果てしなき-童話的な-

ひと夏ごとにある景色

 ねんねこ、念猫、ねんねこ。
 猫さんだ。たいてい猫さんに情をこぼすよ。人さんはそうするよ。猫が嫌いだって人さんでもね、猫さんたちへのひどい扱いとか、おわりにはそれが働くよ。
 むしゃむしゃ。ねんねこねんねこ。
 猫さんたちの病院もしっかりあってね、そこにかける人さんの情は、計り知れないよ。みーしみーしみーし。いいな、いいの?知らないな。
 ながーい年月っていわれるよ。地中の中にずっといて、人さんの前に出る時は、もう1週間を切っているんだから。そう言われても、まぁ関係ないさ。けれどね、僕ら蝉がなき止む頃には、人さんは知らないよ。
 こういうのさ。「奴ら、死んだと思ったら、急にビクッとジジジって動くんだよ。あれは侮れない恐怖だ、わはは」って。
 笑い話さ。いい話し。それは猫さんになると、もう感動秘話さ。いい話し。
 まぁね。猫さんはね、人さんにとってはね、古来からともにあって、猫さんはあらゆる地域で神様にもなってるよ。だからいいよ。
 けどね、今日も人さんは気づかないよ。みーしみーしみーし・・・。
 僕らは戯れられる。無邪気に猫さんに。そして、自転車にピチャン子にされる。あぁぺちゃんこだった。まだ僕らは人に相手にされるよ。虫かご、虫網かかえた人の子が・・・、ってそんな夏の風物詩ももう昔かな。蚊に刺されたら嫌だしね。けどナイフで刺されるのは流行ってるらしいよ。アブラゼミ、ミンミンゼミ、シンケンゼミ。そう言われそうで末恐ろしいよ。割愛。
 そうだ、夏の風物詩というか、活発になる仲間がいるね。これはもう人さんはゾンビ扱いだね。僕ら蝉とは、あまり接点はないけど、あの方、ゴキブリさん。ありゃ凄いね。かなりの人気者。時代を超えて壮絶だよ。ハイウッドスターも顔負け。
 いやー彼らは迫害の歴史だね。それが人さんにとっては、正攻法。情なんてありゃしませんよ。すかさずですから。僕ら蝉の鳴き声も、かき消されるほどにね。
 いやはや。ねんねこ念猫って人さんに言いたくなりますよ。
 どっちら家の葬式でやんす。むしゃむしゃ、もぐもぐ。騙された。ええいうるさい。さっと黙れ。そういわれそうなので、冬支度に取りかかります。もうツクツクホウシもなきはじめて、カエルの合唱はここではきけません。
 ねんねこ、念猫、ねんねこ。

果てしなき-童話的な-

果てしなき-童話的な-

ひと夏の蝉のセリフ。 蝉からみた、猫やゴキブリを通して見える、人の接し方の絶望的な差。 同じ命というけれど、という、蝉の声にのせて。 陽気に、皮肉にうたいましょう。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • ミステリー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-26

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted