きこりのグレン

物語の主人公、きこりジャーナリストのヤマモト

彼は伝説のきこり「グレン」に会うべくグレート山に足を踏み入れる

そこでグレンを父と呼ぶ少女「グレーテル」と出会い世界の真実へ触れることになる。

精霊と人が織りなすヒロイックファンタジー「きこりのグレン」

君は一つの世界の行方を見守る傍観者となる

File01-ログハウスと池と僕達-

きこりのグレン

File01-ログハウスと池と僕達-

「それにしてもこの山は暑いなぁ」

僕の名前はヤマモト

フリーのきこりライターとして世界各地のきこりを取材して回っている

伝説のきこりがいるとされているグレート山に入って2日、うだるような暑さと虫の多さに嫌気がさし始めている

「一体どこにいるんだよ、伝説のきこりさん!」

早く伝説のきこりに会いたい。その思いから独り言は叫びに変わる

「きこりを探しているの?」

突然僕の背後から女性の声が聞こえた

振りかえるとそこには白銀の髪をしたまるで森の妖精のような女性がいた

「え?!あなたはどなたですか?」

「きこりを探しているの?」

僕の問いかけに彼女は同じ質問を投げてきた

「え、あぁ、そうなんです。この山に住んでいると言われている伝説のきこりに会いに来ました」

「そう、ならばこちらに付いてきてくれるかしら?」

そういうと白銀の髪の女性は歩き出した

慌てて後を追いかける

「あなたは伝説のきこりの知り合いなんですか?」

彼女の後姿に質問を投げてみる

なんとなく予想はしていたが返事は無かった

それにしてもこの女性の歩く速さは半端ではない

鬱蒼と生い茂る木々や草を払う事なくすいすいと進んでいく

一方僕は枝に肌を傷つけられ、ツルに足をとられボロボロになりながらなんとかついていく

やっとつかんだ伝説のきこりの手がかりだ、逃すわけにはいかない

がむしゃらに山の中を進んでいく

もうどれくらいの時間が経ったろうか、いま彼女を見失ったら僕はこの山を出られないだろうなと思い始めた時、開けた土地に出た。

奥には木の丸太で出来たログハウス、手前には銭湯の湯船程の大きさの池があった

「グレーシア、その人は?」

後ろから低く、渋い声が聞こえた

今日はやたら後ろから声が聞こえるな

歳は30半ばだろうか、屈強な肉体と焼けた肌の迫力で貫禄のある男だった

「お父さんに会いたいそうだったから連れてきたのよ」

お父さん?それにしては若すぎだろう。どう見てもグレーシアと呼ばれた女性は二十歳前後ぐらいだと思うが、それとも最近の女の子は成長が早いという事だろうか

疲れた脳が自分でもよく分からない理論展開をする

まぁそんな事はどうでもいい

「は、初めまして、ヤマモトと申します。伝説のきこりに取材がしたくやってまいりました」

「こちらこそ初めまして、俺はグレン、伝説かどうかはわからないがきこりをやっている」

これが僕とグレン、そしてグレーシアとの初めての出会いだった

今思えば僕がグレート山に入ったのは間違いだったのかもしれない、世界の理という名の神は、すぐそこまで来ていたのだから。

-第01話 了-

File02-お茶ときこりと傷薬-


「お茶を出すわ、ヤマモトとお父さんはお話をしていて」

いきなり呼び捨てですか、、、
グレーシアはそういうとログハウスへ入っていった

「ヤマモト、俺達も家に入ろう」

どうやらあのログハウスがグレン達の家らしい

「はい」

グレンの後に続いて家に入る

ふっと木の良い匂いが疲れた体に染み入る

奥に見えるキッチンではグレーシアがお茶を淹れるためのお湯を沸かしていた。

「それにしてもヤマモトは傷だらけだな」

そういうとグレンは僕の頭を鷲掴みにした

190cmはあるだろうか、大男に頭を鷲掴みにされた僕だったが慌てはしなかった

「治癒の精霊術をかけてやる」

そう、きこりと呼ばれる人々は精霊術と呼ばれる不思議な能力をもっている

そして頭を鷲掴みにするこの様子は僕も何度か体験した事がある「治癒の精霊術」だ

グレンが目を閉じうっすらと光りだす

すると僕の体にあった擦り傷、切り傷、おまけに疲労までが次の瞬間にはまるで無かったかのように消えたのだ

「すごい、こんな完璧な治癒の精霊術は初めてだ」

「精霊術を知っているのか、きこり記者というのは本当のようだな」

「良かったわねヤマモト、お父さんが他人に治癒の精霊術を使うなんて相当機嫌が良い時以外無いわよ?」

グレーシアがトレイにのせてお茶を運んできた

「さらに私が他人にウェルミントティーを淹れるのも相当機嫌が良い時だけよ」

ウェルミントティーと呼ばれたお茶はエメラルドグリーン色をした不思議な匂いがするお茶だった。

「さ、二人とも席について」

ドワーフ級の職人が作ったような立派なダイニングチェアに腰をかけウェルミントティーを一口飲む

「うぐ、こ、これは・・・」

ひたすらにまずかった

まるで、、、例える言葉が無いほどにまずかった

「はっはっは、グレーシアのお茶に対する味覚は絶望的に俺達のそれとは違うんだよ」

見るとグレンは一口もお茶を口にしていなかった

「そんな言い方は無いでしょう!こんなにおいしいのに」

ぐびぐびと飲んでいるグレーシアはグレンの物言いに憤慨した様子ながらもウェルミントティーの味に満足気だった

「さてヤマモト、お前は俺に何が聞きたいんだ?」

そうだ、僕は伝説のきこりであるグレンに取材をしに来たんだった

「はい、まずお話を伺う前にグレンさんはマウンテンブレイクという組織を御存知ですか?」

「…知っているよ、代表を務めるのはラジアータ・ポルナレフ、世界各地の山を更地にして怪しげな精霊脈研究所を立てエネルギー産業を牛耳っている組織だろ」

僕達が生活する上でのエネルギーは2種類

一つは第一次産業革命で生まれた石油資源を熱エネルギーに変換し、電力、動力に変えて使用するマテリアルエネルギー

もう一つは「きこり」と呼ばれる一握りの人達が世界に存在する五大精霊の力を借りて様々な物理現象を起こすスピリットエネルギー

約100年前までは安定供給が可能なマテリアルエネルギーが一般的だったが、石油資源が底を尽き始め、これ以上の利用は無理だと言われ始めた。
そんな時、突如ラジアータ・ポルナレフなる人物が率いるマウンテンブレイクという組織がスピリットエネルギーを安定供給出来る技術を発表。世界のエネルギー供給業界を牛耳った。

しかしそのエネルギー供給技術は今日まで秘匿とされ、誰一人なぜこのエネルギーが使用できるのか分からない状況で生活をしている。

そして現在、世界各地で精霊力の低下による異常な自然現象が起き、その原因がマウンテンブレイクが行うエネルギー供給方法に問題があるのではと疑問視がされている。

そしてこのマウンテンブレイクにはエネルギー供給技術の他にも謎がある。
それはラジアータ・ポルナレフなる人物が100年以上もの間この組織のトップとされ、その実態は一切表には出ない事だ。

僕は後者の秘密の真実を知るためここに来た。

「そう、あなたは知っている、なぜならラジアータ・ポルナレフなる人物、それがあなた、グレン・バーミリアンその人なのだから」

決意はしていたつもりだ、ここで死んでも真実を追い求めるのを止めるよりはマシだと。
だが言葉に出してみて、グレンの顔を見て、2度目の決意をした。ここで死んでも真実を追い求めるのを止めるよりはマシだ、と。

-第02話 了-

きこりのグレン

きこりのグレン

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-04-09

Copyrighted
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  1. File01-ログハウスと池と僕達-
  2. File02-お茶ときこりと傷薬-