超能力マージャン
CMが終わり、番組のタイトルが表示された。
『第一回 輝け!超能力者マージャン大会』
スタジオの中央にマージャン卓が据えられ、それを囲むように観客席がしつらえられている。すでにマージャン卓には四人の男たちが座っており、その横に派手な蝶ネクタイをした司会者が立っていた。
「さあ、テレビをご覧のみなさま、お待たせいたしました。近年、デジタルなゲームに押され、絶滅危惧遊戯などと揶揄されてきたマージャンが、今宵、蘇ります。そう、ここに集いし、四人の超能力者たちによって!」
激しいテーマ音楽と伴に、ドライアイスの煙が吹き上がる。カメラがマージャン卓の四人の顔を順番にアップで映し出すのにかぶせて、番組スポンサーのテロップが流れていく。
画面が切り替わり、司会者と解説者らしい人物が並んで座っている画(え)になった。
「本日の解説は、大のマージャン好きで知られる、SF作家の浅田達也さんにお出でいただきました。浅田さん、よろしくお願いします」
「よろしく」
「さあ、さっそく、シーパイ(洗牌)です。四人がパイをかき混ぜ始めました。おっと、違います。四人ではありません。三人です。一人だけ腕組みをしています。剛田選手です。ああ、しかし、剛田選手の前のパイも激しく動いています!」
「念力ですね」
「本来は手でやるべきシーパイですが、超能力者特別ルールの為、これは反則になりません。ですが、浅田さん、これって意味ありますか?」
「まあ、あまりないですね。手でやるのと変わりません。剛田くんのパフォーマンスでしょう」
「ところで、今回全自動卓にしなかったのは、やはり、不正防止ですか?」
「そうですね。我々から見えない場所でパイが混ぜられると、それこそ、剛田くんが自分に有利に並べ換えてしまいますからね」
「なるほどなるほど。でも、逆にこのやり方ですと、剛田選手は自分の能力を活かせませんね」
「それは言えていますね。彼自身も、不正行為以外に自分が有利になる方法はないとわかっているでしょう。しかし、彼のトイメン(対面)は里田くんですからね」
「里田選手はテレパスでしたね。すると、里田選手の方が有利ですか?」
「うーん、それはどうでしょう。剛田くんが良からぬことをたくらんだら見破るでしょうが、マージャンパイが透けて見えるわけじゃありませんからね」
「ああ、それは三田選手のことをおっしゃってるんですね」
「ええ。彼は透視能力者ですから、すべてのパイが丸見えです。もっとも、見えただけでは、自分に不利なことは避けられますが、有利にはできません」
「むずかしいものですね。では、最後に残った占田選手はどうですか?」
「占田くんは予知能力者です。サイコロぐらいなら、次に何の目が出るかわかるでしょう。しかし、マージャンパイ全てをバラバラに混ぜたら、その順列組合せはとてつもない数になるでしょうから、おいそれと予知はできないと思いますよ」
その通りだった。パイが並べられ、ゲームがスタートすれば、その局(=ゲームの最少単位)に誰が上がるか、占田には瞬時にわかる。しかし、その局が終わり、再びシーパイが始まると、全く未来が見えなくなる。シーパイが終わってパイが並べられると、また、誰が上がるかわかるようになる。これでは勝てそうにない。高額な賞金につられて参加してしまったことを、占田は後悔した。
…と、ここまで予知して占田は電話をかけた。
「ああ、銀河テレビさんですか。どうも、占田です。せっかく声をかけていただきましたが、超能力者マージャン大会への出演は、お断りします」
(おわり)
超能力マージャン