party with you
初めまして。
…本当は全ジャンル混ぜたい。
プロローグ
首都から少し離れ、閑静な森をぬけるとそこにはこの街唯一の大きな屋敷がある。
その屋敷に住まうのはこの街の誰もがよく知る名門相澤家。海外から起業して一年、その主は玩具製菓メーカー「rabbit」の創業者であり、瞬く間に世間にその存在を知らしめた人物、相田理人がたった一人の家族と使用人ともに暮らしていた。
彼には15歳の娘がいた。世にも稀な美貌を持っていると彼はことあるごとに友人に話した。
「じゃあ、その自慢の娘を見せてくれよ」
自慢された友人はその少女がどれほど美しいのか知りたくて彼にいつも頼んだ。
「だめだ」
それに対して彼は頑なだった。
「あの子は病気なんだ、外に出せない。」
なんの病気か。彼はそれにも答えなかった。
「あの子は誰にも会えない。だけどあの子は綺麗なんだ」
それはまるで自分の娘を狂愛するかのような口調だったという。
『相田家は狂っている…』
そんな噂が立つのは彼が友人にこの話をして間もなくのことだった。
コンコン…。
「おはようございます、お嬢様。起床のお時間でございます」
執事・セバスチャンの声が部屋に響く。
「置いてかないで…!」
彼女は空に手を伸ばした。
「お嬢様?」
執事は彼女のそばに散らばったトランプを見てため息をつく。
「貴方って人は…また夜更かしでもしていたのでしょう」
彼はモーニングティーを淹れる。コポコポと温か香りがベッドに包まる彼女の鼻腔を刺激した。
「ハーブティー?」
「ええ。お好きでしょう?」
やっと目が覚めてきた彼女はカーテンから差し込む光に目を細めながら、執事に問いかける。
「ねぇセバスチャン」
「なんでしょう、お嬢様」
「お爺様の今日のご予定は?」
「会議が2件、会食が1件お昼に。その他はお仕事になると思われますが」
セバスチャンは上の空、まるでメモを読み上げるかのように暗唱していく。
「流石ね」
「いえ、それほどでも…」
執事は顔を伏せる。それで謙遜したつもりなのか。でも口元はきっと緩んでいるのだろう。
私は考え込んだ。脳裏に浮かぶあの映像。子どもの声。
『所詮人の深層心理…」
夢の中の言葉をゆっくり反芻する。
「お嬢様?」
あれが実現できたら楽しいのだが…。彼女は目の前にスイーツを差し出された子どものようにクスクス笑う。
「ねぇ、セバスチャン」
そう、きっと楽しい。
「お願いがあるの、聞いてくれない?」
そう言った時の彼の驚いた顔…。
ふふ、私はその時どんな顔してたのかしら?
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