黄昏ランナー

『黄昏ランナー』

オレンジに染まる夕暮れ
ハイヒールで駆け抜ける
左の頬もオレンジに染まる
迷うことなく走り出した

待ち合わせたのはあの店
思い出の詰まったカフェ
彼と仲間と共に過ごした
恋に落ちたのは窓際のテーブル

いま着くから
もう着くから
あと少しでいいから
お願い、時間を頂戴

空はいつの間にかブルー
それでも息を切らせ走り続ける
ブルーの空に星が瞬きはじめても
それでもまだ届かない

待ち合わせたのは想い出の場所
恋とか愛を語ったあのカフェ
自由や幸せを語り明かした場所
仲間たちはみんなすっかり大人に

いま着くから
もう着くから
あと少しでいいから
お願い、どうか脚よ動いて

黄昏のマラソンランナー
衝き動かすものはたったひとつ
ハイヒールのマラソンランナー
躓いてもメロスのように走り続ける

いま着いたよ
やっと着いたよ
あなたが待つカフェに
そしてわたしはそっとドアを開く

黄昏ランナー

黄昏ランナー

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-10-21

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