Fate/key's memory 前編
始めまして。露出男です。まずこのお話について説明をさせていただきます。書く経緯というのは今放送中のアニメFate/Zeroが面白いというのもありますが、
某動画投稿サイトで動画にしてFateのお話を作っているのを見て自分もやってみたいなぁと思ったというのが第一の理由です。ぶっちゃけると昨年から取りかかってはいたんですが
すぐ放置して先月末から本格的に取りかかりました。このお話は前編・中編・後編と3部構成になっております。まぁよろしくお願いします。ではここから注意点です。
・あくまでこれは私の妄想です。参戦作品についてはオリジナルも含んだりしています。その中で本編の設定を勝手に変えちゃったりしてます。
「あれ?こここんな設定だっけかなぁ」と思うこともあるとは思いますがご了承ください。その作品のファンの方は大変不快な思いをされることもあるとは思いますが
分かっていただけると助かります
―――とある洋館にてその儀式は行われた。一人の女が陣の中に立ちその呪文らしきものを唱えた。そこから出てきたのは黄金の蝶。そしてそれは一つの個体へと変わって行った。
「せんせー!僕の振りはどうなのー!?」
子供が素振りの途中で先生に問う。先生、雪村千春は20歳にしてこの剣道の道場、「試衛館」の師範である。「試衛館」は「誠」を重んじる道場である。その道場は至って普通の道場だが、奥に祭られているものがある。羽織。雪村家の家宝だ雪村家の家宝の羽織は幕末の時代に活躍した新撰組の羽織だ。もともとこの「試衛館」は新撰組の発起人、近藤勇は土方歳三などが所属していた道場であり、この羽織は土方歳三のものと言い伝えられて現代に至るのだ。両親は彼女が幼い時に死んだ。それからはこの道場の前師範であった祖母、雪村千里に預けられ剣道を教えられた。しかしそれはとても厳しい指導であった。礼儀・作法をきっちりと叩きこまれ、彼女は立派な師範代となった。彼女が18歳の時雪村千里は病気で死んだ。それから2年。彼女はこの道場を一人で守ってきた。だからここに住むのも彼女一人だけである。
「ハルカちゃん。もうちょっと力を抜いてね。」
この通り、彼女は誰に対しても敬語になってしまう。これはどうしようもない癖になってしまっていた。
「はい。今日の稽古はここまでです。みなさん黙想を始めてください。」
「はい、やめです。では皆さん。今日はお疲れ様でした。また次の稽古でお会いしましょうね。」
彼女はこの街の周りでも評判がいい。しかし、彼女には誰も知らない秘密があった。
雪村家は代々、鬼の一族として現代まで発展している。雪村千春もその鬼の一人だ。もう血としてはもう薄くなっているものの、鬼ということには変わりはない。そしてそれは誰も知らないのである。夜、いつもの時間に寝ようとしたが、なかなか寝付けない。
「どうしたのかな・・・」
最近寝付けないことが多い。目にクマが出来ているということから門下生の保護者から心配されることもあった。
「・・・・・・・・(あ、やっと眠れそう・・・)」
外の風が強い。彼女はそれで目を覚ましてしまった。障子を開け、庭を見ると桜の花が咲いて、そして散っていた。
「なん・・・で・・・?」
今は桜の咲く季節ではない。今は秋だ。
月の明かりが部屋を照らす。千春は腕と痛みを感じた。見ると手の甲に何かの模様ができていた。アザにも見える。だがそれよりも異常だと感じたのは人の気配を感じたということだ。殺気にも似た気配。それは自分と少し同じような感じのするものであった。後ろを振り返る。そこには、あの新撰組と同じような羽織を着たポニーテールの髪型の男が座っていた。
「・・・・・・!?」
少年は目を覚ました。目を覚ますと、そこには白い髪で見たことのない制服を着た少女がいた。まっすぐ、自分を見ている。
「俺は・・・何をしてるんだ・・・?そして・・君は・・・誰?」
彼女は一瞬驚いたような表情をしたがすぐに真顔に戻り、
「私は立華奏。あなたの・・・サーヴァント。」
「サーヴァント?なんだ・・・それ・・・?」
少年は恐る恐る聞いてみた。何も知らない。わかるのは自分の名前が音無結弦だということだけである。何かを思い出そうとするが頭が痛くてわからない。
「あなたは自分の名前は知っているのね?」
「あ、あぁ。それよりサーヴァントってのは何なんだ?」
「これから私を含めた7人で聖杯戦争っていうのをやるわ。簡単に言えばあなたは私のパートナー。」
「せ、戦争って何を争うんだよ!」
「最終勝者には願いが叶うと言われている聖杯が与えられる。」
「な、なぁ。その戦争の勝利条件ってのはなんなんだよ。」
「・・・他のマスターを殺すか、他のサーヴァントを倒すか。」
立華奏は物騒なことを淡々とした口調で言った。戦争?殺し合い?願いが叶う聖杯?どれも自分には関わりのないというか接点すらない。何に巻き込まれたというのだろうか。
「来る・・・」
「えっ?」
「ガードソニック」
彼女は呪文みたいなのを口にすると2人の周りを青い膜が囲った。すると、
ダダダダダダダダダダダダ!
無数の弾丸が俺たちを襲いかかってきた。しかしそれはその膜によって弾かれた。
「あ・・・あ・・・・」
音無結弦は完全に腰を抜かしていた。今の弾丸は明らかに自分の心臓を目掛けてきていた。当たれば確実に死という結果になっていただろう。
「これでわかったでしょ?これが・・・聖杯戦争。本当はまだ開始してないはずだけど・・・どうやら脅しってところね。・・・場所を移さないとね。ここらへんに使われていない学校があるからそこに行くわ。」
「あ、あぁ・・・」
2人は歩き始めた。
「・・・ごめんね・・・結弦。」
「なんか言った?」
「・・・なんでもない。」
―――同時刻。とある山頂
「あ・・・・・」
自分の放った弾丸が弾かれたのを見て少女は驚きの表情を出した。
「どうかしたの?」
黒い服の女が話しかける。
「今の弾丸。弾かれました。しかも全部同時に・・・」
「あなた・・・本当に使えないわね・・・それでも英霊なの・・・?」
そういって黒服の女は少女の頬を叩いた。
「まぁ今回は脅しってことだからアレだけど・・・次外したら・・・わかってるわよね・・・?」
「はい・・・ごめんなさい・・・」
「(こんな小さな子がサーヴァントなんて私もツキがないものね・・・)」
その2人は山を下った。
――6時間前、とあるマンション。
「とーまとーま!なんか変な小銭を見つけたんだよ!」
シスターのような修道服を着た少女が学生服の少年に向かって言った。少年、上条当麻はその小銭を見て不思議に思った。
「なんだこの小銭、6つくっついていやがる。ん?これどっかで見たな・・・昔の小銭か・・・?まぁいいや、インデックス。汚いから元の場所に戻してこい。」
「えー!なんでなんで!?これは元には戻さないよ!お金だもんね!」
インデックスと呼ばれた少女は頑なに断った。面倒くさい。
「あのな、それは小銭でも今は使えないぞ。それでも保管するのか?」
「記念に保管するもんね!」
次の日、上条当麻は学校から帰宅し、自分のマンションの入り口で異変に気付いた。ガラスの破片が異常なくらい落ちていたからだ。しかも、自分の部屋の真下にある。そこで気付いた。確実に自分の部屋のガラスであると。玄関を開ける。更に異変に気づく。男の声がした。インデックスと男の声が聞こえた。そろりと覗いてみると赤い甲冑に身を包んだ男が座ってインデックスと話していた。
「だっっっっ誰だお前!おい!インデックス!どういうことだこれは!」
驚愕にも程がある。ガラスが外に拡散→部屋の中から男の声→友達かと思ったらまさかの武士?←今ココ。
「とーま。」
インデックスが話しかける。上条当麻は説教しようと思ったが、インデックスの顔がやたらと神妙なのだ。変な雰囲気を感じる。そしてどこからか来る視線。
「今から真面目な話をするから真剣に聞いて。私は聖杯戦争に参加することになったみたい。」
「・・・・はぁ?」
セイハイ・・戦争?聞いたことすらない。何かのゲームか?最近流行ってるサバゲーって奴か?
「おふざけなんかじゃないよ。これは魔術師同士の戦争。昔からやってる戦争なの。この人は私のサーヴァント。簡単に言うなら使い魔って感じかな。そのサーヴァントを使って戦うの。で、私はそのサーヴァントのマスター。彼の場合はランサーのクラスかな。まったく想定してなかったから困ったけど、私の知識の中に聖杯戦争についての知識はあった。私を含めてマスターは7人。最後の一人になるとその人物に聖杯が渡されなんでも願いが叶うっていうこと。簡単に言えばこうなるかな?それでいいんだよね。ランサー。」
「はい。」
「ランサー、あなたの正体この人に言っていい?この人は上条当麻って言って私の保護者みたいな感じかな。」
「大丈夫なのですか?マスター」
「うん。大丈夫だよ♪裏切るなんてことはないよ。」
「承知しました。上条殿。、よろしくお願いします」
「うん。じゃぁとーま。このランサーの正体はね・・・」
その瞬間、ランサーはインデックスの口を手で塞いだ。
「静かに・・・誰か見ています。」
上条当麻は感じる視線の先を見た。向かいのマンションの屋上に誰かがいる。だが人には見えるようで見えない。もっと簡単に言うなら銅像のようだ。その物体はこちらが気づいたことに気づくとその場から去った。
「視線が消えました。マスター、お願いします。」
「うん。じゃぁとーま。戦国時代については詳しい?」
「まぁ、ある程度は・・・」
「じゃぁ大丈夫かな。この人は真田幸村。戦国時代の武将だよ。」
「oh・・・」
こんな言葉しか出なかった。だってそうだろう?いつも通りに家に帰ってきたらなんか変な武士がいて、聖杯戦争に参加します。この人は戦国時代の武将の真田幸村ですって、誰がそれだけで納得するっていうのだ。
「なぁインデックス・・・その聖杯戦争っていうのが行われるのは知っていたのか?」
「うぅん。聖杯戦争っていうのが行われているのは知っていたけどまさか今私が生きている時代にやるとは思ってなかった。そして更に、私がマスターになることなんてもっと予想できなかったよ。知識があってよかったよ。これまでの聖杯戦争の勝敗とかも全部頭に一応あるからね。」
「これまでの勝敗?」
「うん。聖杯戦争はこれまでに何度か行われていて、魔術師同士がお互いのサーヴァントを用いて戦うの。どちらかのサーヴァントが消えたらまず負けかな。それが一番わかりやすい。そしてもう一つ。マスターが死んでも負け。基本的にサーヴァントはマスターの魔力でこの世界にいるの。マスターが死んだら魔力が供給されなくなってサーヴァントはここにいることはできなくなってしまう。」
「??????????」
理解できない。だがこの言葉だけは聴き逃すことはなかった
マスターが死んでも負け
「じゃぁインデックスもこれから更に狙われる身になるのか。」
「・・・大丈夫だよ。ランサーがきっと守ってくれる。もし私が一人で襲われても令呪を使ってランサーを呼び寄せれば大丈夫。ちなみにこの令呪は3回まで使用可能で、使ってしまったらサーヴァントを制御することはできなくなるの。万が一があってもランサーなら大丈夫だって信じてるよ。」
「私はマスターと上条殿をお守り致します。そして聖杯を受け取り、願いをかなえてみせます。」
「ねっ♪この通り。」
「ちょっと待て。今こいつは俺も守るって言ったよな。ということは俺もその戦争に参加するってことか?」
「ごめんね。本当にこうなるとは思ってなかったんだよ。でも私と一緒にいる以上はとーまも監視される。さっきのとーまとランサーが感じた視線がそうだよ。あ、ランサーの正体については誰にも言っちゃダメだよ。これを話してしまったら大変なことになるんだよ。あととーま、その右手。絶対役に立つ時が来ると思うんだ。カギはもしかしたら、とーまかもしれない。よーし!頑張るぞー!」
インデックスは一人意気揚々と拳を突き上げた。ランサーも一緒に。上条当麻は強制的に。
「不幸だ・・・」
拳を上げながら上条当麻は呟いた。
――2日前、とある病院
ベットに横たわっている少年がいた。ここは病院である。病院の7階だ。自動車の運転免許を取得した翌日、胸の痛みにより病院を受診し、そのまま循環器系の病により入院。この病院では7階はホスピスということになっている。少年、阿東優の命はそう長くは持たない。少年は最近、少女の最後を看取った。少年と少女の2人で淡路島まで赴いて少女の最後を看取った。なぜ淡路島かというと優の勝手である。少女は昔見た水仙の花が忘れられないと言った。じゃぁ淡路島に行こう、そんな感じだ。それは長く険しい旅だった。盗みにも走った。(失敗に終わったが)。だが目的地には到達して、彼女、セツミは海へと歩いて逝った。自分の命もそう長くはない。最近更に自覚するようになった。心臓とは関係ないのだが耳鳴りが激しい。何かの予兆か?と少年は考えた。だが、今更考えたってどうということはない。その夜、急激に目が覚めた。嫌な夢だった。鏡の中に吸い込まれ、怪物みたいなものに襲われる夢。なんでこんなに苦しい思いの中で悪夢を見るんだと逆に可笑しく思えた。だが異変はそれだけではなかった。何かが光っている。
「カードケース?」
同時に耳鳴り。何かが近くに来ている。
「鏡に手を伸ばせ」
誰かが優の中に話しかけてくる。優は近くの鏡に手を伸ばした。
「!?」
伸ばした腕が鏡の中に入っていた。そしてそのまま、優の体は鏡の中へと消えていった。
「・・・・・・・?」
起きた優は状況が把握できなかった。わかるのはここはさっきまで自分がいた病院だということ。何も変わっているわけではない。だが優はあることに気づいた。
「人の気配がない・・・」
全く人の気配が無かった。更に異変は続く。さっきまできていた耳鳴りが更に高まった。それと同時に、悪寒
「なんなんだよ・・・これ・・・どこなんだよここは」
その時外で爆発が起こった。近い。そして優はこの世のものとは思えないものを見た。赤い龍。マンガやアニメの世界でしか見たことが無いようなアレだ。
「嘘・・・だろ・・・」
いずれ自分は死ぬということは分かっている。だがこんな誰もいない世界で、しかも龍に食われて死ぬとか酷すぎる。優は絶望感に襲われた。更に爆発は続く。とにかく逃げようとした優はベッドの上にあるものを見つけた。
「カードデッキ?」
小学生のころよく遊んだTCGを入れるアレだ。なんでこんなところに?と疑問を抱いたがそんなことはどうでもよかった。ポケットにケースを入れて外にでた。だがもう外は火の海で逃げる場所なんて無かった。
「(終わりか)」
龍が眼前に来た。ずっと自分を見ている。何だよ。早く殺せ。そのために俺をここに連れて来たんじゃないか?優はこいつは腹が減って俺を食べようとしてここに呼んだんだとなんとなく感じていた。
「小僧・・・死ぬのが怖くないのか」
龍が喋った。いきなりの出来ごとに戸惑うが優は臆することはなかった。死ぬことはわかっている。
「怖くないと言ったら嘘にはなる。だが生憎俺は心臓の病気でね、死ぬのが確約されているんだ。覚悟なんて出来てる。まぁこんな死に方は予想できなかったけどな。」
「そうか。・・・その病気を治したいとは思わないか?」
何を言い出すんだこいつは。
「何を言い出すかと思えばそんな夢みたいなことかよ。言ったろ?もう死ぬ覚悟はできるって。その覚悟は消したくないね。何より・・・」
続きを言おうとして止まった。頭の中に死ぬことが確約されていて自殺した見た目は年下だが実は年上だった女性が浮かんだ。
「セツミのことか?」
「!?!?!?!?!?!?!?!?」
なぜ知っている。言おうとしたらその龍が続けた。
「我はずっと鏡の世界からお前たちを見ていた。実に面白い旅であった。だから我はお前を見込んだわけだ。どうだ。我と一緒に聖杯戦争に参戦する気はないか?」
「聖杯・・・戦争・・・?」
優は聖杯戦争について一通り聞いた。経緯・ルール。この龍はライダーのクラスで参戦しているということ。そして優は最後の確認をした。
「負けたら・・・どうなる。」
「我の戦い方からしてほとんどの確率で死ぬ。我がお前を助けようとしない限りはな。まぁ負けるつもりは元よりない。お前が叶えたいものは戦いながら考えればいい。聖杯は願いをなんでも叶えてくれる最高の代物だ。」
「いいだろう。来い、契約だ。」
「随分とあっさりだが、その言葉を待っていた。後悔するなよ?」
「ふん、いずれ死ぬ人間に言ってどうにかなることかよ。」
ライダーはそのまま龍のカードデッキへと吸い込まれていった。あとは優自身がどのように戦うか、ということ。だがそれはライダーの力によってある程度補正されるらしい。特徴については優の体に叩き込まれた、ということだ。目を覚ました優は元の病院のベットで再び目を覚ました。
聖杯戦争、開幕
翌日、雪村千春はいつものように生徒に稽古をつけていた。あの日の出来事は夢だと思っていたが夢ではなかった。現に今、セイバーと名乗る男も一緒に生徒たちに稽古をつけている。どうやら剣術の達人らしい。実際に彼女も一本取られてしまった。しかも最近よく言われるイケメンそのもので、生徒から聞いたのであろう保護者達がよく見に来るようになった。いいのか悪いのかはわからないが生徒たちにとっていい経験にはなるのだろう。
セイバーが召還された時、千春は意識を失った。なんらかのショックのせいである。目を覚ますとその時の格好のままで男は座っていた。一瞬死も覚悟したのだが、そんなことはなかった。だが、聖杯戦争と言う戦争に巻き込まれてしまった。男はセイバーとしか名乗らなかったが千春はその時の格好である程度正体を把握した。
「多分・・・あの集団の人の誰かだ・・・」
あとはその誰か、ということ。しかもセイバーは千春の正体にまで気づいていた。千春が鬼の一族だと言うこと。だから召還された理由も把握できたらしい。しかもセイバーにとって千春は大切だった人にそっくりらしい。セイバーは何らかの因果なのだと納得していた。
稽古後、セイバーに話しかけられた。
「今晩、ちょっと動くぞ。」
ただそれだけ。同時に燕と呼んだだろうか。明らかに忍者の格好をした人間なのだが使い魔らしい。そのまま偵察に向かわせた。
上条当麻は放課後、商店街で夕ご飯の買い物をしていた。インデックスだけでもすごい消費量なのに更に人が増えた。というか何を食べるのだろうか。
「まったく・・・何が聖杯戦争だっての・・・」
不幸どころではない。命を賭けるとか、今まで命を賭けることは度々あったがインデックスによれば今回は今までの比ではないらしい。しかもなんか戦国武将まで来ちゃってるし。そんな感じでぐだぐだ思いながら歩いてると、人だかりの多い場所に着いた。いつもの帰り道なのだが、人がたかっている。何かを見物しているようだ。テレビ局のカメラマンとも思える集団もちらほら。そういえば朝テレビを付けた時に近所が映ってるのが見えた。これだったらしい。隙間から覗いてみると、銅像のようなものがあった。
「!!!!!!!!!」
上条当麻には見覚えがあった。昨日のあの時、屋上でこっちを見ていた物。ランサーが警戒?した物。はっきりとは覚えていないが、似ていた。そして告げる直感。
「(―今すぐ逃げろ)」
幾度の戦いを超えているからだろうか。直感がそう告げた、その瞬間には上条当麻は走り出していた。食事中、インデックスの食べる量が増えていた。女の子に言うことではないのだが、上条は聞いた
「なぁ・・・お前食べる量増えてないか?」
「うん。ランサーに魔力の供給をするために食べなくちゃね。太る心配はないよ。」
「まぁそれはいいんだが・・・」
問題なのは食材の消費量です。対してランサーの食べる量は至って普通。これでも多いほうらしい。食べなくても魔力の供給でなんとかなるのだが食べれるので食べるらしい。消費が・・・・・
テレビを付けた。何やら特番が組まれていた。右上にタイトルが付いている
兵馬俑いきなり現れ、そして消えた!?
番組名からして突っ込みたくなったが、テレビに映っているのは昼間人がたかっていた近所だった。あの銅像っぽいものが消えていたらしい。上条当麻は思い出したくなかった。嫌な雰囲気があったからだ。実際にそれはランサーの表情からしても読み取れる。
「上条殿、あれを見たんですね。」
「あ、あぁ・・・見たけどヤバいような気がしてすぐ逃げた。」
「賢明な判断です。恐らくあれはサーヴァントの使い魔でしょう。昼間から動いていることは謎ですがルール違反ではない。戦闘のみ民間の秘密裏に行うように指示されています。ちょっと私も様子を見に行く必要があります。マスター、よろしいですか。」
「うん。大丈夫だよ。実際に聖杯戦争って言うのを実感する必要があるからね。とーまも来るんだよ?」
「はぁ?なんで俺が!」
「狙われても困るからね。もしかしたらその右手が役に立つかもしれないし。」
「マスター、上条殿の右手には何かあるのですか?」
「うん。とーまの右手はね。触れるだけで魔術を消すことが出来るの。理由はわからないんだけどね。」
「そうでしたか。もしかしたらキャスターと戦闘になった際に役立つかも知れません。上条殿、よろしくお願い致す。」
「俺も戦うのか!?そりゃないよ・・・」
「大丈夫、とーまは魔術消し担当。後は全部サーヴァントのランサーが戦ってくれるよ。」
「上条殿、安心してください。私がお二方をお守り致します。では、参りましょう。」
そう言ってランサー達が向かった先は公園である。この公園は市の中で一番大きくて昔にあった戦争の跡地らしい。そこにランサー達はいた。向かいには青と白の着物にポニーテールの男。そして女性。上条当麻は異様な気を感じた。―殺気。それは双方から感じられた。相手も見るからに武士である。腰に携えてる刀で判断出来た。
「その槍を見るに、ランサーとお見受けする。」
「如何にも!拙者はランサーのサーヴァントとしてマスターに召還され申した!お主も見るからに武士、セイバーのクラスとお見受け致す!この聖杯戦争で武士と会い見えることとなろうとは光栄にござる!武士と武士との戦いだ!真名を明かして闘うわけにはいかぬであろうか!」
「すまねぇがそいつは無理な相談だ。俺にも武士の誇りってものがあるが、真名で弱点がバレたら元も子もない。」
「承知した。だが、此度の戦、嬉しい限り他は無い。」
そう言ってランサーは槍を構えた。ランサーの槍はどこからどう見ても普通の槍にしか見えない。
「いいだろう。武士同士いい勝負をしよう。マスター、行ってくる。」
セイバーは隣にるマスターに告げ、構えた。セイバーのマスターはおとなしい感じの女性だと上条当麻は感じた。だが、二人は構えたまま動かない。様子見なのかそれとも気のぶつかり合いなのか。剣術初心者の上条当麻にはかるはずもない。この状況を理解しているのは雪村千春ただ一人であった。
間合い。
槍の長さと剣の長さ。同じ武器同士であれば間合いなど特には無いが違う武器となれば話が違う。たが英霊クラスの2人は考えていることが違った。武器の有効範囲。ここに注目していたのである。それを知った上で2人は戦闘を開始した
「はああああああああああああああああああああああ!」
剣と槍がぶつかる。その衝撃はすさまじく周囲に地響きが伝わった。その衝撃に耐えた者は戦闘を行っている2人以外では1人しかいなかった。だがその1人はそこにはいない。雪村千春・上条当麻・インデックスの3人は尻もちをついた。
「・・・・・」
セイバーとランサーは戦闘を止めた。何かに気がついたみたいだ。
「燕。」
「承知。」
使い魔?である燕が現れすぐ消えた。
「悪いなランサー。気づいているとは思うがこの戦い、誰かに筒抜けだ。今俺の使い魔を派遣したが・・・またお預けということだ。」
「仕方ありませんね・・・!?」
気付いたのは3人。雪村千春とセイバーとランサー。
「囲まれている・・・だと?」
それも結構な数だ。上条当麻は囲まれていることには気づかなかったものの、何に囲まれているかはわかった。直感が同じだ。セイバー陣営とランサー陣営は兵馬俑に囲まれていた。それも、大群の。
数分前。少年は異様な光景を目にした。槍を持った男と剣を持った男が戦っている。しかもすごい殺気。ただ者ではない。直感が悟る。
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」
いや、マジで。冗談抜きでヤバいって。そう思った瞬間には足が動いていた。追われている。全速力でも追われている。どうやら気付かれていたらしい。足の速さには自信があったがそれでも話すことができない。何かが背中に張り付いているようだ。それは追っているほうも同じ。燕は全速力であったが近づくことができなかった。つまり全速力の速度が同じ。これが何を意味するかというと、異常。燕の足の速さは普通じゃない速度である。簡単にいうなら100mの世界記録より早いという感じだ。修行で鍛えた成果がここで出ているはず。だが、その成果を持ってしても追いつくことが出来ない。たかが少年相手なのに。当事者の少年。流石に疲れてきたが追っている方も相当な相手だと悟った。
「(殺気は消えたものの嫌な感じがまだついてる・・・仕方ない)」
念じる。足が速くなるように念じる。1段階、上書きする。
「!?」
燕は追うのをやめた。対象が消えたのである。
「・・・・・・嘘だろ」
普通に考えてありえない。対象は間違いなく普通の人間。これは報告せざるを得ないと燕は消えた。
「で、どうするよ。この状況。」
囲まれた状態でセイバーが言う。だがその表情には焦りは無い。千春はそう感じた。むしろ、「(こんなものかよ。来るならもっと来いよ)」というような感じの表情をしていた。余裕さえも見える。対するランサーも真剣な眼差しで
「この状況を切り抜けるにはあれを倒していくしかないでしょう」
「賛成だな。どうだ、休戦ってことで同盟を組むか。この時だけの同盟だ。そういうことだいいな、マスター」
セイバーが千春に聞いた。
「え?え、ええ。お願います。」
何がなんだかわかんない表情だがそう答えるしかなかった。
「でもずるいよなぁ。こっちは2人でそっちは130人くらいか。一人65人。辛いねぇ実につらい。じゃぁこれならどうだ?」
セイバーは言うと、とてつもない音がした。一気にガチャンと崩れる音。兵馬俑の集団が崩れていたのである。130体くらい?あった兵馬俑の集団は数えることができる数まで減っていた。20体。残っていた兵馬俑の数である。
「じゃぁ後は俺らだな。いくぞ、ランサー」
「一体・・・何をしたのですか。」
「気にするな」
いいながら2人は一瞬で残りの兵馬俑を片付けた。空気が元に戻った。上条当麻は携帯の時計を見た。もう3時になっていた。
「ェ・・・」
不幸すぎでしょ。と自ら突っ込む上条当麻なのであった。
「ほぉ~なかなかやるじゃん。」
鏡の中からそれは見ていた。ライダーである。すぐさま病室のマスターの元へと帰って報告した。
「小僧、さっきどっかのサーヴァントの使い魔とセイバーとランサーが戦闘をしていた。数は使い魔のほうが130人くらいか?だが戦いが始まったと思ったらそいつら一瞬にして20人まで蒸発して、そっからもう一瞬だった。勝ちはセイバーとランサーだな。」
「どうやって見たんだよ。」
優は突っ込んだ。
「言っていなかったか?我は鏡の中に入ってここの世界も見ることができる。まぁ、最近はその鏡のほうもおかしいくてな。我と似たような雰囲気の奴らがうじゃうじゃいる気がするのだが・・・まぁよい。それで気になったことがあってだな・・・」
「?」
「普通サーヴァントってのは各クラス1人ってのが当たり前なのだが・・・セイバーと同じ雰囲気の奴らが11人くらいいたような気がしてな。それとその戦いを見ていたお前と同じくらいの小僧がいてセイバーかランサーの出した使い魔から逃げ切ったのを見た。」
「11人?そんなのあるのかよ。」
「わからん。だがそれがセイバーかランサーの宝具や能力だとしたら、ある程度書体は掴めてくるな。だが正体がわかったところでセイバーかランサーを12人も相手するのは無理に等しい。一人一人が相手ならまだいいのだがな。」
「ふーん・・・で、俺たちはどうするのさ。」
「貴様の体調次第ってところだな。体調が悪い状態で闘って死んでも困る。簡単なのは割り込みというところか。ただ、セイバーとランサーの戦いに割り込んだら、確実に負ける。あいつらは1対1で闘うことしか望まない。」
「なるほど。で、お前今何時かわかってるのか?人を起こしやがって・・・」
「すまんな。早めに報告しておいた方がいいと思ってだな。」
「まぁいいや。寝る」
「(・・・・このマスターと契約してしまったのが幸か不幸かは我自身が決めるしかないのか・・・先が見えんな・・・)」
次の日。千春は道場でセイバーに呼ばれた。指示されたのは座布団の用意のみ。言われた通りに座布団を敷いた。で、座る。
沈黙。
「あの、これから何をするんですか・・・・」
「準備できたか。よし、じゃぁ目を瞑って何も考えるな。考えると遮断してしまう。」
「?」
よくわからないが言われたとおりにした。1分ほど目を瞑っただろうか。景色が変わった。いつもの道場だった。
「今俺とマスターは意識をつなげている。昨日の今日だ、まともに話すとちょっと厳しいことになるだろうからこうやって意識をつなげている。でだ。単刀直入に聴く。兵馬俑とはなんだ。」
「兵馬俑・・・ですか。あんまり詳しくは知りませんが秦の始皇帝のお墓を守る方達と聞いています。それだけならまだいいのですがそれはいかにも本物の人間のようで何体もお墓の周りにいるんです。今でも全貌は謎のままとされていますね。すいません。説明はちょっと苦手なもので・・・」
「いや、それくらいわかればいい。で、そいつらが昨日襲ってきたわけだな。ま、偵察か挨拶ってところか。」
「一体誰が・・・」
「決まってんだろ。」
セイバーはわかったように言いながら信じられないことを言った。
「秦の始皇帝だよ」
「え・・・?」
「他に誰がいるってんだ。まぁあれほど目立つものはないからな。ほとんどのサーヴァントも気づいているんじゃないか?ランサーはマスターがバカみたいな感じだから気づいてはいないようだが・・・まぁいずれ気づくだろう。問題はどの階級か、ということだ。一番可能性があるのはバーサーカーだが、その理由がいまだにわからん。そこは注意しなければならないだろう。そういうことだ。わかったか。」
「は、はい。」
「ん?あ、わかればいい。」
今の、私ではない他の人にも伝えてた?
そんなことを考えた瞬間に意識は元の意識に戻った。
「余計なことを考えたか?案外鋭いのな。ま、いずれわかるだろう。他にも話したいことがあったか。この方法は疲れる。休むとしよう。」
「え、今日の稽古は・・・?」
「あぁ、その件なら知り合いに頼んである。そろそろ来るはずだが・・・」
「ごめんくださーい。」
「はーい!どちら様ですかー!」
「こちらの師範代から代理を任された藤田というものです。以後、お見知りおきを。」
違和感。何か違和感を感じたが、セイバーの知り合いなら大丈夫だろう。そう思ったが・・・いつの間に知り合いなんていたのだろうか。藤田さんの稽古は凄まじかった。剣術もそうなのだが・・・突き。これの威力が半端ではないことになっていた。生徒達もみんな口を開けてみていた。それは千春自身が身を持って体験した。息が出来ない。これに尽きた。ただ、生徒の中でも一番優秀な女の子は藤田さんの言う通りにできていた。女の子の名前は「アサヒ ハルカ」。親のいない子供である。施設で今は暮らしているらしいが強くなりたいと志願し道場の門を叩いた。1ヶ月後には転校も予定されている。どうやらスカウトの目に止まりもっと上のレベルでの練習が出来るようになるらしいのだ。彼女自身は嫌だと言ったがスカウトの方の推しが強く行く事が決定した。他にも様々な種目の子も集められているらしい。頑張ってほしいものだと千春は願うのであった。稽古が終わり藤田さんも帰った。これからどうするのだろうか。と思っていたらセイバーが今日は何もしない。休むと言ってきたので従うことにした。何も力になれていない。少し憂鬱であった。
「・・・・・・・・・」
目が覚めた。というよりも夢を見た。街が燃えている。響く銃声・罵声。大砲の音。これは・・・戦争? そう思った時目の前が爆発した。あ、死んだ。と思ったがなんとも無い。無傷である。
「(何かを見せられてる・・・?)」
煙が薄くなり見ると、死体が転がっていた。
「!?」
唐突だったもので思わず尻もちをついた。見るといろんなところに転がっている。
「やっぱり・・・これは戦争なんだわ・・・でも、ここはどこ?」
周りの兵士達も私に気づかない。その場に私はいないものとして存在していると気付いた。場所がわからない以上、これはどこで起こっている戦争なのか知ることが出来ない。なんとか知る方法はないだろうか。と思った瞬間、映像が変わった。千春は空に浮いていた。そこで千春はあるものを見つけた。
「(星型の敷地・・・五稜郭)」
「ここは函館・・・」
五稜郭の存在でここが函館なのだと知った。そしてまた映像は変わる。今度は一人の男が軍隊を率いて進軍している映像だった。その男には見覚えがあった。
「(セイバー・・・?)」
軍隊を率いていたのはセイバーであった。そして一人の兵がセイバーに駆け寄り、報告をする。
「この先に新政府軍の隊があり!どうされますか!」
隊長のようだ。セイバーは迷っていた。すると後ろの兵たちが
「土方さん!行きましょう!」
どんどんと声を上げていく。
「よし!この先に新政府軍が待っているが関係ねぇ!俺たちの手で未来を切り開くんだ!進めええええええええええ!」
セイバーは声高々に叫んだ。兵たちは一気に戦いの中へと消えていった。そこに残ったのは千春ただ一人。呆然と見ているしかなかった。
「(え・・・土方・・・?)」
千春の中ですべてが繋がった。この先彼がどうなるのかは千春は知っていた。だから見るのが辛かった。だが見ないといけない。千春はそう思った。土方は死んだ。馬で進軍しているところに流れ弾が直撃した。あっけなかった。先日学校で見たのが嘘のようだった。
目が覚めた。いつもの風景だった。
「(私・・・泣いてる・・・)」
涙が出ていた。なぜだろうか。千春は理解できなかったが、このことをセイバーに言っていいものかと迷った。だが、この先戦っていくのに彼自身のことを知らなくてはならない。そう思った千春はセイバーに問い詰めた。
「私・・・夢を見ました・・・あなたが函館で死ぬ夢です・・・」
「・・・・・」
「あなたは新撰組副隊長、土方歳三さんだったんですね・・・」
「見てしまったのか。」
「はい・・・」
「そうだ。俺は新撰組副隊長の土方だ。なんで俺がここに召還されたのか、お前は気付いているのか。」
「いえ・・・わかりません。」
「そこにある羽織。あれは俺が着ていたものだ。恐らくそれが原因だろう。で、お前が夢をみた原因だが、それは先日意識をつなげたせいだろう。まぁ自分の正体をわからせる必要もあったんだがな。ま、俺のことがわかればいいだろう。戦いやすくもなるしな。」
「・・・・・・」
「どうした。そんなに俺が死ぬ瞬間がショッキングだったか。」
「そうではないんですが・・・こんな簡単に人が死んでしまうなんて・・・正直辛すぎました・・・・」
「そうだ。人は簡単に死ぬ。だが俺達新撰組は自分たちが悪だと思った人間しか殺さない主義だ。だからこの戦いでも本当の悪がいない限り殺しはしない。マスターに限り、だ。だが、場合によっては俺は俺自身を制御できなくなる可能性もある。その時は令呪でも使って自決させればいい」」
「・・・・・・・・・・・」
「話は以上か?そろそろ稽古の時間だぞ。準備しとけ」
「はい・・・・」
千春はモヤモヤしたものを胸に残しながらその場を離れた。「俺は俺自身を制御できない」どういうことだろうか・・・それだけが気になった。
とある廃校。アーチャーと音無結弦はそこにいた。誰もいないような至って普通の学校。数年前に廃校となった高校みたいだ。なんでも、少子高齢化とかであらゆる高校が合併した結果が生徒数の少ないこの高校が廃校になってしまったらしい。設備とか普通に使える。ただ一つ難儀なことがあった。
「食糧、無くね?」
音無のこの一言でアーチャーと音無は買い出しに出ることになった。商店街。夕方の時刻もあってか街は活気づいている。アーチャー曰く
「麻婆豆腐食べよう。」
とのこと。一通り買って学校に戻ろうとした時、チンピラ軍団が集団で一人の女の子をナンパしているのを見た。少女はその体に合わないバイオリンのケースを所持していた。
「ねぇーお嬢ちゃん塾の帰りかなぁー!うーん!可愛いねー!僕達と遊びに行かないかーい!」
「う・・・すいません。今急いでるので・・・早くしないとマスターに・・・」
「うほぅ!マスターだってよぉー!どこ出身?日本の子じゃないよね!」
「・・・・・」
見ていられなかった。音無はそのチンピラ軍団のほうへと言った。アーチャーは制止する様子もない。
「おい、嫌がってるだろ。やめろよ。」
「あぁ~?なんじゃぁ~おめぇよぉ~?」
いきなりパンチ。音無は一瞬意識を失いかけたがなんとか保った。女の子はそのすきを見て逃げた。とてつもなく早い。バイオリンを持っているとは思えなかった。
「ふぅ・・・なんとか・・・」
なるわけなかった。見ると10人くらいに囲まれていた。こんなにいたの?と思うしかなかった。周りは野次馬だらけ。アーチャーはその中に巻き込まれてしまっていた。その様子を少女を助ける瞬間から見ていた。ツンツン頭の少年と修道服を着た少女も野次馬となっていた。だがその一方的なケンカにツンツン頭の少年も見ていられなくなり参戦した。
「おいおいおい。流石にそれは卑怯じゃねぇのー?あ、UFO!」
「えっ!」
チンピラ達が振り向いた。その隙を見てツンツン頭、上条当麻は音無の手を引っ張って脱出しようとした。そこに、一発の銃声が響いた。
「・・・・・・」
2人は振り向いた。チンピラ軍団のリーダーと思われる男が頭から血を流して死んでいた。アーチャーは異変に気付いた。どこから?だがわかるわけがない。周りは野次馬だらけその中から打つにしても目立ってしまう。探索は諦めるしかなかった。その場は騒然となった。警察が立ち入り区域に設定し音無達と上条達もそこを離れざるを得なかった。
「お前、なかなかやるじゃん。」
音無が上条当麻に言った。
「女の子を助けるところから見ててな。すげぇ奴がいるもんだと。んで、こんどはそいつが絡まれてるからあーなんかほっとけないなーって思ってな。」
「とーまとーま!お腹が空いたんだよ!早く帰ろうよ!」
隣ではインデックスが空腹を嘆いていた。アーチャーはというと黙ったまま。
「ま、そういうことだ。俺は上条当麻。こっちのうるさいのはインデックス。よろしくな。」
上条はインデックスに頭を噛まれながら自己紹介をした
「俺は音無結弦。こっちは・・・」
アーチャーを見た。
「私は立華奏。」
アーチャーは自ら自己紹介をした。音無は一瞬違和感を感じたが気になることはなかった。2人は分かれてそれぞれの帰路に着いた。
同時刻。
「マスター。標的をやりました。あと、アーチャーに遭遇しましたが、時間が時間でしたので殺しはしませんでした。」
「賢明な判断ね。帰っていらっしゃい。」
少女は大きなバイオリンケースを持って歩きだしたのであった。
「ふぅ・・・まさかあんなところでアーチャーに会うとはね・・・危機感も無いのかしら。確かにあの時間帯に戦闘は禁止されているけど・・・」
「なんじゃ、怖気づいておるのか?」
「・・・・・・ッ」
話しかけてきたのは派手な衣装をきた女。洋館にいそうな感じである。
「そう怖い顔をするでない。妾のマスターが話があるらしい。行くがよい。」
「(こいつ・・・)」
「キャスター。あなた達と同盟を組んでなかったら今ごろ戦闘状態だったかもね。」
「ほぉ自信満々じゃのう。勝てる見込みはあるのかぁ?」
「さぁね、あの子次第よ。」
「フ・・・フヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
館内に笑い声が響いた。心地の良い笑いではない。聞こえないふりをしてアサシンのマスター、鷹野三四は部屋を出ていった。
青年は部屋に籠って考えていた。
「あれはなんだ?なんでこの時代に武士同士が戦っているんだよ・・・だが・・・あの時なぜすぐ逃げるっていうことが出来たんだろうな。普通ならもっと様子を見るとかできたかもしれないのに・・・まぁ逃げて正解だったと思うしかないのか・・・」
見た感じで武士だというのはわかった。だが少年にとってすぐ逃げることができたというのが意外だった。まるで何かが導いているかのように「逃げる」という選択肢に行ったのである。
「さてと・・・今日はどっちかな・・・」
ずっと考えても仕方が無いので行動に出た。今日はマーテル会の会合に参加する日だ。日本マーテル会。一言でいえば環境保護団体である。その青年、天王寺瑚太朗の両親もそこの会員で子供の頃からよく連れてこられていた。だがその思想に納得できないということも多くなった。両親に行きたくないとの趣旨を伝えると怒られることもおおくあった。それから両親との確執は多くなった。マーテル会は瑚太朗にとってそのようなものであったが今の瑚太朗にとってはそうでもない。日本マーテル会は表向きは環境保護団体だが、裏の形は「ガイア」と呼ばれる組織だ。ガイアに所属する人間は主に魔物を使役する、いわば魔法使いのようなものだ。ガイアの目的は「鍵」と呼ばれるものを見つけること。瑚太朗自身もまだそれを見たことはないのだが人の形をしたものだそうだ。見つけてどうするか?保護するためだ。鍵は救済をするために存在する。簡単に言えばその場にあるものを消滅させる。人類が罪を犯しすぎた結果なのである。消滅したら自分達もいなくなるではないかと思うがそうではない。最近になって地下施設が開発されている。瑚太朗自身もあまり行ったことはないが全く地上と同じ外観なのだ。マーテルの本部に着いた瑚太朗はいつものように鍵を探すために森へ赴こうとしたのだが、
「会長からお話があるそうですのでお部屋まで行ってください」
受付の人に言われた。受付のひとはガイアの存在は知らないが毎日ここから入っているので顔なじみになっていた。入会したのも最近だがここまで会長に接近できるのも異例らしい。大出世ってやつだ。扉の前についたのでノックをする。
「失礼します」
毎回来て思うがここは異様な雰囲気が漂っている。そしてその椅子に座っている人物もまた異様だ。いつ見ても、異様だ。
「さて、鍵の捜索はどうだね。」
マーテル・・・ガイアの聖女、加島桜が聞いてきた。加島桜。マーテル会の象徴でもあるが今は一線を引いて表舞台には立ってはいない。だがガイアとなれば話は別だ。魔法使いの力量ばかりか、現役時代は人の邪心をも見抜くという眼力もあり神格化した存在だったらしい。もっともその現役時代を知らないから本当か信じられないけど・・・目の前に来たらそれが本当に思えてしまうといつも思う瑚太朗なのである。
「まぁぼちぼちっすね」
「そうかい・・・ところで、先日変なものを見なかったかい?」
「・・・・・・」
単刀直入だった。汗が出そうになるが抑える。汗なんて抑えるものではないが抑えるしかない。動揺がバレてしまうからだ。さてどうするか。確かに変なものは見た。だがそれを言ったら・・・取り返しのつかないことになるのではないか?そうも思えた。言った瞬間あの2人が簡単に殺されそうな気がした。
「見てませんね・・・」
「・・・・・・・」
両者、沈黙。
「そうかい。ならいいんだ。それじゃぁそのまま鍵の探索にお行き。」
「はい。」
扉を出る。と、そこでバイオリンのケースを持った少女とすらっとした女の人とすれ違った。
「(こんな人たちいたか・・・)」
疑問に思ったが気にしないことにした。鍵の探索は数十人がかりで行われるが瑚本は一人での行動。場所は森。この街のはずれにある場所だ。森には危険が多い。そうずっと言われてきた。実際に迷ってそのまま・・・って人も多い。探索で入っているから道はわかるが迷ってしまえばそれこそアウトだ。ただ目印になるものもある。学校だ。今は使われていないがそれなりに大きい。なんでこんなところにあるんだよと突っ込みたくなる部分もあるが学校なのである。しかも割と大きい。高校みたいな感じである。その目印に行く間、ある意味信じられない物を見た。人がいた。2人組の男女で少女?のほうは銀のロングヘアー。男のほうはすらっとした体形だ。こんなところで何をしているかわからないし何よりも危険である。こんなところをガーディアンに見つかったら多分アウトだ。まぁそうならないようにするもの瑚太朗の役目なのだが。
「お2人さん。こんなところをうろついてたら危ないぜ?」
「?」
すたすたすた。
「無視かよ!」
普通にスルーされた。しかも女の子のほうに。男のほうは「なんでしょうか?」と聞いてきたが女の子のほうは黙ったままだ。早くいなくなってくれよ。そんな空気を醸し出している。少なくとも瑚太朗はそう思う。
「だから、ここの森は危ないの。わかる?最近いろいろ物騒だから調べてるんです。あ、私マーテル会の者です。」
一応自己紹介的なものした。
「最近ここで危険な動物が多く目撃されています。人が亡くなった事例も多くあります。ですから今は立ち入りを制限しているはずですが・・・」
「そうだったんですか。知りませんでした・・・」
「(最近の若者は・・・ま、俺も若者だけど)」
とりあえずその場はそれで一件落着した。やっぱりこの森は危険だ。そう思う。実際に今も入った瞬間から耳鳴りが激しいし、視線をずっと感じてる。あの2人組は大丈夫なのだろうかと思うが大丈夫だろう。なぜかそんな気がした。いつものように鍵はいなかった。まぁいないよね。と思いながら家に・・・というわけにもいかない。次はガーディアンの本部に行かなければならなかった。ガーディアン。ガイアと対になる組織。所属する人間は所謂超人ってやつだ。瑚太朗自身もその一人。昔から何かが違った。普通の人より速く走れるし、力も強い。だからケンカになると相手は必ず大ケガをした。その度に親が頭を下げた。体育の授業も手を抜いた。それでもMAX評価だったのが事実なのだ。ガーディアンの目的もガイアとは違う。目的は「鍵」を見つけ、殺すこと。救済を止めること。もともと先に入ったのはガーディアンである。親との関係が嫌になって逃げ出した。そう言ったほうが簡単だろう。ガーディアンの存在を知ったのは森でUMA狩りの最中だ。いつものとはちがった中型のUMAに襲われてピンチだった時に江坂さん達に助けてもらったからである。その江坂さんの勧めのあったわけだが、そう簡単なものではなかった。ガーディアンに入ってからはいろんなことをやってきた。まぁ修行ってやつだ。4人一組(一人はやめてしまって3人一組)が基本で行動する。瑚太朗がいたグループは成績がいつも悪かった。成績がいいグループは現場に駆り出される。それで結果を残すから出世もしていく。瑚太朗はグループの中でもダメだった。男はもちろん女にも勝てない。そんな日々を送っていた。それでも、訓練生的なものを終え現場に配備されるようになった。場所は海外。紛争が多く起こる場所だ。周りの人間も瑚太朗と同じようになんらかの能力に目覚めた人間達だ。そこでもガイアとの戦闘は続いた。仲間が何人も死んだ。上官はガイアの人間はすべて殺せ。類の人間も殺せみたいなことを言ってきた。それに賛同できなかった瑚太朗は同じ考えをもつ男と一緒に脱走を図った。もちろん類の子供達も一緒である。だが駄目だった。簡単に見つかって囲まれて・・・死を覚悟した。だが一緒に逃げた男が瑚太朗を逃がした。自らを犠牲にして。それから瑚太朗は帰国し、ガイアに入った。どっちにも賛同はしない。つまり、両方潰す。こういうことだ。「鍵」を見つけたらすること、保護する。ここはガイアとは変わらない。だが救済も起こさせない。なんとか「鍵」を説得する。そもそも説得できるものなのかは知らないが。出来る気がする。瑚太朗はそんな気がしていた。根拠は特にないのだが。そんな感じでガーディアンの本部へ行き、特に異常なしとの事を伝えた
夜。いつもの日課だ。海外に傭兵として行くまでずっとやって地球救済ハンターの時間がやってきた。実はあの学校の現場に遭遇したのもこの帰りだ。その時一人だったのがラッキーというべきだろうか・・・
森が危険とされるのは危険な生き物が多いから。というのが表向き。裏はそうではない。UMAがうじゃうじゃいるのだ。それを狩るのが今の瑚太朗の役目なわけだ。
「ま、勝手に一人でやってるだけだけどね。」
たまにはいつもと違うルートに行くことにした。なんだか危険なにおいもする。何かが呼んでいる気もする。めちゃくちゃだよ。この森は。
「・・・・」
よくわからない場所に出た。丘だ。そこで見知った顔を見つけた。神戸小鳥である。
「またお前か。危ないからさっさと帰れ」
「・・・・・」
ぶっきらぼうな少女だ。小鳥は瑚太朗の家の近くに住む女の子だ。なぜこんなところにいるかは不明。
「ここまで来ているならわかっていると思うがここは危険すぎる。お前みたいな子供が来る場所じゃない。」
「大丈夫だよ。魔物は入ってこれないから。」
「!?」
今・・・魔物って言ったか?恐らくはUMAのことだろうけどなぜこいつかそのことを・・・?
「なぜ入ってこれないと言い切れる。」
「結界。」
ある意味納得した。瑚太朗が何度もこの森に往来しててここまでこれなかったのもそういうことからなのだ。じゃぁなんで入ってこれたか。
「結界壊れてるんじゃね????」
「あ」
小鳥はものすごい勢いで結界を修理しに行った。一人残った瑚太朗はあたりを見渡した。耳鳴りが無くなっていることに気付いた。本当に何も近寄ってこれないらしい。入ってこれるのは相当な魔法使いの類か・・・俺達の言う鍵くらいのもの・・・。
瑚太朗は目を疑った。それは確実にこっちを見ていた。人間は人間なのだが何かが違う。瞬時に判断することができた。
「鍵・・・・」
偶然にもこんなところで見つけてしまった。ガイアとガーディアンが必死になって探している鍵。こんなところで見つけてしまった。だがなぜここに・小鳥が保護していたのだろうか。とりあえずどうするか。「逃がす。」そうするしかないだろう。変に近寄って敵だと思われたら元も子もない。保護するって決めてるんだから。
「おい、ここは危険だぞ?逃げたほうがいいと思うけど。」
「・・・・・」
鍵は言葉を返してこない。まだ警戒してるのだろうか。
「あれだ。お前は「鍵」って呼ばれててガイアって集団とガーディアンって集団から狙われてる。俺はそれからお前を守るために忠告してるんだぞ?今は小鳥が結界作ってなんとかしてるけど、それが奴らに破られたらお前は袋叩きだぜ?逃げておくのが先決だと思うが。」
「大丈夫。」
やっと答えてくれた。少しは敵意識が無くなったかな?と思ったら小鳥が戻ってきた。
「・・・・!!!」
状況を理解したらしい。俺が鍵と会ってしまったということだ。まずいろいろ小鳥から聞いた。これまで鍵を保護してきたこと。鍵には「篝」という名前があるということ。まぁ大きい点はこの2つだ。説明した後小鳥は異変に気付いた。瑚太朗自身も異変に気づいてはいた。誰かに見られている。つまり結界が破られたということだ。誰に?上を見た。魔物が空を飛んでいる。つまりガイアの奴らだ。この時間は探索は行われていないはずだが・・・それよりもどう逃げるかが問題だった。ガイアの連中は超人ではないがどの魔物を使うかによって話は変わる。とりあえず2人に説明をする。
「いいか。結界がガイアに破られたみたいだ。今から逃げるが3人で別々に逃げるのは危険すぎる。だから・・・」
言って瑚太朗は2人を持ちあげた。そこで気付く。篝に重さが感じられない。まるで普通の木の枝を持ってるようだ。そこで一気に走りだす。小鳥のジタバタは耐えれるレベルというか可愛いレベルだ。だが篝のほうは・・・
「―――――」
精神干渉。いくつものビジョンが出てくる。今まで人類が犯してきた罪、自然の崩壊。これが救済の理由なのかと瑚太朗は感じた。しばらくするとそれも止んだ。だが追っての勢いは止まらない。何かとても早いのが2ついる。その後ろに2つ。前者は魔物。後者は人間と・・・何か。なんだこれは・・・
「2人とも、ここで待ってろ。絶対に離れるなよ。」
前者のみを迎撃することにした。前者2匹の魔物は犬みたいな感じだ。だが様子が違う。これまで狩ってきたものと一味違うようだ。それは早さでわかった。瑚太朗は自分の能力を上書きすることにした。これで対応はできるはず。瑚太朗と魔物の戦いが始まった。小鳥はそれをずっと見ていた。
その頃、病院。
「おい小僧、森の中が面白いことになっているぞ。」
鏡の中からライダーが阿東優に話しかけていた。時間は夜。しかも結構な時間だ。
「面白いってどんなよ。」
「サーヴァント2組が聖杯戦争ではないことに参加している。仕事ってやつか?」
「お前らに仕事なんてあるのかよ。」
「特にはないが、マスターによって変わるとは思うぞ。」
「ふーん。で、どんな感じ?」
「サーヴァントの前に弱そうな犬が2匹。その後ろにサーヴァントか。で、その相手が・・・なんじゃありゃ。人か?」
「人か?ってどういうことだよ。」
「一人は完璧に人だ。しかも小さい女の子・・・だがそれ以外の2人は・・・わからない。読めないと言った方がいいか。で、サーヴァントのほうだが・・・ほーう。これは面白い。キャスターとアサシンが組んでいるな。」
「タッグ戦って奴か。気に入らないな。人間相手に・・・しかも小さい子だろ・何考えてんだか。」
「お、犬が一瞬で消えた。で、アサシンが飛び込んでくるわけか。・・・!? 小僧、人間かどうかわからないと言った奴がいたな。犬から逃げるのを見ていたが、確実に全速力だった。だがアサシンから逃げる速度が倍になっている。これはどういうことか。わかるか?」
「本気出し始めたってことじゃないの?」
「それもある。だが我の仮定はこうだ。上書き。自分の能力を書き換える力だ。かつてそういう人間がいたというのを聞いたこともある。だがアサシンとキャスター相手となれば分が悪いな。どうだ優。ここはひとつ行ってみないか。」
「それって、その3人組を助けるってこと?」
「そういうことだ。」
「・・・・・簡単に言うなよと言いたいところだが、今日は体調もいいし何より俺はお前の力量を知らない。見せてもらおうか。」
「くくく・・・なら鏡の前に立て。手順はこうだ。鏡の中から森まで行って合流する。だが問題は鏡がどこにあるかどうかだ。まぁそこは我に任せておくがよい。」
「はぁ・・・はぁ・・・」
全速力で走っても逃げ切ることができない。この前と似た現象だ。まさか前と同じ奴が追っているのではないか?とも考えたかそれはなかった。前の現象に無くて居間にあるもの。殺気である。それもとても大きな殺気。銃声が響いた。どう避けるか選択肢が現れる。火が導いたのは右だった。だが銃の他にも何かが飛んできている。これは・・・杭!これも火の導きで避けきるが誘導してくる。銃と杭の嵐。小鳥はもう目を瞑っていることしかできなかった。もう死ぬと思いこんでいる。死なせてたまるか。そんな気持ちで瑚太朗は走り続けた。もう1段階上書きしようかと考えた時、いつもの目印の高校に着いた。人の気配はない。入って隠れることにした。そこにさっき会った銀色の髪の毛の女の子がいた。
驚いた様子でこっちを見た。気配はなかったはずなのになぜ・・・
「おい!お前そこからはなれ・・・」
銃声。弾丸は少女の額を貫通した。小鳥はそれを見てしまい、気絶。篝は黙ったままだ。その物音を聞きつけた相方の少年もこっちにきてしまった。また銃声。今度は心臓を貫通した。両者、即死。そういうこが一番いいだろう。覚悟を決めた時だった。鏡から赤いライダースーツの男が出てきた。ライダーである。そして一言。
「乗れ」
3人はライダーのバイクに乗って鏡の中に入り脱出した。鏡の中は異例だった。全く同じ。だが瑚太朗は似たような空気を感じたことがあった。ガイアが開発中の地下と同じではないか?と思った。森を抜け出した3人はバイクから降りた。
「助かった。ありがとう」
瑚太朗は感謝を述べるとライダーは
「どうよ。お前は俺の運転でデタラメな残像を感じたか?」
の一言を残して去って言った。
森、廃校内。
「なんじゃ・・・死んでるではないか・・・」
洋風の魔女のような服をきた女、キャスターが残念そうに呟いた。隣ではアサシンが電話をしていた。
「目標を見失いました。ですが、アーチャー達を殺しました。」
そこには音無結弦と立華奏の死体が転がっていた。
「了解。それじゃ、帰ってきなさい。」
鷹野三四はアサシンに伝えた。その鷹野は今回の作戦を加島桜に伝えた。
「鍵は見失った様子です。何者かが連れ去った可能性も・・・」
「まぁいいわ。その連れ去った人物を今度は探すのよ。」
誰もいなくなった廃校。先に意識が戻ったのは立華奏だった。彼女はこの流れを整理し、迂闊だったと反省した。まさかアサシンとキャスターが組んでいたとは思ってもなかった。確かに同盟を組むのが禁止というルールはない。彼女は納得し反省していた。一方、ライダー組。三人を下した後、また鏡に入り病院近くで鏡を出たが、優の説教が始まっていた。
「なんだよあのセリフ。言っとくけど俺言ってないからな!?」
という誰に説教しているのかはわからないがライダーに説教していたのだろう。
「言ってみたかった。今度からは気をつける。」
「お前反省してるのかよ。もうちょっとちゃんとした謝罪をだな」
「小僧、少し黙れ」
優はライダーが放つ威圧感に圧倒された。冷静になりその理由を考える。理由は一つだった。目の前にには三人の男女。一人はツンツンの髪型の男。もう一人はシスター姿の少女。真中にいるのは槍を持った男。瞬時に悟る。
「ランサー・・・」
「その姿から見るにライダーのサーヴァントとお見受けする。私と手合わせ願いたい。」
「こうなったらやるしかないってわけかい・・・準備はいいか。ライダー」
「小僧、いきなりその気になるでない。ここは我がエスコートする。お前は感覚を研ぎ澄ませろ」
「いざ尋常に勝負!」
恐らくランサーは先日のセイバーとの勝負を割り込まれたのがいやだったのだろう。その力はライダーの想像をはるかに超えていた。すべてにおける力が違った。だがライダーも負けているわけではない。ランサーが槍だけの攻撃に対してライダーは飛び道具や盾や剣も持っていた。まずは剣で応戦し、そのあとにライダーの本体自身が鏡から飛び出しランサーへ攻撃を加える。その攻撃にランサーは苦戦を強いられた。力が違っても戦術によって相性も異なる。だが、その姿を見たランサーはライダーの正体を悟った。
「なるほど。あなた自身が宝具ということですか・・・ライダーの正体見破ったり。それなら私も名を明かさなければなりますまい。」
「は?」
ライダーは正直驚いた。自分の正体をわかったところで真名を明かす奴がいるのか?と考えたがランサーは見た目がもう武士なのである意味納得は出来た。
「拙者は武田家家臣、真田幸村と申す。此度の戦、負けるわけにはいきません。」
ランサーは構えをやめ、槍を収めた。そしてまた取りだした槍は前の槍とは形のまったく違い、十字の槍を持っていた。
「十文字槍か・・・」
「十文字槍・・・?」
わかっていないのは阿東優と上条当麻の2人。
「十文字槍。真田幸村の代名詞と言っても過言ではないだろう。その槍で戦国時代を生き抜き、最後の戦と言われる大阪夏の陣で散った日本一の兵。」
ライダーがサンサーについての説明をわかりやすくしてくれた。徳川家康が日本一の兵と認めた武士と戦っていることがあり得ないと、阿東優は改めて聖杯戦争がなんなのかを認識した。はっきり言って笑い事ではない。ランサーは本気で自分を殺しにかかっている。そう感じただけで寒気がした。
「優。生きるか死ぬか、ここからはもう賭けだ。ランサーは一撃で我を仕留めに来る。生憎おれには避けてから反撃と言う術は無い。だからこっちも一撃で決めに行くぞ。」
「OK」
額から汗が流れる。もう後には引けない。運が良かったら生き残るだろう。そんな感じだ。ランサーは十文字槍を構えた。周囲がピリピリ言っている。ランサーの気である。こっちはこっちで必殺のカードを入れる。
「ファイナルベント」
それがライダー組の必殺技だ。単にとび蹴りを入れるだけだが威力は凄まじい。対してランサー。ランサーの槍から炎が発せられた。その炎は辺りを覆い尽くし、槍先に集まって行く。これを一気に相手へ振り下ろす。一撃必殺の技だ。ライダーが飛ぶ。ドラグレッターは優と一体化しランサーへと蹴りを入れる。対するランサーは向かってくるライダーで槍を振り下ろす。簡単に言うなら野球の構図だ。バット(槍)をへし折るかライダー(球)を飛ばすか。2つがぶつかった。その衝撃は激しく、あたりのものを吹っ飛ばした。インデックスは物陰に隠れて何をのがれたが上条当麻は吹っ飛ばされて塀に頭を打って気絶していた。勝負の結果はつかなかった。両者共に吹っ飛んで倒れていた。
ランサーはなんとか立ちあがるが、ライダーは立ちあがる様子もない。だが賢明に何かをしている。カードを取り出して入れようとする。させないとランサーが動くが間に合わなかった。
「ストライクベント」
鏡からドラグレッターが飛び出しランサーを攻撃、その勢いでライダーを掴み、鏡の中へと消えていった。
阿東優はベッドの上で目が覚めた。さっきの戦いをまとめる。生きているということは勝ったのか?とも感じたがカードを入れたことを思い出し、負けたと察した。だが、
「さっきの勝負は引き分けだ。逃げ切ったからある意味勝ちにも思える。その体でよくもあそこまでいけたものだ。」
ライダーが言った。
「まず生きてることがラッキーってことかい・・・まぁいいか。」
阿東優はそのまま眠りに落ちた。その頃、1階では上条当麻が搬送され、入院ということになった。
音無結弦は夢を見た。その夢の中では立華奏に向けて銃を構えていた。なんで?夢の中で音無は考えていた。
「(俺は何かを忘れている・・・?)」
景色は変わる。今度は体育館でバンドがライブをやっている。紙が舞い上がっていたので取ってみると食券だった。
「(麻婆豆腐・・・)」
夢でも麻婆豆腐か。実はここ最近麻婆豆腐しか食べていなかった。でもまぁおいしいから許すが。またまた景色は変わる。今度は生徒会室にいろんな人間が集まっていて作戦を立てていた。どうやって「天使」を倒すか、という話だがよくわからない。「天使」って誰?と聞くと、
「どうした頭打ったか?」
とか散々な言われようだった。「天使」とは立華奏のことだった。いろいろ説明を聞いて天使と戦いに出た。負けた。大いに負けた。たくさん負けた。でもそれが楽しかった。それからみんな成仏していった。変な奴が現れて、みんなで、「天使」も含めて戦って、勝ってそれで残った5人で卒業式もやった。そこから砂嵐が混ざるようになった。なんだろうか。すごく悲しい。だんだん濃くなる砂嵐の中で音無は立華奏を抱きしめているのを見たような気がしたのだった。
「目が覚めた?」
立華奏が話しかけてきた。体を起き上がらせると、あることに気付いた。
「(なんで俺泣いてるんだ・・・?)」
あとなんで生きてるの?という疑問だけが残った。
アサシンは鷹野の元へと帰ってきた。
「鷹野さん・・・アサシンを殺しました」
「よくやったわね。これからも頑張って。」
鷹野からしてみれば至って普通に言ったつもりなのだが、アサシンの喜びようはすごい。表情からそれはわかった。自分のマスターから愛されるように働く。それでうまくできたら愛される。それこそがアサシンにとっての聖杯戦争を戦う理由でもあり、生きる理由でもあった。だが、鷹野はそうではない。なぜこの小さな女の子がアサシンなのか。なぜこんな小さな女の子が大人の殺し合いの道具として扱われなければならないのか。それだけが納得いかなかった。鷹野はアサシンの生前の夢を見たことがある。そこでも同じだった。テロリストを相手に戦うアサシン。「条件付け」と呼ばれる縛りみたいなもので忠誠を誓わされる。だからこそ、愛してほしい、愛されたいの一心だったようだ。アサシンは元々瀕死の状態から手術を施してこの姿になっている。それも夢で見た。戦いで傷つくたびに体を修理し、「条件付け」を行う。アサシンのような少女は「義体」と呼ばれていた。「義体」の子供たちはたくさんいた。「条件付け」を行う度に「義体」は弱くなる。体は弱くならないが、脳が弱くなる。寿命が縮まるということだ。そんな人生をアサシンは生き抜いた。それが鷹野にとっては悲しくてしょうがなかったのである。出来れば戦わせたくない。でも戦わなければならない。
「(もし、あいつと同盟を打ち切るとなればアサシンは私についてきてくれるだろう。それでもあいつに敵うことがないというのなら・・・私は・・・アサシンを殺さなくてはならないのかもしれない。それが彼女にとっての幸せなんだ。)」
「(アサシンを殺した後はどうなる・・・? ・・・・私も死ぬしかないかもね)」
覚悟が必要な決断だった。
天王寺瑚太朗は、神戸小鳥と篝と森を脱出した。あの変なバイクの奴は見なかったことにしておきたいところだが気になってしまう。あっちの方で爆発音もあったのも気になった。
「最近どうかしてる・・・。これも全部篝の影響なのか?」」
そんな考えも過ったがあの学校での戦いを思い出すとそうは思えなかった。もっと何か裏がある気がする。とりあえず小鳥を家まで帰した。問題は篝。どこに匿うか。思い当たる節はなく、結局自分の家に匿うことにした。両親は帰ってこないし大丈夫だろう。
瑚太朗には気になることがあった。ガイアの本部に行ったあの日、加島桜はこんなことを聞いてきた。
「何か変なものを見たかい?」
それは篝と会う前だ。今なら変なもの=篝を設定することができるが、その時篝のことを瑚太朗は知らない。加島が言った変なもの。それはあの学校で闘っている2人の武士のことではないのか?そう思った。だがなぜ加島がそれを知っている?何か関わっているのだろうか。だとしたら更に面倒なことになりそうだと瑚太朗は感じた。テレビをつける。特番が組まれていた。
「謎の城?いきなり立った建物とその意味とは。」
「なんじゃこれ。」
建物がいきなり立つってあるの?と思ったがニュースを見ていると2日前と今現在の写真が出ていて違いははっきりしていた。いや、これに気付かない方がどうかしている。2日前は更地だった土地が、今現在では宮殿が立っていた。取材陣がその門らしきところに集まっていた。
「ご覧ください!あれが2日前に立ったとされる宮殿です!しっかりと門もあり門番も2人いるようです。門番の人にお話を伺ってみましょう!」
門番の人間は何か茶色をしていた。まるで土でできたような感じだ。動く気配も全くなく、アナウンサーを完全無視という状態にしていた。
「門番の人は何も答えてくれません。一体なにが起こって・・・え?後ろ?」
アナウンサーが後ろを振り返った。その瞬間、アナウンサーの首が飛んだ。カメラはその瞬間をしっかりと収めていた。つまりここら辺の地域に放映されてしまったのである。
「あ、あ、あああああああああああああああああ」
カメラマンが逃げるがすでに遅かった。弓が大量に飛んできて取材陣の体を貫いた。
「なんだよ・・・これ・・・」
瑚太朗は衝撃を隠せなかった。同じくその様子を上条当麻は病室。インデックスは自宅で見ていた。雪村千春もその様子を見ていて愕然としていた。誰の行動か理解できたのは、セイバーとランサーのみであった。
「酷い・・・」
ランサーの顔が怒りに満ちていた。インデックスはその様子を見て少々怯えた。いつも温厚なランサーがここまで感情を出したのは初めてだからである。
「どのサーヴァントの仕業かはわからないが・・・許せない・・・」
今にも現場に行きそうな空気だったのでインデックスは制止した。
「待って。まだ何も準備はしてない。とーまだってまだ帰ってきてないんだよ?」
「上条殿は私のマスターではありません。それに上条殿は何も魔術をもってはいないではないですか。」
「とーまの右手は魔術を打ち消すことができるって言うのは前に言ったよね。だからもしものことを考えればとーまは必要なの。危険も伴ってしまうけど・・・でもそれを守るのがランサーの役目でもあるんだよ?」
「・・・・承知しました。ですが次このようなことがあれば私は・・・」
「その時はとーまを病院から連れ出してでも行こう♪」
笑顔でそう言った。ランサー自らの怒りを押しこめた。
「そう言えばランサーの願いって聞いて無かったよね。聖杯を取ったら何をお願いするの?」
「私は・・・正直、願いはありません。いや無くなったと言ってもいいでしょうか。この短い間、私の時代から何百年後の日本がこれだけ平和だと言うことを知って、願いはなくなりました。もしかしたら私は、これが見たかったのかも知れません。だからこの平和な景色を見ることが、願いだったのかもしれませんね。聖杯を取れたらインデックス殿の願いを叶えたらどうでしょうか。ちなみにどんな願いを?」
「えーっとね!たくさんご飯食べたい!」
「ふふふ、インデックス殿らしいですね。」
インデックスはランサーの願いを聞いて安心した。悪いことでもなく逆に良すぎることでもない。日常が変わることはないということだ。だが、
「(私は泰平の世が訪れると言うのに、敢えてそうじゃないほうを選んだ。そうじゃない泰平の世もあるのではないかとも思った。だが、違った。今の日本は戦いもなく本当にいい平和だ。私はこの平和な時代が好きだからこそ、あの愚行は許せない・・・)」
改めて怒りはバーサーカーのほうへと向かっていった。
「ぬう・・誰も釣れぬか・・・まぁよいわ。次はもっと面白いことをしてやろう・・・」
宮殿の奥、玉座に座る男は不敵な笑みを浮かべていた。今回の主犯、バーサーカーである。バーサーカーは自らの手下、兵馬俑を従えて今回の事件を起こした。この宮殿もバーサーカーのマスターの魔術によるものだ。結界もしっかりと敷いてある。
「さて・・・第2段階と行こうではないか・・・クハハハハハハ!」
次の日。更に事件は続いた。昨夜にして行方不明者が続出したのである。原因は不明。だがマスコミも警察もあの宮殿が絡んでいると認識をした。だが近寄れない。近寄ったら殺されるだけだからだ。上条当麻はその日退院し、家に戻ってきた。戻ってきた瞬間
「あれはどうなっているんだ?」
の一点張りであった。上条当麻の性格からしてあのようなことは1番許せないことである。だが何もすることはできなかった。その夜、異変にランサーが気づいた。
「(何かいる・・・)」
同時刻、雪村千春宅
「おーおー。こんなに集まっちゃってどうしたぁ。そうかバーサーカーの手下どもか。で、千春を誘拐にきたってわけか。そいつは無理な相談だ。俺のマスターなんでなぁ。一つ言っておくが、今お前らは俺を大人数で囲んだ気でいるだろうが、囲まれているのはお前たちなんだぜ?」
上条当麻宅
「うわっ停電だ。」
部屋の電気がすべて消えた。目が慣れるのは意外とすぐだったが、その時になって初めて事の重大さを知る。インデックスが捕まっていてランサーが槍を構えるが動けない状況であった。停電の瞬間、大勢の人間が部屋に押し入りインデックスを捕まえたらしい。暗闇の中ではランサーはどうすることもできなかった。動けばインデックスの身が危ないからだ。そいつらはインデックスを外へ連れて行った。最後にインデックスを連れ去った者が伝言を残した。示した場所は、あの宮殿であった。
「・・・・・・・・・」
ランサーの顔がみるみる強張っていく。そのまま宮殿に行くつもりらしい。
「待てランサー。場所はわかるのか?」
「・・・・・・・」
「場所がわからない以上、どうしようもない。ちょっと落ち着いたらどうだ。」
上条当麻にしてはまともなことを言っていた。実際に宮殿の場所はわからない。インデックスを誘拐したのは必ず理由があるはずだ。無作為なわけがない。
「ですが上条殿・・・もう我慢できません・・・ッ」
「許せないのはわかる。だが、なんの為の令呪だ。」
「・・・・・・!」
ランサーは理解した。インデックスが目が覚めると同時に令呪を使って召還すれば、その場所に行ける。だが令呪を使わなかったら・・・ランサーの戦いはそこで終わると言うことなのだ。
「インデックスを信じろ。ランサー。」
「はい・・・」
「でだ、令呪がきたら、俺も連れて行ってくれ。何か力になるはずだ。」
「ですが上条殿は何も・・・いや、承知しました。」
インデックスから言われていたことを思い出した。右手の能力。もしかしたら役に立つかも知れない。だがあの宮殿には相当な数の奴らがいるはずだ。ランサーは自らの死も覚悟した。まずはインデックスを助けることが先決。上条当麻とそう作戦を立てた。
「ん・・・・・・」
インデックスは目が覚めた。知らない場所にいる。洋館なんかでかいところにいた。覚えているのはただ一つ。部屋が停電になって誰かに口を塞がれて気絶してしまったということだ。
「目が覚めたか。ランサーのマスター。」
「・・・・!」
玉座に座る。一人の男。周りには護衛の兵馬俑達。それを見てインデックスはこの男が何者なのか判断ができた。
「私を捕まえてどうするつもりなのかな?バーサーカー」
「ほぅ・・・なぜこの我がバーサーカーだとわかった?」
「簡単だよ。その護衛の兵。この時代では兵馬俑って言ってすごく有名なんだよ。」
「なぁるほど。どうだ、この宮殿の気分は。我も久々にこの玉座に座ってすごく気分がよい。どうだ、今なら我の嫁にしてやってもいいぞ・まぁこれから他のマスター達も来るわけだが・・・そしたら他のマスターが死んでもお前だけは生かしておいてやろう。」
「ぜっったいイヤ!」
「ふぅん。元気な娘だ。ならお前の目の前で他のサーヴァントやランサーを血祭りに上げてやろう。そしたら我の力を認めるがよい。」
「ランサーはお前なんかには負けないもん!顔も性格もあんたなんかみたいなのより100倍かっこいいもん!」
「そうかそうか・・・ならその惨状を目に焼き付けるがよいわ!」
バーサーカーはインデックスに睡眠をかけた。
「・・・ッ・・・・ランサー・・・ここだよ・・・」
最後の最後にインデックスは令呪を以てランサーに命令を出した。
病院。
「人がせっかく寝てるのにお前らはなんなんだよ。」
病院も囲まれていた。だがここはライダーのマスターである阿東優だけではなく、一般の人たちも入院している。被害を避けるためにはライダー自身が赴いて戦闘を開始するしかなかった。場所を変えたいところだが囲まれている状況でどう戦うか、かつどれだけ素早く戦闘を終わらせ何事もなかったかのようにするか。気づかれたらアウト。上出来なのは入院患者に単なる小さい地震か何かだと思わせること。答えは一つだった。
「人の眠りを妨げたことって結構大きいものなんだぜ?・・・変身。」
「サバイブ」
兵馬俑達が一斉に襲い掛かる。だがそれをものともせず攻撃に転じた。
「ファイナルベント」
勝負は一瞬だった。バイクに乗りながらライダーは
「これじゃ暴走族だな。で、どうするよ。このまま宮殿行くか?お前の言うことが本当ならあそこなんだろ?バーサーカーの本拠地は」
「あぁ・・・だが様子がわからない以上、どうしようもない。それに小僧、貴様の体調のこともある。我が様子を見てくるから貴様は病室で休んでいろ。何事もなかったかのようにしていろよ?」
「なんだ、心配してくれてるのか。ふぅん、ありがたいね、じゃぁ俺は病室に戻るが・・・お前も気をつけろよ。これは普通のことじゃぁない。何か嫌な予感がする。」
ライダーはそのまま鏡へと戻って行った。その頃、宮殿にランサーと上条当麻が到着した。門番はランサーが倒した。それで門が開くと思ったがそうではなかった。結界。これが行く手を阻んでいた。これがインデックスが令呪と使ったのにも関わらず宮殿内部までランサーが召還されなかった理由でもあった。
「ランサー。ちょっと待ってろ。」
上条当麻が右手を門に触れる。結界は消えた。ランサーは上条当麻の能力が本物なのだと悟る。だが更にその先も結界であった。門をくぐればそこは草原にも近いような壮大な場所だった。
「固有結界・・・」
ランサーは上条当麻に右手で地面を触るよう促したが、試したところでどうにもならなかった。草原の中に通路のようなものある。上条当麻は震え上がった。
「なんでこんなところにあんだよ・・・これ・・・万里の長城だろ・・・?」
万里の長城。これは秦の始皇帝が他国からの攻撃に備えるために建てた城壁のことである。壁だが上の方が歩けるようになっていて、見るとそこには大量の兵馬俑がいた。長さはとてもじゃないけど1日で行けるような距離ではない。宮殿すら見えない。この距離をどう進むか。上条当麻は考えていた。
「上条殿、ちょっと避けてください。」
「?」
ランサーの横から離れるとそこに馬が出現した。ランサーの能力らしい。
「とりあえず乗ってください。・・・・・武田家は騎馬隊を使った戦術が基本でした。あのような相手にはうってつけだと思われます。それに・・・私には信頼できる仲間たちがいます。」
上条当麻は後ろに大量の人の気を感じた。後ろには大量の騎馬隊がいた。甲冑をきた武士が馬に乗っている。門からすぐの場所でこんなに人が入るのかとも思ったが、ここはバーサーカーの固有結界。関係は無かった。数には数をという話なのだろうが数では圧倒的に劣る。それはランサーも十分承知していたようだ。
「上条殿には申し訳ありませんが、一気に突っ込みます。しっかり捕まっていてください。騎馬隊には追撃を許さないよう指示を与えます。ですが・・・明らかに数は劣る。私はともかく、騎馬隊の全滅は必至でしょう。申し訳ない・・・」
ランサーは後ろを向き叫んだ。
「いきなり深い眠りから呼び出して申し訳ない!此度は私の今の主が敵の捕虜となってしまっている!私は今から主を迎えに行く!すまんが、力を貸してほしい!数では劣る!しかし私達は武田家の騎馬隊!あれくらいの数を恐れることは無い!」
上条当麻はその迫力に驚きを隠せなかった。そしてこれからランサー、真田幸村の戦が始まるということを実感したのである。
「恐らく全滅は必至!また貴公らに死という苦しい思いをさせるだろう!だが・・・自分の武士道を貫いて戦えばきっと活路が見出せる!胸を張って闘うのだ!全軍、続けえええええええええええええええええ!」
ライダーは鏡の中からその様子を見ていた。そしてこの結界の正体も知る。万里の長城は確かに存在する。だが始点と宮殿までの距離は長くないのだ。せいぜい図って2km。この固有結界には幻術も仕組まれていて、ランサーと上条当麻は見事にそれにかかっている状態であったのだ。ライダーはインデックスの無事を確かめ阿東優の元へと戻った。
ランサー率いる騎馬隊は怒涛の勢いで兵馬俑の軍勢を突破していく。後ろの騎馬隊は追撃を許さない形を取らせているが予想の通り、圧倒的不利に立たされていた。だがそれでも追撃されないだけマシなのである。だが先は全く見えなかった。その間にも騎馬隊の数は続々と減っていたが戦っていくうちにランサーはあることに気付いた。
「(景色が同じ・・・?)」
そこでランサーの中で一つ仮説が生まれた。①この固有結界の中に幻術が施されている。 ②ただぐるぐる回っているだけ。 ③ひたすらまっすぐ進んでいるからそう感じる。目の錯覚。
「上条殿、私の顔を右手で触ってください。」
「こうか?」
ランサーの顔に右手に触れた瞬間、感覚が変わった。敵兵の数は変わってはいないが、終わりの門が見えたのである。後ろの騎馬隊はもう全滅していた。短い時間ではあったが数に差がありすぎたから仕方がなかった。
「(すまない・・・)」
ランサーは謝罪の念を込めながら地面に両手をついた。
「真田丸!」
後ろのほうで何かが隆起する音が聞こえた。見ると後ろの山の方に城が立っていてその中に大筒が込められていた。
「標的!終点の門!距離、2km!うてえええ!」
威力は抜群だった。周辺にいた敵兵ごと門をふっ飛ばし先が見えた。その門を一気に潜ったがその先にあったのは絶望的な光景であった。宮殿はあった。だがその前の広場。そこに敵兵が先ほどの倍以上はあった。
「(およそ・・・10万・・・)」
それに対しまともに戦えるのはランサー一人。ランサーの持つ最後の特有のスキルにしても突破できるかどうかの境目である。それにインデックスの無事を確認できていなかった。
「(戦うしかないのか・・・だが上条殿まで戦ったら確実に・・・死ぬ。どうすればいい・・・どうやって上条殿を撤退させればいいんだ・・・ッ)」
ランサーは躊躇していた。
そのころ宮殿内部。
「ほう・・・ここまで来るとは対した奴だ・・・だがもう勝ち目はないぞランサー。我が誇る10万の親衛隊をどう攻略するかぁ・・・・クハハハハハハハハハ!おっと・・・ランサーのマスターを連れてこい。その目の前で死に様を魅せしめてやろう。おい、何をしている早く連れて・・・・」
目の前にいたのは兵ではなく、インデックスを抱えた赤い男。ライダーである。
「悪いなバーサーカー。初対面でいきなり悪いが、この子はもらってくぜ?」
「きいいさあああまああああライダアアアアアアどうやってここにきたああああああ!」
「まぁ初対面だから無理もないな。俺はこうすることが出来るんだよ!じゃぁな!」
言ってライダーは鏡の中にバイクで突進し、広場前の砦内の鏡から脱出した。
「で、ランサー達はどこなのかねぇ・・・」
砦を抜けたライダー達も宮殿前の広場に出た。約10万くらいの兵馬俑とランサー組が対峙している状況だった。
「(なんだよこれ・・・明らかに勝ち目ないじゃんか。ここからどうするんだよ。逃げるしかないぞこれは・・・)」
「おい小僧、早くランサーのところに行け。」
「お、おう」
ライダーはバイクを走らせた。横から来るバイクの音にランサー達も気づく。
「ライダー・・・」
「よぉ。お前のマスターを取り戻してやったぜ。」
「インデックス!」
「インデックス殿!」
「ありがたい。しかし、どうやってこの中に・・・」
「ま、俺の特有のスキルって奴だ。でだ、これからどうするつもりだよ。こりゃ10万はいるぜ?」
「・・・・・・」
「まさかとは思うが、あの数相手に一人で挑もうってんじゃないだろうな。無理だ。お前がどれだけのスキルを持っていようと勝ち目は無い。退け。俺が乗せていってやるよ。」
「いや、ライダー殿には・・・上条殿とインデックス殿をお願いしたい。家まで・・・届けてやってください。」
上条当麻はその言葉を聞いて驚いた。
「おい・・・お前まさか本気で・・・」
「もしここで逃げたら・・・またバーサーカーはインデックス殿や上条殿を狙ってきます。お二人だけじゃない。この街の民皆が、狙われてしまいます。奴の魔力供給にされてしまいます。」
「バカ野郎!命を粗末にするな!インデックスはどうすんだよ!お前がもしいきなりいなくなったりしたら・・・あいつは悲しむぞ!ずっと泣く羽目になるぞ!」
「いや、インデックス殿はお強い。私がなぜここにこられたか上条殿、あなたも知っているでしょう。殺されてしまうかも知れない状況でインデックス殿は私に居場所を示した。普通なら怖気づいてできないでしょう。だからインデックス殿はお強い方なんです。」
その言い争いでインデックスが目を覚ました。
「ん・・・ラン、サー・・・?わっ!なにあの数!早く逃げるよ!ランサー!」
「・・・・・・」
「何してるの!はやく・・・ランサー?」
「インデックス殿、上条殿。私のマスターがあなた達でよかった。」
「え?何言ってるの?ランサー。はやく・・・逃げようよぉ・・・」
ランサーが何をしようとしているのかインデックスは悟ったようだ。涙声になっている。その状況の中、ランサーはライダーをちらりと見た。ライダーはランサー、真田幸村の意思を目で感じ取った。
「(これが武士・・・ってことか。・・・こいつらはしっかり生かした状態で送ってやる。)」
その時インデックスが
「いやだよランサー!・・・令呪を以て命じる・・・わたし・・・」
「!?」
「ライダー!」
コツン
ライダーは上条当麻とインデックスの2人の首の後ろを叩き、気絶させた。
「わたしに・・・した・・・・・」
薄れていく意識の中で2人は
「どうぞ、お健やかに・・・・・。マスター。」
という一言を聞いて、気絶した。
「ではライダー。お2人をお願いします。」
「言われなくてもわかってる。だがランサー。決して死ぬつもりで戦いに挑むな。この子が悲しむ。」
「大丈夫です。バーサーカーは私が食いとめます。ダメだったとしても・・・すぐには動けないようにはなるでしょう。それに・・・私の後は・・・いや、なんでもありません。ライダー。あなたともここでお別れです。早く行ってください。」
ライダーはバイクを走らせて砦に向かったが異変に気づく。鏡がすべて割られていた。
「クソッ!バーサーカーの野郎!しょうがねぇ。あれを抜けるしかないのか。」
ライダーは万里の長城へと突入したが、敵兵の数が予想よりも多かった。ランサー達が抜けた後、増援を送り込まれたらしい。
「真田丸!」
大砲が目の前で落ちて敵兵が砕け散った。
「敵は真田丸の砲撃で粉砕します!そのまま一気に抜けてください!」
「すまない!ランサー!。よし、じゃぁ一気にいくぜえええええええ」
ライダーはそのままサバイブ状態となり、万里の長城を走り抜けた。敵兵は真田丸の大砲とファイナルベントの状態で轢いていった。そのまま、宮殿からの脱出に成功し、2人を無事に送り届けることができた。
「さて、俺の任務は完了だな・・・死ぬなよ。ランサー」
「(ライダーは無事に脱出できたみたいだ。次は私の番か・・・)」
ランサーは槍を十文字槍へと持ち変え、集団に向かって行った。宮殿の中ではバーサーカーは余裕そうにその様子を見ていた。だがその余裕は一瞬で消える。その時のランサーを例えるなら、修羅。たった一人で10万もの兵を切って行くその姿はバーサーカーをも焦らせる。ランサー、真田幸村最後のスキル。「単騎突撃」。大阪夏の陣でたった一人、徳川家康の寸前まで行った。その勢いを彷彿とさせるような突撃。それに加算して真田丸からの砲撃。最初こそランサーのほうが勢いがあったものの、バーサーカー陣営の敵兵の数は、確実にランサーの体力を削り取っていた。どれくらい切っただろうか。それすらもわからないくらい、ランサーは切っていた。ランサーの体力と敵兵の数。どちらが先に無くなるか。それで勝負は決まると、ランサー、バーサーカーは思った。先に異変に気付いたのはランサーだった。
「(真田丸からの援護射撃が来ない・・・)」
そう思った時に、砲撃が来た。だがその標的は敵兵ではなく、ランサーだった。周りに敵がいたから避けた時に流れ弾として敵に当たったからいいものの、今の一撃は確実にランサーを標的としていた。
「(制圧されたか・・・)」
ランサーの予想通り、真田丸は制圧されていた。だったら消せばいい話だ。だが消えない。真田丸はバーサーカーの魔術によって制御できなくなっていたのである。
「(ダメか・・・私を標的としているなら誘導して流れ弾として的に当てるしかない。)」
ランサーの作戦は成功だった。切りながら避けて流れ弾として敵に砲撃を当てていった。だがそれでも敵の数は減らない。減っているのだが、減った感覚がないだけだ。それを繰り返すのもかなりの体力が必要だった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
宮殿ではバーサーカーがその様子を見ていた。
「ふぅん。流石にこの数では話にならんかったか。まぁここまで数を減らしたのは大したものだったがな。ふはははははははははははは!もうよい。討ち取れ。」
「(この数を一気に減らす方法・・・宝具か・・・)」
ランサーは十文字槍から炎を出した。その炎はライダー戦で見せたものよりもはるかに大きく、見ただけで威力が理解できる程だった。
「あああああああああああああああああああああああ」
ランサーが槍を地面に叩きつける。その衝撃で爆発が起こった。その爆発は広場全体に広がり、広場にいた兵馬俑は木端微塵となっていた。その先には宮殿へと繋がる階段。しかし、そこにいたのは大量の弓を持った兵馬俑。大量の弓が、ランサーに向かって放たれた。
雪村千春宅
「・・・・・・・」
セイバーは爆発音に気付いた。方面からして宮殿のほうだった。その音に雪村千春も目を覚まし、様子を見に来ていた。
「あっ・・・セイバー!どうしてそんなに土があるんですか!」
まぁそうなる。
「・・・・・・・・・」
だがセイバーは何も答えなかった。ずっと宮殿のほうを見つめたままだった。
「千春。ちょっと出かけてくる。お前は付いてくるな。護衛はちゃんとつけておくから部屋に戻って寝てろ。いいな」
「は、はい・・・・」
セイバーはそのままある方角へと向かった。
「どれ・・・静かになったな・・・そろそろランサーも死んだ頃か・・・どれ・・・」
バーサーカーは広場が静かになったので様子を見に来た。そこはもう焼け野原のような感じで何もなく、土が焼けたようなにおいだけが残っていた。
「フハハハハハハハハハ!所詮は日本の武士!我が軍に敵うわけがなかろう!フハハハハハハハ」
カチャ・・・
「だが、我が10万の兵を全て残さず蹴散らしたことは称えてやろう。まだ兵はいるんだがな!はいパチパチパチパチ~」
カチャ・・・
「さて、また魔力供給の狩りの時間をするとしようか。どれ」
バーサーカーは振り返った。目の前には既に槍を振りかざしているランサーがいた。
「・・・へ?」
ランサーの槍はバーサーカーの腹部を貫く寸前で護衛の兵に止められた。だがその槍は貫通してバーサーカーの腹部にまで侵入していた。
「なぜ貴様が生きているんだランサアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・フ・・・フハハハハハハハハハ意識がない状態でここまで来たというのか!だが貴様の体はもうボロボロ。自分でも感じないのかぁ!?貴様の体には矢が刺さりまくっているだろうに!」
その通り。ランサーの背中には数本の矢が刺さっていた。あの時、ランサーは宝具の使用で矢を弾いた。だがその炎の有効範囲にも限界がある。弾ききれなかった分はランサーの体へと刺さったのだ。それに加算して今までの戦闘での体力の消費。ランサーはいつ消滅してもおかしくなかった。だが、ランサーの意思がそれを上回っていた。「なんとしても主を守る。」その硬い意思がランサーをここまで動かしているのである。ランサーが槍を抜いた。その流れで一気にまた槍を振りかざす。バーサーカーは逃走を図るが槍はバーサーカーの背中を切りつけた。同時にランサーも護衛の兵に切りつけられた。ランサーが膝をつく。しかし倒れない。槍を支えにして堪えた。
「いまだぁ!やれええええええええええええええええ!」
バーサーカーの怒号が響く。陰からまた大量の兵馬俑が出現しランサーに襲いかかるが、そこでランサーの意識が元に戻った。
「あああああああああああああああああああああああああ」
威圧。兵馬俑はその気迫に押されて襲い掛かるのをためらった。その隙にランサーは周辺の兵を蹴散らす。
「な・・・なんなんだこいつは・・・だ、だが私には兵たちがおる。お、お前ら増援をまた10万やるからここは任せた!」
バーサーカーは奥へと逃げた。ランサーも追いかけようとするが護衛の兵に行く手を遮られてしまう。後ろを見ると兵の数が最初のようにもとに戻っていた。広場も同じく、また約10万の兵馬俑が並んでいて、それを見たランサーはうっすら笑みを浮かべた。
「(・・・・・・・バーサーカーには傷を負わせた。マスターが誰なのかを知ることは出来なかったがこれだけの兵の使用は大きいだろう。ここ数日は動けないはず。それに・・・・)」
何かを察知したのか、覚悟を決めたか。それとも両方か。ランサーは宮殿外の広場へと駆ける。その姿は大阪夏の陣で徳川家康をたった一人追いつめた武田家武将、真田幸村そのものだった。何の因果か。似た境遇を真田幸村は楽しんでいた。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・なんだあいつは・・・何度も何度も立ち直りおって・・・それにこの我に傷まで負わせた・・・許せん・・・必ず生きて帰すものか・・・まぁ無理だろうけどなぁ。フハハハハハハハ!」
バーサーカーは宮殿を飛び出してマスターの元へと向かおうとした。魔力を供給してもらうためだ。宮殿の外はバーサーカーのマスターのいる建物へと繋がっている・・・
はずだった。
バーサーカーが出てきた場所は何やら何もない場所。たった一本の桜の木が満開で咲いている場所だった。バーサーカーは自分に似たような何かを感じた。
「固有結界だとぉ・・・?」
誰かが歩いてきた。水色と白と黒が混ざった羽織を着たポニーテールの男。セイバーだった。
「・・・セイバーか・・・貴様何のようだ・・・」
「なんのようだって、バカかお前は。お前を殺しに来たに決まってるだろう。」
「フ・・・フハハハハハハハ!殺しに来た!この我をか!日本の武士は面白い!そして愚かだ!じゃが・・我には兵がおる!かかれええええええええ」
「・・・・・・・・・・」
「なぜだ・・・なぜ兵が来ない!」
援軍は誰も来なかった。その様子を見たセイバーは笑っていた。
「当り前だ。ここは俺の結界。何人たりとも侵入することはできないんだよ。阿呆が」
「ぐぬぬぬぬぬ・・・さっきから阿呆だのバカだのバカにしよって・・・・貴様死刑じゃ済まさんぞおおおおおおおおおおおおおおおお」
バーサーカーは自らの魔力を開放して姿、形を変えた。体中からは電撃まで走っている。若返ったようにも見える
「それが貴様の力か・・・」
「残念だったなセイバー。お前のマスターを兵たちに襲わせた時、お前の能力は把握した。どうやら今ここにはいないようだが・・・残念だったなぁ!たった一人で来たことが運の尽きよぉ!貴様は我になぶり殺されるのだぁ!死ねえええええええええええええええええええええええええええええええええ」
バーサーカーは手を前に出し、衝撃波を繰り出してきた。セイバーはひとまずそれを防ぐが威力が高く、吹っ飛ばされてしまった。
「まだまだまだまだぁああああああああああああ!」
バーサーカーは連射していく。だが、セイバーはその衝撃波を切り裂きながらバーサーカーの方へと歩いていた。
「な・・・・・」
これには流石のバーサーカーも驚きを隠すことができなかった。
「なぜだなぜだああああああああああ」
「お前は俺の能力を知ったと言ったが、俺はあれを一言の宝具だなんて言ってないぜ?」
「・・・・・・なんだお前は・・・・」
バーサーカーはその光景が信じられなくて尻もちをついた。
「お前はランサーをコケにしたな。俺はあいつと決闘の約束をしていたが、どうやら無理みたいだ。最初の時もお前邪魔したよなぁ。あれは俺たちにとってはすごく許せないことだ。その罪は貴様が死を以て償え。そうだな・・・お前が俺との戦いで得るべき教訓は・・・「相手を見誤るな」ということだ。・・・よく覚えておくんだな。阿呆が」
セイバーはそのまま、バーサーカーの首を刎ねた。2つになったバーサーカーの死体は、そのまま消滅した。
同時刻、とある建物
「・・・・・?」
「どうかしたのかい」
「バーサーカーが死んだか。まぁよいわ。あやつはただの時間稼ぎ。いい駒になったであろう。」
「そうかい。これで一つ落ち着いたというわけでいいんだね?キャスター」
「あぁ、楽しませてもらったぞ?マスターというのも悪くはない。そうだろぉ?我が主」
「・・・・・・・・・」
戦いが終結した頃には太陽が少し出ている状態であった。上条当麻は自分の部屋で目を覚ました。まずは頭の中を整理すながら辺りを見る。
「(ランサーはいない・・・か。)」
とりあえずテレビをつけてみることにした。何やら騒がしかった。朝っぱらから特番となっていた。この時間は「おはようテレビ」の時間のはず。右上にタイトル的なものが書いてあった。
「先日急遽建った神殿、火災か!?」
「!?」
テレビではバーサーカーの神殿が燃えている様子が映し出された。建物も門も、敷地全てが火事に見舞われていた。
「おい!インデックス!起きろ!」
「・・・・・ん・・・・あ、ランサー・・・・・」
インデックスはまた泣きそうな目になっていた。それほどショックだったようだ。インデックスは右手を見る。令呪が残っていた。それを見たインデックスは
「ランサーが帰ってくる!」
と喜んだ。だが、今後一切ランサーが帰ってくることはなかった。
「本日深夜未明、あの謎の建物が燃えているとの通報が入りました。必死の消火活動が行われていますが、炎の勢いが収まる様子はありません。変化があり次第、またお伝えします。」
アナウンサーが読み上げた。それからどの局もその火事のニュースを伝えるばかり。それから3時間後、ついに炎は鎮火した。
「速報です。火事のニュースですが、ただいま火が鎮火しました。繰り返しお伝えします。ただいま火が鎮火しました。後には大量の灰が積み重なって山となっています。これから警察などによる調査が始まります。・・・え?後ろ?」
アナウンサーが後ろを見た。大量の灰、恐らく兵馬俑達が燃えた跡が積み重なってできたであろう山。その頂上に一本の槍が刺さっていた。その隣に、一人の男。上条当麻とインデックスはランサーだと気付いた。
「カ、カメラさん!アップでお願いします!」
カメラがアップで映し出す。
「山の上に人がいるようです。あれは誰でしょうか・・・え?」
アナウンサー達取材陣が少し目を離した隙に山、槍は消えた。そしてその隣にいたランサーも消えていた。インデックスは右手を見ていた。そこに令呪は無かった。
「・・・・・・・・」
インデックスは無言だった。ただ涙を流すだけ。上条当麻は黙ってテレビを見ているしかなかった。そして自分の右手を見る。その目にはある決意が生まれていた。
Fate/key's memory 前編
前書きで前編・中編・後編の3部構成とありますが、後編の内容がある程度まとまっていて
中編が全く浮かんできません。辛いです。まぁ頑張りますね