一汁散在


私は小さい頃に手術を受けた。
けれどうちは貧乏で病院に行けなかった。
だからママとパパが医療ドラマの見様見真似でメスを握った。
そして私は死んだ。

いや、正確には、生まれ変わった。
私は少し特別な体を手に入れたんだ。
そしてそれを利用してママとパパと私で商売を始めた。
今では生活に不自由なく暮らしているわ。

マンションの一室でそれは行われている。
まずお客様が来て受付を済ませる。
そして好みの器具、刃物、鈍器を選び、それによって支払い額が変わる。
先払いを済ませたら、あとは私の居る奥の部屋に通されるの。

そして私は死んだ。

お客様は私の膣の収縮が弱くなる前に狂い犯し、千切れた首から血を吸い、悶え、射精する。

そして事を終えるとシャワーを浴び、満足気に帰って行く。

そして私は目覚める。

そう、ここはネクロフィリア専門の風俗店。風俗嬢は私一人。
私はママとパパから受けた手術で、死んでも膣内に射精されるとそれが薬となり、養分となり生き返る。
精子のタンパク質のおかげかしら?殴られ刺され切断されても数分で元の綺麗な身体になるの。
マニアでも知らないお店だけれど、お客様は絶えないわ。

ママとパパが私にどんな手術をしたかは知らない。
ただ、三人で幸せに暮らしたかっただけなんだと思う。
私も毎日三食あったかいご飯が食べれて、ふかふかのベッドで眠れる日々に感謝している。
この生活を手放したくない。絶対に。そう。絶対に。

そして私は死んだ。

今日のお客様に腹を切り裂かれ、子宮を潰した。
そしていつものように射せ、、、否。
私はお客様を殺した。何度も何度も心臓を刺した。まるで何かが壊れたかのように。
それから私は私を食べた。
私の子宮を奥歯ですり潰し、臭い息を吐きながら。


バタン!

ただならぬ空気を感じたのかママとパパが勢いよく扉を開けた。

ああ!なんてことを、、私は、私は。


「ママ、パパ、ごめんなさい、、早く精子を、、早く精子を私に、、」


遠のく意識の中。
私を肴に涎を垂らしながら狂人の如く腰を振るママとパパを見た。


そして私は死んだ。

一汁散在

一汁散在

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-09-20

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