SINTA(しんた)

SINTA(しんた)

ウロボノスの蛇。

『よう!』

『今月のバイト代、いくらも らったんや?』

同じコンビニで働いている洋司 がシフトの交代でバックヤード で、すれちがいざま話し掛けて きた。

『俺……まぁ、いっもと同じ十万 てとこかな…』

『洋司先輩は?』

洋司は、薄笑いを浮かべて

おもむろ 徐 に話し出した。

『聞いて驚くな…へへ』

『百万や!』

信太は、その答えに驚いたが冷 静に考え聞き直した。

『俺と先輩は働いている時間も 同じだから、そんなに貰えるわ けない…貰える給料も同じじゃ ないの。』

洋司は給料明細を信太に手渡し た。

『疑うなら自分の目で確かめな ~』

信太は洋司の給料明細の額に がくぜん 愕然とした。

『一十百千万……百万。』

『確かに、0が6個ついてい る!』

『ん?……この最後の0の後に付 いているマークな何?』

『蛇が自分の尻尾を加えて円を 描いているように見えるけ ど…』

洋司は自慢気に答えた。

『それは、ウロボノスの蛇とい う新しい通貨単位や!』

『円で貰える10倍の給料がウ ラボノス銀行へ振り込まれるん や♪』

『お前は、まだバイトに来て日 が浅いから知らないのも当然や な。』

『俺も、ここのバイト辞めた先 輩から教えてもらたんやで。』

『お前も、同じ働くのなら換金 してもらったほうがよくない か?』

『10倍やで!』

『オーナーに頼んだら翌月から はウラボノス銀行へ自動的に給 料が振り込まれるようになる。 』

洋司は、いきなり愛想笑いをし て肩に手を置いた。

『そこでだ…オーナーから誰に 紹介してもらったと聞かれたら 俺の名前を話してくれないか ~』

『実は…紹介者にも仲介手数料 が1割入るシステムになってる んや♪』

『悪い話しじゃないやろ♪』

『お互いにハッピーエンドや で!』

信太は洋司の誘いに乗るか、悩 んだ…

しかし…10倍は確かに魅力的 だ。

考え込む信太に追い討ちを掛け るように洋司が話し掛けた。

『悩んでるなぁ~』

『えーこと教えてやる!』

『確か、お前30までには、き れいな嫁さんと結婚して大きな 庭付きの家に住みたいとか言っ てたな~』

『その夢、叶えるチャンスは今 やで!!』

『何も悩むことないやろ!』

『思考は現実化するんや!』

『この世の中、行動するものが チャンスをつかむんやで!』

信太は腹を決めた。

『洋司先輩!』

『ありがとう!』

『俺、自分の夢実現のために オーナーに頼んで来る!』

洋司はシフトに入る信太の背中 を軽くポンポンと叩いて送り出 した。

『紹介したんは俺やで…頼む で!』

信太は、右手を上げて答えた。

シフト時間になるまで、少し間 があったのでスマホからオー ナーへ電話を掛けた。

プルルル……プルルル……プルル ル……

『おう、信太君、どうしたのか な?』

オーナーが優しい声で出た。

信太は洋司から聞いた話を実行 に移した。

『じっは、お給料の件でお話が ありまして…』

『次回の振り込みからウロボノ ス銀行を利用したいと思いま す。』

『信太君……その話を誰から聞い たのかな?』

『はい、同僚の洋司先輩から先 程、教えてもらいまして

是非、僕も利用させてもらいた いと思いました。』

『信太君、私も君の選択は素晴 らしいと思うよ。

明るい将来が約束されている。 』

『よく、決心してくれたね!』

『大歓迎だよ!』

『では、来月の、お給料からは 10倍のウロボノス通貨でお支 払をします。』

『これからも、コンビニバイ ト、頑張ってくださいね♪』

『オーナー、ありがとうござい ます!』

オーナーは思い出したように、 話を続けた。

『そうそう、確か君は幸街に住 んでいたね。』

『君の三軒隣に、以前、このコ ンビニでバイトしていた小池君 が住んでいる。』

『彼が洋司君のウラボノス紹介 者なんだよ。』

『彼は三年、ここで働いてい た。』

『ウロボノス通貨を利用して、 今では悠々自適な生活を送って いるらしい』

『アパートから引っ越して大き な庭付き家を購入し

世間も

うらや 羨 むような、きれい な、お嫁さんをもらって高級車 に乗ってるらしいよ。』

『君の将来の姿がそこにはある よ♪』

『給料振り込みの件、了解しま した……では失礼するよ。』

このコンビニでバイトしてい て、本当によかった!

信太の胸は喜びで満たされてい た。

奈落の底へ落ちる信太。


『お疲れさまでした!』

『おつかれー!』

夜勤バイトも終わり帰宅する信太。

いつもの道を一人暮らしのアパートへ向かう。

オーナーから聞いた小池宅の前を自転車で通り すぎる。

大きな庭付きの白い外壁のモダンな家。

庭先で花に水やりをしている若い女性の姿。

確かに、週刊誌にでも出てくるモデルさんのよ うな美しいスタイルと顔立ちをしている。

玄関前のシャッターが開き1台の高級車が出て きた。

スーツ姿の落ち着いた紳士が運転している。

彼は、庭先にいた女性に手を振り挨拶をして車 庫を出た。

『あの人が、小池さん……俺も、あんな暮らし ができる日が来るんだろうか。』

信太は自宅のアパートへ帰って風呂に入りビー ルとつまみ、それと鶏肉で軽く食事をして寝床 に就いた。

昼過ぎまで寝ていただろうか……玄関ポストに 1枚のチラシが入っていた。

【あなたの夢を叶える、ウロボノス銀行へ、預 金額が10倍になる!、お急ぎください。

私たちは、あなたを幸せな未来へ導くパトーナ ーです。】

『洋司が言っていた、やつだ。』

信太は服を着替えて、もらったばかりの給料を 持って早速、ウロボノス銀行へと足を運んだ。

銀行の自動扉を開くと、直ぐに案内係の女性が 声をかけてきた。

『当銀行へようこそ。』

『番号札をお取りください。』

108番……そんなにお客がいるのか?

周りを見ると、どの客も信太と歳があまり変わ らない青年ばかり。

眼鏡の細い男がもらったばかりの給料を換金用 紙と、ともにカウンターへ差し出した。

しばらくして封帯がしてある百万ウロボノス紙 幣が眼鏡男に手渡された。

眼鏡男は、小踊りして喜んでいる。

何やら、カウンターの受付係の女性から説明を 受けている。

眼鏡男は、うなづいて銀行の自動扉を出ていっ た。

『108番のお客さま。』

信太は給料袋を握りしめてカウンターへ向かっ た。

『換金すると手持ちのお金が10倍になるって 聞いてきたのですが本当ですか?』

カウンターの受付係の女性はニコリと笑い答え た。

『さようでございます。』

『お手持ちの金額の10倍のウロボノス紙幣を お渡ししております。』

所定の換金用紙に署名し金額を入れ五万円をカ ウンターへ差し出した。

『しばらく、お待ちください。』

彼女は、何やらコンピューター画面を操作して 、その後、五十万ウロボノスがカウンターへ差 し出した。

一枚の説明文が書かれた用紙が手渡された。

『当銀行のウロボノス紙幣は、ウロボノス自治 都市でしか、ご利用できません。』

『……はぁ?』

『俺、そんなこと聞いてないし!』

『やはり、俺、換金やめとく!』

『ウロボノス紙幣と、円を交換してくれ。』

受付係の女性は笑顔で答えた。

『当銀行は、一度換金したお金は再度換金いた しかねます。』

『ご了承くださいませ。』

カウンターを叩きつけ怒鳴る信太。

『こんなん、詐欺だぁ!』

『俺の金、返せ!』

カウンターに置いてあった花瓶が振動で床に落 ちて割れた。

すると、黒づくめのサングラスかけた屈強なガ ードマンが信太を両脇から捕まえた。

支配人らしき人物が現れて信太の前に立った。

『お客さま、騒ぎを起こされて当銀行としても 困ります。』

『この花瓶は、当銀行の大切な備品で、とりわ け創立者が気に入っておいででした。』

『弁済金として、百万ウロボノスを当銀行へお 支払いただきます。』

信太は、更に怒鳴った。

『俺に十万円、払えていうのか!』

『俺、はらわねーぞ!』

支配人は首を傾げて考え込んでから話し出した 。

『それならば、労働力でお支払して頂くしかご ざいません。』

信太は黒づくめの男たちに無理やり銀行の裏庭 に止めてある大型ワゴン車へと詰め込まれた。

中には、既に5人の若者が入れられていた。

『お前もやっらに、はめられた口か……』

髪の長い男が話し掛けてきた。

ワゴン車の窓は鉄格子になっていて黒いシール で外の様子は伺えない。

ブルルルーーーン

エンジン音が鳴りワゴン車が動き出す。

『どこへ連れて行く気だ!』

信太はワゴン車のドアを叩きつけ叫ぶ。

『そんなことしても、ムダだ……』

赤い髪の男が呟いた。

『俺、以前、聞いたことがある。』

『奈落の底にある強制労働施設に運ばれる借金 奴隷たちの話さ…』

『夢と絶望は一枚のコイン……どの目が出るか… …投げてみるまでわからないもんさ。』

ワゴン車は、どれくらい走ったのか……

知らぬ間に寝てしまっていた信太は怒号の声で 起こされた。

『お前ら!』

『出ろ!』

長いこん棒を持った大柄の制服姿の男が俺の首 根っこつかんで、車外へ投げ出した。

すると目の前には大きなトンネルが口を開いて いて

その中から、ひっきりなし大量の土砂を積んだ ダンプカーが出入りしている。

トンネルの側道を歩くように強制された5人の 青年。

『もしかして……これは、タコ部屋とか言う重 労働現場。』

長い髪の男が信太のその質問に答えた。

『その通りだ……これから俺たちは、この暗く てきっい職場で強制労働を強いられるわけさ。 』

こん棒を持った大男が叫ぶ。

『お前ら!、さっさと歩け!』

『逃げようなんて、へたな事、かんがえるなよ !』

『逃亡したものは、更にきっい労働を課してや るからな!』

信太は暗いトンネルを進み、とうぶん、見れな いであろう青空に別れを告げた。

トンネルの真上の頂きには……ウロボノス帝国のロゴが

燦然(さんぜん)と輝いていた。

地下都市建設へ。

『ここからは、搬送車に乗り込 め!』

監視の大男の声が響く。

『俺たちを、どこへ連れて行く 気だ!』

長い髪の男がみんなを代表して 監視に訊ねた。

彼の名は勇二。

この六人の中では最年長らしい 風格がある。

『お前たちは、これから借金の 返済が終わるまで、この巨大施 設の建設工事に日々働いてもら う!』

赤い髪の男がトンネルの入り口 へ向かって走り出した。

『俺はイヤダーー!』

『こんな、牢獄みたいな、とこ ろで一生こきつかわれるの は!』

監視の男が笛を鳴らした。

ピーピーピー!!

『逃亡者だぁー!』

『捕まえろーー!』

四方から監視員たちが赤い髪の 男を取り囲んだ。

大男が赤い髪の男の首根っこを 捕まえ叫ぶ。

『この者は、自ら返済の貴重な チャンスを拒み逃亡をはかっ た!』

『よって、この者には最後の道 を与える!』

最後の道?……信太は、赤い髪の 男がどこへこれから連れて行か れるのか訊ねた。

『その、最後の道とは、どこへ 行かされるんだ!』

大男は眼前にある高い絶壁を指 差した。

余裕で100メートルはある。

『あの絶壁が見えるか、お前 ら!』

『あそこから奇跡の生還ダイブ をやってもらう!』

『俗に言うバンジージャンプ だ!』

『生きて戻れたら、借金はチャ ラ、しかも一億円を再起の祝い 金として進呈する!』

信太は、更に話しに踏み込ん だ。

『じゃ、聞くが、今まで、生還 した奴が、いるのか!』

監視の大男が答えた。

『一人いた!』

『小池とか、言ったな……確か』

信太はハッと気付いた、こ、小 池……あの三軒どなりの。

『お前らも、その目に、しっか り焼き付けておけ!』

リフトで絶壁の頂上まで運ばれ る赤い髪の男。

監視員が三人同行していた。

監視員たちが、バンジージャン プ用のロープを赤い髪の男に結 びつける。

『さぁ、シヨータイム!』

絶壁近くでホバリングするヘリ コプターから聞き覚えのある声 が響く。

『余興に出費して下さったオー ナーの皆さま、存分にお楽しみ にください!』

信太はその声の主が誰か分かっ た。

『洋司ー!』

『おまえ、だましたなぁー!』

信太の心に怒りがわき上がる。

山の中腹にゴンドラのようなも のが降りてきた。

ワイングラスを片手に笑うオー ナーたち。

ヘリコプターから洋司はウロボ ノス紙幣を撒き散らした。

『景気付けだ!』

舞い散るウロボノス紙幣を血眼 になってかき集める労働者た ち。

『高見のゴンドラから、その様 子を見て笑い転げるオーナーた ち。』

赤い髪の男が絶壁の上に立っ た。

『お、俺はムリだぁ!……こんな 絶壁から飛び降りたら死んでし まう!』

監視員の一人が呟く。

『大丈夫、そのために命綱があ る。』

『生還した者もいる。』

ヘリコプターがホバリングしな がら絶壁の後方に向かった。

監視員たちは赤い髪の男を一 人、絶壁の上に残して、その場 を立ち去った。

ヘリコプターが高度を下げてき たため、強風が吹き付け赤い髪 の男は絶壁の上でバランスを崩 して

まっ逆さまに落ちた。

『うわーーーーーっ!!』

『た、助けてーー!』

ゴンドラの上から、その様子を 見て手を叩き喜ぶオーナーた ち。

赤い髪の男の姿は絶望の真下、 雑木林の中へと姿を消した。

監視員の大男が叫ぶ。

『お前ら、目に焼き付けた か!』

怒号が飛ぶ!

『さっさと歩け!』

信太は他の四人と、ともに地下 へ続くエレベーターへ乗せられ た。

どれくらい降りてきたのだろ う……

エレベーターの扉が開き広い工 事現場に出た。

ひろうこんぱい 疲労困憊してタンカーで運ばれ

る人、

や 痩せ細り力なくシャベル やツルハシを振るう人。

『ここは……なんなんだぁ!』

ぼうぜん 茫然と立ち

すく 竦む5人は詰所へ連 れて行かれ、それぞれに作業 服、靴、ヘルメット手袋が支給 された。

支給班長が5人に語りかけた。

『これは、ウロボノス帝国から 特別に安価で皆さまに支給させ ていただきます。』

『すべて込みで、百万ウロボノ スです。』

『元気に働いて、早く借金を返 済し地上へ戻りましょう♪』

勇二が班長に食ってかかった。

『百万ウロボノスていうと』

『十万円じゃねーか!』

『どこに、そんな高い作業服や 靴があるんだ!』

信太も、他の者も話し割って 入った。

『そうだ!そうだ!』

『それに俺たちの給料は一月、 働いていくらなんだ?』

班長はニッコリ笑って答えた。

『いい質問です!』

『皆さんの、お給料は一月で、 ……なんと十万ウロボノスもいた だけるんですよ♪』

勇二がみんなを代表して更に踏 み込んだ。

『十万ウロボノスというと、円 に換算すると、…月に一万円 じゃねーか!』

『これじゃ、地上へ返れるの は、いつになるのか、わから ねーじゃねーか!』

班長はニッコリと笑い、答え た。

『今日は初日ですので作業はあ りません。』

『明日からの作業に、備えて しっかり睡眠をとり休んでくだ さいね。』

班長はそう言うと自室へと入っ て行った。

驚愕の結末。

『起床!』

監視員の怒号で起こされた。

『今日から早速、建設作業にとりかかってもら う!』

『全員一列に並んで作業現場まで行進!』

シャベルとツルハシを片手に持ち暗いトンネル を進む。

俺は配線の取り付けや、不要品を一輪車に乗せ ごみ置き場へ運ぶ係だ。

ごみ置き場はトンネル 入り口に近い……俺は考えた。

ごみを捨てるふりをして、すきを見計らい、逃 亡しょう。

一輪車に満載したごみをトンネルの入り口まで 運ぶ。

案の定、監視員が交代の時間だ……しめた!

俺は物陰に隠れて姿勢を低くし雑木林目掛けて 走り出した。

雑木林の中へ荒い息で転がり込んだ。

どうやら、上手くいったみたいだ。

雑木林の中を、あてもなく、とりあえず歩き出 す。

『これは?』

木の枝にバンジージャンプで使われたロープが 引っ掛かっていた。

赤い髪の男はどうなったんだ?

信太の視線の先に人らしきものが横たわってい た。

『赤い髪の男だ!』

信太は、恐る恐る近付いた。

すると赤い髪の男の首の辺りから点滅する光が 見えた。

よく見ると首から電機配線が出ている。

バチバチというショート音。

赤い髪の男は、生身の人ではなく精巧に作られ たドローンだった。

ダンプカーの運転手が用を足すため車を近くに 止めた。

『これはチャンスだぁ!』

信太は、運転手のすきを見て荷台に転がり込ん だ。

なにも知らない運転手は、信太を乗せたまま走 り出した。

ジグザグの山道を幾つも下りトンネルを何度も くぐった。

やがて信太の見慣れた街に入った。

お昼御飯の買い出しに運転手が行き付けのコン ビニへ車を止めた。

信太は素早く荷台を降りた。

幸い街コンビニ……俺がバイトしてる店じやな いか!

信太は、その足で自分のアパートへ走った。

途中で、あの小池宅の前を通る。

例の美しい女性が庭で花に水やりをしている。

すると玄関横の車庫のシャッターが開いて高級 車に乗った紳士が出てきた。

小池さん……庭にいる美しい奥さんに手を振り 出て行く。

信太は疑問に思った……

この光景は昨日も見た。

しばらく、物陰に隠れて見ていると、再び美し い女性は庭に出て花に水やりをしている。

すると、玄関横の車庫のシャッターが開き、先 程、出掛けたはずの紳士が再び高級車に乗って 出てきた。

『どう言うことだ?』

紳士は車の窓から美しい女性に手を振って出て いった。

『何かおかしい!』

信太は庭で花に水やりをしている女性に声をか けた。

『こんにちは!』

『近くのコンビニで働いている信太て言います !』

『じっは、俺の先輩の先輩がお宅のご主人様な んです。』

『同じコンビニで働いていたよしみでご挨拶を と思いました。』

その女性は信太を見ると動きが止まった。

すると街を歩く人、車を運転していた人もすべ て止まった。

杖をついた、お年寄り、会社へ向かうサラリー マンやOL、学生たち。

すべてが時間が、まるで止まったかのように静 止している。

その時、後ろから、立ち竦む信太の背中を軽く 叩く手があった。

『俺や!』

驚いて後ろを振り向くと、そこにはコンビニバ イトの同僚。

洋司の姿。

『お前、俺をよくもだましてくれたな!』

食ってかかろうとした信太を両手でなだめる洋 司。

『まぁまぁ……まて!』

『俺の話を聞け!』

信太は洋司に怒鳴った。

『また、俺をだますきか!』

洋司は信太に真実を話す時が来たことを告げた

『信太、ちがうで!』

『周りをよう見てみい!』

『何かおかしくないか?』

ぐるりと周りを見渡す信太。

『すべて人々が、まるで時間でも止まったかの ように静止している…なぜなんだ?』

洋司が信太の肩に手を置いて話した。

『この世界にいる生身の人間は、俺とお前の2 人だけや!』

『お前が、あの美人の奥さんに声をかけたこと でドローン社会がフリーズを起こした。』

『つまり、お前と俺は、このドローン社会のウ イルスていうことや!』

『生身の人はドローンにより、すべて、すげ替 えられたんだ。』

『ドローンという蛇の頭が自らの創造者人とい う尻尾を食ったんや!』

『ドローン社会、ウロボノス帝国へ……

ようこそ、信太!』

SINTA(しんた)

SINTA(しんた)

コンビニバイトしていた青年、信太が ひょんな事から不思議世界の扉を開く 。物語りの意外な結末。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-10-04

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. ウロボノスの蛇。
  2. 奈落の底へ落ちる信太。
  3. 地下都市建設へ。
  4. 驚愕の結末。