ファントム
2008/1/22・23日 『ファントム』 梅田芸術劇場
脚本=アーサー・コビット
作詞・作曲=モーリー・イェストン
上演台本・演出=鈴木勝秀
出演
ファントム(エリック)=大沢たかお
クリスティン・ダエー=徳永えり
フィリップ・シャンドン伯爵=ルカス・ベルマン&パク・トンハ(wキャスト)
カルロッタ=大西ゆかり
ゲラール・キャリエール=伊藤ヨタロウ
ベラドーヴァ=姿月あさと
他
舞台は中央の回り舞台は上下二段構造になっていて、その両脇に階段がありオペラ座と地下室が裏表でくるりくるりと場面転換をする。ミュージカルだからオーケストラはいるのだが客席からは姿は見えず、舞台前にもオケピはない。舞台の左右に小さなテレビのモニターがありそれにキーボードでの演奏と指揮をしている人のみの姿が映っている。この人が音楽監督の前嶋康明さんだろう。客席の後ろ正面にもこれと同じ内容で大きさの違うモニターがデーンと座っていた。
開演前から客席の通路を役の扮装をしたままの男女のアンサンブルの人達が無言で歩き回る。中にはパンを齧りながら歩いている人も居る。
舞台が始まっても客席をかなり使う。例えばクリスティーンの初舞台の場面では客席がそのままオペラ座の客席になり、舞台の混乱振りをそのまま客席で演じていた。私のすぐ側で「キャーッ」と叫び声を上げられたときはドキッとしたよ〜(笑)
【パンフレットのあらすじより】
19世紀後半のパリ、オペラ座通り。クリスティン・ダエーが歌を口ずさみながら楽譜を売っている。その声に魅せられたオペラ座のパトロン・フィリップ・シャンドン伯爵は、彼女がオペラ座で歌のレッスンを受けられるよう取り計らう。
そのオペラ座では支配人のキャリエールが解任され、新支配人のショレーが妻でプリマドンナのカルロッタと共に乗り込んできた。キャリエールはショレーに、オペラ座の地下深くに“ファントム”と呼ばれる幽霊が棲んでいるので地下にはおりていかないようにと忠告した。しかしショレーは、解任の腹いせだろうと全く取り合わない。キャリエールは“ファントム”と呼ばれるエリックのもとに降りてゆき、もはや彼を守っていく事は出来ないと告げる・・・・。
オペラ座にクリスティーンが訪ねて来た。オペラ座一のパトロンの紹介とあっては、ショレー達も無視する事は出来ない。カルロッタの衣装係りとなったクリスティーンは作業中でも歌を口ずさんでいた。ある日、その歌声を耳にしたエリックは、まるで光に導かれるように地上にでてゆき、声楽のレッスンを施そうと彼女に申し出る。
ただし彼にはひとつ条件があった―――その名を誰にも明かさないこと。
「それから」とエリックは続けた。「・・・仮面をつけます。顔を隠すために。」
シャンドン伯爵が主催したコンテストで、クリスティーンは見事な歌を披露した。カルロッタは、クリスティーンこそ妖精の女王タイタニーア役にふさわしいと進言するが、それは彼女を陥れるための罠だった。初日、開演前にカルロッタから勧められたハーブドリンクを口にしたクリスティーンは喉を潰し、舞台を台無しにしてしまったのだ。カルロッタの仕業と知ったエリックは怒り狂いクリスティーンを地下の棲みかに連れて行く。そしてクリスティーンは・・・、彼の素性を知りとうとう素顔まで目の当たりにすることになる。
この棲みかに連れて行くところまでが一幕・・・。
二幕の始まりはクリステーンがベットに寝ている。そこへキャリエールが降りてきてすぐここから出て行くように促すがクリステーンはきかない。キャリエールはエリックが自分の子供であること、その母はベラドーヴァと呼ばれる素晴らしい歌姫だった事、自分が結婚していた為ベラドーヴァと結婚する事が出来なくて、結果彼女は麻薬を用いその為えエリックが醜い子に生まれたのだと告白する。そのベッドの頭のところにカーテンが懸かっていてそこにベラドーヴァの姿が映る。彼女はエリックに対する優しい母の心を歌う。
♪?エリック あなたは そう 我が子よ
おまえは 私の光よ
ああ おまえに捧げる 渡しの命を
美しい子
この世に ただ一人だけ 私の宝
愛してるわ この世の誰より
(中略)
ここで生きて
地下深くでお眠りなさい 穏やかに
大丈夫 誰にも見つからないわ
エリック おまえを愛している
私の子よ わかるわよね
エリック 息子よ 我が子 そして光 〜♪
これを歌っているのは・・・、そう!宝塚の宙組で男役のトップを勤めた、そしてあの「エリザベート」のトートを演じた姿月あさとさんなのだ?!
カーテンに映るのは殆どがシルエットで後半の一瞬に顔が見えたかーー?と言った具合だったが、素晴らしい歌声だった。
なによりエリックへの愛が溢れている歌声だった。そしてクリステーンはエリックに迫る。
お顔を見せてください! エリックは拒絶するがクリスティーンは「お母様はあなたのお顔をみて微笑まれたのですよねっ!」
この言葉についにエリックは仮面を外すが・・・、顔を見たクリスティーンは一瞬固まり、そして走り去った・・・。残されたエリックは悲鳴にも似た泣き声を上げ地面に転がる。こちらの胸もズキズキと痛む・・・。
ここからエリックの転落が始まる。
カルロッタを感電死させ、警官を襲いピストルを奪うが彼も撃たれる。そんなエリックを抱きかかえるキャリエール。
♪〜
キャリエール:エリック おまえは そう 我が子だ
許してくれ 言えずにいて
なぁ 認められるかい 私を父だと
ファントム:気付いていた あなたのこと
わからないはずがないだろう
待っていたんだ 話してくれるの
キャリ:あぁ すべて私の弱さなのさ
ファン:許してた あなたを わかるね
キャリ:エリック おまえを
もう二度とは 一人にさせない 誓うよ
この身をかけて 守り続けるさ
エリック 息子よ 我が子 そして光
ファン:深く埋めて
地下深くで眠りたいんだ おだやかに
キャリ:約束する 誰にも見つからないよう
エリック おまえは
ファン:わかっていた
キャリ:私の子だ
ファン:わかっていた
キャリ:エリック 息子よ 我が子 そして光
このまま死んじゃうのかと思ったのだが・・・(笑)シャンドン伯爵とクリスティーンが一緒にいるところを見て逆上し、離れろっ!と叫ぶ。
クリスティーンを抱えて塔の上に登るエリック、追ってくる警官に向けてエリックを庇うようにピストルを構えるクリスティーン。
塔の上に追い詰められたエリックはピストルで撃たれ綱に飛び移る。
ここが凄いんだ!勿論背中につり金具は取り付けてあるが、塔から飛びだし天井から釣り下がる綱をバシッと手で掴み足を絡める!
そしてキャリエールに叫ぶ!
「撃ってくれ! 父さんっ! 母さんのところへ行きたいんだ!」 もう〜ここから涙・涙・涙・・・。
キャリエールに撃たれたエリックはその腕に抱えられながら息を引き取る。そんなエリックの仮面を外しそっとその頬にキスをするクリスティーン。
仮面の下にはとっても綺麗な死に顔があった!
カーテンコールの最後に正面の扉を開けて颯爽と出てきた大沢たかおさん、ロングヘアーにロングコートをなびかせて登場の大沢さんはまるでトートだわぁ〜(^O^)/
背が高く輝くような笑顔で素晴らしくハンサム!(爆)芝居の間中仮面をつけて損綺麗なお顔を拝見することが出来なかったので、余計に輝いて見える(笑)
初のミュージカル出演での歌は・・・、大健闘!と言っておこう(^^)
この舞台は私が知っているいわゆる劇団四季が上演しているアンドリュー・ロイド=ウエーバー版「オペラ座の怪人」ではなくてコピット&イエストン版だから、あの聴きなれた音楽は全く出てこない。そういう意味で最初は取っ付きが悪いと感じたのは事実だが、物語り進んで行くにつれ、そんな事は関係なくなった。物語のストーリーはほぼ同じだが「ファントム」の方はファントムの境遇とか父・母との関係に重点が置かれ特に父親キャリエールとのかかわりに主眼が置かれているように思えた。
ウエーバー版では火傷を負って醜い顔になったファントムは母にも拒まれ僻んで行き、それが犯行に結びついていくのだが、こちらのファントムは顔は醜くなったが父にも母にも愛されている。ただその醜さゆえ地下室に閉じ込められ世間から隔離されていため常識を持ち得ず、感情の赴くままに逸脱した行為に走った悲劇なのだろうと思った。プログラムの中では現代にも通じる引きこもりと書いてあったが・・・。
だが両親に愛されていたじゃないの! それが救いだ!
ウエーバー版の音楽は確かに素晴らしい。でもファントムの方は物語りが素晴らしい!
22日ソワレ終演後にルカスさんと姿月あさとさんのスペシャルトークがあり、姿月さんは舞台の中でシルエットでしか見えなかった歌う姿を素晴らしい歌声と共にご披露してくれた。
大阪弁で収録の模様をざっくばらんに語る姿月さんはとってもステキ! 宝塚を退団した後多くの人がミュージカルへと進む中、大好きだという音楽の道へ行かれ、コンサートを中心に活動されている。私は姿月さんの声が、アノ人の声よりもずっとずっと好きなんだ!(爆)
ファントム