もし時計が逆に回ったら

煙と灰と塵があつまり死体を形成し
その屍にどこからともなく突然命がやどり
呼吸を開始し心臓が脈打つ

その場を見守っている人たちは
目に涙をうかべているが
そのうち普通の表情をとりもどし
普通の生活へ

後ろ向きに歩き
下からものを食べ
上からものを出し
それら排泄されたものは動物や植物になってゆく

人はどんどん健康になって活発にうごきまわり
たくさんの仕事をこなし

いろんなことを
本を読んだり学校いったりして
忘れてゆき

やがて一人の赤子になり
ある日オギャーと鳴きながら
子宮の中に飛び込み
精子と卵子のDNAに分離される

それぞれのDNAは
男と女の体の一部となり
それら男と女は
またある日オギャーと泣いて
その親の子宮に飛び込んでゆく

かくの如く
未来に向かって
命は続き
種をかえ
一つの細胞となり
果ては虚空の霧となる

もし時計が逆に回ったら

もし時計が逆に回ったら

もし、そうなっても、ありかなっておもってしまいます。どうせ無始無終のこの世ですから。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-10-08

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