桃川
プロローグ
どろりとした何か。私はそれに沈みながら、日々を過ごしている。
「倫理的に堕落した大人」に体を売るのが、私の仕事。所謂援助交際、エンコーだ。
うら若いJKに発情する情けない男共。理性とかいう薄っぺらい外膜で欲を包んだつもりで平然と街を行く、猿。反吐が出る。
などと言う私も、彼らと同様に猿だ。偉そうに大人の狡猾さについて語りつつも、そんな大人が作った世界を甘んじて受け入れ、その上人の本性に付け込むような真似をして金を稼いでいる。クズクズ百貫クズ(百貫、の用法が間違っていたとしても私は頭が悪いのでしょうがない)。どうにかして正しい道を歩きたいものの、いまの私には無理だ。
こういう女には、商品価値があるから。この胸が垂れないうち、ミニスカを履けるうちにしか、バリバリ稼ぐことはできないから。少なくとも今だけは自分の身体が商品だから。
だから私は包まれる。男と私自身の、「どろりとした何か」に。あったかくて気持ち悪くて、沈んでいく感覚が心地よくも泣きそうになって。
でもある時、あの人が伸ばしてきた手で、
私は、日の当たる道に戻ってみようと、考えるようになった。
続きます
桃川