剣の王子と炎のドラゴン
「ナナギ~、卒業論文もう書いた?」
羊皮紙の伝言板に、友だちのレインから書き込みがあった。
私はインク壺に一度も入れてない乾いた羽ペンを手に取り、伝言板に走り書く。
「まだ。全然終わってない。終わる見込みもない……」
書いた文章が燃え上がり、伝言板の上から消える。
この伝言板は魔法の伝言板だ。
インクがなくても書けるし、書いた文章がそのままメッセージとして送られる。
「私は終わったよ~。題名知りたい?」
またレインからの書き込み。
「知りたくない。知りたくもない……」
少しの間不毛なやり取りをして、レインとは『次は戦場で会おう!』で終わった。
魔法の国が出来て499年。私たちの国は、山を挟んだお隣さんの国と戦争をしていた。開戦はもう7年くらい前になるだろうか。まだ小さかった私はパパとママに抱きしめられ、「お前が戦場に行く前に、この戦争を終わらせて来るからね」と言われたことを覚えている。そんな私も、とうとう学校を卒業する。
魔法学校の卒業生はみんな、すぐ戦場へ行く。卒業論文は戦場へ行くにあたっての『私、がんばります宣言!』みたいなものだ。そういうの、ちょっと苦手。ここ数日は何度もペンを持って考えて、文章が出てこなくてベッドの上でゴロゴロしたりしていた。
(みんなはすんなり書けるんだろうな。でも、私たち……二つの国って本当に戦わなくちゃいけないんだっけ……?)
隣の国……剣の国は人を食う。
剣の国は森を焼く。
剣の国は水を穢(けが)す。
街中で喧伝されていることをみんなは信じているらしく、私が抱いている疑問を口にできるような雰囲気はどこにもなかった。とはいえ、卒業論文を提出しないわけにもいかない。提出しなければ、学校を卒業できない。卒業できないってことはつまり……。
(卒業していくみんなを、見殺しにするってこと……)
まだ戦う準備ができてない者を、魔法の国が戦地に送ることはない。卒業しなければ戦場に行かなくてもいい。でもそれは、戦地に行く他のみんなを守れないってことだし、傷ついた友だちを魔法で癒すことだってできないってことだ。
(……しかたない、書くか)
戦地に行くことを決めた身として、前向きな論文をバーンと提出し、格好良く出発してみせよう。私は羽ペンをインク壺に入れる。でも……その前に。このもやもやした気持ちを整理しておこうと思った。戦場では迷いを捨てて、無心で戦うために。私がまだ小さいころに出会った彼らのことを、忘れてしまうために。
あの寒かった日のこと。雪を踏む音がいまでも耳に残っている。あの時感じたことが何だったのか、確かめてみたい。私は、あのときの話を書こうと決めた。
*****
「も~……。これくらいの距離なら飛べるから平気だって言ってたじゃん! なんで降りちゃうわけ? しかもこんな山の中に! はぁ……街まで歩いてなんて帰れないよ!」
これは剣の国との戦争がはじまる少し前の話。
雪が積もった山の中腹。凍えるような寒さにひとり、それはそれは美しい少女が立っていた。少女は魔法学校に入ったばかりの1年生。少し癖のある金色の髪をショートボブにして、気合十分で学校に通っていた。名前をナナギという。
将来の夢は攻撃系の魔術師。出てくる魔物を軒並み焼き払う豪快さにあこがれていた。
「いや、平気なんて言ってないし! 空をドライブだー! 飛べ―!って言って、無理やり連れだしたの、ナナギのほうだったじゃん……ゲホゲホッ」
病弱そうなセキをしたのはファイアドラゴンの子供。ドラゴンと言ってもまだ雛の時期なので、彼は人間の子供よりずいぶん小さく、ナナギの腕の中でブルブルと震えていた。魔法学校に入るにあたって生徒は必ず一匹、使い魔を選ぶ。ナナギは両親との長い交渉の結果、ファイアドラゴンの子供を使い魔にしたのだ。普通は蛇とかフクロウとかなのだが、たった一人の娘だからということで、長期ローンを組んで両親が頑張ったのだ(彼女がそれを知ったのはずいぶん後の話だけど)。
どちらにせよ、彼女はファイアドラゴンの子供に『終末の赤』というたいそうな名前をつけて大はしゃぎし、無邪気に喜んだ。
「なに弱気なこと言ってんの? おいラグ丸、あんたそれでもファイアドラゴンなの? 炎を吐いてなんとかしなさいよ」
それがいまとなってはこうである。ファイアドラゴンは雛の時期、むしろ寒さに弱いんだけどなと終末の赤……ラグ丸はナナギに抵抗する。
「し、知らないわよ……ううっ……グス……」
翼が生えたばかりのラグ丸にねだって空に連れ出してもらい、結果、ラグ丸が(きっとナナギの体重に)耐え切れずに墜落し、どことも知れぬ山の中にたった一人いる。
まだ幼かった彼女は、そんな現実を直視したくなかったのかもしれない。彼女の心中を知ってか知らずか、ラグ丸は「泣くようなことじゃないだろ」とナナギを励ました。
「……ねえ」
それからしばらく歩いたとき、ナナギは自分の腕の中にいるラグ丸が返事をしなくなったことに気がついた。いつからだろう。気がつけば雪が降っていて、自分がどこに向かっているのか、どこから来たのかもわからなくなっていた。
「ラグ丸っ!」
覚えたての治癒魔法をラグ丸にかけると、ラグ丸は小さく反応した。まだ生きてる。しかし、苦しそうなままだった。
(ダメだ……ラグ丸、やっぱり寒さで弱ってるんだ。傷を治す治癒魔法じゃ、全然回復しない!)
現実とは悲しいもので、攻撃系の魔術師にあこがれていたナナギは、攻撃魔法の才能がまったくなかった。使えるのは簡単な治癒魔法だけ。いま思えば、彼女がラグ丸に空のドライブをお願いしたのも、自分があこがれていたものにはなれないんだということを知ったショックを紛らわせたかったからなのかもしれない。
「どうしよう……ラグ丸! ラグ丸!」
ラグ丸の息は小さく、小刻みに続いていた。ファイアドラゴンが炎を吐けるようになるのは、もっとずっと先のことだ。火をおこそうにも、方法がない。
「私のせいだ……私の……」
ナナギはぽろぽろと涙をこぼしながらも、懸命に前に進んでいった。ナナギにとってラグ丸は、気心の知れた友だちだった。憎まれ口だって叩きあうし、たまにケンカもするけれど、自分の分身みたいにナナギは思っていた。それなのに自分のせいで友だちを失うなんて。そんなことは絶対に嫌だった。
「あれ……?」
そんな思いが通じたのか、ナナギは降り続く雪の向こうに、灯かりを見つけた。それは木でできた小屋だった。
「……誰だお前」
ナナギが戸を叩くと、同い年くらいの男の子が顔をのぞかせた。毛皮で作ったらしい服を着ており、山に住む人なのだとすぐにわかった。ただ、山で事故に巻き込まれたのか、頬に大きな擦り傷があり、痛々しい。
「お前、それはなんだ? 見せろ」
少年ははっきりとした命令口調で言った。いつものナナギであれば、『生意気な男子=叩きのめす対象』であり、即座に殴り飛ばしていたところだったのだが、そんなことを考えている余裕はなかった。ナナギはラグ丸を少年に見せて、「ファイアドラゴンの子供なの。寒さで弱ってて……お願い、中に入れて!」と頼み込んだ。
「ど、ドラゴン? 魔竜のことか!?」
しかしラグ丸を見たその少年は血相を変えると、隠し持っていたナイフをナナギに向けて構えた。そのナイフは細長く、あまり見たことがない形をしていた。ドラゴンを魔竜と呼び、細身のナイフを巧みに使う人……ナナギはこの少年が山向こうにあるという『剣の国』の人なんだと、その時悟った。
「……近づくな! そうか、お前山向こうの国の人間だな。この小屋には一歩も入れさせない!」
ナナギは戸惑っていた。こんな風に強い警戒心を誰かから向けられたことなんてなかったからだ。どうすることもできず、ナナギは腕の中のラグ丸をただ抱きしめた。
「マサ、刀をおろせ。相手は子供だ」
少年の後ろには、20歳くらいの男の人が立っていた。彼は山の住人と一目でわかる少年とは違い、涼やかでどこか高貴な白と青の装束を身にまとっていた。マサと呼ばれた少年はナナギから目をそらさず、ナイフも向けたままで、「リュウケイ様、ここは私がくいとめます! どうか横になっていてください! お怪我にさわります!」と口早に言うと、ナナギとの距離をじりっと詰めようと足を踏み出し、ナイフを突き出す。
「愚か者!」
ガチンと骨が削れる音が響く。ナナギは思わず目を閉じた。
「この者は私を助けようと必死だっただけなのだ。許せ、異国の少女よ」
そっと目を開くと、リュウケイがナナギの前に立ち、マサのナイフを右腕で受けとめていた。
リュウケイはナナギにほほ笑みかけるや、その場に崩れ落ちた。リュウケイの服はマサのナイフを受けた右腕と、左腹部が赤黒く染まっていた。左腹部の傷は事故か何かでついたようで、服が引き裂かれている。傷は深そうだ。マサが戸惑いを隠せず、リュウケイに駆け寄った。
「リュウケイ様! も、申し訳ありません! わ、私は……!」
「中に入れて! マサさん!」
リュウケイのケガの具合を見るなり、ナナギは叫んだ。
「私は魔法が使えるの! 急げば治せるかもしれない!」
「……マホウ? なに言って……」
「なにふぬけた顔してんだよバカ! 治癒魔法! 私なら、この人のケガを治せるかもしれないって言ってんの!」
マサを怒鳴りつけ、ナナギは二人で一緒にリュウケイを小屋の中に引きずり入れた。
「ラグ丸、しっかりあったまって!」
ナナギは上着を脱いでラグ丸をくるみ、小屋の中にあったいろりの近くにそっと置くと、横になったリュウケイに両手を向けた。
「や、やっぱりだめだ!」
マサがナナギを羽交い絞めにして「怪しげな呪術を使うつもりだな!?」と、リュウケイから離そうとした。ナナギはマサをエイ!と振りほどき、マサの傷ついた頬を両手でバチン!!と挟んだ。
「いいっ!?」
マサは何か不思議なことが起きたように目を丸くした。
「痛くない……」
ナナギがマサの頬から手を離すと、マサの頬にあった傷はきれいに治っていた。マサが傷口を探すように、自分の顔を触っている。
「さっきから言ってるけど、私は治癒魔法が使えるんだってば! あんたは私に任せて、なにか料理でも作ってラグ丸に食べさせてあげてよ!」
「魔竜に……メシを?」
これ以上、この人……リュウケイを放っておいたら、助からなくなる。ナナギはマサに「あったかいやつ! 頼んだからね!」と言い捨てると、もう一度、リュウケイに両手を向けた。今日は何回魔法を使っただろう。体の力が抜けそうだ。ナナギはまだ魔法学校に入ったばかりで、経験も浅かった。
(それでも、この人を助けなきゃ……)
ナナギの手を、魔法の淡い光が包む。
*****
美味しそうな香りで、ナナギは目を覚ました。
いろりでマサが何やら料理をしている。ナイフを振り回すより、こうして料理をしている方が似合うなとナナギは思った。
(いつの間にか、眠っちゃったんだ……)
ナナギは布団の中にいた。すぐ隣ではリュウケイが大の字になっていびきをかいている。傷はすっかり治ったようだった。ラグ丸はナナギの布団にもぐり込んで丸まっている。幸せそうな顔をしていた。こっちも大丈夫みたいだ。
「「あっ」」
ちょうど料理の味見をしようとしたマサがナナギをチラリと見て、二人は目が合った。所在なさげに目線を泳がせるマサに、ナナギが右手を伸ばす。
「ごはん。お腹すいたんだけど」
マサは顔を真っ赤にして、「い、いまできるから、もう少しだけ待ってろ」といろりの鍋に目線を落とし、懐から取り出した調味料で味をととのえてから、ナナギに茶碗を差し出した。茶碗からいっぱいの湯気と、空腹を刺激する香りが立ち込めていた。
(え? ……なにこれ。どうやって食べるの)
茶碗を受け取ったものの、ナナギは困惑していた。茶碗とともにマサから渡されたのはスプーンではなく細長い棒。見たこともない器に、見たこともない棒の組み合わせ。しかも器は熱く、ずっと持っているのは難しそうだ。
「こうやって食べるんだよ」
マサが身振りで教えてくれる。細長い棒は箸というのだそうだ。
「ずずず……んっ!!」
美味しかった。
ナナギは頬を染めて、うれしそうにハフハフしながらマサの料理を食べる。なんだ、マサ。やっぱりこっちの方が似合ってるじゃないか。
「ありがとう。あんたのおかげで、リュウケイ様は助かった」
茶碗のちょうど半分くらい食べ終えたとき、マサがナナギに頭を下げた。
「それと、すまない。俺、あんたのことを疑っていた」
さっき目が泳いでいたのは、これを言うタイミングを探していたのかもしれない。マサは小刻みに震えていた。ナナギはなんて答えようかと少し考えてから、茶碗に残っていた料理をたいらげて、マサにつき返した。
「お代わり。これからあんたは、私の子分だからね」
「……あ?」
目の前に突き出された茶碗を受け取らず、マサはナナギをにらみ返した。
「なんで俺が、お前の子分なんだよ」
「お代わりって言ってるでしょ。いや~、怖かったなぁ。この人が止めてくれなかったら、いまごろ私……きっと……うう、ひっく……」
流れてもいない涙をぬぐう。マサは舌打ちをすると、「やめろよ泣きマネとか……わかったよ。今日だけ! 今日だけだぞ!」と言って、ナナギの茶碗を受け取った。
ナナギとマサはその日、いろいろ話をして過ごした。
ナナギは何でも話した。魔法の国では魔法が当たり前だということ。本当は攻撃系の魔術師になりたかったんだということ。ラグ丸は終末の赤が正式な名で、ちょっと恥ずかしいからラグ丸と呼んでいること。
マサはナナギの話を興味深く聞いていたが、自分からは多くを語らなかった。けれど、今日だけは子分だって言った!いろいろ教えてよ!と怒るナナギに苦笑し、少しだけ身の上話をした。リュウケイは剣の国の大事な人物でひとりで、マサが付き人として案内をしていたのだということだった。きっとリュウケイは剣の国の王子様なんだろうなと、ナナギは思った。
「ナナギが、攻撃魔法を使う魔術師じゃなくてよかったよ」
その夜マサが言った言葉に、「あんたに何がわかるのよ」と、ナナギはいまいち納得がいかなかった。
外はまだ雪で閉ざされており、傷が治ったとはいえ、リュウケイが体力を取り戻すにはもう少し時間が必要だった。ラグ丸はあんなに弱っていたのがウソのようにケロリとしており、魔竜っぽくマサをおどかしては楽しんでいた。リュウケイとナナギはその様子を見て、くすくすと笑った。
リュウケイが自由に歩き回れるくらいには体力が回復し、気持ちのよい青空が広がる日、ナナギとラグ丸、リュウケイとマサはそれぞれの帰路につくことにした。
「魔竜の仔よ。お前とは、もう少し話がしたかったな」
別れ際、リュウケイがラグ丸の頭をなでると、ラグ丸は「俺は別に、あんたに興味はないけどね」と気持ちよさそうにのどを鳴らした。
「ばいばい! またね!!」
ナナギが大きく振る手に、マサは苦笑いをして小さく手を振り返す。
二人の背中を見送って、ナナギは小さくつぶやいた。
「……そろそろいこっか、ラグナロク」
「ラグ丸でいいよ。それと、俺はまだ眠い」
「バカ。うっ……うう……」
ナナギはラグ丸に顔を押し付けて、泣いていた。もう二度と会えない気がして、それはきっと正しくて、少し寂しかったのかもしれない。
ラグ丸は大きくあくびをするふりをして、ナナギの頬をしっぽでぺちぺちした。
(お前が泣き止むまで、もう少し待っててやるよ)
*****
窓をコツコツとたたく音がして、私はペンを置いた。
コツコツ、コツコツと音は続いている。
窓を開けると、そこには巨大なファイアドラゴンが翼を広げていた。
「うるさいな、ラグナロク」
ラグナロク……ラグ丸は器用に首を伸ばして、窓をノックしていたのだ。小さかったあのラグ丸は、もう人間よりもはるかに大きい。
「どうせまだ卒業論文が書けてないんだろうと思ってさ。からかいに来たんだ」
そうやってにやりと笑う。
昔から変わらないな。あの時と同じ。
「卒業論文って難しいんだよ。あんたにはわからないだろうけど!」
「わかりたくもないよ。人間の慣習には興味ないしね」
小生意気なファイアドラゴンの鼻に向かって、私はインク壺を投げつけた。
ラグ丸はインクを一滴もこぼさずインク壺を鼻の上で受け止めると、長い舌でそれを机の上に戻す。
「うわ……あんた器用すぎるよ。気持ち悪い」
「人間が不器用すぎるんだろ」
へへへと笑うラグ丸。
私はため息をつくと、あのときもずっと一緒にいてくれた大事な相棒を誘った。
「ドライブいこ。ずっと向こうの雪山まで」
「嫌だよ。あそこ寒いしさ」
「だから、あんたはファイアドラゴンでしょう? 炎の吐息で何とかしなよ」
「疲れるんだよね。オェーってなるっていうの?」
「はいはい。そりゃ大変だね」
嫌がるラグ丸の鼻に足をのせて強引にのぼり、大きな背に乗った。
私がちゃんと乗れたことを確認してから、ラグ丸は翼を羽ばたかせ、一気に空の上まで飛び上がった。
あのとき、私にはラグ丸がいて、マサには王子様がいた。
それぞれに大切なものがあって、必死になってた。
でも、お互いにそれがなかったらどうなっていたんだろう。
広がる雲を見下ろして、私はラグ丸の背中に頬をつけた。
「ありがとね、ラグ丸」
「……ナナギ、変なものでも食べた?」
こんな時くらい、もうちょっと気の利いたことを言いなさいよ。
私はラグ丸の背中のとさかをガジガジとかじり、全然痛そうにしないラグ丸にいらいらしながら、遠くの雪山に向かって指をさした。
「それじゃ行くよ、終末の赤出発!」
私はもうすぐ魔法学校を卒業し、剣の国との戦争へ行く。
でもやっぱり、あのときのことは忘れられそうもない。
(私たちって本当に戦わなくちゃいけないんだっけ?)
その答えを、私が見つけよう。
あのとき私とマサにあった大切なもの……剣の国の王子様と炎のドラゴンの存在が、そのヒントをくれる。
たぶん、きっと。
*****
それから数年後、剣の国と魔法の国は和平を結ぶことになった。激しい戦闘が何度も繰り返されたが、炎のドラゴンに乗ったひとりの治癒魔法師が尽力し、和平の場をとりもったことは、どの記録にも残っていない。
それを見届けた、私たちの記憶以外には。
剣の王子と炎のドラゴン