音楽学校


(2人、教卓の中。オカリナでもののけ姫を吹き、それぞれのポケットにしまう)
(B[助手]、上を覗く)
A「...さて、どうだ?」
B「(顔を引っ込めて首を振る)」
A「とか言っちゃって⁉︎」
B「(首を振る)」
A「からの〜⁉︎」
B「(首を振る)」
A「おい〜」
B「(首を振って)...一人しかいないです」
A「(頭を抱えて)くあー!まじかー!(上を覗き、再び中へ)あははは...」
B「...まあ、しょうがないじゃないですか。ここの音楽学校はまだ創立一年目なんですから」
A「とは言え、とは言えだ、お前考えてもみろ、そこ出て隣のマンドリン科は?」
B「満員」
A「その隣のカホン科は?」
B「大盛況」
A「向かいのマラカス科は?」
B「まあそこそこ」
A「俺らオカリナ科は?」
B「...」
A「...」
B「ひと、り...」
A「何故だ...なにゆえだ!」
B「なにゆえったってオカリナはそんな、趣味の域を超えがたい楽器だからでしょ」
A「そんなもんマラカスだって同じだろうが!」
B「まあそうですけど...もうここで待っててもどうせ来ませんよ。授業開始のベルまであと30秒。廊下に足音の気配無し。僕もう帰ります(言いながら教壇から出ようとする)」
A「(助手の袖をつかんで)ぐあー待った待った!」
B「待てません!」
A「俺が実技でお前が音楽理論。決めてたじゃないか!」
B「(手を合わせて下ろして)いやです」
A「(両手を合わせて)頼むよ」
B「いやです」
A「(首に抱きつこうとして)頼まれろよ」
B「(拒否)頼まれません、大体ね、あんたが今のバイト辞めたいっつって無理矢理僕も一緒に連れてきたんでしょうが!僕はな、譜面だって読めないんだぞ‼︎」
A「、、、じゃあ何だ、お前は375号室に運ばれてくるキョロちゃん缶の嘴を折り続ける生活に戻りたいのかよ」
B「、、、それは、確かにそれはやです。まあそれでも待遇は割といい方でしたよ?休みだってそれなりに取れたし」
A「だけどさ、ここだったらもっと給料ははずむはずなんだぜだぜ?」
B「(ため息)生徒がいれば、でしょ。授業料払ってもらう人数が少ないんだ、僕達の給料なんてたかが知れてるでしょうよ」
A「まあ、そうか...」
B「それにこのままいったら多分来月にはオカリナ科は閉じられちゃいますよ」
A「そうかな」
B「そうですよ。定員割れの学部なんか残してても仕方ないんだから」
A「でもさ、仮にオカリナ科が無くなったらの話だぞ?そしたらここの講堂はどうなる?別の学部が使うのかよ?」
B「それは...新しく...シタール、とか」
A「地味に人気あるやつじゃねーか‼︎ジョージハリスンもハマったシタールじゃんか!あー悔しいよー悔しいよーマラカス科に負けるとかやー!だー!よー‼︎(教卓の内側を叩く)」
B「静かに!(上を覗いて)ねえ、彼女困ってますよ。授業始めるなりなんなり、何とかしないと」
A「なあ」
B「なんですか?」
A「あの娘さぁ」
B「はぁ」
A「彼氏とかいんのかなぁ」
B「...なに言ってんだあんた此の期に及んで!」
A「いやいやいや実際さぁ(上を一瞬覗く)かわいくね?」
B「(一瞬覗く)まあ、かわいいっすね」
A「なんとかならんもんかなあ」
B「なんすか何とかって」
A「こう、うまいこと...」
B「はっきり言ってくださいよ」
A「いや、まあねぇ、その」
B「なんですかもう」
A「こう...ヤれないもんかな、って」
B「(無言で立ち上がる)さよなら」
A「(袖をつかむ)待ってくれ頼む待ってくれよ!嘘だよ今のは!」
B「(振り払う)さよなら!」
A「(押し倒す)頼むよ!」
B「(顔をはたく)...どうせ体だけでしょ⁉︎」
A「...」
B「...」
A「なんだ今の茶番は⁉︎」
B「(苦笑)」
A「とにかく悪かったよ。口が滑ったんだ」
B「明らかにあんたの正直な欲求だったろうが!(座る)まったくいい加減にしてくださいよ」
A「あ、でもそうか」
B「...何が⁉︎」
A「こうさ、俺はまずオカリナを吹いて、で彼女に渡すわけ」
B「で、それを彼女が吹くと」
A「で、さらに俺がそれをもう1回吹くと」
B「間接キッスなわけだ」
A「最高じゃね?」
B「小学校のリコーダーの授業じゃないんだから...ていうかそもそもね、好きでもない人から向けられる好意なんて迷惑以外の何者でもないと思いますけどね。ましてや間接キッスなんて」
A「そうかい?」
B「そうですよ。そう思うようになってから恋愛が一切出来なくなりましたよ僕」
A「...なんかごめんよ」
B「いいです気にしないでください(体育座りし顔を膝に埋める)」
A「...いや気にするわそれは!」
B「(顔をあげる)冗談ですよ。常にネガティブ思考で恋愛してますよ」
A「それはそれでどうかと思うけども...」
B「とにかくまあ、そういうことです」
A「でも好感を持ってもらうための策ならあるぜ?」
B「じゃあ聞くだけ聞きますよ」
A「(ポケットからオカリナを取り出す)まずね、オカリナに香水を吹き付けるよね。外側と内側両方、結構強めの甘い香りのやつ」
B「...あのオカリナって一応楽器ですよね?そういうことして大丈夫なんですか?」
A「いいんだよちょっとぐらい。それで音悪くなってもそれはもうしょうがねえよ」
B「(教授のオカリナを取り上げ自分の胸ポケットに)しょうがなくねえよ!講師の言う言葉じゃないでしょ今のは!」
A「とするともう一つも策はなくなっちゃうよね」
B「そこからスタートする以外ないの⁉︎...っていうかどうするんですか、授業。もういい加減始めないと...」
A「...逃げよう」
B「はい⁉︎」
A「いいから聞けよ。この教卓をちょっとづつあっちのドアまで動かすんだ」
B「そいつは無理があるでしょ...」
A「んなもんやってみないとわかんないだろ(ズズズ、とでかい音)わっ!(教卓から手を離す)」
B「ダメでしょこれ!」
A「ダメ、、だな」
B「あー床超傷ついてる...」
A「(頭抱えて)くあーどうする⁉︎」
B「...(ニヤっと笑って)そうだ、僕に任せてください」
A「...大丈夫だろうな?」
B「僕は、大丈夫ですよぉ?」
A「なんだ僕はって!俺どうなるんだよ!」
B「まあ悪くはしませんよぉ」
A「なんかする気だろ!」
B「(ニヤッと笑う)しませんよ」
A「するだろ!」
B「(ニヤッと笑う)しますよ」
A「おい!」
B「大丈夫、任せてください。絶対来年までオカリナ科は廃止させませんよ」
A「...(手を握って)頼む。そしてあわよくば、、、な?」
B「分かりました。じゃあちょうどいいタイミングで出てきてくださいよ」
(助手、教壇から出て行く)
B「あ、どうもー。実は僕、教授驚かせようと思ってそこに隠れてたんですよー。でも、もしかして今日は休講...?よかったら僕とお茶でもどうですか?」
A「てめー‼︎」
(教授、物凄い表情で教壇を倒して登場)
B「あれれどーしたんですかあ?」
A「(涙声で)おっ俺も教授驚かせようと思って、ま、待ってたんだよねー」
B「(意地悪な顔で)あーれー?にしては教授っぽい恰好ですよねぇー?もしかして教授本人なんじゃないんですかぁ?」
A「違うよ!兄弟だよ!」
B「へえー、じゃあ教授もお若いんでしょうね〜兄弟なんでしょ?早く呼んでくださいよぉー」
A「違う!似てるけど違う!ま、ま...」
B「又従兄弟?」
A「そうだよ又従兄弟!」
B「へえー又従兄弟で似てるなんて奇遇ですねえ!あー早く教授出てきてくれないかなー!さっさと呼んできてくださいよー面識あるんでしょ?」
A「...俺が殺したんだよ!」
B「何の話だよ!...え?ここ?オカリナ科ですけど...あ、そうですか...あの、向かいの講堂です、あ、彼氏さんと一緒に...そうでしたか...」
(チャイム)
A「(教卓に手をかけへたれこむ)」
B「(ため息、教授の肩をたたき、オカリナを渡す)」
(2人、もののけ姫を吹きながら、暗転)

音楽学校

音楽学校

新設の音楽学校を舞台にしたコント、というか茶番の脚本です。

  • 自由詩
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-10-26

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