サクラサイクル

サクラサイクル

サクラサク
モーターサイクル
くるくる回って落ちる坂道
ダンプに衝突
桜が咲いた

ゆるゆるだった私の自転車のブレーキを
知らぬ間にサクラサイクルが直してくれたようです。

握ると、とても硬かった。

そして私は同時に、
このブレーキに殺されるのだと思いました。

サクラサイクルはきっと
あのゆるゆるのブレーキでは
私が危ないから、と直してくれましたが
私にはあのブレーキで充分だったのです。

だって、こんなに強いブレーキが要る程
私は速く走らないから。

この新しいブレーキは
私が握るにはあまりにも硬すぎる。
何故なら私にはそこまでして
止まろうという意思が無いから。

車に衝突しかけて咄嗟に
この硬いブレーキを
ぎゅっと握り締められる程
私には死にたく無いという意思が無いから。

あのゆるゆるのブレーキは
私の弱い弱い意思の言う事を聞いてくれた。
そっと握ると緩やかに止まって
危険でも死ぬ事は無かった。


下り坂で勢い余る私の前に
一台のダンプカーが現れる。
私は何時もの調子でブレーキを握るが
硬いブレーキはそれでは全く意味を為さない。

これで構わないんだ。
握り締めるぐらいなら
私は花火みたいに散って消えたかったから。


サクラサイクルは
やはり良い自転車屋だ。

季節外れの桜が
道路のど真ん中で咲き誇りました。

サクラサイクル

サクラサイクル

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-10-26

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