夜の海

なるみゅうみゅう

私は一人夜の海へ来ていた。

私とあの人が好きな缶ビールを持って。

「一ヶ月ぶりね」

そう言って私はあの人の缶に自分の缶をコツンとぶつけた。

私が何を言っても返事が無いのはいつものこと。

私とあの人はこの海で3ヶ月前に出会った。

その日私は、一人傘もささず雨が降る夜の海へ来ていた。

私は泣いていた。

ひとしきり泣いた後、海へ入るつもりだった。

その私の頭上が急に濡れなくなった。

見上げると傘をさした男が一人いた。

男はかがんできて言った。

「一人で泣くと泣き止めないよ」

そうして、私の頬をつたう涙を大きな手でぬぐってくれた。

その手が思いのほか温かくて優しくて私はまた、泣いた。

あら?
やだ雨だわ。

びしょびしょになる前に帰る事にするわね。

もう、涙をぬぐってくれる人がいないから。

夜の海

夜の海

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-09-18

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