学園コンペティション
プロローグ
20X5年。7月7日。東京から謎の白い閃光が上がった。その光は瞬く間に日本列島全土を覆い尽くした。
光は建物をも貫き、日本にいたすべての人が光を浴びた。
光は人体に害を与えず、あるものを与えた。
それが、異能力だ。
すべての日本国民がさまざまな異能力を発現した。
念力などのお決まりなものだけではなく、火を操ったり、水を操ったり、風を操ったりなどもみられた。
異能力を得た日本国民は、暴走した。
悪人は異能力を使って犯罪を起こし、一般人はそれに巻き添えをうけ、多くの血が流れた。
日本政府は正義の心を持つ人間を集め、悪人と戦わせた。
これが、第一次日本戦争だ。
日本政府側が戦争に勝利し、日本に再び平和が訪れた。
この時点で、日本の総人口は約5000万人までに減っていた。
日本政府は戦争の被害を受けた西日本を封鎖して、東日本に人を移動させた。
これが、日本分断である。
そして、日本政府は東京に新たに一つの学園を建てた。
強い異能力者だけを集め、その中で強さをランク付けし、上を目指す。
その学園の名は、国立帝王学園。
第一章 国立帝王学園
でかい。
目の前にそびえたつ壁のような赤煉瓦の校門を見て、有馬春はただただそう思った。
国立帝王学園。
春が今日から入学する全寮制の学園だ。
この学園に入学するにはある条件がある。
日本では15歳になったらある試験を受ける。それはこの学園の入学試験だ。
30年前、全日本国民は謎の光を浴びて異能力を手に入れた。
帝王学園には強い異能力者しか入学できない。入学試験でその強さを認められたものだけが入学することを許される。
入学試験の内容は機械人形を壊すこと。壊せば合格。出来なければ不合格のシンプルな試験だ。
春は見事試験に合格し、入学証を手に入れた。
春はもう一度校門を見た。
この門をくぐったら、すべて変わる。
そんな思いを抱き、春は歩き出した。
赤煉瓦の向こう側へと。
■ ■
「静粛に」
新入学生の声で騒々しい体育館に声が響き体育館が一気に静まり返る。
「これから国立帝王学園入学式を始めます。まず、学園長のお話です」
マイクを持った教師がそう言うと、壇上に黒いスーツを着た男が出てきた。その迫力ある雰囲気に体育館にいる全員が圧倒された。
「私がこの国立帝王学園の学園長、轟正剛だ。わが学園の入学試験を見事合格し、よくこの学園に来てくれた。我々は君達を歓迎する。しかし、君達の真の戦いはこれからだ。持てるだけの力をふるい、ただ上を目指せ。以上だ」
その雰囲気に負けない重みのある低い声が響いた。
「続いて、生徒会長のあいさつです」
今度は華美な装飾品を身に付けた、金髪の男が出てきた。学園長とは違った意味で圧倒された。
「新入学生の諸君、入学おめでとう。僕がこの学園の生徒会長、神岡麗だ。よろしく」
男なのに甲高く粘っこい声がマイクを通して響いた。
「生徒会長の僕がこの学園でもっとも強い。諸君も僕のようになれるように頑張りたまえ」
上から目線のうざったい挨拶だった。
学園最強。
そんなもんすぐにたどり着いてやるよ。
春は心の中でそうつぶやいた。
「続いて、学園の説明です。この学園では生徒の強さをランク付けしています。ランクは下から順にD、C、B、A、Sとなります。各ランクの中でさらに順位づけが行われます。最初のランクはこれから行う、認定試験によって決まります。なお、認定試験でどんなにいい成績を出してもSランクにはなれません。ランクは三ヶ月に一度行われる昇格試験によって変わります。昇格試験の内容はまた後で説明します。ランクにより住める寮も変わります。Dランクの場合は極貧寮。Cランクは貧民寮。Bランクは平民寮。Aランクは富豪寮。Sランクは大富豪寮となります。説明は以上です。質問のある方はいますか?」
「はい」
男子の手が挙がった。
「Sランクにはどうやったらなれるんですか」
「Sランクになる方法はSランクの生徒に勝つことです。Aランク1位の生徒にはSランク最下位の生徒への挑戦権が与えられます。それによって勝つことでSランクになれます。ただ、その挑戦権を使わないことも可能です」
その後の質問は比較的どうでもいいものばかりだった。女子が極貧寮や貧民寮になったときお風呂はどうなるんだとか。
「ではこれで入学式を終わります。次は認定試験になりますので新入学生は試験会場へと移動して下さい」
緊張の糸が解けて一気に騒々しくなる体育館。そして新入学生は試験会場へ向かった。
■ ■
試験会場は学園の体育館だった。ただその広さが以上だ。2000人を超える新入学生が入っても四分の一にも満たない。
約2000人いた新入学生はAからTまでの20のグループに分けられた。春はJグループになった。
「では試験の説明を始める」
今度はマイクではなくメガホンを通して春のグループの男教師の声が響いた。男教師の隣にはマネキンのようなものが置いてあった。マネキンというよりはロボットの方が近いかもしれない。
「試験にはこの機械人形を使う」
そう言って男教師は人形の肩をたたいた。するとカシャンという金属音が鳴り、人形の目が赤く光った。
ウィーン、と音を出し、うなだれていた人形が頭をあげた。
「この人形は見たことがあるだろう。入学試験にも使用されたものだ」
春は機械人形を見た。
言われてみればそうだ。たしか入学試験はこの機械人形をぶっ壊せば合格だったんだよな。今回もそんな感じか。簡単だな。
春は余裕のある表情で話を聞いていた。が、次の瞬間余裕がなくなった。
「だが、攻撃力、強度、素早さなどは10倍以上だ」
「10倍!?」「嘘だろ・・・」「入学試験のもまあまあ強かったのに」
男教師の言葉は、新入学生達をざわつかせた。
春の額にジワリと汗が垂れた。
10倍。入学試験のときは本気の一歩手前らへんの力で壊せた。だけど今回は本気じゃなきゃ無理そうだ。
「じゃあ、試験を始める。やりたいやつから順にならべ」
もちろん率先して並ぶやつなんかあらわれない。みんな黙って動かずにいた。
その時だった。
「はいはいはい!! 俺やる!」
後ろのほうからハリのある元気な声がした。
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