夢3
彩音は長い間夢の中にいた。目を覚ますと部屋のカーテンが揺れる音がした。ベッドの中で体を丸くしながら、恋人の直樹のことを考えた。遠く離れた場所に住んでいる彼。優しそうな笑顔や体のぬくもりを思い出していた。
部屋の中はしんと静まり返っていた。ワンルームの部屋には小さなガラスのテーブルと椅子が置いてあり、ダンボール箱が部屋の一角を占めていた。仕事から帰ってきて疲れた体を起こしながら、テーブルの上の携帯電話を手に取った。電源を入れると直樹から連絡が来ていた。
―昨日は遅くまで仕事大変だったね。今日はゆっくりと休むといいよ。
普段は無愛想な彼だけれど、時折優しさを見せた。彩音は直樹に優しくされるたびに彼に惹かれていった。付き合い始めてからもう二年が経ったが、会えない寂しさや不安はあるけれど、彼とは仲がよかった。
―連絡ありがとう。直樹もお仕事頑張ってね。
彩音は直樹にそう返信して、携帯電話をテーブルの上に置いた。ガラスの高い音が部屋に響いた。心の中に小さな明かりが灯った気がした。ぼんやりとベッドの上で部屋の中を眺めていると、外から小学生たちの話し声が聞こえた。皆楽しそうに声を上げて笑っていた。自分にもそんな時期があったなと思いながら、ベッドから降りた。
夢3