亀若
京都の外れにあったある寺に、亀若という美しい稚児がいた。
年は十八、九で、容貌がたいへんに美しかった。
実はこの亀若は、この寺の住職が若い時に恋仲になった女に産ませた女の子だった。
さすがに自分が女性と交わった事を、公表するわけにも行かず。
また、子供まで産ませた事も、表沙汰にするわけにも行かず、子供を、男の子の稚児として寺で育てていたのだった。
年頃になりたいそう美しくなってゆく娘を見て、住職は心配になり、
寺に訪ねてくる僧にも寺男にも、亀若を会わせなかった。
勉強を教えるように頼まれていた同じ年頃の公家の息子とは、
勉強仲間として、亀若はただ一人の友達として、親しくしていた。
寺の住職も、この青年は、男色の好みがなかったので、少しも心配してはいなかった。
その日の夕暮れ、住職も寺男も、村の法事に出かけて留守だった。
亀若と公家の息子は、二人で寺の留守番をしていた。
雨が降ってきて、火をおこし、二人でしんみりと酒を温めて飲みながら話し合っていた。
公家の息子は、少し酒がまわってくると、いつもは何とも思っていなかった亀若の姿が、妙に艶かしく見えた。
酒のせいだろうと思いながら、ふざけた様子で、冗談を言ってみると、亀若も笑ってかえしてくる。
それでも公家の息子は、自分は男色の好みはないのだ。
と、自分の心の中で確認していた。
(きっと、酒がだいぶまわったのだ。少し飲みすぎたか?)
公家の息子は、自分の気持ちが亀若に傾いているのを、心の中で否定した。
「少し酒を飲みすぎたようだ。少し横になって、休ましてくれ。」
公家の息子は、亀若にあくびをしながら言った。
亀若も、長く両足を伸ばして横になった。
「この世に、本当の事なんてあるのか?ないのか?」
公家の息子は、笑いながら亀若に言った。
「人の気持ちの中にある思いは、本当の事かもしれないけどね。」
亀若は、公家の息子に言った。
公家の息子は、
(男色は否定しながらも、亀若は私の事を、憎からず思っているのかもしれない。)
と、感じた。
灯のあかりに照された亀若の白く美しい様子に、
(これが、女であったらなぁ。)と、
公家の息子は思った。
「いくら思う思いがあったとしても、このような寺院の奥深く隠されてある桃が男とあっては、食うに食える道理もない。」
と、公家の息子が笑いながら亀若に言うと亀若は、
「人が、真面目にものを言えば、下ネタでかえしてくるとは、なんと憎らしい。ならば、本音を、痛め付けて言わせて見せましょう。」
と、公家の息子の横腹を、くすぐったので、バタバタしなが、公家の息子は、
亀若の手をとり、抱き伏せた。
男と女で、こんな風にじゃれ会えれば、面白かろうにと、思いながらも、幼い頃
男の友達と遊んだ感じとは、何か少し違う気がする。
寺の稚児というものはこんなものなのか?
と、どことなく違う柔らかさを感じていた。
「ああ、痛い。手をはなして下さい。」
と、亀若は、涙目で、公家の息子に訴えた。
益々、同じ年頃の男にしては、弱々しい言い様を不審に思い。
亀若の胸元を探ってみると、柔らかな乳房が、手にふれた。
これは、如何なるもの?
と、驚いて、亀若の股間に手を入れると、ふさふさした毛だけが、手にふれる。
「今まで、普通の男と思って過ごして、気がつかなかったばかりか、私への思いまで男同士の関係と、誤解して知らぬふりをしていたとは。」
(残念なことをしていた。)
と公家の息子は、つくづく思いかえし。
「さあ、こちらを、向いて下さい。」
と、亀若を、正面から抱きしめた。亀若は、額に汗をかき、桜色に火照った顔が、何とも、女らしく美しい様子であった。
公家の息子は、亀若を女としてあらためてしみじみとその様子を、見つめ直していた。
公家の息子は、亀若を抱きしめ、亀若の身に付けているものを脱がせ、亀若の裸になった身体に、口づけした。
亀若は、
「今まで、こうなることを願っておりました。」
と、嬉しさと恥ずかしさで、声を震わせた。
公家の息子も、いよいよその気になっている自分の物を、亀若の身体の中に差し入れようとしているところに、寺の外からどうやら住職が、寺男と供に法事から戻って来たらしい声が聞こえてきた。
二人は、慌てて着ているものを身に付けると、明日の夜に、また、会う約束をして別れ、床についた。
床の中では、男は女の面影を、女は男の身体を思い寝付けない夜を過ごした。
昼間は、早く夜が来ぬかと、そればかり思っていた。
そして日がくれ、待ち焦がれた夜の闇が訪れた。亀若は、前夜に約束した通り、寺の裏木戸を開けて公家の息子が、忍んで来るのを待っていた。
すると、そこに一人の娘が戸を開けて入ってきた。
娘は、亀若の姿を見つけると、
「まあ、嬉しい。これはきっと、観音様の御導きだわ。」
と、喜んでいた。
寺の近くの家に住む、十五六歳の娘で、亀若が、娘に、
「こんな時刻に、どうなされたのですか?」
と、声をかけると、娘は、いきなり亀若に抱きついて、
「私は、以前よりあなた様の事をお慕い申し上げておりました。あなた様無しでは、もうこれ以上生きていることが出来ない身なれば、いっそ、あなた様に、この命奪って頂きたく、心を決めてまかりこしました。」
亀若は、娘が身を震わせて涙ながらの訴えを、如何したものか?と、考えました。
その娘の涙ながらに訴えていることは、昨日まで亀若が、公家の息子に抱きつづけていた気持ちと同じ思いであり、亀若にも、その娘の気持ちが、痛いほどよくわかりました。
(私が、本当に男であったなら、この娘の願いを、聞き入れてやることもできるのかもしれないけれど?
このまま無下にすれば、この娘は本当に死んでしまうかもしれない。)
と、亀若は心配して、
「さても、そなたの願い事を叶えてやりたいところではあるけれど、私は、御仏につかえるもの、その修業に背き戒めを破るからには、まず、仏様に御許しを頂かなくてはなりません。ほんのしばらく、こちらでお待ちください。今、御許しを頂いて参ります。」
と、亀若の部屋で娘を待たせた。亀若は、本堂に行って、仏像の前に座り、合掌して、仏前の木魚を叩くバチを懐に入れて娘の待つ部屋に戻ってきた。
娘は部屋の中で、両手を合わせて拝んでいた。
亀若が部屋に戻ると、暗い部屋の中を娘が座っている所まで、手探りで戻ると、待っていた娘を抱きしめた。
「今、観音様に許しを頂くように、お願いしてきました。」
亀若は、自分の乳房を娘に触らせると、
「お願いいたしましたが、観音様は、その願いを聞き入れてくだされず。私の身体を、一瞬のうちに女の身体に代えてしまわれました。」
亀若は、自分の股間を、娘に触らせた。娘は、アッと驚いて、手を引いた。
亀若は、娘の手を取り、
「これこのように、私の男の一物も外されてしまわれました。」
と、本堂の木魚から持ってきたバチの柄の所を<br>娘の手に握らせた。娘は、
「なんと、酷いことを。私は、なんと罪作りなことをしてしまったのでしょう。」
と、涙を流しながら、亀若に謝った。
亀若は、娘を抱きしめ、
「私のことは、別に良いのだけれど、もし、このような私の一物であっても、そなたの願い事が叶えられるのであればそなたをおなぐさめいたしましょう。」
と、娘の身体を探りあて、娘の大切な所を指で撫でる。優しく指で娘の身体を刺激して、濡れてきたところに、木魚のバチの柄の頭を、あてがった。
ゆっくりと少しづつ、亀若は、木魚のバチを娘の大切な所の中に入れていった。
娘は、初めての男の挿入は、苦しいものと思いながらも、心地いい刺激に身を任せていた。
娘は、亀若に詫びながらも快感に身を震わせながら、
「私のわがままから、亀若様には、取り返しのつかぬ事を致してしまいました。いっそのこと、私は、このまま、御仏のバチがあたって、地獄に堕ちてしまいたい気がいたします。」
亀若は、娘の身体に差し込んだ木魚のバチを出し入れしながら、
「若い身空で、地獄に堕ちるなどもったいない、人生の悦びは今はじまったばかりではございませんか。
御仏は、そのような貴方に、バチなどあてはいたしません。
御仏のバチは、今あなたさまの大切な物の中で、出たり入ったり致して御座いまする。 いっそこのまま、極楽まで、お上り下さい。」
そんなことがあった次の日の朝、寺の住職が、朝のお務めをしようと、
木魚の前に座ると、木魚を叩くバチが見当たりません。
はて?何処に置いたものやら?と、思いながら、
木魚の向こう側を、ふっと見ると、木魚の割れ目に、木魚のバチが挟まって、引き抜こうにも、木魚が、バチをくわえこんで離しませんでした。
亀若