性転換【Ⅹ】
【性転換Ⅸ】
「浩樹~ ここに新しいブラジャー置いとくからね。 母さんちょっと回覧板届けてくるから~♪」
母、信子は風呂場の脱衣場の籠に長男、浩樹の新しいブラジャーを置くと家を出て行った。
二階から降りて来た長男の浩樹は風呂場へとそのまま移動した。
ソファーに寄りかかってテレビを見ていた妹のミユキは浩樹が気になって、脱衣場へと兄を追った。
「お兄ちゃん… すっごおぉーい♪ また乳輪と乳首、おっきくなってるう~!」
脱衣場で上半身裸になった浩樹を見た妹のミユキが驚きの声を上げた。
浩樹は妹から乳房を隠すように背中を向けた。
「いいから、早く出てけよ!」
Bカップの乳房を見られて顔を真っ赤にした浩樹は、後にいるミユキに照れ臭そうに軽く怒鳴った。
脱衣場に干してあった手拭を回収しに来たフリをしていたミユキの左手の指が突然、浩樹の乳房をそして乳首を掠った。
「ぁんっ! ビクウゥンッ! ガクッン!」
乳首からの激しい快感(しげき)に浩樹は妹の前で恥かしい声をあげ両膝から力が抜けその場に跪いてしまった。
無言で深く俯いた浩樹に妹のミユキは顔を真っ赤にして恥じらいの様子を見せた。
両手で乳房を覆い隠す浩樹。
「ゴッ、ゴメン! たったたたたたたた…」
ミユキは両手で乳房を隠す兄の浩樹を目の当たりにし、呆然としたあと驚いてその場から逃げ出してしまった。
藤堂浩樹、高校二年生で勿論男子……
小学生高学年頃から乳房が少しずつ膨らみ始め、中学二年生の頃にはAカップ、そして高校一年生でBカップにと女性化乳房は進んだ。
ただ、一般的な女性化乳房と違っていたのは、浩樹の乳房は母親同様に完全に熟した機能を持っていたという点だった。
乳房を揉まれれば女性同様に心地よくなり、乳首は触れられただけで全身と脳裏を激しい快感(しげき)が突き抜けた。
その度に浩樹は全身から力が抜け、女性同様に身体の中からオビタダシイ量の愛液を溢れさせた。
浩樹の身体に異変を感じた母親の信子は浩樹が中学二年生になった時、父親を伴って何件かの病院を訪ね歩いた。
その結果、全ての病院の意見は身体の発育が終ってから切除手術をしましょうだった。
発育が終り次第、切除手術をするということで考えを纏めた両親だったが、浩樹は直ぐにでもして欲しい手術願望をグッと堪えた。
というのも無理はなく、中学二年生の頃のAカップなら兎もかく、高校生になってからのBカップは歩くたびに揺れ、他の男子からも女子からも異様な視線で見られていて、乳首が擦れる度に成人女性と同等の刺激が彼の動きを抑止していたからだった。
理由は様々だろうが、健康な男子較生の立場に立って考えれば誰しも解かるところだろうか。
そしてそんな浩樹の箪笥な入っている下着と言えば、思春期の男子でありながら上半身用だけが成人女性と同じ下着であった。
感度の高い身体を快感(しげき)から守るためと同時に、女子と違って身体の大きい浩樹だけに、ブラジャーもキャミソールもスリップも大人用のものを使っていた。
オマケに普段の生活の中では無意識に刺激を受けることもあって、浩樹はトランクスを使用したかったにも関らず、仕方なくブリーフに母親の手作りの当て布が付けられた物を履いていた。
溢れた愛液を受ける女性と同じ当て布が必要だったからである。
だが、母親である信子にしてみれば、男子として生んだ我が子の下着に当て布を縫い付けることがどれほど苦痛だったか計り知れない。
まして浩樹のために買うナプキンは買いたくない一つでもあった。
染色体に異常の無い浩樹の身体は人体異変として病院の医師たちに認識された。
ただ、浩樹の乳房は女性同様に乳腺を持っていたことだった。
即ち、単なる女性化乳房ではなく、立派に授乳の出来る身体であったということが医師達を驚かせた。
そして将来、この切除に立ち会う医師は性同一性障害者で女性乳房切除の権威と称えられる医師に決まっていた。
プリプリしてツンと上を向いた浩樹の乳房は外人モデルのように美しい形をしていて、白い肌の中にある乳首は桜貝のように綺麗な色をしていた。
本来なら女性の下着や身体に興味の出る年頃にも関らず、上半身を包む浩樹の下着は全て女物であって、就寝時には殆どをノーブラのミニスリップ着用眠っていたから、浩樹にしてみれば女物は普通に自分の下着だった。
ブリーフも前側に当て布が縫い付けられていて、時折、生理用ナプキンをも使っている浩樹は女性との区別と言えば精々、パンティーストッキングを履く履かないくらいしかなかった。
もっとも女子高生でも滅多に履かないパンストは対象外といえば対象外だっといえよう。
そんな浩樹といえども健康な男子。
深夜、自室でする自慰も上だけ見れば女のようだが、ちゃんと射精もする男としての能力を持っていた。
ただ、違うのはペニスを肉棒化させての自慰ではなく、成人女性同様に感じる乳房を使っての女の自慰だった。
浩樹は乳房を弄ることでペニスを勃起させ、扱くことなく男女両方のエクスタシーに達することが出来たのである。
ベッドの中で上半身晒して自らの手を使った自慰は浩樹に喘ぎ声を連発させた。
しかるに浩樹は自らの口をタオルで縛り猿轡をして自慰に臨んでいた。
プルプルと揺れる上向きの乳房を両手で揉み回す姿は客観的に女そのものだった。
目を閉じて首を仰け反らせ二つの乳首に指を絡める。
切ない吐息が薄明かりの部屋に漏れる頃、二つの乳首は硬く勃起し触れる度にジンジンと身体の内側をコダマした。
ペニスと肛門の中間辺り、身体の内側にモワァっと広がる官能が背骨を通って脳裏へと鈍い刺激を伝える。
両手で支えるように乳房を回し揉みすればジワッーっと重たい心地よさが広がり、乳首を弾けばビンビンッとエレキギーターのような鋭い刺激が脳をつんざく。
ブリーフとペニスの間に入れたナプキンが溢れる浩樹の愛液を受け止めていた。
そんな浩樹の自慰を屋根裏から息を殺して覗き見する中学三年生のミユキが居た。
ミユキは兄の浩樹に恋する乙女ではなく、兄である浩樹の女の部分に恋していた。
タオルで自ら猿轡しているとはいえ、女が喘ぎ声を奏でて隣室に聞こえないはずもなく、妹のミユキは浩樹の喘ぎ声と共に押入れから天井裏へと侵入し、浩樹の自慰を見ながら自らもクリトリスを弄り官能に浸っていた。
そのミユキの想像は常に浩樹の乳房を揉んでは乳首に舌を絡めるというものだった。
そしてパンティーを膝までずらしたミユキは息を殺し指を動かしていた。
ミユキのデリケートな部分からは幼いながらも女の体液が太ももに滑り落ち、何も知らずに乳房を両手で回す浩樹はエクスタシーへと突き進んでいた。
兄、浩樹の乳房オナニーを覗き見る妹ミユキの右中指は、クリトリスから尿道へと滑り落ち、小陰唇の外側と内側を往復させて喘ぎ声を堪えていた。
触れて見たい… 弄って見たい…
屋根裏の隙間からボンヤリ見える浩樹の乳首を見て、ミユキの指は小陰唇の間を無作為に動き回っていた。
そして兄、浩樹が全身を仰け反らせ硬直する辺りを見計らって、ミユキもまたエクスタシーの扉を開いた。
両手で二つの乳首を弄り仰け反らせる浩樹は、かけ布団から食み出した両足を硬直させカガトをピンと伸ばしてエクスタシーに入るパターンだった。
そんなミユキの太ももを伝ったヌルヌルした液体は、屋根裏の板にポタポタとヌメリを落とし、押し殺したミユキの吐息が乾いた屋根裏に湿気を漂わせた。
「やっぱり無いわね… 男性用の肌着で胸に余裕のある物なんて~ 大きければダブつくし、長さも違いすぎると… やっぱりこれしか無いのかしらねぇ~」
娘のミユキを連れて衣料品店を訪れていた母の信子は、買い物籠に入れたキャミソールとタンクトップを手にとって溜息をした、
そんな母、信子を他所に娘のミユキは、新しいキャミを着けて自慰する浩樹のことを考えていた。
「お兄ちゃんも、こんな可愛いパンティー着ければいいのに……」
ミユキは頭の中でフリルのパンティーを履いた兄、浩樹を想像していた。
そんな浩樹は1ヵ月後、掛かり付けの医師たちにも言えないような奇病に犯された。
普段どおりに生活していた浩樹は学校から帰った辺りから突然の腹痛に襲われた。
倒れるように塞ぎこみ、身を案じた母の信子は浩樹を病院に連れて行った。
ところが、内科の医師は原因がわからないと手をこまねいた。
その後、近くの外科へ行きレントゲンを撮ってもらったが異常は見当たらないまま、鎮痛剤を処方され帰宅した。
浩樹の容体は回復することなく、熱も出て来たたため内科で貰った解熱剤を使った。
熱は一時的に下がったものの、腹痛は治まらず母、浩樹への看病は翌朝まで続いた。
そして、痛みの治まった浩樹の傍で眠っていた信子が目を覚ますと、顔色のよくなった浩樹がぐっすりと眠っていた。
その後、浩樹は学校を病欠し、父親の博之は会社、ミユキは中学校へと出かけた。
朝の九時、信子はパートを休んで寝ている浩樹に付き添った。
その浩樹が目を覚ましてトイレに行った瞬間、母の信子は浩樹の驚愕する叫び声に慌てた。
信子は慌ててトイレの前に立って中にいる浩樹にドア越しに声を掛けた。
ドアが静かに開くと、パジャマとブリーフを膝まで下げて便座に座ろうとしていた浩樹が床の一点を恐ろしい形相で見入っていた。
母、信子はその視線の先を辿った。
【二話】
「なっ、何っこれぇ!? な、な、な、何っ!」
浩樹の股間の下、床に落ちている腐った肉の塊に、信子も全身を震撼させた。
床に落ちていたのは、紛れもない腐って落ちた浩樹の性器だった。
浩樹は呆然とし信子は唖然とした。
その信子が腰を屈めて性器を見据え、そして浩樹の股間にゆっくり視線を移した瞬間、信子は後ろに尻餅ついてひっくり返った。
浩樹はその様子を見て、首を傾げ自分の股間を見た瞬間、全身を痙攣させ声を大きく震わせた。
恐ろしい物を見たような顔する浩樹はそのまま便座にペタリと座った。
母、信子と長男の浩樹は真っ青な顔して互いの視線を重ね顔を強張らせた。
ギヤアアァァァーーー!!!
親子は便所で力任せに叫び声を上げた。
そしてその後。
「母さん! 誰にも言わないくれ! こんなこと誰かに知れたらモルモットにされて一生、病院から出られなくなるよ!!」
ブリーフとパジャマを履いた浩樹は自室の部屋の布団の横で、母である信子の両手を掴んで低い声で説得していた。
母の信子もまた、うん! うん! と、首を縦に大きく振って浩樹に答えていた。
二人は恐ろしい物でも見るように、透明な食肉用のジッパー付きの袋に入った浩樹の性器を見詰めていた。
「とにかく、これ冷やさなきゃ!! 指の切断と同じに!!」
信子はバタバタと浩樹の性器の入った袋を持つと一階の冷蔵庫へと走って行った。
そしてその間、浩樹は下半身を裸になると、手鏡で自分の股間を覗き込んだ。
鏡の中を覗いた瞬間、浩樹は顔色を真っ青にし歯をガチガチと鳴らした。
そこには陰毛に隠れるよう割れ目が存在し、両足を開いて鏡を覗くと、パックリと開いた大陰唇の中にクリトリスと尿道、そして小陰唇の間に穴がついていた。
浩樹は恐怖でそのままそこに失禁してしまった。
そこへ現れた母の信子は悲鳴を上げそうになりながらも、部屋にあったタオルで床を拭き取り、別のタオルを浩樹の割目を隠すように上に掛けた。
浩樹は母親の前で両足を開いたまま気絶していた。
数時間後、目を覚ました浩樹は布団の中で自分の股間をピタリと張り付くパンティーに気付いて再び声を失った。
「取敢えずお母さんのパンティーだけど新品だから、それ履いてなさい。 女の身体には女の下着が一番だからね。 あと暫く学校は休みましょう…」
母の信子は不安げな表情を隠せず布団の中で震える浩樹の横に正座して、思い詰めた声を出して掛け布団をポンポンと軽く叩いた。
「浩樹のアレは冷蔵庫の横の冷凍庫の奥に保管したから、落ち着いたら病院に持って行きましょう… 取敢えず今は休みなさい。」
母、信子は落ち着いた口調で布団を頭から被る浩樹に話した。
「母さん! 誰にも! 父さんミユキにも! 黙ってて!」
一瞬布団から顔を出した浩樹は直ぐに布団を頭から被った。
信子は無言で頷くと浩樹の部屋から出て行った。
浩樹は布団の中で、夢なら覚めてくれと、右手で股間を撫でたが夢ではないことに愕然とした。
暫くして母の信子が浩樹の部屋を訪れると、浩樹を連れてトイレに行った。
女性のトイレの仕方を教えるためだった。
泣きながら母、信子を便座に座って見詰める浩樹に信子は涙を堪えて、小便の時と終えた時の拭き取りを教え、大便の時は膣方向へ拭かないことを声を震わせて浩樹に伝えた。
こんなことを高校二年生にもなる長男に教えなければならない信子の苦悩は想像を絶するものだった。
浩樹は小便をすると恐る恐るペーパーで陰部を拭き取りトイレを流すと、黙ったままトイレを出た。
トイレのドアの傍にいた信子は作り笑顔をしてニッコリ微笑むと、今度は浩樹を風呂場へ連れて行き、一緒に風呂に入ろうと誘った。
「取敢えず自分の身体がどうなっているのか、女性の身体はどうなっているのか、自分の目で見て頭に入れて頂戴… 元に戻る戻れないは別としてそれまでは今の身体で生活するんだもの…」
湯船に入れたお湯を止めて脱衣場へ戻った信子は浩樹の前で服とスカートを脱いだ。
初めて見る黒いスリップ姿の母親に浩樹は恥かしげに俯いた。
スリップを脱いでパンティーストッキングを脱いだ信子はブラジャーを外し、浩樹の前でパンティーを脱ぐと乳房と前側をタオルで隠した。
「何してるのぉー アナタもさっさと脱ぎなさい。 今は恥かしがってる時じゃないのよ!」
信子は恥かしくて赤面する浩樹を声を少し大きめに即すと、浩樹は大きく深呼吸をして頷くと服を脱いで全裸になった。
浩樹は信子のように見よう見真似でタオルで身体を隠すと風呂場と足を入れた。
身体を洗い湯船に浸かり温まったところで、浩樹は台座に座り鏡の前で両足を大きく開いた。
母、信子はその後ろで鏡の中に映った長男、浩樹の陰部に見入った。
「これが大陰唇… ここがクリトリス… 解かりづらいけどここが尿道… そしてここが小陰唇… そしてここが膣の入口…」
浩樹の後ろから浩樹を抱きかかえるようにして、信子は指さしして女の部位を説明した。
母、信子には照れはなく淡々と教師のように説明した。
そんな浩樹の陰部は生まれたての赤ちゃんのように綺麗だった。
母、信子が風呂を出た後、一人残された浩樹は戦々恐々としながらも、陰部に震える右手を伸ばしクリトリスをそっと中指の腹でなぞってみた。
凄まじい刺激が浩樹の脳天を貫いたが、女として未熟な浩樹はそれが後々、快感に変わるなんて思いもしていなかった。
噂に聞いたことのあるクリトリスはヨガリ声を奏でる快感とは程遠く、単なる痛い刺激でしかなかった。
浩樹は信子が再び用意してくれたパンティーを履き、いつものブラジャーとミニスリップを身につけると真横にある大きな鏡を見て絶句した。
「これが… 俺なのか……」
鏡の中に映った浩樹の身体は女そのものだった。
そして、スボンだと思って手に取ったスカートを見た瞬間、浩樹は顔から火が出るほど恥らった。
下着姿のまま、服とスカートを持って母の信子のところへ行くと、浩樹は大声で怒りをブツけた。
すると信子は涼しい顔をして物静かな口調で声を出した。
「ズボンだと暑いかも知れないから取敢えず履いてなさい… そして寒かったらズボンにしなさい… アナタの体温(からだ)が男なのか女なのか解からないから、今は……」
信子は居間のソファーに座り、電話帳の医療コーナーに視線を向けていた。
浩樹は信子の落ち着いた口調に驚いて、無言で手に持ったスカートをその場で履いた。
母親の前でスカートを履いた浩樹だったが、不思議とスカートに違和感を持ってはいなかった。
そんな浩樹は浩樹の方を見ようとしない母をそのままに二階の自室へと戻って来た。
母の態度に悔し涙が込み上げ、タオルを出そうと箪笥を開け瞬間、引き出しの中にあった新品のパンティーを見て浩樹は愕然とし、新品のタイツを見て更に浩樹は追い討ちをかけられた。
「寒かったら履きなさい… 前と体温も何もかも違ってたら調節も難しいでしょうから… 二段目にはパンストも入れておいたから、気温と体温に合わせて使い分けしなさい。」
浩樹は淡々と自分に女装を勧める母が恨めしく思えた。
「ミユキやお父さんが戻る前にスカートからスボンに替えなさい… それからタイツを履くならソックスは色が目立たないものにしなさいね、バレちゃうから…」
信子は箪笥の前に崩れた浩樹に伝えると再び一階へと戻って行った。
その信子は寝室に篭るとパソコンでインターネット検索に目を凝らしていた。
半陰陽……
信子の目はこの一文字に釘付けになっていた。
以前、信子が気になって調べていた病名だった。
ただ、複数の医師たちからはそんな言葉も出てこなかったことで、信子はすっかり半陰陽という言葉を忘れていた。
もしかしたら浩樹は半陰陽なのではないかとモニターに目を凝らした。
とは言いながらも既に浩樹には乳房もついていて、股間には疑いの余地が無いほどの精密な女性器がついていたことで、信子は一人悔し涙を頬に伝えていた。
浩樹が余りにも可哀想だと信子は涙を流した。
その浩樹はといえば二階の自室で、母親が箪笥に入れてくれたパンティーストッキングを袋から出し、ドキドキしながら履き始めていた。
スルスルと爪を引っ掛けぬようにフィットさせながら履いたパンティーストッキングに、浩樹は不思議と違和感はなかった。
手鏡を学習机の上において、自分の姿を確認する浩樹は何故か嬉しくなってスカートを履いてみた。
浩樹は不思議な感覚に浸っていた。
鏡の中に居る自分ではなく普通の女の子、そしてその女の子を見る自分が不思議だった。
この日の夕方、ミユキが学校から戻る前に男姿に戻った浩樹は、いつものように振舞っていた。
当然のごとく父親にも気付かれることなく緊張の時間は過ぎ去った。
だが浩樹の様子がいつもと違うことに逸早く気づいたのは妹のミユキだった。
深夜、浩樹が自室の明かりを落とすと、それを察知したミユキは自室の押入れから天井裏へと足音を忍ばせた。
真っ暗な天井裏の隙間からは小さな灯りのともる浩樹の部屋は丸見えだった。
いつものようにキャミソールの肩紐を落とした浩樹は両手で乳房を揉見回していた。
ただいつもと違うのは途中から浩樹の右手が布団の中に消えたことだった。
乳房だけの自慰だったはずの浩樹の右手が何故かこの日は布団の中でゴソゴソしていた。
「ヤダッ! お兄ちゃん、アソコをモミモミしてるのお!?」
屋根裏で覗き見するミユキはドキッとした表情を浮かべ浩樹の自慰を観察していた。
そんな浩樹の表情もまた普段とは違う、不思議な色気を漂わせていた。
浩樹はパンティーの上からパンティーストッキングを履いたまま布団に入っていた。
下半身を覆うパンティーストッキングの肌触りに心地よさを覚えたようだ。
浩樹は右手を太ももと尻に滑らせていた。
もちろん、女の身体のことなど何も知らない浩樹は乳房の快感と巣半身からの心地よさに延々と自慰を続けていた。
そしていつまでも終らない浩樹の自慰に飽きて来たミユキは終焉を見ることなく屋根裏から撤退した。
その数分後、浩樹はエクスタシーに達した。
ただ、全てを終えた浩樹はパンティーの内側に嫌な違和感を覚え、ベッドから出るとパンティーストッキングを脱ぎ、パンティーを膝まで降ろした。
ヌルヌルした透明な粘液が浩樹のパンティーの内側に貼りついていた。
浩樹は濡れる身体になっていた。
噂には聞いたことのある女の愛液を思い出した浩樹は、パンティーの内側を指でなぞり、その匂いを嗅いでみた。
浩樹の鼓動は高鳴っていた。
自分の身体から出たであろう愛液のついた指をペロリと舐めた浩樹は、再びパンティーから絡めとった愛液を指ごと口の中に入れてシャブッた。
塩気の利いた感じたことの無い味覚だった。
「こっ、これが女の味なのか?! そしてこれが女の子の匂い…」
浩樹は慌ててパンストを脱ぎ、パンティーをも脱ぐとベッドに戻り、両手で自分の履いていたパンティーの内側に顔を埋め鼻で深呼吸を始めた。
今まで嗅いだことのない不思議な匂いに咳き込みながらも浩樹は、女の匂いに胸の奥をムラムラさせ当て布に舌を滑らせて味わった。
浩樹は男の性欲をパンティーにブツけた。
【三話】
「大事なお話しがあるの。」
学校を休んで学習机に向かう浩樹の部屋で母である信子はそう切り出した。
神妙な顔つきの母に浩樹は生唾をゴクリと飲み込んで、信子の座るベッドに首を向けた。
「スカート、動きやすいでしょ♪」
浩樹の履いているデニムの膝上スカートをチラッと見た信子は自分を見入る浩樹に笑みを浮かべた。
薄手の黒いタイツを覆う青いデニムのスカートを自らもチラッと見て、再び信子に視線を合わせた浩樹は照れ臭そうだった。
「怒らないで聞いて欲しいの… お父さんに話したの… お母さん一人じゃ解決出来ないの、それに!」
ベッドの上に座る信子は不安そうな表情をする浩樹に早口になる自分を抑えながら口を開いた。
すると浩樹は信子の話を聞いて直ぐに両目を大きく見開いて、信子の話の腰を折った。
「いいよ! 仕方ないさ! 俺も調べたよ… 自分の身体だもん…… 半陰陽… だろ…」
浩樹はそういうと再び学習机に向かってドンヨリと覇気を沈めた。
そんな浩樹に信子は深呼吸をして思い詰めた表情を無理して笑顔にして口を開いた。
「専門の病院を探したの…… もし、浩樹の病気が浩樹とお母さんの思ってる物なら…… でも! 違うかも、知れない…… お父さんも病院へって思ってる…」
ベッドに座り自らの両手を前側で手揉みする信江。
重苦しい空気が漂った。
「いいよ、俺… 女でも… 仕方無いじゃん、こんな身体になっても生きていられるんだから… 物分りいい方だよ♪ 俺って♪ ふふ……」
浩樹は机の上においた自らの両手を震わせて掴み合わせながら空元気を出して見せた。
そんな浩樹を前に信子は深く無言で俯いた。
重苦しい時間が経過した。
「で、どうすればいいの? 何をすればいい?」
自らの掴みあった手をパッと離した浩樹は両手を机に貼り付けて、張りのある声を出して信子の方ほ振り向いた。
浩樹なりに母を心配させまいという気遣いだった。
数日後、浩樹は両親と三人で都会の大きな病院を尋ねた。
「まぁ、検査しないとなんとも言えませんが略、間違いないでしょう…」
両親は医師の前の椅子に座りその言葉に愕然とした。
医師は淡々と顔色を変えずに冷静を装っていた。
手で口元を押える信子。
両手を膝の上に肩を落とす父、博一。
そして真ん中で背筋を伸ばしたまま微動だにしない浩樹がいた。
浩樹は病院に入院し両親は浩樹を残し帰路についた。
妹のミユキは何も知らずに親戚の家に入った三人を自宅で待っていた。
帰りの電車の中、夫婦は無言で窓の外を見ていた。
真っ暗なトンネルに入った時、信子は泣いていた。
まるで死の宣告を受けたようだった。
そんな時、浩樹は一人、女性部屋の個室でボンヤリ窓の外を眺めていた。
その目には覇気はなく虚ろだったかも知れない。
浩樹は自分が実験材料として好奇な目で見られている、そんな気がしていた。
診察をする医師の目は冷静を装ってはいたが、その装いが嘘であることが浩樹にさえ解かるほどだった。
周囲の看護師たちもまた、日常有り得ない何かに遭遇したような目をしていた。
半陰陽… それも体内から変化が起きて男のシンボルが腐って落ちると言う奇病ともいえる病気。
両性を持ったまま生まれ一定期に突然、性が逆転する奇病。
世界中に同じような症例はあるものの、日本では数少ないという。
浩樹はその数少ない症例の一つだった。
男に生まれて17歳で突然、女になる。
それがどういうことなのか。
理解出来る人間などいない。
数日後、検査の結果、浩樹の体内に妊娠できる能力があることが確認された。
卵巣も子宮も備わった身体だったことに浩樹は愕然とした。
医師は生理が来るのは時間の問題だと付け加えた。
浩樹の病室に生理用ナプキンが備えられた。
看護師は浩樹に生理の対処法を家庭科のように教えた。
怯えながらも浩樹は現実と向き合った。
そのことは逐一、両親の耳に医師から伝えられた。
同時に戸籍の書き換え説明をされた。
悩む両親を浩樹の妹、ミユキは見ていた。
そんな両親の異変に気付かないミユキではなかった。
近所でも仲良し家族と言われた家族が静まり返った。
一週間の検査の結果、浩樹は性分化疾患(せいぶんかしっかん・Disorders of sex development , DSDs)英語ではDSDと認定された。
ただ、認定には倫理委員会を通す必要性があることから、病名は仮称として位置づけられた。
退院後、浩樹は親しい同級生や友人に会うことなく、母親の信子の実家へ病気療養の名目で居場所を変えた。
そこは信子の同級生の嫁ぎ先で、田舎町の小さな個人病院だった。
そこに個室を取り女の子ということで入院させることになった。
浩樹のことを知る信子の実家よりはという配慮だった。
信子の同級生の佳代も看護師として大きな病院にいた事もあって、信子の信頼出来る人であった。
その個人病院を居場所として大学病院へ通うという策を信子は講じた。
そして佳代の夫であり病院の院長である木村貞夫もまた信頼のおける人物であった。
シャワー付きの風呂と小さなシンクがついている十畳ほどの個室には、ベッドの他に和箪笥と洋服箪笥、テレビに冷蔵庫と学習机が備わっていた。
そんな田舎町の個人病院には入院患者も少なく、いても老人だけというのもメリットに感じていた。
最初は自分の家にと、佳代も貞夫も勧めてくれたが、息苦しさもあってはと信子は入院を希望した。
検査を終えてから三週間が経過していた。
【四話】
浩樹は病室のトイレの中で一人、額に汗していた。
便器の前に立って太目のストローを鏡を使って尿道の上から押さえ込んだ。
だが、ストローの位置が微妙にズレて立小便は無残な結果に終った。
膝まで降ろしたパンティーもタイツもビショビショになった。
浩樹は悔し涙を滲ませながらシャワーへ駆け込んだ。
朝の七時半、病院の朝食を済ませた浩樹はデニムのスカートにトレーナーという服装で病院の外に居た。
元々、乳房のある身体が故に女性の物を身につけることに抵抗の無い浩樹は違和感なくその服装に順応していた。
病院の裏側には草木に覆われた山が連なっていて、所々に畑らしきものが見えていた。
都会では味わえない自然の真っ只中だった。
病院は小高い丘の上にあって、クネクネした道を歩いて数分のところに道路がTの字になっていて、右へ行けば街中へそして左に行けば県境だった。
Tの字のところに立って右方向を見ると、道路の左側に幅数メートルの川が道路に沿って流れていて、サラサラと水の音が浩樹の心を和ませた。
そして道路の数百メートルほど離れた辺りから道路に沿うようにポツポツと民家が立ち並び、少しずつ街の広がりを見せていた。
その場所に立ち尽くして二十分、通った車は農機具を積んだ軽トラックが一台だけだった。
風が吹きぬけ少し伸びた髪の毛がサラサラ揺れスカートの裾を揺らした。
携帯を開くと同級生たちからのメールがビッシリ入っていた。
メールを見ながら少し歩くと、突然の腹痛が浩樹を襲った。
立ち止まった浩樹。
下腹の奥で何かか接がれるような感覚に違和感。
そして陰部へと何かが落ちてくる妙な感覚。
浩樹は看護師に言われていた話を思い出すと、草むらに身を潜めスカートのポケットからナプキンを取り出した。
ドゥルドゥルと何かが落ちてくる嫌な感覚に見舞われながら、草むらの中で中腰になってパンティーにナプキンをセットした。
身体の中から剥がれ落ちた何かは陰部の間に挟むようにセットしたナプキンに到達したのが解かった。
浩樹は初めてのことに顔色を変え両膝がガクガクと震えていた。
草むらから出た浩樹は陰部とパンティーの間のナプキンのゴワゴワ感に口元を固くした。
「これが生理なのか? 腹が痛えぇ! 畜生、腹の中に石が入ってる見てぇだ……」
浩樹は重たい足取りで病院に戻った。
「ダメよ。 初潮で鎮痛剤なんか使えないわぁ♪ 痛いけど我慢なさい♪」
診察室で佳代は笑みを浮かべながらも厳しい口調で浩樹を突き放した。
浩樹は以前、看護師に指導された時の生理の対処が記された手帳を読み漁った。
座る時は要注意……
浩樹は血液の漏れが気になって窓に掴みかかって座ることが出来ずに居た。
「浩ちゃん、これに履き替えなさい♪ サニタリーショーツ、これなら気にしないで立ち座りが出来るわ♪ そのうち生理が始まるのも事前に解かるようになるから♪」
病室を訪れた佳代は浩樹に生理用ショーツを手渡した。
手渡されたショーツを持ってトイレに入った浩樹は、下半身に密着してズレないショーツを喜びながらも圧着される違和感にガッカリしていた。
「女はこんな思いをして生きているのか!? こんな思いして……」
サニタリーショーツを履いた浩樹はトイレから出てギコチない歩きで再び窓際に行くと、座るのが怖くて外を眺めていた。
下半身に圧着するショーツが窮屈で仕方ない浩樹は歩くということが苦痛になっていた。
「なぁにぃ~ たかが生理くらいでぇ♪ 天気も良くなってきたんだし、気晴らしに街の中でも見てきたら~♪ 田舎だから何もないけどね♪ あっはは♪」
初めての生理で座ることも恐々の浩樹のところへ再びやってきた佳代は散歩を勧めた。
浩樹は佳代の笑顔さえもうっとうしく思え、逃げるように歩きたくない足を動かした。
病院から出てさっきのT字路から街方向(みぎ)へ歩き出して五分、再び何かか腹の内側で接がれるのを感じて立ち止まった。
こんなことなら病室にいればよかったと後悔しているとこで後から声をかけられた。
「はぁはぁはぁはぁ… 浩美ちゃんだろ!? 親父と御袋が世話になってるね♪ 俺は木村邦彦! 大学二年で昨日帰って来たんだけど、御袋が浩美ちゃんに着いていけって♪ 案内するよ♪ いいだろ一緒に行っても♪」
佳代の息子は浩樹の事情を何も知らされていないままのようだったが、浩樹よりも一回り大きな身体の邦彦は明るくてサバサバした性格のようだった。
浩樹は邦彦の視線を外しながら黙って頷いて歩き出した。
この街で生まれたという邦彦だが都会の大学に行っているだけあってドロ臭さはなく、明るい口調で話しかけられる浩樹は最初はウザイと思っていたが次第にその明るさに順応するように、時折かるい笑みを浮かべた。
邦彦は浩樹を浩美と聞かされたようで完全に浩樹を女だと思っていたようだ。
歩く速度を調整しながら浩美(ひろき)に並ぼうとする邦彦だった。
T字路から歩くこと十五分、左にあった小川との距離は少し伸びて、ポツポツだった家並も次第に窮屈に見えるほどになっていた。
歩き始めて最初の橋が左側の小川に掛かっていて、その先に並んで小学、中学、高校と建っていて、解かりやすい環境だった。
道路は右へ大きく反れ左側にあった小川は見えなくなっていた。
左に流れる小川と平行する住宅街と右の道路を挟むように左右に広がる街並みは地方の小さな街を象徴していた。
錆びた看板を掲げたガソリンスタンドが田舎を象徴していた。
山々に囲まれた盆地のような地形の街は澄んだ空気に山々の木々の甘い香りを便乗させていた。
「はぁはぁはぁはぁ… 浩美ちゃん歩くの早い、はぁはぁはぁはぁ… でっ、ここの交差点がこの街の分かれ目なんだよ♪ 右の山側へ行くと役所とか郵便局があって、真っ直ぐいくと何処までも続く街並みで、左側へ暫く行くと小川に出るんだ♪ あとこの先を少し行って右の山側へ行けば展望台ポイのがあるよ♪ 行ってみよう♪」
邦彦は息を切らせながら立ち止まった浩樹(ひろみ)に案内をした。
浩樹(ひろみ)は辺りを見回すと、再び真っ直ぐ進路をとってすすんだ。
「どう、けっこういい眺めだろ♪ ここからなら街の様子が全部見渡せるからね♪ はぁはぁはぁはぁ…」
展望台の木で出来た手すりに両手を置いて見渡す浩樹(ひろみ)の右後で両手を両膝に置いて息を整える邦彦。
耳に少し被さった黒髪がサラサラ揺れた浩樹(ひろみ)を好意の目で見入る邦彦だった。
そんな浩樹(ひろみ)は自分が女として好感を持たれているなどとは夢にも思っていなかったが、頬に感じる邦彦の視線を嫌ってはいなかったようだ。
「いいとこだね… ここ…」
景色に吸い込まれたような表情を見せた浩樹(ひろみ)はポツリ呟くと、邦彦はニッコリと笑みを浮かべた。
「初めて口を利いてくれたね♪ 浩美ちゃん♪」
邦彦は浩樹(ひろみ)の右横に並ぶと、浩樹(ひろみ)の景色を見る視線に自らの視線を同調させた。
風が浩樹(ひろみ)の髪をサラサラ揺らし、その香りが邦彦の前を漂い流れた。
「えっ! 浩美ちゃ、えっ! ちょっ!」
突然、邦彦は両手で顔を覆い浩樹(ひろみ)から視線をかわした。
「だって、暑いんだもん…」
恥かしげもなく、突然、浩樹(ひろみ)は邦彦の真ん前でデニムのスカートの中に両手を入れると黒いタイツを脱いだ。
「これ、預かって……」
略、無表情で丸めた黒いタイツを邦彦に手渡した浩樹(ひろみ)は再び景色に見入った。
突然、脱ぎたてのタイツを手渡された邦彦は顔を真っ赤にして照れ捲くり、タイツから感じる浩樹(ひろみ)の温もり手に持ったままジャンパーのポケットに仕舞った。
「無邪気な娘(こ)だな~♪」
邦彦は浩樹(ひろみ)に微笑ましさを感じていた。
「ねぇ良かったら俺の家に来ないか? 親父も御袋も病院だし俺しかいないから♪」
邦彦は両手を後ろにして景色を眺める浩樹(ひろみ)を自宅に誘ったが、浩樹(ひろみ)は首を縦に振らず、そのまま展望台を無言で降り口へと歩き出した。
両親から幼馴染の娘さんだからと、釘を刺されていたものの、男である邦彦は浩樹(ひろみ)の揺れる胸に視線を奪われないはずはなかった。
とは言え十七歳とはいいながらも可愛い顔立ちの浩樹(ひろみ)は早熟を思わせる大人の体形で、健康な男子なら邦彦でなくてもその身体に興味を持つのは当然だった。
だが、当の浩樹(ひろみ)は邦彦を木村の息子程度にしか思っていなかったようだ。
浩樹(ひろみ)は邦彦と病院の前で別れると病室へ戻りトイレでナプキンを替えた。
ベットリとナプキンに付いた血糊を見て顔を強張らせる浩樹は、早々にトイレを出るとテレビの前の椅子にゆっくりと座ると、陰部に薄気味悪い感覚が伝わった。
この時、浩樹は邦彦に預けたタイツをすっかり忘れていたが、邦彦は自宅へ帰ると自室のベッドの上に寝転がり浩樹から預かったタイツを顔を埋め匂いを嗅いでいた。
邦彦は健康な男子だった。
テレビを見ている浩樹は、まさか自分のタイツの匂いで邦彦が自慰をしているなどと夢にも思っていなかった。
同じ頃、邦彦は浩美(ひろき)のことを妄想の種として、誰もいない家の自室で恥かしい粘液を肉棒の先から溢れさせていた。
邦彦は健康な男子だった。
邦彦が肉棒を扱いている時、浩樹は独りで切ない気持ちになっていた。
こんな生理(もの)が一生続くのか! 畜生!
椅子に座って動くことの出来ない浩樹は右手に拳を握り震わせていた。
【五話】
苦痛だった生理が終って数日後、浩樹を佳代が訪ねていた。
「これは……」
佳代に渡された大きな紙箱を受け取った浩樹は佳代に視線を重ねた。
「それ、この街の高校の制服なんだけど、アナタのお母さんが向うで転校の手続き取ってるみたいだから…」
白衣姿の佳代は紙箱をあけようとする浩樹に信子のことを伝えた。
えっ… これって……
浩樹は紙箱を開けて声を失った。
箱の中に入っているセーラー服上下を見た浩樹は黙り込んで俯いた。
「直ぐにっていう訳じゃなくてね♪ アナタの気持ちが♪ そう♪ 落ち着いたらでいいのよ~♪ 取敢えず勉強はしなきゃね♪」
佳代は黙り込んだ浩樹に動揺した。
浩樹は黙ったままセーラー服を見据えていた。
「アナタの寸法に合わせてあるから、後で着てみて♪ スカーフの結び方はその後で教えるからね♪ それと、転校が決まったらアナタは女の子として… 取敢えず浩美っていう名前になるからね、取敢えず♪」
佳代は時折、声を途切れさせるほど動揺していた。
そんな佳代に浩樹は俯いたまま低い声を小さく発した。
「佳代おばさん… ぅぐっ! 俺… 身体は女になったけど、脳ミソは男のままなんだよ…… ぅぐ! オカマならともかく、そんな種類じゃないのに… こうしてスカート履いてるのだって違和感だらけなのに、セーラー服まで着るなんて…… ぅぐ!」
声を詰まらせながら俯いて肩を震わせた浩樹。
佳代は浩樹の心の叫びを聞いた気がして笑みを一瞬して消し去った。
「浩樹ちゃん… お洗濯物あったら籠に入れておいてね♪」
必死に涙を堪える浩樹を見ていられずに佳代は作り笑顔で部屋を立ち去った。
そんなところへ何も知らない邦彦が部屋を訪ねた。
「やっほー浩美ちゃーん♪ アレレ! これここの高校の制服じゃーん♪ セーラー服の浩美ちゃんかぁ~ 似合うだろうなぁ~♪」
ノックして素早く部屋に入って来た邦彦は両足の上に置いた箱を見て一人で嬉しそうにハシャいでいた。
そんな邦彦から逃げるように浩樹はトイレに駆け込んだ。
浩樹は心の中で、邦彦が早く帰ってくれればと願った。
三分、五分と時間が経過してそろそろ帰っただろうとトイレを出ると邦彦の姿は消えていた。
トイレから出た浩樹は佳代に言われていた事を思い出した。
そうだ、洗濯物……
浩樹は風呂場の横に置いてある洗濯籠に昨日から履いていたソックスを入れようと脱ぎながら移動した。
そして洗濯物を入れる籠のフタを開いてソックスを入れようと覗き込んだ。。
まただ……
今朝脱いで入れたはずのナイロンのスキャンティーが無くなっていた。
そして前日に履いたパンティーストッキングは籠の中の何処にも見当たらなかった。
畜生! アイツ…… 俺を味わってやがる!
浩樹は女である自分が急に惨めに思えて、抓んでいたパンティーを洗濯籠の中に力を込めて投げ付けた。
病室を留守にする度に一枚、二枚と使用済みパンティーがなくなっているこは浩樹も知っていたがマサカ自分が部屋に居る時に盗んでいる思った瞬間、激しい怒りを我慢出来なくなった。
浩樹は犯人が誰なのか知っていたが、自分によくしてくれる佳代に言えるはずもなく我慢するしかなかったが、浩樹の怒りは爆発した。
佳代おばさんに言わなきゃ!
浩樹は入院設備の三階の自室から出ると薄暗くヒンヤリした廊下を歩き病院の真ん中にある階段を二階へと降りた。
静まり返った田舎の病院は人の声もなく、そのまま一階へ降り立った。
外来患者の年寄りが数人、椅子に腰掛て順番を待っていて、数人の看護師たちが穏やかな足取りで動き回っていた。
浩樹はそのうちの二十代の看護師に佳代の居所を聞くと、佳代の居るリネン室へと廊下を急いだ。
「佳代おばさん! 話したいことあるんだけど!」
意気込んでドアを開けようとしたが、優しい佳代の顔を思い出した浩樹は、ドアの前で大きな深呼吸をして怒りを抑えた。
だが静かにドアを開けて中に入った浩樹は奥の方から聞こえる呻き声に誘導されるように足を進めた。
そしてベッドシーツの保管された大きな棚の後にその呻き声の正体を見た時、浩樹は背筋が凍りつく思いがした。
使われていないベッドの上に、浩樹がさっき盗まれライトブラウンのパンティーストッキングを下半身に履いて、たった今、部屋から盗まれたナイロンのスキャンティーで顔を覆い鼻で深呼吸する院長の貞夫が居た。
貞夫は浩樹のパンティーストッキングを履き、前側に破ってそこから黒い肉棒を出し、それを白衣姿の佳代が浩樹の方を向いてフェラチオをしていた。
浩樹はその光景に足のすくむ思いがして、静かに後退りして身を隠した。
貞夫の肉棒をシャブル佳代の口から恥かしい半濁音が聞こえた。
そして数分間続けられたフェラチオが終焉したと思うと、佳代は白衣を脱ぎ捨てパンティーを自ら剥ぎ取ると、仰向けになっている貞夫の肉棒の上に跨ってヨガリ声を奏でた。
貞夫の肉棒を自分の中に取り込んだ佳代は、しゃがむように上下運動を繰り返し女の鳴き声を何度も奏でた。
ガーター紐付きの白いスリーインワンは、外からの陽の光にウエディングドレスのようにキラキラ輝き、佳代の太ももを覆うレース付きのガーターストッキングを止める紐は佳代の動きに伸縮を繰り返した。
パンパンパン、クッチャクッチャクッチャと恥かしくなるような音が浩樹の両耳に飛び込み、普段とは別人の色っぽい佳代の顔が浩樹の目に焼きついた。
浩樹のパンティーやパンストを盗んでいたのは邦彦ではなく、佳代だったことに夫妻の営みの最中に浩樹は気付かされた。
「はぁはぁはぁはぁはぁ…… もう、もう止めて頂戴…… アナタ… もう浩ちゃんの下着盗めないよ… クッチャクッチャクッチャ……」
貞夫の肉棒を取り込んでいる佳代は全身を上下させながら、浩樹のスキャンティーの匂いを嗅ぐ貞夫に言い聞かせた。
貞夫は両手で浩樹のスキャンティーに顔を埋め時折、大きく鼻で深呼吸した。
「あぁ… でも浩樹(かのじょ)匂いじゃないと… はぁはぁはぁ… ここまで硬くならないんだ…」
肉棒を締め付けられ佳代の内肉に擦られる貞夫は、浩樹のパンストを履いた両足を時折硬直させカガトをピンッと伸ばした。
浩樹は目を閉じて上下する佳代が下着泥棒だと知った。
「だったら… はぁはぁはぁ… 私が洗濯籠を持って来てからでも… はぁはぁはぁ… いいでしょう… はぁはぁはぁ…」
上下を繰り返す佳代は荒い息使いで貞夫を諭した。
すると貞夫は、下半身をブリッジさせ浩樹の使用済みスキャンティーを口に入れてクチャクチャとガムのように噛みはじめた。
「鮮度が違う! ぅっ! はぁはぁはぁ… 溜め込んだのは鮮度が悪いんだ… よ… ぁうっ! くっ!」
貞夫は肉棒をギュッと締め付けて上下された瞬間、男のヨガリ声を上げた。
浩樹はオゾマシイ光景から逃げるようにその場を離れリネン室のドアを出ると突然、ソコに邦彦がいた。
「親父と御袋、中でやってただろ… ああして二人はたまにここで愛し合ってんだよ♪ 家じゃヨガリ声とか俺に聞かれるんじゃないかって、心配性なんだよ親父は♪」
邦彦はショートパンツから伸びた浩美(ひろき)の太ももをチラッと見てから、半袖ティシャツの胸の膨らみを凝視し視線を他に変えた。
「邦彦くん! そんなこというもんじゃないわ! 自分の親でしょう!」
浩樹は自分より背の高い邦彦を下から見上げた。
すると、邦彦は一瞬、暗い表情を見せ浩美(ひろき)をそのままに歩き出した。
「俺は親父の弟の子なんだよ♪ あの二人の実子じゃーないんだ♪」
邦彦はそういうとスタスタ廊下を歩き出すと玄関から外に出て行った。
浩樹は邦彦を追いかけるわうに跡を追った。
「アイツら獣だよ… 自分の幼馴染の娘さんの下着盗んで匂い嗅ぐなんて! しかもそれを自分達がセックスするためのオカズにしてんだからなあ~!」
邦彦は怪訝そうに義理の両親をアイツラと呼んで、玄関を右へ移動して木製のベンチに腰を掛けた。
浩美(ひろき)はそんな邦彦に居た堪れない気持ちになっていた。
「まぁ、俺も変態だって思われるの嫌だけど、実際、浩美ちゃんの使用済みの下着なら俺だって欲しいよ♪ ふっ♪」
邦彦の右横に両足を揃えて座った浩美(ひろき)をチラッと見て、邦彦は足組して照れながら視線を左側の池の方に移した。
浩美(ひろき)は突然言われた一言に恥かしくなって、頬を紅らめ俯はオロオロしたように口を開いた。
「わ、私! 私なんか… か、可愛くないし! そ、それに!」
突然顔を上げた浩美(ひろき)はシドロモドロになった。
すると邦彦はそんな浩美(ひろき)をチラッと見て再び池に視線を移した。
「浩美(きみ)が可愛いかどうかは男の俺が決めることだろ… 浩美(きみ)が決めることじゃないだろ♪」
邦彦は浩美(ひろき)をチラッと見て小さな笑みを見せると再び池に視線を移した。
すると浩美(ひろき)は思ってもいないことを口に出してしまった。
「私の… 下着だけでいいの…… 中身は要らないんだね……」
溜息混じりに口にした自分の言葉に浩美(ひろき)は慌てて立ち上がると、邦彦の見詰める池に小走りして池の中を覗きこんだ。
邦彦は浩美(ひろき)の言葉に嬉しそうに笑みを浮かべると、池に近付いて突然、浩美(ひろき)を抱きしめ口付けをした。
突然のことに浩美(ひろき)はどうしていいのか解からぬまま、口の中に入って来た邦彦の舌に目を閉じて身体を震わせた。
「俺の彼女になってくれるよね♪」
口付けの後、邦彦の言葉に何と答えていいか解からぬまま、浩美(ひろき)は全身を震わせて小さく頷いてしまった。
そんな浩美(ひろき)は邦彦に木陰に誘われ芝生の上に仰向けにさせられると、再び邦彦からの濃厚な口付けをされながら太ももを触られた。
邦彦は浩美(ひろき)に右足を膝起てさせショートパンツの裾を境に何度も自身の手を滑らせた。
生まれて初めての口付けと太ももへの触手は浩美(ひろき)に受身(おんな)の喜びを教えた。
【六話】
浩樹は不思議だった。
邦彦(おとこ)に口付けされたのに拒否感がまるでなかったこと、それ以上に邦彦(おとこ)に太ももを触られている時、気持ちいいと思ったこが。
浩樹は自分の中で過去の自分とは別な人格が育っているような妙な感覚だった。
芝生の上で押さえ込まれるように身体を重ねた邦彦に、両目を閉じて肌を許してもいいとさえ思ったことに部屋に戻った後も不思議で仕方なかった。
そしてその時、ショートパンツの裾ギリギリを触っていた邦彦の手が、中に入ることを何処かで容認していた自分が信じられなかった。
ただ、自分に身体を重ねた邦彦の股間に硬い物を感じた時、怖いと思ったことは事実だった。
「これ、使えよ…」
部屋に戻った浩美(ひろき)と一旦病院の前で別れた邦彦が、夕暮れ時に鍵のかけられる洗濯箱と洗濯機を持ってきてくれた。
自分の彼女を守るのは男として当り前だと笑みを浮かべる邦彦を、浩美(ひろき)は頼もしく思った。
洗濯機の入るスペースにピッタリと納まった洗濯機の横に鍵のかかる洗濯物入れの箱が置かれた。
「同級生が街でやってる電気屋から格安で譲って貰ったんだ♪ 新品じゃないのが残念だけど、まあ我慢してつかいな♪」
邦彦は喜ぶ浩美(ひろき)を見て満足そうに部屋を出て行った。
そして病院で夕食を済ませた浩樹の携帯に家から電話が来た。
「浩樹! どうだ調子は♪ そっちは空気もいいしノンビリしてていいだろう♪ ゆっくり養生して元気になってくれ♪ 折を見て父さんも母さんとそっちに行くから何か欲しい物があったら電話するんだぞ♪」
父、博一は浩樹の病気のことには触れず明るい口調で世間話を終えた。
浩樹は父の話す声を聞いた時、ショートパンツを履いている自分が惨めで、薄手のニーソックスに包まれた両足をタオルで隠した。
「あぁ、うん、無理しなくていいから。 それより父さん、俺のことミユキには話したのかな……?」
浩樹は自分が女の身体になったことを妹のミユキに知られたくなかった。
それは子供の頃から仲良しだった兄妹の関係を壊したくなかったからだった。
「いや、まだ話してないが時期を見て話そうと思う… ただ浩樹が今後、どう変わっても浩樹は父さんの子だということなは変わりはないからな♪」
父の声は作られた豪気に満ちていた。
その横ですすり泣く母、信子の声が時折聞こえた。
母さんは居るのかと聞いた浩樹に、父の博一は買物に出かけていると言った。
「母さんとミユキに… 俺は… 俺は元気だからって伝えて♪」
浩樹は込み上げるのを抑えて、無理して言葉を弾ませて電話を切った。
握り締められた携帯電話をポトっとベッドに落とした。
くそっ!
ベッドから立ち上がって洋服箪笥の前に移動した浩樹は、その中から学生ズボンを取り出すと夢中でズボンを履いた。
ショートパンツとニーソックスを履いているのにズボンがブカブカだった。
浩樹は自分の身体が痩せていることに気づいた。
窓ガラスに映る自分は以前のような男の身体ではなかったことに怯えた。
畜生ー!!
取り出した学生服に身を包んだ浩樹は慌ててボタンを閉じた。
学生服がボタンで閉じられたのを見た時、一瞬だけ男に戻れた気がした。
あはっ♪ バサッ!
浩樹は笑みを浮かべて学生服姿でベッドに転がった。
楽しそうに足をバタ付かせ天井を見詰めた。
「二十歳になったら胸の切除が出来るって医師(せんせい)も言ってくれたし♪ もう少しの辛抱ね~♪」
浩樹は十七歳になったばかりの時、病院での検診の後、母が嬉しそうに浩樹に話した時のことを思い出した。
母、信子も、あと三年の辛抱だと浩樹を励ましたのを昨日のことのように思い出した浩樹は一人笑みを浮かべた。
ただ、その時の浩樹は既に男では味わえない女の官能(しげき)に溺れていたことも事実だった。
毎夜のごとく両手で揉み回す乳房からの心地よさに酔いしれ、脳天を貫く乳首の刺激はベッドに居る浩樹に強い仰け反りを繰り返させた。
そして輪ゴムで止められた、母から貰った生理用ナプキンは浩樹の内側から溢れる透明な愛液を吸い尽くし、時には白い精液をも飲み込んでいった。
深夜、まさか天井裏から妹のミユキが覗いているとも知らずに、女の官能に酔いしれた一時は、既に浩樹の中に女を宿していたのかも知れない。
夜の九時、病院の明かりは落とされ浩樹の部屋へ通じる廊下も薄暗くなった。
学生服とズボンを脱いだ浩樹は三つあるうちの二つの窓をカーテンで覆った。
ショーパン姿に戻った浩樹は大きく両腕を広げ背筋を伸ばして涼しさを楽しんだ。
そして窓から入る甘い草木の香りと、虫たちの鳴き声が室内に入ると夏を感じた。
ゲコゲコゲコと蛙がうるさいほどに声を張り上げ、それに引き寄せられるように窓辺に立つと、月明かりが病院横の池にユラユラと幻想的な光景を映し出していた。
それを見た浩樹は心癒される一時に身を浸し、三十分ほどしてから灯りを落としベッドに身体を横たえた。
そして深夜の一時過ぎ、浩樹は突然ベッドの中で呻き声をあげた。
ウゲエェ! 痛てえぇぇー!!
全身の骨が激しく軋み鋭い痛みが身体の隅々に特級列車のように走った。
ギリギリと全身の骨がナイフで削られるような鋭い痛みは浩樹から助けを呼ぶ声を奪った。
その痛みたるや頭の天辺から肋骨、背骨から手足の指先に至るまで全ての骨という骨が一斉に軋んだ痛みだった。
動くことも暴れることも声を出すことも浩樹は禁じられた。
傍目にはベッドの中で静かに眠っているように思えるほど静かな寝相も、現実には想像を絶する猛烈な痛みが浩樹を襲っていた。
身体中から脂汗が流れ落ち、ベッドのシーツは一瞬にして突然のスコールに見舞われた洗濯物のようになった。
壮絶な痛みは一時間、二時間と続いたが一向に納まる気配なく、浩樹もまたその間に何度も気絶と目覚めを繰り返した。
そしてその痛みが突然嘘のように消えた瞬間、浩樹は激しい疲労感から死んだように眠ってしまった。
そんな浩樹が目を覚ましたのは木村医院から車で二時間ほどのところにある、浩樹が精密検査をした大学病院だった。
目を覚ました時、浩樹は高所から叩きつけられたように身体を動かすことが出来なかった。
「浩樹… 目を覚ましたのね♪ 一週間も眠ったままだったのよ…」
意識を朦朧(もうろう)とさせながら瞼を開くと、目の前に母、信子が目を真っ赤に腫らして涙ぐんでいた。
首に力の入らない浩樹は目だけを左右に動かして辺りを見ると、そこには父、博一と妹のミユキまでもが涙を頬に伝えてたっていた。
浩樹の身体には様々な点滴と機械が取り付けられていた。
見覚えのある数人の医師と看護師たちが浩樹を一斉に診はじめた。
「浩樹くん、聞こえるかい♪ 話すのが無理なら、目で合図してくれ♪ この指はどっち指している? じゃぁこっちは? 手に感覚はあるかい? 足はどう?」
何度も繰り返されるテストに医師たちはホッとした表情を浮かべ家族達に笑みを見せていた。
「もう大丈夫だ♪ 少し眠るといい♪」
医師も看護師たちも家族も部屋を出て行くと、浩樹は安心感からか再び眠りの世界へと導かれた。
そして再び浩樹が目を覚ますと不思議なことに両手足も身体も動くようになっていてた。
ベッドを取り囲む医療器械の音が静かに音を立てていた。
首を傾けて点滴の管に見入る。
ベッドの横に並んだ別のベッドに母、信子の姿が見えた。
「かあ… さ… ん…… かあさ… ん…」
虫の羽音ほどの浩樹の声は疲れ果てて熟睡する信子には届かなかった。
数分後、呼び続けるたびに声に張りが少しずつ戻ってきた浩樹の声はようやく母、信子の耳に伝わった。
信子は自分を呼び続ける浩樹に驚いて、フラフラしながらベッドに近付くと、慌ててベッドの緊急ボタンを押した。
それから一時間、数人の医師達と看護師たちが懸命に浩樹の容体の把握に全力を尽くした。
十五分だけと言う約束で信子は浩樹との再会を果たした。
浩樹はベッドから起き上がれず毛布の中に居たものの、信子は嬉しくて嬉しくて堪らないというほど笑顔を浩樹に見せ続けた。
「母さん… 腹減ったよ… 喉もカラカラだ♪」
弱弱しくも嬉しそうに口を開く浩樹に信子は用意していたお茶を飲ませた。
浩樹の乾いた唇に瑞々しさがホンの少し戻って来たのを信子は涙を零して喜んだ。
後日、信子によって浩樹が意識を完全に回復したと実家にいる父と妹、そして木村医院にも伝えられたが、浩樹は今は誰にも会いたくないと信子に伝え、医師もまた不安定な時だけにと信子に一言、添えた。
【七話】
「君の身体の骨が全て萎縮を始めたんだ… 今、世界保健機構にそんな症例が世界にあるかを確認中なんだ… 我々も正直、お手上げ状態だったが、結果オーライというとこが本音なんだ…」
ベッドの上で医師の話に聞き入る浩樹は不安げに顔を強張らせた。
浩樹の寝ているベッドを四人の医師と二人の看護師、そして信子が取り囲むように陣取っていた。
そして浩樹の左側の椅子に座るメインの医師はこう続けた。
「君には更にもう一つショックを受けてもらわなければならないんだ…」
真剣な顔した医師は女性看護師から手鏡を受け取ると、それを浩樹に渡した。
息を飲んで浩樹は渡された手鏡で自分を見た。
浩樹はジーッと鏡を覗き込んだまま言葉と呼吸を忘れた。
「見ての通り君は以前の君ではなくなっているんだ… 身長170センチの君は現在、165センチにまで縮んだ上に顔、そして身体付きまで変わってしまった。 ふうぅー! その上、骨盤までもが男性から女性に変化し完全に女性そのものになってしまった… 奇跡としかいいようがないのが現状なんだ…」
医師はまるで作り話のような話しを真顔で浩樹に聞かせ、時折大きく深呼吸して落ち着こうとしていた。
浩樹に話す医師を見詰める他の医師と看護師、そして母親の信子は神妙な顔をしていた。
その医師は浩樹の目の前にノートを取り出すと、浩樹の身体をペンで書いて見せた。
ノートには女性特有の括れた身体が書かれていて、それを見た浩樹は目を充血させ口元を震わせた。
信子はベッドの上で自らの変化に震撼している浩樹を見てハンカチで口元を押さえ泣き出していた。
「そして君の骨なんだが、まあ、後でレントゲンを撮って調べないと解からないのだが、恐らく強度を保ちつつ萎縮したということだと思う…… 自力で立っても問題ないと思うから立ち上がって歩いてみるのもいいだろうね… 但し身体の状況が以前とは違うからバランスは注意するように。」
医師は浩樹の左肩を軽くポンと叩くと信子に何かを耳打ちして看護師たちと連れ立って病室を出て行った。
病室のベッドの上で医師が残したノートをポツンと見入る浩樹には余りにも残酷な結末だった。
そんな浩樹を目の前に、母、信子もまた、何と言葉をかけていいやら困惑していた。
「母さん、心配しなくていいよ… 自殺なんか考えたりしないから…… それより一人になりたいんだ……」
信子は医師に耳打ちされた話しを聞かれたかと思い、胸の奥をドキッとさせた。
母、信子が部屋を出ると、一人になった浩樹は目を閉じて布団を避けた。
顔を強張らせ瞼を静かに開くと、躊躇(ちゅうちょ)しながら自分の下半身に視線を移した。
戦々恐々とした面持ちで伸ばした右手でガウン式の病衣の帯を解いて裾をゆっくりと左右に開いた。
浩樹は過呼吸になった。
医師の言った通りウエストは括れ下半身は動揺する浩樹に合わせて、プリンのようにプルプルと揺れていた。
女の身体だった。
それを見た瞬間、浩樹は慌てて病衣を元に戻すと布団を頭から被り中で震えた。
ドアの隙間からその様子を涙ながら見守る母がいた。
数日が経過した。
浩樹は二人の看護師に付き添われ病棟の廊下を検査に向かっていた。
歩く度にプルプルと揺れを感じながら無言で歩き、後から母の信子が見守るように着いて来た。
そして時折、窓に映った自分を見ては立ち止まってガラスに映る自分を見入っては歩き出していた。
こうして浩樹は何日もの精密検査を受けた後、異常なしの判断を医師から受けた。
そして世界保健機構からの回答を医師から病室で聞かされた。
男性から女性に突然変異をした症例は少ないながら存在するが、骨格及び筋力の萎縮は何れかは多少はあるが、大掛かりなものは過去に症例は無いとの返答だった。
医師は浩樹と信子の了解を得て浩樹から採取をしたサンプルを世界保健機構に送り、療養観察の形で病院にとどまることを医師達は勧めたが精神医療分野の医師は浩樹と信子の前に立ち塞がって、これを阻止した。
浩樹は危うくモルモットにされかかったことに恐恐とした。
その二日後、浩樹は一ヶ月に一度の定期健診を受けることで大学病院を別人になって退院した。
母の信子は浩樹の身体がスッポリと覆える上下のスウェットを浩樹に着せた。
そして大学病院の玄関前、肩まで伸びた浩樹の髪は風にサラサラと靡くと、浩樹は後ろに聳え立つ大学病院をチラッと振り向き一礼して前へと歩き出した。
「母さん、心配しなくていいよ♪ 突然、男から女になったってことは、もしかしたら突然、女から男に戻るかも知れないし♪」
浩樹は前なら軽々と持てたはずの母の持つバッグを両手で重そうに持つと、ニッコリと笑った。
母はそんな浩樹にニッコリと微笑むとタクシーに手を上げた。
信子と浩樹は木村医院へと戻って来た。
木村医院の院長と幼馴染の佳代に挨拶しに行った信子をそのままに、久し振りに帰った第二の我が家である三階の部屋へと浩樹は移動した。
畜生ー!!!!
突然、浩樹の甲高い女の怒鳴り声が三階に響き渡った。
ニコニコしてドアを開いた浩樹の部屋のベッドの上に、セーラー服を着た知らない女子高生が邦彦とセックスの最中だった。
しかも女子高生が着ていた真新しいセーラー服は佳代が浩樹のために用意してくれた物だということが浩樹には直ぐにわかった。
浩樹は治まらない怒りのまま三階から一階へその身を移動させ、浩樹の部屋で女子高生とセックスの最中だった邦彦は、見覚えの無い美しい浩樹の顔に困惑しセックスを途中で止めた。
笑顔で佳代と信子が廊下を浩樹に向かって歩いてきたが、浩樹は佳代に笑顔を作れる心境ではなかった。
そこへ血相を変えた邦彦、少し遅れて浩樹の知らない女子高生が歩いて降りてきた。
佳代は浩樹と息子の邦彦を見往復すると、その視線を後から降りて来た女子高生に向けた。
佳代は女子高生が着ていた服が浩樹のセーラー服だということが直ぐ解かって慌てた。
突然声を慌てさせ取り乱した佳代。
「あぁ! 浩ちゃん! か、か、彼女はねぇ~♪ 邦彦の恋人の! 優子ちゃん…♪」
佳代の言葉を聞いた浩樹は目を吊り上げて邦彦を鋭く睨み付けた。
邦彦はマズイ! と、ばかりに顔を一瞬背けたが、何十倍も美しくなった浩樹に驚きの余り息を飲んだ。
浩樹は佳代の話しが終る前にベンチから立ち上がると、母、信子の手を引いた。
「もう、何がなんだか解んないよおー! もう帰ろう! 母さん家に帰ろう!!」
甲高い声を出して立ち上がった浩樹を診て驚いた邦彦の恋人の優子は逃げるようにその場から立ち去り、その後を追うように邦彦も姿を消した。
残された佳代は浩樹のために用意したセーラー服を知らない女の子が着ていたことに浩樹が腹を立てたと思った。
何がなんだか解からない信子は、ただただ佳代と浩樹の間でオロオロするだけだった。
そんな佳代と浩樹を1階のベンチに残したまま佳代は三階の浩樹の部屋へ一人行って驚いた。
浩樹のベッドの上で明らかに息子の邦彦と優子がセックスしていたであろう形跡に青ざめた。
慌てて看護師さんを一人呼んだ佳代は浩樹のベッドを別のベッドに交換させた。
そして何度も使ったであろうベッドシーツは男女の愛欲の匂いで佳代は顔をしかめて首を捻り、浩樹の部屋のバスルームに入った女性看護師は洗われていない咽るような愛欲の臭気に息を止めた。
信子ちゃん… 浩ちゃんと二人だけで話させて……
佳代は掃除し終えた部屋に浩樹を連れて入って来た。
そして浩樹に佳代が詫びようと話しかけた時、浩樹は佳代に落ち着いた口調で話し始めた。
「俺… 佳代おばさんのこと見ました… 少し前に、リネン室で。 白いレースの下着付けて白いガーターストッキング履いて、俺のスキャンティーの匂い嗅いでる院長先生としてるとこ…… でも、それは! 夫婦ですから…… いいんです…… その後、邦彦さんにリネン室の入口で会って、邦彦さんが佳代おばさんの実子でないことを知らされて… 佳代おばさんと院長先生が普段からアソコでセックスしているのを邦彦さん覗いてた見たいです。 そしてその後、外で話してて… 池の奥の木陰に邦彦さんに連れ込まれて… 芝生の上に押し倒されて口付けされて身体を触られました… 俺のこと好きだって邦彦さん…」
浩樹は言葉少なに要点だけを佳代に俯いて伝えた。
佳代は顔色を変え恥らうように両手を胸の上でクロスさせ浩樹から視線を外し俯いてしまった。
そして沈黙していた佳代がゆっくりと顔を上げた。
「ごめんなさい… 浩ちゃんの下着を持ち出したりしたことは医者とその妻にあってはならないことをしたと恥じています…… そして邦彦が私達の夫婦の営みを覗き見しているのは知ってた…… 知ってて見せてたけど主人は何も知らないと思う…… それにあの子は浩ちゃんの言う通り実子ではなく弟夫婦の子。 主人は無精子症で子種が無くいろいろと事情があって養子に迎えた。 その息子の邦彦は無類の女好きなの… 傷つけてしまったのね、母親として御詫びします…」
佳代は顔を真っ赤なして恥じらいながらも落ち着いた口調で浩樹に詫びると、傍にあった椅子に腰掛けた。
そして余りにも素直に正直に話した佳代を浩樹は見詰めた。
「信子さんには… アナタのお母さんにはこのことを黙っていて欲しい… ムシのいい話しだけど幼馴染の彼女には病院で夫婦の営みをしているなんて知られたくないの…… 主人は都会の大きな病院で勤務して人生を終えたかった医師の一人なの… こんな田舎の医者で終えるということが彼にとってどれほどの苦痛でストレスになっているか、私には良く解かるもの…… 浩ちゃん、お願いだから黙ってて欲しいの……」
立ち尽くす浩樹に頭を下げた佳代は真剣な面持ちだった。
そんな佳代を前に浩樹は突然床に両膝を付くと、佳代の両手に自らの両手を重ねてゆっくりとそして深く頷いた。
この日、浩樹の部屋に母、信子は一緒に宿泊し、すっかり元気になった浩樹に安心して父と妹の待つ家へと戻って行った。
そして同じ日、大学のある街に邦彦が戻らされたことを浩樹は佳代の口から聞いた。
浩樹は再び木村医院で一人になった。
それから数日後のある日、佳代は今の浩樹にピッタリのサイズのセーラー服を用意してくれた。
浩樹は佳代の前でセーラー服の着方を教えられながら着てみた。
照れ臭そうに頬を赤く染めヒダスカートの裾を揺らした浩樹は可愛い笑顔を佳代に見せた。
「可愛い~♪」
浩樹は佳代の一言に嬉しそうに部屋の中を歩き回った。
そして浩樹が窓から入る風に誘われて窓辺に立った時、浩樹は胸の奥をドキッとさせた。
浩樹を後からギュッと佳代は抱き締めた。
「私ねぇ~ 女の子が欲しかったんだ~♪ もし普通に子供を生んでいたら浩ちゃんくらいになってたかもね♪」
浩樹は背中に佳代の豊満な胸を感じていた。
後から佳代の甘い大人の女性の香りがした。
浩樹は自分に娘のような感覚で接する佳代に嬉しかったようだ。
【八話】
「はぁはぁはぁはぁ… くそっ! 駄目だ! はぁはぁはぁはぁ…」
リネン室のベッドの上、仰向けで顔をシカメて悔しがる木村がいた。
そしてその木村の上に跨る佳代がいた。
プルプルと太ももが揺れる度に白いガーターストッキングのレースが俄かに歪みを見せた。
そして起き上がろうとする木村から身体を交わした時、佳代の豊満な胸はプリリーンと無造作に揺れた。
「駄目、なの……」
佳代は愚問を心の中で木村に問いかけた。
木村はティッシュで縮んだペニスを拭くとガーターベルトにストッキングだけの佳代をそのままに着衣を始めた。
佳代は敗北感を味わう木村に目を合わせることが出来ずに、木村がリネン室を出て行くのを見送った。
「私がもっと若ければ……」
一人残された佳代はベッドの上に四つん這いになって口元を固く閉ざし両手に握り拳を握った。
その頃、浩樹は木村医院近くの小川の傍に腰を下ろして川のせせらぎに見入っていた。
男だった頃は有り得ない乙女チックな光景だったが、本人は気付いていないようだった。
そして小川はデニムのミニスカートで体育座りする浩樹の両足に心地いい風を運び、空の上でピーヒョロヒョロと無くトンビが長閑な雰囲気を漂わせた。
そんな時、木村医院からの帰りだろうか、患者さん達の声が耳を掠めた。
「いんやぁ、最近の院長先生だば、何かイライラしてっぺよおぅ~ 何か心配事でもあんだかなのおぅ~」
後の土手の道から聞こえた老人達の声に、後を振り向いた浩樹は表情を曇らせた。
浩樹は昨日もここで同じように話す老人達を見かけたばかりだった。
そしてその翌日も、そのまた翌日も老人達は院長先生のことを話していた。
「なんがぁ、最近はイライラもなかったのにぃ~ 以前の院長先生さ戻ったようだぁ~」
浩樹は木村医院から帰る老人達の話に耳を傾けた。
もしかしたら……
翌日、リネン室に入る院長先生を見かけた浩樹は廊下のヘコミに隠れて佳代が来るのを待った。
数分して受付方向から来る佳代を見た浩樹は佳代の手を引いてトイレに引き入れた。
「佳代おばさん! これ! 使って下さい! 俺に出来ることったらこんなことしか無くて……」
浩樹は佳代の目の前で、前日から替えずに履いていたスキャンティーを脱いで差し出した。
顔を真っ赤ににして恥じらいながらも浩樹は佳代を真剣な眼差しで見詰めた。
すると佳代は浩樹に辛そうな表情を見せて口を開いた。
「いいの!? 浩ちゃん! 自分の下着を差し出すってことは自分の貞操を相手に渡すことと同じなのよ!!」
思い詰めた表情をする佳代に浩樹はニッコリ笑みを浮かべた。
「早く持って行って! 折角の脱ぎたてが台無しになっちゃう! 昨日から替えてないから濃厚だし鮮度も抜群! 早く持って行ってあげて!!」
佳代の前に突き出された薄水色のフリルのスキャンティーを、佳代は喉をゴクリと鳴らして浩樹から受け取ると、浩樹を涙目になって見詰め急いでトイレを出て行った。
この日の木村医院は久し振りに院長先生の評判が上がったようだ。
そしてこの日の夕食に何故か院長夫人からだと、ブ厚い牛肉のステーキが一枚添えられていた。
浩樹は見たことも無いようなブ厚いステーキに舌堤を打って夕飯を済ませた。
お腹一杯になった浩樹は携帯から佳代の携帯にメールを送信した。
「今日から、お洗濯お願いします♪ 部屋の洗濯機調子が悪くて困ってます♪ 箱の鍵は外して置きます♪」
浩樹は少し佳代の役に立てたような気がした。
男って馬鹿なんだな……
病室のベッドに寝転がった浩樹はポツリと独り言を漏らすと、久々に携帯小説でお気に入りで、誤字脱字は御愛嬌の縄奥小説に夢中になった。
携帯を持つ手をそして体位を変え、キャミソールにフレアーパンティーを履いた浩樹はゴロゴロし、両足をバタバタさせて縄奥小説に見入ってた。
小説を読み続ける浩樹は丁度、三冊目で読み終えた辺りで携帯の電源を落とした。
浩樹は久々に読んだ縄奥小説の内容を思い出しては一人妄想して薄笑みを浮かべた。
そう言えば、最近してないや……
窓にカーテンを掛けた浩樹はドアに鍵をかけ灯りを落とすと、ベッドの上に仰向け両膝起てて少し脚を開いた。
完璧な女性に変化して初めての自慰だった。
フレアーパンティーの裾に唾液を塗りつけた右手をの中指を入れクリトリスに軽く滑らせた。
ところが…
クチュッ……
ビクンッ!!
はああぁ~
クチュッ…
ビクンッ!!
はああぁ~
アレ!?
クチュッ…
なんだ??
気持ちいいのに…
感じているのに…
何だろ…
浩樹は久し振りの自慰にドキドキしたはずなのに何故か気が乗らない。
クリトリス弄りを継続するだけの気持ちが途中で何かに遮られた。
それならばと、キャミの肩紐を片方外して左乳房を揉むと、いつものように心地よさが広がるものの、肝心の乳首を弄った瞬間、覚めてしまった。
何だ、この面倒くさい感じは…
完璧な女体になった浩樹の脳は男時代の性欲を著しく減少させた。
浩樹は自慰したいと思う反面、その行為に面倒くささが伴い大きな溜息を無意識に連発した。
身体は火照るのに何をしても、その気になれないモドカシさに苦しんだ。
この後、浩樹は乳房を弄りながらクリトリスをとあらゆることを試したが、直ぐに自慰モードから覚めてしまうのを繰り返した。
畜生ーー!!
浩樹は苛立ちベッドの上に起き上がると、両手で頭を抱えた。
その気があっても無くてもペニスを扱けば終焉まで突入する男の身体と今の女の身体とまるっきり違っていた。
浩樹はベッドから降りて立ち上がるとトイレで用足しをすると真美者を買おうと思い立った。
ピタピタとスリッパの音が静まり返った院内に響き、それを消すために浩樹は裸足になってスリッパを片手に持って歩いた。
そして階段から降りてリネン室方向にある自販機へ近付いた瞬間、静まり返った廊下に女性の喘ぎ声のような物が聞こえて来た。
ぁぁぁあああん~~~
えっ!? 何だ今の声…!?
浩樹は足音を立てないように耳を澄ました。
ぅぁああああん~~~
静まり返った廊下にカラオケのエコーが掛かったように女の声はコダマした、そしてその声はリネン室付近から聞こえてきた。
浩樹はそっと、忍び足でリネン室のドアへ近付くと耳を澄ました。
そしてドアの向こうから女性のヨガリ声を聞いた。
嘘だろう……! こんな夜中に……
浩樹は静かにリネン室のドアを開けると中に入ってドアを閉めた。
リネン室の中は浩樹の思った通り佳代の鳴き声が辺りの空気を埋め尽くしていた。
そおぉ~っと布団棚の後から奥を覗いて見た。
そして浩樹はその光景にギョッとした!
ベッドの上で縛られ強制的にM字開脚させられた全裸の佳代は霰もない姿を晒していた。
両手を後手に縛られ両足を大きく開かされた佳代は、その両足を何本ものロープで左右から引っ張られるように開かされていて、デリケートに部分を薄いスキャンティーが覆うだけの恥かしい格好だった。
そして何本ものロープが佳代の太ももを、ギリギリと締め上げるように柔らかい肌に喰い込ませられ、佳代の両方の太ももはハムのようになっていた。
更に乳房を二本のロープが上と下から挟むように身体に巻きつけられ、乳房をクロスしたロープは佳代の乳房をギュッと絞っていた。
その乳首は勃起して部屋の小さな灯りに照り返しを見せ、佳代の頬を桜貝のように紅く染め、気持ちいいのか、佳代は髪を振り乱して首をゆっくりと左右に振っていた。
そして、悲痛とも歓喜ともとれる熟した女の喘ぎ声が部屋に奏でられた時、ロープが何本も食い込んだ佳代の太ももに蝋燭が垂らされた。
その佳代に蝋燭を垂らす木村は、浩樹が佳代に預けた汚れて熟したスキャンティーの内側を自らの顔に紐で縛りつけ、匂いを嗅ぎながら佳代を辱めていた。
佳代を蝋燭で責める木村の履いているブリーフは内側から硬い肉棒がテントを張っていた。
木村夫婦はSM趣味があったようだ。
布団棚に隠れて見ていた浩樹は、その光景にオゾマシさを感じながらも、ガウンに包まれたキャミソールの内側で、ピンク色した乳首を勃起させていた。
そして木村の垂らす蝋燭の熔けたロウは佳代の内モモに集中し、佳代は悲痛とも歓喜ともとれる鳴き声を連続させて全身を揺らし、自らを縛るロープをギシギシと軋ませた。
両手に蝋燭を持った木村は中腰になり、時折全身を大きくビクつかせる佳代をニヤニヤして見回していた。
その木村が身体をビク付かせる佳代の乳房に蝋燭をポタリと垂らした瞬間、佳代は再び縛られたまま後に仰け反って大きく鳴き声を奏でた。
すると、佳代の反応に感化されたように木村はブリーフを慌てて脱ぐと、無理矢理佳代の口の中に聳えた肉棒を押し込んだ。
グエェっ! ゲホゲホゲホッ!!
蝋燭を垂らされ熱さに悶えていた佳代は突然押し込まれた肉棒に息を止められ咽返った。
そしてその苦しさから首を振って肉棒から逃げようとする佳代の頭を、左手の蝋燭の炎を消した木村は無理に押さえつけた。
グエエェ! グエエェ!!
太い木村の肉棒が佳代の喉の奥に当たって佳代の呼吸を止めた。
うぅぅうー! うぅぅううー!! うぅぅぅううううー!!! た! 助けて! やめ! グエエェ!! やめ!!
佳代は呼吸を無理矢理止められ、首を激しく左右にふり全身を大きく揺らし苦しさを木村に訴えたが、木村は薬物患者のようにヘラヘラ薄ら笑みをして一行に肉棒を口から抜こうとしなかった。
浩樹はその光景に恐ろしくなり逃げ出そうとしたが、一瞬凝視した木村の尋常ではない行動に、もしやこれはガチか! そう思った瞬間、浩樹は夢中でリネン室の火災報知機のボタンを押してそのままリネン室から逃げ出した。
静まり返った木村医院の中は火災報知機の激しい音が鳴り響き続けた。
浩樹が三階の自室に戻ると、火災報知機に驚いた数人の入院患者の老人達が晩い足取りで一階へと降りて行くのが見えた。
そして五分ほどして火災報知機の鳴り響く中、浩樹が再び一階へ降りていくと、真っ青な顔した木村が避難のために降りた老人達に故障だと説明していた。
そしてその後から今にも倒れそうな顔した佳代が、フラフラしながらスポーツバックを持って裏口に向かっているのが見えた。
ベージュの長いガウンを着た佳代の足取りは千鳥足になっていて、よく見ると時折見える佳代の足首にはロープが捲き付けられていた。
ガウンの下はロープで縛られたままの身体だと浩樹は直感した。
ワイワイガヤガヤの入院患者たちと木村が話している間に、その人集りをスリ抜けた浩樹は佳代の傍へ走り寄ると、肩を貸して佳代を裏側のエレベーターで三階の自室へと連れて来た。
内側から鍵をかけた浩樹は倒れそうな佳代を自分のベッドに寝かせると、ガウンを開いた。
佳代の身体はアチコチに蝋燭が張り付いていて、身体に食い込んだロープはそのままになっていた。
浩樹はカッターナイフで佳代の身体に食い込んだロープを切り取って解くと、その度に佳代は痛みに顔を顰めて唸り声を上げた。
「ありがとう… 浩ちゃん… 浩ちゃんが警報機鳴らしてくれなかったら、おばさん死んでたかも知れない… ゲホゲホゲホ……」
佳代はそういい残して気を失った。
浩樹は佳代の身体からロープを全て取り除くと、貼りついた蝋を丁寧に取り除いた。
佳代の熟した身体はロープの跡がクッキリと残っていて無残なものだった。
【九話】
「佳代おばさん……」
深夜、浩樹は疲れ果てて熟睡する佳代から汚れたスキャンティーを脱がせると、自分の箪笥にあった普通のパンテイーに履き替えさせた。
脱がした佳代のスキャンティーの内側には、濃厚な大人の愛液が幾重にも塗り重ねられたように厚みを持っていた。
乾いていないズッシリとした佳代のスキャンティーを、佳代を目の前にみながら、浩樹は顔を近づけた。
ホンの少し鼻で息しただけで、咽返るような強烈な熟臭(におい)に浩樹は呼吸不全を起こしたように肺の活動を止め、プルプルと上半身を震えさせた。
これが大人の女(ひと)の匂い……
佳代の汚れのついたスキャンティーの内側を両手で開いて覗き込む浩樹は、咽返る激臭に大人の女を感じていた。
そして自分のようにプルプルしているだけではない、モチモチした佳代の乳房に一瞬、憧れのような気持ちを抱いた。
俗に言うピチピチした女子高生の身体の自分とは違う、プリプリしながらもモチモチして触れた瞬間、吸い込まれそうな柔らかさに目を釘付けにした。
佳代が息する度に呼吸の震動が佳代の全身に満遍なく行き渡っている様に目を奪われた。
そんな浩樹の鼻先は佳代のスキャンティーまで1センチの距離にまで縮んでいた。
無意識だった。
そして呼吸する度に全身に小さな揺れを広げる佳代を見ながら、佳代の汚れにスキャンティーに自らの舌先を滑らせていた。
ヌルヌルしたヌメリを帯びた佳代のスキャンティーを咽び味わいながら、浩樹は佳代の身体を凝視しなが片手で自らのクリトリスを無意識に弄っていた。
ベッドの横に立ち膝して自らの割目に指を滑らせると、浩樹の指に溢れた愛液が絡みつき、クチュクチュと恥かしい音を放っていた。
何も知らずに眠る佳代が自分の側に背中を見せるように寝返ると、一瞬浩樹は両目を見開き驚きながらも、佳代の全身の揺れに目を奪われそしてその視線は、佳代の恥かしい部分に向けられた。
首を左側に倒し程よく無駄毛の処理された佳代の恥かしい部分を見詰めると、柔らかい肉肌が色の違うソレを守っていた。
浩樹は自らの恥かしい部分に中指を挟み込むように何度も前後を繰り返しその指を泡立たせた。
そして覗き込むように佳代の恥かしい部分に顔を近づけた浩樹は舐めてみたいと喉をゴクリと鳴らした。
どんな味がするんだろう……
浩樹は目の前の大人の女性自身を前に、嗅いでみたい、舐めてみたいという衝動に駆られた。
そして白いプルプルした内モモにムシャブリ付いて見たいとさえ思っていた。
ボリュームのある尻肉とムッチリした太ももに守られた佳代の陰部に、浩樹は失っていた獣の血を掻き立てていた。
味わって見たい…… クチュクチュクチュクチュッ……
思えば思うほど、自らの陰部に挟んだ浩樹の中指の動きは早くなっていった。
狂おしいほどの込み上げる女の感度(しげき)に跪く身を幾度も大きくビクつかせ、浩樹の鼻先は大きく息を吸い込みながら佳代の尻側から陰部へと近付いて行った。
ツンッとする熟した陰部(おんな)の匂いが浩樹の鼻先を鋭く突き、一瞬顔を顰めて顔を後戻りさせたが、浩樹の強欲はそれに立ち向かうように突き進んだ。
そして息を殺して鼻先で佳代の匂いを嗅いでいた瞬間、突然佳代は大きな溜息を付いて左足を大きく前側に移動しを。
静まり返った病室の中で浩樹は再び驚いて心臓をドキドキさせた。
ぅんっ! ぅぅうん……
ドッキン! ドキドキドキドキ… ドックンドックン……
浩樹の心臓の鼓動に自らの乳房が合わせるようにプルプルと揺れ、浩樹は佳代の眠りの度合いを息を殺して見守った。
そして再び、佳代が熟睡したのを見た浩樹は、右足をそのままに左足を前側に大きく移動させたうつ伏せにたった佳代の陰部を凝視した。
佳代の恥かしい部分はその割目を少しだけ開いた。
浩樹は息を飲んで佳代の右内ももに、顔の左頬が当たらぬよう注意しながら鼻先を少し開いた佳代の陰部に近づけた。
ぅぐううっ!! 臭いっ!!
突然、咽返るような物凄い刺激臭が浩樹の鼻を通り肺に到達した。
咳き込みたいのをグッと堪えて浩樹は耐えた。
すると浩樹は何故か有り得ないことをボソっと口ずさんだ。
入れたい……
陰部をグショグショに濡らしながら右の中指で内肉を擦る浩樹は虚ろな目をしていた。
二つの乳首と小さなクリトリスを勃起させる浩樹は佳代の陰部の臭い匂いを夢中で嗅ぐと再びボソッと呟いた。
入って見たい……
浩樹は佳代の少し開いた割目に沿うように、そぉ~っと舌を下から上へと滑らせた。
そして佳代の陰部から舐めとった汚れを口の中に入れると、浩樹はピチャピチャと舌堤を打った。
その舌堤の音たるやニチャニチャと猫が水を飲むように絡みつく音だった。
ドックゥンドックゥンドックゥン……
浩樹の心臓は大きく高鳴った。
その瞬間、フラフラと立ち上がった浩樹は夢遊病患者のよう歩き出すと、戸棚から電気の延長コードを取り出し、佳代の寝ているベッドへと近寄った。
虚ろな眼差しで佳代の全身を見回すと、ニコッと微笑み、佳代を仰向けに体位を変えさせ、スッとベッドの下に延長コードを通した。
浩樹は延長コードの端を佳代の左手首に、そして別の端を右手首に縛り付けた。
佳代の両手はベッドの下を通る電気コードに固定された。
両足を揃えて両手首を左右で固定された佳代は何も知らずに熟睡し、口に粘着テープが貼られても尚も気付かずに眠っていた。
そんな佳代をフラフラしながら虚ろな目でジーッと数秒見入った浩樹は、ニコッと微笑し佳代の寝ているベッドの足元に自らも乗った。
ボリュームのある熟した女の身体を目の前に正座した浩樹は喉をゴクリと鳴らし、佳代の両膝を下から持ち上げ開かせた。
佳代の恥かしい部分に顔を近づけた浩樹は鼻先を割目に近づけ佳代の匂いにウットリした。
顔中に漂う佳代の匂いに酔ったように全身をフワフワさせ、口を開くと自らの舌を佳代の割目に捩じ込んだ。
その瞬間、佳代は陰部の内肉に触れた浩樹の舌に一瞬、縛られた身体をビクつかせた。
プルルルーンとその震動で佳代の全身は大きく揺れた。
割目から香る強い女の刺激臭に浩樹は躊躇(ちゅうちょ)したように舌を一旦割目から引き抜いたが、再びニコリと微笑すると佳代の汚れに塗れた舌を割目の中に押し込んだ。
下から上へと割目に沿って舌を滑らせると、反応するように佳代は両太ももをプルプル揺らしその揺れは乳房を巻き込んで、全身を大きく揺らした。
そして咽返り何度も咳き込みそうになっていた浩樹の嗅覚は、時間とともに鋭い刺激臭を甘美な香りとして脳に伝えた。
ドゥルドゥルドゥルという舌への感触と塩気の利いた甘臭い汚れをクリトリスまで舐め上げ、そして絡め取ったモノを口に運んでニチャニチャと舌堤を打って味わい喉に流し込む。
そして再び割目に舌を押し込み同じように上へ上へと押し滑らせる。
佳代の裸体は大きくビク付いた後、ベッドの上で仰け反りと身悶えを交互にそして同時に繰り返す。
その佳代の柔らかな両足を肩に担いで、両手で佳代の恥かしい部分を開いた浩樹は、佳代の内側(あな)から溢れる透明な愛液に舌を絡め、そのままクリトリスを舌先で回した。
佳代の身体は右に左にギュンッギュンッと機敏にそしてダイナミックに揺れ、浩樹の顔の両側でプリンプリンと内モモを揺らした。
そしてスプーンで掬い取れるかのような佳代の内モモからは仄かに甘い大人の女の匂いが漂った。
甘美な太ももの香りに包まれながら、浩樹は目の前の佳代(おとな)の割目にムシャブリついた。
突然の浩樹のムシャブリに、ハッと目を覚ました佳代は首を左右に振り起き上がろうとし、両手が何かで縛られていることを知ると、浩樹に割目をムシャブリつかれていることを悟り仰天したように股間を振って浩樹から引き離そうとした。
やめてえぇ! やめなさい! 浩ちゃん!
佳代は粘着テープの下で口をモゴモゴさせたが、それでも執拗に割目にムシャブリついて舌を忙しく動かす浩樹に、その拒絶行動は次第に弱まり浩樹の舌が動く度に涙を流しながら反応して行った。
我が子のように、我が娘のように思っていた浩樹に陰部を味見される佳代は、分離していた心と身体が徐々に一つになっていった。
そして夢中で陰部を貪る浩樹の舌を佳代の身体は受け入れた時、佳代は我が身を浩樹に委ね、浩樹が陰部を味見しやすいように自ら両足を持ち上げ浩樹を助けた。
すると一瞬軽くなった佳代の下半身に、浩樹の両手は佳代の太ももを下から支えるように持ち上げ、ムニュムニュと佳代の柔らかい内モモが浩樹の両手に心地よく馴染んだ。
浩樹は殆ど味のしなくなった佳代の陰部から滑るように離れると、下から支える佳代のモチモチしてムッチリした内モモに大きく開いた口でムシャブリついた。
そしてムシャブリついた口の中では、浩樹の舌が忙しく動きまわって佳代の肉肌を味わっていた。
後転姿勢にされた佳代は、両足の間から桜貝のように紅く染めた頬をチラチラと見せ、耳たぶは浩樹からの愛撫に官能しその紅さを熟させていた。
プルプルと無造作に揺れる佳代の豊満な乳房と裸体は、その揺れを浩樹の裸体にも伝えた。
熟した女と未熟な女の愛欲は部屋の中に甘美な香りを重ねあい漂わせた。
解いてぇー! 私も! 私も浩ちゃんを!
汗で佳代から粘着テープが剥げ落ちると、佳代から追い詰められた切ない哀願が浩樹に届けられた。
浩樹はその流れに身を任せるように佳代を自由にし、佳代の顔の上に跨った。
佳代の両腕は浩樹の尻を左右から抱き、浩樹は佳代の両足を上から抱いた。
ビクウウウゥゥゥーーーーン!
その瞬間、佳代の上にいた浩樹は両手でベッドを押し付けるように大きく仰け反った。
女になって生まれて初めて割目の奥に感じた佳代の舌は、浩樹の脳裏を真白にさせ浩樹を震撼させた。
浩樹の身体は全身に電気が走ったように痙攣し全ての動きを抑止された。
そして仰け反ったまま動けない浩樹は呼吸すらも忘れたように両目を閉じて眉間にシワを寄せた。
浩樹は電気ウナギに感電して膝立ちするワニのようになり失神していた。
そんなことに気付かない佳代は動かない浩樹をベッドに仰向けに寝かせると、自らの身体を重ね浩樹の幼い乳房にムシャブリ付いた。
そした再び失神から目覚めた浩樹は、突然の乳首からの壮絶な快感(しげき)に声を上げる間もなくまたもや失神した。
佳代は熟した自らの豊満なボディーをブルンブルンと揺らし浩樹の幼い身体を貪った。
浩樹は気絶しながらも時折、苦しそうに重い喘ぎ声を上げるものの、その様子はまるで眠っているようだった。
そんな浩樹が再び目覚めた時、両足を広げられ佳代から貝合わせをされている途中だった。
クッチョクッチョネッチョネッチョと二人の女の愛液が互いに絡み合い奇妙な音を醸し出している最中の目覚めは、浩樹に不思議な官能を与えた。
それはまるで佳代の中に自らが入っているかのごとく、それでいて自らの中に佳代が入っているのような不思議な感触だった。
佳代の中に入りながら佳代を自分の中に取り込んでいる浩樹は、男女の営みとは異なった愛欲に心身共に浸っていた。
ネッチャネッチャニィッチュニッチュと、合わせた貝の音を聞きながらエクスターシーに達した浩樹は潮吹きして再び気絶した。
ベッドは浩樹の潮吹(おもらし)してビショビショになったが、佳代は初めての女同士の官能に顔を顰めて荒い吐息を立てテンポよく腰を振り続け自らもエクスタシーに達した。
【十話】
「彼は時折、ああして私をロープで縛っては辱めてストレスを発散してたの… 昨日は、うふっ♪ 浩ちゃんの~♪ 鮮度が強すぎたのかなぁ~~♪ 都会の大学病院の勤務医で生涯を終えたかったのに、こんな田舎の個人病院を継いだことで、彼の中ではもう人生の墓場なのかも知れないわ~ かといって浮気の出来るような人でもないし、こんな田舎では女遊びも出来ないし、もっとも、出来る人ではないしね♪ 私ね、今までも何度か死にかけたの… でも今回のことで、解かったの… 私、もうあの人と暮らせないって。」
床に引いた厚目の毛布の中で裸の佳代は裸の浩樹を抱いて寝物語のように話して聞かせた早朝。
二人の体温が互いに交わり佳代の乳房に頬寄せる浩樹に佳代の鼓動が伝わる。
「先生と別れるの…?」
佳代の乳房に頬を寄せながら囁くように聞き返した浩樹。
「彼はもう限界…… 自由にしてあげたい…… 私の父が亡くなって無理してこの病院継いでくれたけど、彼を大学病院に戻してあげたいし、幸い私達には子供もいないしね……」
毛布から出した左手で浩樹の頭を撫でる佳代。
「お風呂、入りましょう♪」
毛布をはぐり起き上がった佳代の豊満な乳房に朝日が当たり、眩しそうに見入った浩樹の頬を佳代が優しく撫でた。
佳代の手に自らの手を絡めながら立ち上がった浩樹は甘えるように佳代に寄り添い風呂場へ移動した。
残された毛布からは二人の女の甘美な香りが部屋に漂った。
そして風呂から出た佳代が一旦、着替えのために帰宅した。
その数分後、青ざめた表情で佳代は浩樹の居る病室を再び訪れた。
「佳代、すまない… もう限界だ。 暫くここから離れたい。 僕の留守中は隣街の榊原医院から福原が来てくれる。」
目を潤ませて浩樹に手紙を見せた佳代は、両手で顔を覆うとそのまま床に崩れた。
福原は隣街で医院を営む榊原医院の院長の従弟で、木村がここに来た当時からの友人関係にある男性で、不慣れな田舎暮らしでの木村の良き相談相手でもあり親友でもあった。
そして隣街の榊原医院と木村医院は、佳代の父親が院長を務めていた頃から互いに協力関係を維持していた。
木村佳代、旧姓を大木佳代といい、先代院長の一人娘であり大木院長が亡くなったことを切っ掛けに、大木医院を改名し木村医院として再スタートさせた経緯があった。
福原は元々、佳代の故郷の人間だったが、佳代が中学に入った頃、隣街に事情があって引越しても尚、家族ぐるみで交友していたことから、木村とも付き合うようになった。
木村医院は二日間、院長不在のまま開院し、その翌日から通常通りの医療提供を開始した。
院長代行に福原の名前が掲げられた木村医院は入院患者や外来患者に院長勉強会に出席と伝えられた。
そんな中で福原院長代行の評判は上々で、人当たりが先代の大木院長に似ていることから、古くからの患者さんたちからも喜ばれた。
それを横目に複雑な心境のまま医療に従事する佳代は疲れ果て、その癒しのホコ先を浩樹に求めるようになった。
毎夜のごとく、浩樹の部屋を訪ね浩樹の身体を貪る佳代を浩樹もまた激しい愛欲をもって迎えた。
母と子ほども年の違う佳代は浩樹を、そして浩樹は佳代を愛していた。
そんな佳代の心の中から木村貞夫の面影は次第に薄れ、浩樹がその中に根付いていった。
そして佳代の溺愛から浩樹の精神面も入院当初とは雲泥の差が出るほどまでに回復し、木村医院に身を寄せる浩樹はセーラー服の似合う女の子へと変わっていった。
その間、浩樹は両親と妹のミユキ達とも穏やかに再会すること数回、当初はどうしても女になった姿を妹に見られたくないと言い張っていた浩樹だったが、佳代の説得と愛情が浩樹の心を動かしたのは言うまでもない。
「浩ちゃん、今夜から私の家に泊まりなさい♪ そして家から学校へ通いなさい♪ 後で来なさい♪」
夜の八時、浩樹の病室を訪れた佳代は笑顔で浩樹を後ろから抱き締め、浩樹もまた違和感なく小さく頷いた。
そして一時間ほどして佳代の家に行った浩樹は家中を見て唖然とした。
母の信子と何度か来て知ってる佳代の家の中の様子が以前と違っていた。
「さぁ、ここが浩ちゃんの新しいお部屋♪ 邦彦(あのこ)も貞夫(かれ)も、ここへはもう来ないからね、安心して♪」
白い半袖シャツに青いデニムのショーパン姿の浩樹が用意された部屋を見て回っているところへ、佳代が飲み物を持ってそう呟いた。
佳代の言葉に一瞬、戸惑いの表情を見せた浩樹に、佳代はそれを回避させるようにニッコリと笑顔を見せた。
そして浩樹は佳代の家に来た時からそれ以上に佳代の服装にも戸惑っていた。
普段は大人しい服装しかしない佳代が黒光りする大きなスリットの入ったレザーのミニスカートに黒い網タイツを履き、紫色した刺繍の入ったノースリーブで豊満な胸と括れで女を強調していた。
濃い目の化粧をし真っ赤な口紅をした顔は、大人しい佳代ではなく派手な水商売系の女性だった。
「邦彦(あのこ)と貞夫(かれ)の荷物は全て…… 説明は、まぁ、いっか~♪ 家中の鍵も全部取り替えたわ~♪ 安心して浩ちゃんに生活して欲しいから~♪」
椅子に座る浩樹の前に両膝ついて横のテーブルに飲み物を置いた佳代は、ゆっくりした口調から突然、吹っ切れた口調へと変え浩樹の目をジッと見詰めた。
「可愛い娘(こ)~~♪ ここで一緒に暮らしましょうね~~♪」
浩樹の頭を優しく撫で頬を手の甲でスリスリする佳代は首を少し傾け真っ赤な口紅をニッコリとさせた。
「佳代はいつもこんな服装ってか、お化粧も……?」
浩樹の問いに佳代は再びニッコリと妖しい笑みを浮かべると浩樹の口を塞ぐように人差指を軽く押し付けた。
「貞夫(かれ)の好みなの… あんな物静かな顔しても家に戻れば貞夫(かれ)もただの男…… 服も化粧も下着も全て貞夫(かれ)に調教された結果よ~♪ 貞夫(かれ)は派手な女を辱めて虐めるのが元々好きだったのかもね~ 今では私もこんな服着て濃い目のお化粧してないと落ち着かない…… 医者と看護師なんてこんなものよ……」
佳代は時折寂しげな表情を浮かべ浩樹から視線を反らして吐き出すように囁くと、今度は浩樹に真っ直ぐ視線を向け椅子に座る浩樹の両足首を掴んで上に押し上げた。
体育座りさせられた浩樹のスカートはズリ上がり白い紐パンティーを露にさせられた。
そして浩樹の両膝に手をかけた佳代はクイッと浩樹の両足を広げると、白いパンティーに顔を近付け浩樹の匂いを嗅いだ。
すうぅーはあぁー! すうぅーはあぁー!
浩樹の内モモに両手を這わせスリスリし、浩樹の恥かしい匂いを嗅ぐ佳代は、その手でパンティーの紐を外した。
浩樹の恥かしい部分が晒され蒸れていた温度が一斉に佳代の鼻の中に吸い込まれた。
陰部が瞬時に冷えるのを浩樹は両目を閉じて感じた。
クチュッ…
佳代に左右から恥かしい部分を開かれた浩樹は両手を椅子の上に置いて、来るべく佳代からの愛欲に備えた。
陰部に感じる佳代の熱い吐息に胸の奥をドキドキさせる浩樹。
ヌリュウゥ! ヌリュヌリュヌリュウゥー!
割目の下端から上へと佳代の尖った舌はゆっくりと滑り移動し、小陰唇の間を通り尿道を、そしてクリトリスまで止まることなく一気に達した。
浩樹は閉じた瞼の間にシワを寄せ、両手に拳を握り両足の筋肉を強張らせ押さえ切れないヨガリ声を部屋一杯に奏でた。
佳代は浩樹の鳴き声を聞くなり突然、クリトリスへ到達した舌先をチョロチョロ回すと、一気に割目の下端へ滑り下ろした。
再び浩樹は電気ショックを受けたように全身を小刻みに震わせ、両足の爪先に力を込め閉じたり開いたり、そして大きな鳴き声を上げた。
「浩ちゃん… 美味しい! はふはふはふはふ! ニッチャピッチャヌッチャネッチャ!」
浩樹の割目に唇を押し付けムシャブリ付いた佳代は舌を割目の中で無作為な舐め動かした。
佳代の舌の動きに両足を伸ばしそうになるも、ビシッと押える佳代の力は浩樹を上回り浩樹はこらえ切れない快感(しげき)に髪を振り乱して首を振り続けた。
エグゥッ! ウグウゥゥ! ァウウンッ!
喉を詰まらせたような喘ぎ声を連発する浩樹は、余りの快感(しげき)に唇からポタポタと唾液を滴らせた。
そして割目の中を慌しくウゴメク佳代の舌は、浩樹の穴から溢れた愛液を一旦、全体に広げるようにして舐め取ってはゴクゴクと喉に流し込んだ。
床に両膝つく佳代のスキャンティーは外から見えるほどグッショリと濡れ、溢れた愛沖は染み出してきて網タイツの糸に絡みつくほどだった。
そんな佳代は我慢出来ぬとばかりに、浩樹の割目をムシャブリながら自らの右手で網タイツを破りスキャンティーをズラすと、中指を割目に押し込みヌルヌルした自分の愛液を指に絡めた瞬間、ヌプリッと小陰唇の間の肉穴へと指を挿入した。
自らの中に入れた佳代の指にはヌプヌプヌプと微かに肉触が伝わり、クチュクチュクチュと指と内肉と愛液が擦れる音がスカートの中に漂った。
両膝付いて腰を微妙に前後に動かしながら動かす指に、両目を閉じて浩樹の割目をムシャブル舌が時折、止まりながらうごめいた。
私も! 私も佳代が食べたい! 佳代が食べたい!!
切羽詰まったよな声を浩樹が放つと、佳代は穴の中から指を抜き、一瞬膝立ちして浩樹を上から眺めると、ニヤリと笑みを浮かべて浩樹を椅子から床へと引き摺り下ろした、
佳代はスカートをクイッと捲り上げると、自らのスキャンティーを引き裂くように剥ぎ取り網タイツを履いたまま浩樹の顔の上に跨った。
浩樹の顔は佳代のスカートの中に消え、スカートの中の浩樹は佳代の割目を左右から開き、味わうようにムシャブリついいて舌を動かした。
佳代は浩樹の両足を抱きかかえるように浩樹の割目に上からムシャブリついた。
二人は互いの割目を嫌らしい音を立て味わい、互いに腰を微かに振って内肉を互いの舌に押し付け快感(しげき)を倍増させた。
一時間後、二人は部屋の床で手を繋いで天井を見詰めていた。
「私… 佳代に処女を貰って欲しい… そんな気分なんだ…… 無理なんだろうげと♪」
浩樹は隣りに居る佳代に息を整えながら微笑んだ。
すると佳代は繋げた浩樹の手をギュッと握り締め、嬉しそうに口を開いた。
「私だって~♪ 何度、浩ちゃんの中に入りたいって思ったことか~♪ でも、私も浩ちゃんも女だってことなんだよ♪」
天井を見詰める佳代はスッと浩樹の方へ首を捻り微笑むと浩樹も佳代の方へ首を捻って微笑んだ。
ここが、貞夫(かれ)と私の寝室だった……
頑丈な金具を使って天井に張り巡らされた無数のロープとロープに取り付けられた無数の滑車。
壁に頑丈な金具で止められた十字架と、横並びに取り付けられた無数の棚と、その上に置かれた攻め道具。
鞭、荒縄、蝋燭にバイプに擬似ペニスの数々。
使われた形跡のある三角木馬に大きな洗面器。
ベッドに鎖で取り付けられた皮手錠。
浩樹は部屋の中を見せられ背筋が凍る思いがしていた。
そこは女を辱め虐めて楽しむ男の部屋だった。
「貞夫(かれ)はここで私を… ここは私を貞夫(かれ)が調教する部屋だったわ…… 両腕を縛られて天井に吊るされて鞭で打たれて… 貞夫(かれ)は私の泣き叫ぶ声に勃起し、私の悲痛な声に射精した…… 身体が傷付けば私を治療し、治れば再び彼は…… 大学時代のお友達を呼んだオームパーティーの時、彼は私にパンティーが見えそうなくらい短いミニスカートを履かせた…… そのパンティーもわざと二つサイズの小さい物を履かせられて…… 彼は男の人達を前に私が恥かしがるのを見て自らのブリーフを濡らしていたのよ。 自分の夢を捨てて私の父の病院を継いでくれた彼への私の恩返しだと思ってね♪ でも彼には伝わってはいなかった… 私は彼のストレス解消を兼ねた趣味の道具でしかなかったの… ジュースをお腹がパンパンになるまで飲まされて両足を大きく開かされて縛られて、私は我慢出来なくて彼の目の前で泣きながら放尿させられたわ。 でも、もうそんな地獄の苦しみから解放された♪ そこにあるビデオカメラは私を撮影するのに用意された物なの。 そして後でゆっくりそれを見るのが彼の楽しみだったの。 ここは私の拷問部屋かな~♪」
佳代は一つ一つ道具を指差して浩樹に生々しく説明して回った。
浩樹は佳代の話が終わった瞬間、口元を押えて寝室を飛び出した。
「女は男に味見されるために生まれて来たんだ! これが貞夫(かれ)の口癖……」
寝室を飛び出した浩樹を後ろから抱き締めた佳代は悔しそうに声を震わせ、浩樹は両手を胸の前でクロスさせ片方の手で口元を押えた。
浩樹は寝室の中で佳代が屈辱的に甚振られる様を何度も繰り返し思い浮かべ、そしてそれを何度も打ち消した。
性転換【Ⅹ】