そよ風の中で

吾塚


そよ風の中でぼくは
風船の深呼吸(いき)をする
それは
お腹の底の地面から
ぐんぐんと空へのぼるちいさな木の芽を
そおっと撫ぜるだろう
芽はまだちいさいけれど
こうして息をするたびに
ぼくの芽はたしかに
ちいさくちいさくふるえているのだ

嵐の中でぼくは
大砲の筒になる
それは
お腹の底の地面から
ずんずんと空を目指すちいさな木の芽を
ごおっと叩くだろう
芽はまだちいさいけれど
こうして風を呑むたびに
ぼくの芽はおおきくあらがうのだ


風のないときにぼくは
たまらなく苦しくなる
じいっと息をとめて
風の音をはらはらと待っている
お腹の底ではぼくの芽も
しーんと黙ってうごかない
そんなときふと
お腹がじーんと熱くなる
どうやらこれはぼくの芽の
その根っこがどくどくと 脈打っている熱らしい

お腹にそっと手を当てて
そうかそうかと頷いた
なんだかとてもいとしくなって
そうかそうかと呟いた

そよ風の中で

手作り冊子「なりやまない」掲載作品

そよ風の中で

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-09-01

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