心の距離

即席ノンプロットで話考えて完成させるまで約4500文字でも2時間半くらいかかりました

もっとうまく文章つながるようにしたいなあーって思いますね

へたくそでも上達のためにめげずに書いていきたいと思います

現状言い訳だけは一人前です

「んー…今日も疲れたわ。お空が核融合炉で仕事をするようになってから本当色々大変ね。」




別に毎日が苦痛とか、そういうわけではないけれど

その日の仕事を終え

疲れを癒す為にこうしてお風呂に入るとどうしても日ごろの疲れを言葉と一緒に吐き出してしまう



広い浴槽に張られたお湯とそこから立つ湯気疲れた体と心を温かく包みこんでくれる


たまりません



そんな親父くさいと思われそうな感想を思い浮かべ、一人で入るにはいささか広々としすぎている浴槽をぐるーっと眺めていると私は突然あることを思い出した



「そういえば、昔はこいしとよく一緒に入っていたわね。」



二人で入ってもまだ十分すぎるほど広いこの浴槽の中で、妹が何度お風呂で泳ぐなといっても聞かず縦横無尽に泳ぎ回ってたのを覚えている




-ねえ、なんで泳いじゃ駄目なの?

-ここはプールじゃないのよ

-でも水がたまってて、まるで温水プールみたいじゃない。おなじよ!。



年の差はほとんどないのに私と違って本当に無邪気で、純粋で、可愛い妹



あの頃はお互いがお互いの心を読めたもんだから「お姉ちゃんはどうしてお風呂に入るたびに胸のことを気にしているの?」

なんて姉妹だからといってデリカシーの欠片もないことを聞いてきていたのも、今となっては良い思い出。




-----------------------------



入浴を済ませてふんわりとしたシルクのパジャマを羽織り、愛用のスリッパを履いて寝室へと向かいながらも

まだ頭の中はこいしのことを考えていた




「そういえば昔はお風呂から出た後は自分の部屋じゃなくて私の部屋のベッドで一緒に寝たいってダダもこねてたわね…」



その方がこいしも早く寝てくれるし、ダダをこねられるのもめんどうだから私は「ハイハイ」と言うしかなかった

んで、私がそう返事するとこいしは満面の笑顔で「わ~い!お姉ちゃん大好き!」って抱きついてくるの




普段の何気なかったことも記憶の棚からもう一度取り出してみると、まるで感動させるように念入りに構成の練られた物語のように感じる



-それは、今となってはもう叶わないことだからかしら…


いつのことだったか


ある日突然、こいしは心を読む第三の眼を閉じていた


当時理由をきこうとしたものの、こいしから尋常な気配を感じていて、ついに聞くことは叶わなかった



こいしの心を読もうとしても、第三の瞳を閉じたこいしの心はまるで何も考えていないかのように真っ白で、もはや私に読むことは出来なくなっていた



そしてそれ以来、こいしとは、一緒にお風呂に入ったことも、同じベッドで寝たことも無い



それどころかこいしはよく家を留守にするようになり、丸一日以上帰ってこない日も珍しくないし、帰ってきていたとしても眼を閉ざした代償なのか、ほとんど無意識に行動する妹に私が気付かないこともあるみたい



たまに話くらいはする。けれども話している時いつも見ていたはずの笑顔も、心が読めない妹の笑顔は、妹にとり憑いている何かが顔に張り付いているようでなんだか怖くて…。



何故妹は第三の眼を閉じてしまったのだろう

自問自答をするものの、自分の中でおおよそ間違っていないであろう答えが既に用意されていた。





…おそらくこいしは私を避けたかったのだろう

いくらこいしでもお互い心が読める関係が心地いいはずがなかったのだ

たとえ姉妹でも

たとえ普段どんなに無邪気で、純粋な笑顔を振りまくこいしだとしても…




「…うう……。」

そう、私は妹に嫌われたのだ

いまさら?といわれるかもしれないけど、それを改めて頭の中で今理解したら自然と目頭が熱くなっていた




瞳を閉じた理由がそうではなかったとしても、私にはそれを確かめる方法はない



「…やめよう、疲れてるからこんなこと考えちゃうんだ。早く寝よう。」



そう無理やり結論付けて寝逃げをする為に少し早足にしたもののすぐに止まった。

どうやら思考している間に屋敷内の結構な距離を歩いたらしい

気づいたら私は自室の前まで既に来ていた。



扉を開け、書斎のさらに奥にある寝室へとたどり着く


寝室には一人でどころか二人で寝るにも大きすぎる、キングサイズのベッドと不釣り合いな小さいスタンドが一つあるだけ



…って、こんな考え方してたらまたさっきの続きをしてしまうわ




強引に頭の中に浮かんだものを振り払い、ベッドへと倒れこむ

自分が頭で思っていた以上に体は疲れていたのだろう



そんな疲弊した自分をベッドはバフッと柔らかそうな音とともに迎えてくれ…



「ガンッ!!」



なかった



~~~~~!!!

ベッドに倒れこんだはずなのに何故か頭はとても堅いなにかに勢いよくぶつかった

あまりの痛みにさっきとは別の意味で涙がでそうになる



と、その時



「いっったああああい…!モーニングコールにはちょっと強すぎるよお姉ちゃん…。」


柔らかいはずのベッドが不自然に堅いと思ったら、今度は誰もいないはずの布団の中から声が聞こえてきた




「こ、こいし!?ていうかなんでこんなところにいるのよ・・・ここ私のベッドよ。」


相変わらず心が読めないので何故だかは分からないけれど、妹が私のベッドにもぐりこんでいたらしい




「え~?久々にお姉ちゃんと一緒に寝ようと思って!ほら、昔はよく一緒に寝たじゃない?」



…え




「でもずっと待ってたのにお姉ちゃんなっかなか来てくれなくて、さっきまでつい寝ちゃってた…エヘヘ」




ぶつかった頭を押さえながらそう答えたこいしは、昔のころと何も変わらない笑顔を私に向けていた

-あれ、何か違和感が…



「え…でも…え?」



たとえ誰かが寝ていたとしても、誰かがいたとしたなら本来不自然に布団が盛り上がっているはず

そんなことにも気が付けない頭が今の状況をちゃんと理解できるはずがなかった




こいしは私を避けてたんじゃ…なんで?




「何わけわからないって顔してるの?いいから早くこっちきてよお姉ちゃん。」


「わっ。」


こいしはそう言うと同時に布団の中へと私の体を強く引っ張った

考え事をしていてあまり筋肉の緊張のしていなかった体はいとも簡単に引き寄せられる




「えへへ…。」




「…!!」



眼の前にはやはり笑って私をみつめる妹



頭は相変わらず上手く理解できてないけどそこで感じる温もりで、体の方は先に何かを理解していた。




-----------------------------



部屋の電気を消し、寝る前にお話しするには少し心もとない感じがしたのでベッドの脇にあるスタンドに明かりを灯す

そこから発せられるほのかな光が優しく私と、妹を照らしてくれている




「ねえ、こいし。一つきいてもいいかしら?」



二人でベッドで横になってから十分くらい経過しただろうか



半分夢の中に落ちつつある頭を無理やり覚醒させて、隣で同じように眠りかけている妹に尋ねる


-聞くなら今しかない


「んー…?」


「貴女、もう何年前になるかしら?無断でいきなり外に出たかと思ったら、第三の眼を閉じて帰ってきたわよね?あの時は聞けなかったのだけど、どうしてそんなことをしたの?」



妖怪サトリは心を読む妖怪

そんな妖怪としてのアイデンティティそのものともいえる能力を捨てた理由が私のせいでないとしたら、一体何故だろう




いくらこいしでもさすがに言いたく無いような理由なのかしら…



しかし、そんな心配は全く無用であった






「…ああ、そんなの簡単だよ。…お姉ちゃんに嫌われたくなかったから。」




え?



長年予想していた答えと正反対の回答を耳にして、私の頭の本日何度目か分からない混乱に再び陥る



「私に…嫌われたくない?」



聞き返すことしかできない




「うん。お姉ちゃんはまだあの眼があるから分かると思うけど、この力を持っててもいいことなんて一つもないじゃない。この地底ですら友達は出来ないし、地下なら避けられるだけだけども地上に出たら気味悪がられたり、石を投げつけられたり…。」



そう

私たち姉妹は能力が能力だから、この地下世界でさえ誰にもまともに交流の一つさえしたことがなかった。

そりゃそうでしょう、自分が何を考えているか心の隅から隅まで筒抜けになる生き物と一緒に過ごしたいなんて思うはずがない


だからこそ、唯一お互いの心が読めて、唯一理解しあえていた姉妹という存在が私の心の拠り所で、それを失ったのが本当に辛かったの





私が考えていることを知ってか知らずか、こいしが続ける



「でも、私は別に他の誰に嫌われても何とも思わなかった。一見仲良くしている彼らも、心の奥ではお互いに気に入らないと思っているのがわかってたし、そんな薄っぺらい関係に混ぜてもらおうなんて思わなかったもの。だけど…。」




そういってこいしは私の方に顔を向ける

変わらず笑ってはいるけど、その透き通った瞳は真剣そのもの



「だけど…ある日思ったの。この能力があったら…いつか大好きなお姉ちゃんにも…嫌われちゃう日が来るんじゃないかなって。だから私は地上に出て、ある妖怪に頼んでこの眼を閉じてもらったの。」



そんな…


既に閉じてしまった、形だけの第三の眼を撫でながら、こいしは続ける




「でもね、これでお姉ちゃんに嫌われずに済むって思ってたのに、その日からお姉ちゃんは急に私に対してよそよそしくなった。一緒にお風呂に入って、泳いじゃ駄目って叱ってくれることも、仕方ないわねなんて言いながら一緒に寝てくれることもなくなったわ。」




それじゃ、今までの…




「私が一番怖がっていたことが起こってしまったって、認めたくなくて…お姉ちゃんに直接嫌いだって言われたくなくて…出来るだけ地霊殿にいなくて済むように、ずっとあちこちを勝手に放浪してた。」




こいしの口調や表情は至って普通で、そこからは何も読みとることが出来ない

けれど妹の口から出る言葉を聞けば聞くほど、胸がどんどん苦しくなっていくのが分かる。




「でも、今日魔理沙に会ってお前はなんでいっつもそんなあっちこっちブラブラしてるんだ?って言われたから、このことを言ったらこう言われたの…。」



-お前はそうやっていつまで逃げ続ける気なんだ?

それじゃ何も解決にならないぞ、ってね




そう語ったこいしの表情は、やっぱり笑顔

でもそれは、あの日から見ていたものとは何かが違う…本当にうれしそうな笑顔




-いや、違う

こいしは私にずっと同じ笑顔を向けていてくれていた

ただ、私にはそれが違って見えていただけ





「だから思い切ってこうしてまた一緒に寝よって誘ってみたの!面と向かって嫌いって言われたらどうしようかと思ったけど…。でも、こうしてまた昔みたいに一緒に寝れて嬉しいわ。」





昔と変わらない無邪気な言葉と、懐かしく屈託のない彼女の笑顔をみて混乱中の私もようやく悟った

全く、言葉要らずの妖怪サトリが聞いてあきれる



他人の心が読めない

普通の妖怪や人間なら当たり前のことなのに…私は何をやっているんだろう

心が読めなくても、それ以上の何かでつながっているのが家族だというのに

ずっと傍にいてくれた妹の気持ちすら、言われないと分からないなんて




-妹を避けていたのは…私の方だったのね




私は気づいたら何も言わずに、こいしを強く抱きしめていた

腕の中の彼女の体は、昔と変わらず温かかった



-完-

心の距離

心の距離

東方プロジェクト2次創作 今回はさとりとこいしです

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-04-12

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work