遠くをみたい

遠くをみたい
ここにないずっとむこうの世界
海のかなた
地平線のむこう

どんな人が住んでいて
どんなふうに暮らしているのか
なにを考え
どんなことに興味があるのか

そこでは
苦しんでいる人はなく
みんなハッピーにくらしているかも

その秘密を知りたい
だれより早く
まっさきに

高い台地に登り
双眼鏡でのぞき
望遠鏡で観察し
たくさんお金をつぎこんで
レンズの倍率を高め
長い時間をかけて
もっと遠く
もっと先をと

そこから先はもうむりだろう
とおもったとき
誰かの後ろ姿が見える
肘を張って何かを必死でのぞきこんでいる
ちょっと右側を確認しようとすると
その人の頭もちょっと右側に動いた
左のほうをみると
こんどは左側に

こちらの動きと
見ている対象が連動している
何かへんだ

ずっと遠くをみようとして
必死に遠くをみようとする自分の後ろ姿に
到達した

遠くをみたい

遠くをみたい

近くばかりみてないで、遠くを見よというけれど、その逆もありそうです。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-09-08

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