温度

温度

真っ白なベットで静かに眠る君の横顔。
僕はそれを目覚めて1番に見れる優越感に浸る。

僕と一緒に居始めた頃の君はまるで大好きな飼い主に酷いことをされて捨てられた猫みたいにいつも緊張していた。

誰にでも喉を鳴らすけど、頭や喉元を触ろうとすると、猫パンチされるアレ。

同じ空間にいても眠ってくれなくて、僕が眠りに着いてから隅っこで眠りについて。それでいて起きるのは僕より全然早いんだから、もう眠った顔なんてレアどころの話じゃなかった。

そんな君が、僕と話している時に眠そうな表情をするようになって、なだめるように腕を回し、僕も目を閉じて君の額に顎を置いてしばらくすると、君から静かな寝息が聞こえて来るようにもなった。

元々眠りの浅い君が突っついてもすり寄っても変わらず静かな寝息を立てていることに安心して、僕も眠りにつく。それでも起きるのは君のほうが早いから、明るくなってからこうして君の寝顔をみれるのはまだ多くない。

枕になった右腕を動かさないように、体を少し起こして左手で君の頭を撫でる。ゆっくり目を開ける君。至近距離で目があって、少し緊張して、それと同時に僕の中の男に少し熱が入る。

朝だから、っていうのも勿論あるけど、そしてこんなこと言うのも恥ずかしいけど。化粧をしてる君も好きだけど無防備な顔で寝ていてしかも寝起きの君の破壊力ったら、普段よりもやっぱりなんか魅力的に見える。あと薄着だし。僕の前で無防備にいてくれるのは嬉しいんだけど、いつもいつも目のやり場に困る。触ってくださいって言わんばかりの格好をして擦り寄られた日には、リミッターなんて効かなくなるんだから。

薄く目を開いて目が合ったあと、柔らかくくしゃっとした笑顔で微笑むと、僕に軽くキスをする。


…いや、だから反則でしょう。

「もう、今のは自分のせいだからね。」
「ん?」

きょとんとした君の顔を頭に置いておいた左手で引き寄せ、深いキスをする。驚いて目を見開いた君を見ながらお構いなしに舌を滑り込ませる。ゆっくりと僕の呼吸に合わせて所々苦しそうに呼吸する君と、眠たそうな顔が熱を帯びていくのを見届ける。

どちらかというと体温が低い僕と、体温が高い君の熱が呼応すると、そこから先に余裕はなくなる。

何度キスをしても、体を重ねてもまだ触れたい、繋がっていたいという気持ちが勝ってしまう。

キスをして震える体も、弱いところを触っている時に漏らす甘い声も、震える足も。皆が見れるメイクバッチリの姿でもなくて。無防備な表情に無防備な服装に僕は抑制なんてできない。

君といるようになってから、自分の中の独占欲という気持ちと初めて向き合うことになった。家から出したくないとかそういうのではなくて、僕に見せてくれる無防備な姿を僕だけのものにしたいって、そう思うようになった。

キスをした時の顎を引く癖も、舌を入れる前の小さな口も、手の平を頰に近づけると指先に舌を這わせる君の表情も、長くキスをした時の僕の肩や頭を掴む小さな手の平も。

セックスが良いわけじゃなくて。いや、もちろんそこも良いんだけど。その時間というか、スイッチが入ってからの時間全部が幸せ過ぎて、他のことを考える余裕がなくなる。

「ちょ、ちょっと一旦休憩。」

そう言って僕の手を止めるのはいつも君だから、 君がそれを言うまでは僕は止まれない。

これは今日みたいに朝だけじゃないけど、今日は余計に気持ちが高ぶった。

君は朝からまったく、なんて少し照れてふてくされてるけど、まだ身体の温度が高いままなのは頰や耳の色を見ればわかるし。君はたまにすごく最初の時みたいに自分のどこがいいのかとか、僕が君のこと本当に好きなのかって聞いてくるけど、こんなに君をみてニヤニヤしてる僕を見てるのに気づかないのかな。


この上なく好きなんだけど、なんて言ったら伝わるかな。

言葉で伝わらない時は、君の温度を頼りにわかってもらえるまで好きって言って、触れ合っていこうかな。

温度

中途半端な感じ。
なんとなくもどかしい感じに書き上げてみました。

温度

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-09-06

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