狭き門より入れ

2009/9/12・13 『狭き門より入れ』ドラマシティ

9月12・13日 ドラマシティ

作・演出=前川知大

出演

佐々木蔵之介=天野(あまの)

市川亀治郎=葉刈(はかり)

中尾明慶=魚住(うおずみ)

有川マコト=雄二(ゆうじ)

手塚とおる=岸(きし)

浅野和之=時枝(ときえだ)

この作品は佐々木蔵之介さんが主催する劇団ユニット『Team申』の3回目の公演だそうだ。

会場へ入ると舞台にはコンビニの店舗内がかなりリアルに再現されているのが見える。

だがオープニングは何もない幕の前、電車の音が響いている前で、葉刈が天野の自殺を止めたようにも思える場面から始まった。

だが天野は自殺しようとはしていないと言い張る。そして葉刈が持っていた自分のアタッシュケースを取り返すと上手に去って行った。そこへ岸が現れ意味深な事を言い合いながら下手に消える。

そして舞台はコンビニの店舗に変る。レジの前にいるのは天野の弟の雄二、そして万引きをしたらしい魚住を責めている。もう一人店にいたのは時枝。以上がこの作品の登場人物。

そこへ天野が『ただいま?!』と帰ってくる。天野は勤めていた会社が自分の要望を受け入れてくれないと不満を持ち退職して家を処分した金を鞄へ詰め、父親が病気だと聞いて実家であるコンビニへ帰って来たのだ。今世間では罹ると眠りから覚めないと言う奇妙な病が流行っていて人口の6割が感染の疑い有り、とかで不穏な情勢。雄二が天野に店番を頼んで出て行ったあと魚住が時枝にそそのかされて強盗に早代わり、店に有った小刀を振り回してレジのお金と天野の全財産の入ったアッタッシュケースを持って裏口から逃げていった。それを追いかけて天野も裏口から出たのだが・・・。天野はコンビニの表のガラス戸に張り付くようにして帰ってきた。そして外が変だと言う。真っ暗で土が無い・・・。

このお話はSF的で実際には有り得ない展開なのだが観る者はその世界に引き込まれていく。この世があと3年で更新されようとしていて、このコンビニがその入り口というかゲートになっている。レジの鍵を回すとこの世と更新された世界とが交互に出てくる。この時照明が揺らぎ、コンビに全体が揺れているような感じになる。そして最初に出てきた岸と葉刈は2つの世界を行き来している。この葉刈は天野の友人だったが海の事故で死んだが死体は上がっていないと天野言う。

最後までこの2人の正体は不明だった(^^)

 だが更新される世界へ行くには選ばれた者しか行けなくて資格が要るのだという。そして岸がその選定に重要な役割を持っているらしい。この後こぶとり爺さんのお話なんかも出てくるのだけれど、つまりは人がこの世の終わりを迎えた時どんな態度を取るのか?人が生きていく上で大切なものは何なのか?それを問いかけたお芝居なのだと思った。

それに答えているのが天野の弟・雄二、この世の終わりのときは家族と一世に居たい、自分と子供とどちらかしか助からない時は?当然子供でしょ!親なら当たり前でしょう!と明快に答える。有川マコトさん、初めての方なんだけれど、ホンワカと雰囲気で味わいのある演技でした。佐々木さん演じる兄である天野に対しても苛立ちを覚えながらも家族なんだからと優しい思いを寄せるとっても良い人!(笑)

天野は自分の意見が取り入れなければさっさと会社を辞めていく我儘で傲慢な男だったが、いろんな場面に遭遇していくうちに次第に心が変化して最後は自分が柱となってこの世界へ残る事を選択する。佐々木さん、スゴイ熱演!!!魚住を追っかけて狭いコンビニセットの中を走り回り、大声を上げて物を投げまくる。 こんな佐々木さんを始めて見た気がする。

亀次郎さんが演じている葉刈は不思議な存在、天野とは大学時代の友人なのだが、生きているのか死んでいるのか判らない。が、岸に対して天野のことを庇ってくれているような暖かい雰囲気を持った男、葉刈の上司とも取れる岸を演じている手塚とおるさんもはじめて見る方だった。黒いシャツに黒いコートで舞台に出てくると、イスの上のしゃがむ独特のポーズ(^^)でもこの世と更新された世界を結ぶ不気味な存在感を見事にあらわしていたと思う。

浅野和之さんは天野のせいで仕事を失いコンビニに入り浸っているような情けない男、役者さんはそれぞれに素晴らしい人が揃っている。

題名の『狭き門』とは選ばれし者しか入れない狭き門、という意味なのかな?

テーマは重いが、そこそこに笑の要素が入れられているので、それほど沈んだ気持ちにはならないのだが、2日目の公演では少し眠くなった(>へ<)

実は大阪へ行く前に観た人の観劇日記を色々と読んで予習をしていて、殆どの人が絶賛していたので、私も随分期待していったのだが(笑)残念ながら私は今ひとつ乗り切れなかったというか・・・ 、いえ決して面白くなかった訳じゃないんだけどね(^^)

13日昼公演のカーテンコールは意外にあっさり終わってしまった。へぇ?もう終わりかと思いながら帰り支度に取り掛かろうとしたところ突然佐々木さんが舞台に出てきてTシャツを選び始めた。レジには浅野さんがいる。すると亀次郎さんが上手からピンクのTシャツを着て現れ再び熱烈なカーテンコールが始まった(笑)刷けるとき亀次郎さんはピンクのTシャツを着たまま六法をふんで帰っていったよ?(*^o^*)

私はまだ先週観た『ブラックバード』を引きずっているみたいなんだ?(>へ<)

内野さんも好きだけど佐々木蔵之介さんも大好きな俳優さん。

スープに例えれば佐々木さんはコンソメスープ、内野さんは濃厚なポタージュスープかな?

どちらも甲乙付け難い存在(笑)

狭き門より入れ

狭き門より入れ

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-01-09

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