「○○の星の下」


 「○○の星の下に生まれ、」なんて言われ方をする。なんだ女々しい言い訳かと一蹴されるやも知れぬが、我知らず、自分の頭上には「女難の星々」が煌々と瞬いているらしい。思い返せば、なるほど確かに、である。懇ろになった女史共の、面皮の剥がれ具合をみよ――同時に何人もの男を揚々懐柔する剛健な輩はじめ、嬢様気取りで蛭のように財布へ食らいつく守銭奴。年齢詐称で整形狂いの女もあったか。世の中いろんな女の色があれども、皆一様、手練手管に懐へ潜るのだけは一級品であったなぁ……。いやはや、「もう女はこりごり」といささか閉口気味に、ほとほと疲れて殻に籠ればまるで押しかけ女房然として来る。来たらば掴んで離さない、想定外の馬鹿力である。これのどこか純朴なのか。純朴な乙女心か。恋慕の情は何処へ、そんなものは虚偽。泣き落としの芸当に昨日もやられた、またしても! 見遣れば鬱々と、化粧気のない翳りばかりではないか!
 あぁ、神様仏様。ゆえに私は随分と草臥れましたので、ここいらで女難のお星様から退散したくお願い申し上げます。どうかどうか、身勝手なご無礼をお許し下さい。この償いは何れまた、別の機会に。悪しからず――。
 ……、なんて口にしてみたいものである(瘋癲紛いに望み薄し)。馬鹿々々しいのでここいらで筆を止めようと思います。以上の戯言は必ずやお空へ届くものと希望します。無論、神様も何かとご多忙とは存じておりますので、こうして寒空の下、一時の流れ星を逃さぬよう、目を凝らしております。せめて自分が「忍耐の星」の下に在ることを、信じて。

「○○の星の下」