ダンビエットの唄

2008/2/5・6日 『タンビエットの唄』 ドラマシティ

TSミュージカル・ファンデーション作品

企画・演出・振り付け=謝珠栄

キャスト

フェイ=安寿ミラ

ティエン/タオ=土居裕子

トアン=畠中洋

ハイン=吉野圭吾

ミン=宮川浩

ビン/ビック=駒田一

ゴク=戸井勝海

開場するとそこに民族衣装を着た美人が数人、手に蓮の花の香炉を持ち線香を立てていい香りを振り撒きながらロビーや客席を行ったり来たりしている。この香りが終演まで香っていた。緞帳にも白とピンクの蓮の花が描かれ、この作品で蓮の花が重要な役目をする事がうかがわれた。幕が開くと舞台上手から下手までぐるりと綱で編んだすだれのような物で囲われている。この感じ「ミスサイゴン」の舞台に似てるかな?そんな気がした。

最初に現れたのは先ほどのお香を持っていた美人(笑)だと思うが、真っ白の衣装で素晴らしいダンスを見せる。芯の全くぶれない、まるでクラシックバレーを踊っているかのよう・・・。

【あらすじ】

舞台は1990年代後半のヴェトナムヴェトナム戦争中小さな村、ハンティン村でアメリカ軍による大虐殺が起こった。虐殺から逃れ解放民族戦線の5人の男たちに助けられた美しい姉妹、ティエンとフェイ。フェイはある時、ヴェトナム戦争の惨状を訴えるもののメンバーとしてイギリスに渡ることになる。その時、姉の下を離れたくないとすがるフェイをティエンが、ちゃんとこの戦争の事実を世界の人々に伝えてくるのだと、そしてこの「さようなら」は再び会うための「タン・ビエット(さようなら)」なのだと。ところがフェイはイギリスで今までに味わったことのない平和と安らぎを知り、ヴェトナムでの死の恐怖から結局イギリスに残り、ヴェトナムには戻らなかった。

戦争を逃れて英国人の養女となったフェイ。

20年ぶりに姉の消息を訪ねるために祖国ヴェトナムに戻ることから物語は始まる。

フェイがヴェトナムに戻り最初に出会うのが戦争中に助けてくれた解放民族戦線のトアン(畠中洋)、その案内でミン(宮川浩)に逢いに行くがミンはヴェトナム人なんか相手にしないという高級なバーを経営している。

そしてミンは案内してきたトアンに「知っているのか?」と訊ねる。何かが隠されている・・・。この物語はこのように現実と過去が錯綜しながら、悲劇の実態を暴いていく仕組み。

フェイが次に訪ねたのは、ビン(駒田一)の家庭・・・、だがそこには精神を病むビンの父親ビック(駒田2役)が居てビンはティエンの所為で自殺したと聞かされ混乱するフェイ、そして今は出家して月に一度ビンの家を訪ねてくるというゴク(戸井勝海)の元を訪れる。そこで衝撃の事実を知る事になる。フェイを待ち続けていたティエンは生きていけばいつか会えると信じて待ち続けるが、敵の将校を愛してしまい、そしてスパイであることがばれてしまった愛する人を助けるために、脱走の幇助をする。当然男は殺され、幇助したティエンもまた裏切り者として処刑されることになるが、あろうことか一緒に逃げていた仲間ゴクとビンが銃撃兵に選ばれ殺されてしまう。ビンはティエンが好きだった。その彼女を銃殺したという重さに耐えかねたビンは自殺し、ゴクもまた出家して月に一度ビンの心を癒す為お祈りをしていると。

ティエンはもう居ない・・・、ヴェトナムに絶望したフェイはイギリスに帰る事を決意するが、スリに鞄を掏られパスポートが無いとイギリスにも帰れないと嘆いている時、鞄を掏らせた仲間としてハインが現れる。

今は偽造パスポートを作っているらしいが、フェイのパスポート見て現れたのだ。そこで更なる衝撃の事実を告げられる。フェイは逃げ出したはずの戦争の悲劇と現実に向き合う事になるのだった。ティエンは敵側のスパイだった男と愛し合い、身ごもる。ハインはティエンが生んだ敵の将校の子供を8歳になるまで育てたと言う。だが子供を育てる為に軍を脱走したハインにはまともな職に就けるはずも無く、悪い事した挙句警察に捕まり、出てきた時には子供の消息は判らなくなっていたと。

フェイは今まで辛い思い出しかないと逃げ続けていた故郷ハンテイン村を訪れる・・・。この場面、正面の網の壁が両脇に開けられ、緑色の山の木の葉が全面に描かれ、壁際には色とりどりの蓮の花が咲いていてとっても綺麗だった!蓮の花は亡くなった多くの命を慰める為に咲いていたのだろう。

あの日突然アメリカ軍がやってきて穴を掘るよう命じられ、掘ったヴェトナム人を片端から銃殺して行った。フェイの母は少しでも自分の身体で弾を多く受けようと二人の前に立ちはだかり、結果フェイとティエンは助かった。思い出の場所にたったフェイが歌う歌声に引かれるようにしてタオ(土井裕子2役)が現れる。母が良く歌っていたと聞いていたと・・・。フェイはタオと二人ヴェトナムで生きていく事を決意する。

「ミスサイゴン」はアメリカから見たヴェトナム戦争の話だったが、これはヴェトナム人が体験したヴェトナム戦争の実態のお話、そんな感じかな。

世界はヴェトナム戦争と一口に言うけど、その陰にはかくも多くの悲惨な人々がいたことを改めて知り愕然とする。いつ、何処で起きても戦争とは悲惨なものなのだ!そしてそれはいつも罪なき民の上に降りかかるという事を痛感する。ティエンは言う、私が愛した人は敵だと言っても同じ民族ではないか・・・。

ティエンを演じる土居裕子さんの透明感のある美しい歌声はいつ聴いても感動する!ホンとに素晴らしい! 今回は特にそれを強く感じた。安寿さんが演じるフェイは舞台に登場するのは戦争も終わって20年も経った頃だからもう40歳くらいになっていたのだろうか、安寿さんが老けて見えるのは当たり前なんだけど、それにしても土井さんが舞台ですばしこく走る姿を見て若いなぁ?と感心した。

そして最後にティエンが産んだ娘タオとして舞台に現れて歌う声、本当に子供の声だった!ピンクの衣装に身を包んで現れてのは本当に18歳(多分?)の娘の姿だった!

実はTSミュージカルと言う事なのできっと吉野さんの素晴らしいダンスが観られるっ!と期待していたのだが・・・(笑)確かにダンスは有ったが、殆どが男性4人女性4人のダンサー達によって踊られ、吉野さんのダンスは僅かに農民に扮して棒を持って作業をしている場面のみ・・・、しかも同じ振りで戸井さんも踊るんだわぁ?!

6日は前から4列目という席だったので、真剣そのもの、の表情で踊っている戸井さんの顔が目の前にあって、チョットおかしかった(笑)

ティエンとフエイを助ける解放軍の男性5人の皆さんはミュージカルで活躍されている方ばかりなので歌声はみな素晴らしいが、戸井さんが一幕の最後に黄色い衣装で歌う「運命」・・・贔屓目かもしれないがこの唄が一番心に響いた! この歌が一番よかったような気がした(^^)

ただ全体的に台詞も歌う場面でも感情が入りすぎてか、大声というか、怒鳴るような表現が多すぎたように思う。もう少し抑えた喋り方の方が苦しみや悲しみが良く伝わるのではなかろうか?

そんな気がしたけど。

ダンビエットの唄

ダンビエットの唄

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-01-09

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