ベランダ

 由佳が部屋の窓を開けると、外から冷たい夕方の秋の風が部屋に吹き込んできた。置いてあったサンダルを履いて、ベランダに出ると、部屋の中とは違って気分がすっきりとした気がした。銀色の柵に両腕を乗せて、向かい側に一直線に通る道路やその手前の駐車場を眺めていた。学校から帰ってきた黒と赤のランドセルを背負った小学生たちが仲がよさそうに歩いていた。なんといっているかはわからないけれど、大きな声を出して笑い合っていた。楽しそうだなと由佳は思った。由佳も小さい頃は友達と一緒に家に帰った。あの頃、クラスでは物静かな方だったが友達は多く、毎日学校の近くの公園で遊んでは日が暮れるころに一緒に帰っていた。友達の中には小学生のころから男の子と付き合っていた子もいた。その頃はなんとも思わなかったのに、いつのまにか自分も彼氏が欲しいと思うようになり、高校生になった時に初めて男の同級生と付き合った。付き合い始めた頃は、そんなに本気ではなかったけれど、ラブホテルで初めてエッチをしてからは彼のことを恋人としてみるようになった。彼も彼でそんな私に対して、当初はやはり遊び半分で付き合っていたと後に告白したが、関係が深まってからは真剣に将来を考えるようになったらしい。そんな私たちはともに高校を卒業し、一緒の大学に進学した。別に二人とも東京からすぐ隣の県に住んでいたし、わざわざ一緒の大学にいかなくても一緒にいることはできた。それでもたまたま私たちの成績が同じくらいで、彼も私も正直大学に行ければいいくらいにおもっていたので、偶然も重なって同じ大学に通った。在学中は二人で隣の席に座っていることが多かった。彼も私もそんなに社交的ではなかったし、親しい友達もそれぞれにいたけれど、いつの間にか私たちの恋人関係は周囲に周知の事実になっていた。そんな私たちは無難に大学を四年で卒業した。私は大学院に進学し、彼は東京に本社のある会社に就職した。それを気に私たちは同棲を始めた。
 夕闇の中、沈んでいく太陽を眺めていると、祐斗が仕事から帰ってきた。玄関のドアが開く音が大きな音がした。振り向くとスーツ姿の彼がいた。普段着の彼よりもかっこよく見えた。彼は部屋に入ってくると、スーツを脱ぎ、ネクタイを外した。私はベランダから部屋の中に戻った。
「おかえり。今日は早かったね」
「今日は仕事が早く終わったんだ。いつもこの時間に帰れればいいんだけどね」
「お風呂沸いてるし、ご飯もできてるけど、どうする?」
「お風呂入ってくるよ」
「わかった」
 祐斗は私たちが一緒に寝ている寝室へ行ってスーツをクローゼットに閉まった。ショートパンツとTシャツ姿になった祐斗はバスタオルを持って洗面台の方へいった。
「早く出てきてね。お腹空いてるから」
「ゆっくり入りたいよ。先に食べててもいいよ」
「冗談よ」
 そう言って私は笑った。彼もにこっと微笑した。普段はクールな彼の笑うところが好きだった。こんな生活が始まってまだ三か月だけど、ずいぶんとしっくりときている気がする。

ベランダ

ベランダ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-10-07

Copyrighted
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