです
意気地の無いわたしは、あなたから逃げました
あなたと目が合うことを、あなたと言葉を交わすことを、あなたと会うことを
わたしは酷く怯えておりました
あなたに伝わるのが怖いのは、あなたに拒絶されることだけではありません
もしも、あなたがわたしを受け入れ、愛してくれたらと思うと
恐ろしくて恐ろしくて、毎日震えておりました
愛しのあなたは、わたしの瞼の裏にいました
本当のあなたが、怖かった
幻滅するのもされるのも
わたしは身勝手な星屑です
それでも抗えない、あなたの引力を何億年も夢見ておりました
わたしの恋慕は膨張し、わたしのカラダは歪み始めました
何処かの星座に不恰好なわたしの姿を嗤われました
あなたはやがてその恋慕に気付いてしまいました
わたしの恋慕は地上ならば、わたしと言う小さな破滅で済んだことでしょう
ここは宇宙、わたしの恋慕は混沌を生み、彼は終止符を打ちにくる
あなたはわたしを引き寄せた、そしてゆっくり壊してゆきました
くだらない自我とプライドと思考を
あなたのカラダに収まるように実態は粉々になってゆく
幸福も絶望も、もはや意味を成さない
「愛しています」に魂は最期まで宿りませんでした。
これは星屑の遺言です。
喪失する星屑の遺言です。
君に会う日は
君に会う日はフラフラする
君に会う日は言葉は空転
君に会う日は品行方正
君に会う日は不健全な夢を隠そう
君に会う日は幻想を忘れよう
醜い幻想を抱き爛れた心
君に隠そう
眩暈は御馳走
君に会う日は
純情可憐な砂糖菓子
君に触れたら零れて落ちた
あゝ これは砂糖菓子
君は君に在らず
君は瞼の裏に居る
幻想に恋をする悲しい指先で砂糖菓子を摘む
甘くて優しい純情可憐な砂糖菓子よ
いっそ絶望と幻滅と現実によって甘え切ったこの心を打擲して
早く夢から覚めなければ早く夢から覚めなければ
これは地獄でしか無い
この甘さは最早地獄であり、この安らぎと中毒性も地獄である
甘さの後の胸の苦しみで、意識は遠のく
純情可憐な砂糖菓子を今日も一口、二口、止められず
苦しい苦しいと呻く唇はひび割れる
この地獄よ、悪夢よ、終わらせてと願うが指はいつまでも求め続ける
感情に名前をつけても無駄であると星が嘲笑う
滅びゆく輝きを羨ましく思えば、胸は一層苦しくなった
甘く優しく残酷である砂糖菓子よ
純情可憐な砂糖菓子よ
純情可憐な砂糖菓子