晴天の霹靂
窓の外は校庭・・・
神楽学園高等部・・・俺の勤務先だ・・・
『自習』と大きく書かれた黒板の横で俺は窓の外を眺めていた
「寛治君、終わったよ」
教卓に自習プリントを置いたのは生田里奈、進学クラスのA組でもトップの成績
をあげてる生徒だ
「どうせ「白セン」でも見てたんでしょ?いやらしい」
続いてプリントを置いたのは生田七瀬、名前を見て分かる様に里奈の双子の姉だ
「一応俺先生な?「月城先生」って呼べな?」
確かに俺の視線の先には体育教師白田麻衣が居た
お嬢様女子高の教師なんて羨ましがられるが、実際はこれ程面倒な話もなかった
大学出て新卒でここに就職して数年、俺は平凡な一教師として暮らしてた・・・
そう・・・2ヶ月前までは・・・
東京湾クルーズウエディング
「疲れちゃいました?」
クルーズ船のデッキで風にあたっていた俺にそう笑いかけて
ドレス姿の白田先生がシャンパングラスを渡してきた
「不慣れだからね」
受けとって一口飲んだ
「流石「生田財閥」ですよね、こんな豪華な結婚式・・・」
「憧れる?」
「まぁ一応・・・女の子ですから・・・」
「俺と結婚すれば出来るかもよ?」
「はいはい、冗談と受け取っておきますね」
二人で笑った
「でもキレイだったなぁ・・・月城先生のお母さん」
「憧れる?」
「まぁ一応女の子ですから」
会話がループしている事に笑った
「それじゃあ会場に戻ってもみくちゃにされてくるわ」
俺は白田先生に手を振って船内に戻った
「寛治君どこ行ってたの?マジ皆探してたんだけど」
今日から妹になった里奈っがそう行って手を引っ張った
母親が俺の勤務する学校の理事長で日本屈指の財閥の当主と再婚した
しかも出会いに俺が絡んでいたので文句も言えず
教師にして生徒の義理の兄になった
一夜にして俺は「一教師」から「御曹司」にジョブチェンジをしたのだった
白亜の自宅
「寛治君って白センの事好きなの?」
食事中に七瀬が聞いてきた
「仲が良い同僚ってだけだよ」
「白セン綺麗だもんね」
里奈が乗ってきた
「付き合っちゃえば?」
「そっちこそ彼氏とか居ないのかよ」
「生徒のプライベートに立ち入るんだ?」
「俺はお前の兄貴だ」
「先生って感覚しかなんだけど」
「こっちだって生徒って感覚しかねーよ」
「仲良いね二人とも」
里奈が言い合う俺達を見ながらそう言った
こういう大きな家には家政婦さんが住み込んでいると思ってた
実際は夕食の用意をしたら帰って行った
両親は少し遅めの新婚旅行の真っ最中、帰りは来月になるそうだ
「寛治君結構人気あるんだよ?」
「女子高の若い男性教師なんて皆ある程度もてるだろ」
「やめてよ生徒とスキャンダルなんて、親の再婚で株上がりまくってるんだからね」
七瀬はそう言うと席を立った
「寛治君生徒に興味ないもんね」
里奈は美味しそうにメインディッシュを食べた
ダードフォード2番ホーム
母親と義父は元々知り合いだったらしい
それが俺の就職で再会のきっかけになったらしいし
生田財閥の一族にすんなり再婚を認められたのも
「神楽の教師の母」という肩書きが大きかった
「月城先生はどうして教師になったんですか?」
飲み会やら教室やらで何十回と聞かれた
「都合が良かったから・・・」
それが答えだった・・・
本当は公立の高校教師になろうと思ってた
でも給料が良かったから神楽にした
ただ・・・それだけだった・・・
「月城先生って和田先生と仲が良いんだと思ってました」
学食の教師エリアで食事をしていると白田先生が口にした
「他に男性の教師居ないからね・・・流石に教頭とは・・・って思うし・・・」
和田先生は生徒人気が最低な男性教師だ、無理もない・・・彼が生徒を見る目は
男のソレに近い、思春期の生徒はそういう事に敏感だ
「なんでですか?」
「色々あるんでしょ?生徒を刺激しないとかさ」
「馬鹿みたい」
「同意見」
和田先生はいわゆるロリコンでもないし生徒に「そういう」興味はない
だから神楽で教師で居られる
「立田先生は?」
「あんなサワヤカ太郎と飯なんて食えるかよ、カレーがペパーミントガム味になっちまうぜ」
俺はこうなって色々考えた・・・
皆にチヤホヤされる事が苦痛だった
和田先生には生徒と同じ位の娘さんがいる・・・
いつしか居酒屋で「娘みたいに思ってしまう、愛情と憎しみが入り混じったドロドロした
感情になる」と話していた
高校生になったら『人には色々ある』位感じ取れと思う
シルヴァービートル
神楽は毎月「考査テスト」がある
それの積み重ねが翌年のクラス分けに影響し
進路に影響する
学年トップクラスの生田姉妹が同じクラスに配置されてる事からも
学校側の本気度が伺える
通常は色々配慮して別クラスにするのだろうが・・・
「寛治君ここ教えてよ」
「教えられるか、あと今は「先生」じゃないからな?」
俺はビールの入ったグラスを煽った
「じゃあなんて呼んだらいい?「お兄様」?」
「いい加減にしなよ飛鳥?」
クラスでも「垢抜けてる」グループに属してる七瀬と「マジメ」グループの里奈・・・
毎月両グループ総勢8人の生徒に囲まれる生活をしてた
「でもさ、寛治君のお嫁さんになる人って「りっちゃん」と「ななさん」のおメガネに適わなきゃだめなんでしょ?
実際キツクない?」
誰かが言った
「えっと・・・橋本先生は?」
「えー?寛治君って白センと付き合ってるんでしょ?」
「あっそれ聞いた、この前食堂で一緒だったとか?」
「怪しいよね」
食堂が沸いた
「くだらない事ばかり話していないでちゃんと勉強しろよ?」
俺はバカバカしくなってその場を離れた
ミッドナイト
館の二階にある俺が与えられた部屋は無駄に広く、冷蔵庫まで置いてあった
だから妹達の友人が来ている時は殆ど降りていく事はなかった
だからキッチンであった七瀬に「珍しい」と言われるのも無理はなかった
「お茶切らしてな・・・」
親が居ればパーティー等も催される為、この家のキッチンは業務仕様だった
「ねぇ」
七瀬はシンクにマグカップを置いた
「白センとは何もないの?」
「お前までそんな事言うなよ」
「噂だとデートしてるとか?」
「休日は大体家に居るだろ、一緒に暮らしてるんだから分かるだろ」
「わかんないじゃん、学校の後かもしんないし」
「まっすぐ帰宅してますよ」
会話が面倒になり俺は冷蔵庫から出した2Lのお茶のペットボトルを片手に持ち
キッチンを出た
「おはようございます」
日曜日は家政婦さんが休みの為、キッチンにある適当なモノか
外食が主になるので、俺は妹達やゲストの分もファストフードを買おうと思っていた
「あれ?松本先生」
食堂にはエプロンをした数学教師、松本奈美が居た
「「あれ?」じゃないよ、昨日言わなかったっけ?」
しれっとした顔で七瀬が言った
「今回数学強化プログラムなの」
里奈が続いた
「え?わざわざ?休日に?」
「「は?」」
全員の声が揃った
「松本先生は飛鳥の従姉だよ」
「え?」
「ちょっとショックかも・・・」
「あ・・・違うんです松本先生、俺何というか・・・あんまり個人情報に興味ないんです」
「何必死になってるの?バカみたいだから座れば?」
七瀬が冷静に言った
松本奈美はショートカットで若干ボーイッシュな外見とサバサバした性格もあいまって
生徒人気はトップクラスだった、だから昨夜の会話にも名前が出たのだった
ちりぬるをわか
「人気あるわけだよなぁ・・・」
ここ数時間松本先生を眺めてた俺の偽りなき本音だった
丁寧に優しく教えるその姿は見習うべきものであった
「何松本先生ばっかり見てるの気持ち悪い」
「お前らガキと違って色気があるから見とれてたんだよ」
「寛治君松本先生がタイプなの?」
「俺なんかに好かれても松本先生は迷惑なだけだよ、あほらし・・・飯買ってきてやるからさっさと決めろよ」
「あ・・・もうそんな時間ですね」
松本先生が腕時計を見た
この家には車が5台あって、俺も例の赤いスポーツカーを貰って乗っていた
鍵を取りに自室に戻り再び食堂に戻ると松本先生が出かける用意をしていた
「月城先生、お一人では大変でしょうからお供いたします」
ただでさえ派手な車乗ってるのに松本先生みたいな長身の美人と歩いたら・・・と思うと
ワクワクした・・・結構・・・
てっきりピザやパスタと高をくくっていた生徒達から出されたリクエストは松本先生の手料理だった
「お前ら朝食食べただろ」と思いはしたが黙っていた
「あの・・・」
大型スーパーで買い物中松本先生が話しかけてきた
「はい」
「これは「デート」・・・なのでしょうか?」
「デートの定義を「男女二人きりでどこかに行く事」と仮定するなら「デート」ですね
実際「お買い物デート」という言葉が存在しますし・・・」
俺がそう答えると松本先生は嬉しそうに手で口を塞いだ
「初デートです、私」
「え?」
「私ずっと神楽ですし卒業してすぐ高等部に入ったので父以外の男性との出会いが
殆どなかったのです」
もったいない話だ、長身でスタイルも良く美人なのに・・・
「でも初恋とかは?」
「それは中学の時に当時の担任の先生で経験しています」
それは初恋なのだろうか?憧れな気もする
「家格という事も気になりますし私の伴侶になる方は「松本商事」の事も関係しますので
恋もなかなか出来ませんので」
「お金持ちのお嬢様も大変だね・・・俺じゃあハナから無理だわな」
「何を仰られるのですか?月城先生が居る所へ父が行く事を許しましたので
先生には十分その・・・なんというか・・・」
松本先生は困り顔になって言葉を捜し始めた
「でも松本先生ってサワヤカ太郎と付き合ってるって生徒が言ってましたよ?」
「立田先生ですよね、あれは無責任な噂です、月城先生こそ白田先生と交際されておられる
と生徒から聞きましたよ?」
「無責任な噂です・・・ったく女子高生ってのは・・・」
「まぁ・・・私もそうでしたから気持ちは理解出来ます」
笑顔の松本先生を見て「可愛いな」と素直に思った
ムーンライトコール
普段の松本先生はクールビューティーを絵に描いたような人だ
生徒にも教師にも態度を変えないし、淡々と仕事をこなす
受け持ち学年が同じでもあまり会話のきっかけはなかった
「月城先生っていつもラーメン定食ですよね」
「無難だからね」
「栄養偏りますよ?」
「かなぁ?」
白田先生と居る時のまったりとした陽だまりみたいな時間とは
完全に違っていた
「考査も終わりましたしそろそろ文化祭の季節ですね」
「もうそんな季節か・・・イヤな季節だ・・・」
神楽の文化祭はいわゆる「お祭り」ではなく普段学校に来れない
保護者に1年の学業の成果を見せる「発表会」の毛色が大きかった
それは教師も同じで、理事や学校関係者からの査定対象になる
「今年は関係ないよって訳にもなぁ・・・」
俺はため息を吐いた
深夜に電話が鳴ったのはそんな頃の話だった
「あの・・・月城先生・・・ですか?」
「あ・・・はい・・・」
知らない番号だった
「松本です・・・あの・・・お時間大丈夫でしょうか・・・」
「松本先生か・・・七瀬にでも聞いたんですか?」
「あ・・・いえ・・・飛鳥です・・・飛鳥は七瀬さんから聞いていると思うので
遠からず七瀬さんとも言えます」
「まぁ職員名簿見れば載ってるんですけどね」
「あ・・・それは気づきませんでした・・・今度からそうさせていただきます」
「何かありました?七瀬が何か悪い事やってるとか七瀬が不純異性交遊とか・・・」
「あ・・・いえ・・・今度の週末がですね、三連休なのですが遊園地の招待券なるものを
2枚頂きまして、もしよろしければご一緒に行っていただけないかと・・・あ・・・友人は
皆何故か予定が合わなくてですね・・・え?・・・あ・・・・期限がですね月末まででですね・・・」
受話器の向こうから飛鳥の声が聞こえた
「いいですよ、中日・・・日曜日にお迎えに行きます」
俺は笑いをこらえながら言った
ハリーゴーラウンド
松本邸は自宅から然程離れていない場所にあった
「なんか・・・お城みたいだな・・・」
洋風な生田邸と違い松本邸は純和風だった
「お待たせしました・・・あの・・・飛鳥が来る前に早く行きましょう・・・」
従妹の飛鳥は同じ敷地内の別邸に住んでいるのだと七瀬が教えてくれた
「いつもカッコイイ格好をなさってるから松本先生の私服ってのは新鮮です」
「あ・・・あの・・・私は月城先生が以前「大人っぽい」と仰ってくださったので、その様な
服装を選んでいた所、飛鳥が遊園地なのだから動きやすい格好が良いと昨夜提案を
いたしまして・・・やはり月城先生は大人っぽい服装を好まれるのでしょうか?」
「よくお似合いですよ、かえっていつもと違う方が独り占め感がして嬉しいですよ」
俺は昨夜の飛鳥と松本先生のすったもんだを想像すると笑いながらそう答えた
「そ・・・独り占めだなんて困ります・・・」
松本先生はパーカーの袖を伸ばすとしきりに真っ赤になった顔を隠そうとした
「飛鳥は大人っぽいからなぁ・・・」
俺が松本飛鳥と苗字で呼ばないのは隣の松本先生が居るからだった
「飛鳥は私の友人に可愛がられて育ったので耳年増なのです、姉としては
危なっかしくて見ていられません」
本当に姉妹の様に育ったのだろう、松本先生の表情を見てそう思った
手を・・・
遊園地は当たり前の様に混んでいた
「あの・・・連休の中日ともあり・・・通常より人の数が多い様に思われます」
「うーん・・・だな・・・家族連れも多いな・・・」
「あ・・・あの・・・私・・・あ・・・やっぱいいです・・・」
もじもじする松本先生が可愛かった
「あの・・・お化け屋敷というモノがあってですね、個人的には驚かされるのは
大いに苦手なのですが飛鳥が言うには男性は行きたがるモノだと言っていました」
「あぁ・・・お化け屋敷かぁ・・・」
「あとですね、あの様に速度が出る車に乗られていらっしゃるのだからジェットコースター等も
お好きではないかと申しておりました・・・いかがでしょうか?」
「うーん・・・松本先生は何が乗りたい?」
「わ・・・私はですね・・・かんら・・・いえ・・・ではなくて・・・あれです」
恥ずかしそうに松本先生が指さしたのはメリーゴーランドだった
「いつも忙しい父が一度だけ遊園地に連れて行ってくださいまして・・・あれに乗せてくださいました
なのでいつしか大人になったらご交際させていただいている男性の方と乗ってみたいと思っておりました」
言ってから「しまった」という顔になった
「俺で良かったら乗りませんか?」
「あの・・・私・・・」
「どこから見てもデートじゃないですか?今日だけだとしても彼氏を演じさせてくださいな」
「あの・・・今日・・・だけじゃなくても・・・ですね・・・あの・・・」
オーバーヒートしてる松本先生の手を握って俺はメリーゴーランドに向かった
「あの・・・」
「ん?」
「目標・・・達成です・・・あとは・・・高望みだから・・・です・・・」
「観覧車?」
「あの・・・幸せ過ぎて・・・色々望んでしまったら・・・実現してしまったら・・・全部泡沫になってしまうんじゃないかって・・・
今日は・・・だから・・・これ位の幸せが身の丈なんです」
松本先生は俯いた
「俺は・・・」
言いかけて「彼氏みたいなセリフになる」と思って止めた
「ってかもう少し上手く隠れような?七瀬・飛鳥?」
メリーゴーランドを降りて少し歩いてから突然振り向いて俺は言った
To
「こういう時は見て見ないフリをするもんだよ寛治くん?」
開き直った顔で七瀬は言った
「ちょっと、飛鳥・・・」
「だってお姉ちゃん心配だったんだもん、昨日だって・・・」
何か言いかけた飛鳥を奈美が慌てて遮った
「そうそう、私も寛治くんが心配でさ」
「は?」
「襲いかねないからね、松本先生美人だし」
「襲うか」
一応つっこんでおいた
飛鳥や七瀬が居ると至っていつもの松本先生だ、クールビューティーで
飛鳥のお姉さんで・・・
「やっぱ私も妹欲しいな」
「里奈いるだろ」
「里奈は妹って言っても双子だしなぁ・・・」
「お姉ちゃんが寛治くんと結婚するともれなく私付いてくるよ」
飛鳥の言葉に激しく反応した人が一人・・・
「あ、あ、飛鳥?ひ、人様の迷惑もですね・・・」
「ななさんもお姉ちゃんなら文句ないでしょ?」
「まぁ白センよりはね・・・」
どうして女子の会話って主役不在で盛り上がるんだろう・・・
「え?でも白セン優しいじゃん」
「だって家に帰っても教師が居るんだよ?信じられる?」
多分満場一致で「今と大差ないじゃん」って心でつっこんでいた
「前から思ってたんだけどさ・・・ななさんって白センにキツイよね」
「あんま好きじゃないんだよね・・・」
ここにはその同僚が二名程居るんだが・・・
「大体考えてみなよ、今の寛治くんと白センが結婚出来る訳ないじゃん」
七瀬の発言で場の空気が変わった
「やっぱ私はななさんの妹になる運命なのか・・・ん?りっちゃんも・・・だから・・・
やった、勉強教えてもらいまくれるじゃん」
「飛鳥?」
こういう時に飛鳥のムードメーカーさに救われる
ディナーパーティー
松本邸の離れで俺と松本先生が並んで食事をしているのには
訳があった
元々七瀬と飛鳥が仲が良く、里奈もクラスメートであるから
松本家と生田家には交流があった
新婚旅行から戻った両親を待っていたかの様に今回のパーティーに誘われた
のだった
「なんだこの重苦しい空気は・・・そして大人しいJKズは・・・」
「おじい様が居るからです」
松本先生の祖父は現松本商事会長職で社長の息子も頭が上がらない
厳格な人柄が顔に出た様な人だった
「寛治君と言ったね・・・」
突然話しかけられた
「はい」
「孫娘が公私共にお世話になっているらしいな」
「いえ、松本先生は素晴らしい教師であり人格者ですから
学ばせていただく事ばかりです」
隣の松本先生の顔が赤くなるのが分かった
しばらくして松本祖父が床に就く為に離席すると少し場が和んだ
「それで寛治君・・・」
今度は松本父と生田父の質問攻めにあっていた
「まぁ七瀬も里奈も成績は良いですよ?細かい事は副担任の松本先生の
方が詳しいんじゃないですか?」
そつなくそつなく・・・あくまでビジネスライク・・・
「んで?そっちのお嬢さんとはどこまでいってるの?」
いきなり切り込んで来たのは母親だった
「は?」
「母親としては将来の娘は気になるのよね」
「てめ・・・あー・・・あれだ・・・」
「お、お兄様と松本先生はまだ何も・・・」
何故か七瀬がフォローした
「てか七瀬と里奈がいっぺんに出来たのにまだ欲しがりますか母上は」
慇懃無礼に言ってやった
「当たり前でしょ?アンタみたいな出来損ない女手一つで育て上げたんだ、カワイイお嫁さん
位連れて来たってバチは当たらないよ?」
「ま、アンタみたいなのにこんなステキな人が惚れるわけもないけどね」
「あーはいはい」
母親に手を振って隣を見たら松本先生が静かにオーバーヒートしていた
「でも今の話だと松本先生とお兄様の交際は認められたって事だよね」
里奈の一言で隣から「ボンッ」って音が聞こえた気がした
ミッドナイトチェイス
両親達は本邸に泊まる事になり、JKズと俺と松本先生は離れに床が用意された
「で?ぶっちゃけ寛治くんってお姉ちゃんの事どう思ってる訳?」
まぁ話の流れでこうなった
「ノーコメント」
「松本先生は?」
「あ・・・あの・・・私は・・・あの・・・ですね・・・」
「やめといた方が良いですよ?寛治くんこう見えて変態ですから」
七瀬がお茶を飲みながら言った
「誰が変態だって?」
「エッチなDVD観てるくせに」
見事にJKズが食いついた
「まだまだですね・・・私も・・・」
呟いて松本先生はいつものクールビューティーに戻った
PENNY LANE
「「生徒に見られたらどう言い訳しようか」とか考えてます?」
助手席の白田先生がそう言って悪戯っぽく笑った
「ん?いや?白田先生と噂になるなら本望ですよ」
「お上手お上手」
そう言って笑った
「松本先生の耳に入ったら大変ですよ?・・・分かってますよね?」
「まぁね・・・なんで白田先生は?」
「秘密です」
白田先生は笑顔で言い切った
「で?」
「「で?」って?」
「お付き合いするんですか?松本先生と」
白田先生の声が少し怒った様に聞こえた
「どうなんだろう・・・外堀は埋められ始めてるけど・・・」
「月城先生って意外にルーズですよね」
「正直最近色々あり過ぎてさ・・・」
俺はアクセルを踏んだ
LOVE SURVIVE
「あ・・・えーと・・・」
夕暮れの教室で俺は困り果てていた、目の前には女生徒が一人・・・
「こ・答えは今じゃなくても良いので・・・」
「あ・・・いや・・・」
俺は教室を飛び出した生徒を見送った
「D組の和田さんにコクられたんだって?」
翌日の食卓の話題に上がる程その一件は有名になっていた
「最近モテモテだね寛治くん」
里奈が笑った
「で、どうするつもり?」
「適当に誤魔化すさ・・・」
七瀬に答えた
「そういうのって一番傷つくんだよ?分かってる?」
「でもさぁ・・・」
「大体寛治くんはなんでD組の担任な訳?努力が足りないんじゃないの?
そんなんだから告白とかされちゃうんだよバカみたい」
七瀬は食堂を出て行った
「七瀬はなんであんなに怒ってるんだ?」
「さてね・・・」
里奈はうまくはぐらかした
「よくわかんねーなぁ・・・」
まったくもって分からなかった
晴天の霹靂