窓の外
「いつかその日がくればいいわね。」
彼女は窓の外に目をむけて言った。
「だってあなたは努力しているもの。いつか叶うわ。」
彼女の発する音は、言葉と呼ぶにはあまりにも薄っぺらだ。
しかしどこか、人を惹きつける響きであった。
「努力…か。」
吹けば消えそうな声でつぶやいた。
短い溜息とともにこぼれた単語へ、彼は思いをめぐらす。
特段怠惰であったつもりはないが、何かに懸命であったわけでもない。
およそ努力とは無縁の人間だろう。
「そうでしょう。だってあなた、真面目じゃない。」
彼女の視線は相変わらず窓の外。
まるで枯木に宿るサナギが孵るのを眺めるかのように動かない。
「真面目…か。」
かすれた声でつぶやく。
またしても自分に似合わない単語だ、と彼は思う。
寡黙で融通が利かないのは承知している。
だが、それを真面目ととらえるのはいかがなものか。
彼女に見える景色が自分と違うのならば、それに触れてみたい。
しかし、彼が見たのは窓の外の枯木ではなく、窓に映る歪んだ彼自身だった。
窓の外