咀嚼

「のり子、またそんな飲み込んで、、よく噛んで食べなさい!」

「ごめんなさい、、、」


私は食事を摂るのが苦手だ。
一度も楽しいと思ったことはないし、おいしいと思ったこともない。
口うるさいお母さんに食べ方を毎回指図されながら食べるのは肩身が狭く息苦しい。

幸い、学校では友達がいないから1分足らずでトイレで弁当を口から胃へ流し込む事が出来る。

でも夕飯は自宅だからそれが出来ない。


「のり子!唐揚げ飲み込む馬鹿がどこにいるのよ?!最低30回ずつ噛むまで今日は許しませんからね。
お母さんは洗い物してくるからちゃんとよく噛んで食べてるのよ。」


「…………」


30回も噛んだ唐揚げは、ドロドロとして、クラクラして、油が口内に膜を張って、まるで人をーーー•••





バキッバキッバキッバキッがリッガリッがリッガリッ


「のり子?」


バキッバキッバキッバキッゴキッグギギっ


「ギャアアアアアアア!!!
のり子、のり子、、あ、あなた歯が、歯が、、」


私はよく噛みすぎて自分の歯と歯茎を噛み砕いていた。


よく噛めば噛むほど味わえる血肉の味。
私は三年前に咀嚼しつくしたお父さんのことを思い出していた。
あれ以来普通の食事が出来なくなってた。
何を食べても甘い、辛いとかの味しかしない。
固い、柔らかいとかの食感しかしない。
ずっと、退屈で、寂しくて、虚しかった。



「最低、30回ずつ、噛むから、お母さん、
もう怒らないで、、」


私はお母さんの膣に頭部を突っ込み里帰りを果たした。
そして中から順に食い荒らした。
もちろん30回ずつ咀嚼して。

咀嚼

咀嚼

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-09-30

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