切磋琢磨し練武せよ戦士達

PSO2で私が所属していたロールプレイ推奨チーム「魔法学園」のメンバーをお借りした、二次創作小説です。

××月××日、××時に戦艦ケルベロスまでお集まりください。

ゲン「やっべ…!!遅刻する…!!」

廊下は走ってはいけない、というのは誰もが学校で言われてきた言葉だろう。それは今まさに、通路を疾走している彼も例外ではなく。その言いつけはきちんと今この時まで、なるべく守って生きてきた。そう、今この時までは。
ゲン・ノースは、廊下を走っていた。出来る限り、全力で。

ゲン「うおおおおああああ……!!ま、間に合ええええ…!!!」

何故、彼が今 廊下に情けない叫び声と激しい足音を響かせているのか。理由は至極単純、寝坊したからである。目が覚めて目覚まし時計に目をやると、液晶画面の表示が綺麗にまっさらになっていたのだ。電池が切れたのだと理解するのに要した時間は、一瞬であった。顔は青ざめ、頭が急激に覚醒し、大慌てで支度をしてゲンは部屋を飛び出した。忘れ物がないか、などと悠長に確認をしている暇など無かった。今、彼の身体からは色んな意味での汗が吹き出し続けている。急な激しい運動、絶体絶命的な焦り、今後の信用問題に対する不安。それら一つ一つが汗を出す原因となり、また合わさり、もう大洪水も良いところである。そんな汗まみれのゲンが目指す先は、戦艦ケルベロス。魔法学園が所持する大型移動要塞。

ゲン「もうちょい……間に合え……頼むうぅぅぅぅ……!!!」

見えた。廊下の先にある移動用設備であるテレポーター。あそこにアクセスすれば、ケルベロスの内部に入場できる。ゲンは、ラストスパートだと言わんばかりに猛ダッシュした。…。

………。
…………。
……………。

ここは、戦艦ケルベロス。魔法学園が所持する大型移動要塞。そのブリッジに相当する位置。今、ここは。

マヤ「そろそろ時間だけどよ、まだ始まんねーのか?」
蒼井 奏「まだ予定の時間まで2分あります…もうすぐだとは思うのですが…。」
爵「というより、これは何の集まりなのでしょうか…。」
ビリー「…何も無いなら帰ってもいいか。……眠い…。」
ミライ「いやいや!だからまだ始まっていないでしょう!」
不知火「ていうか人多すぎねぇか?いない奴を数えたほうが早いぞ、コレ。」
Empty「ヤトさんはどこですかヤトさんは来ていますよねヤトさんはこの人混みのどこに嗚呼もう邪魔な人が皆消えて私とヤトさんだけの世界になればいいのにヤトさん待っててください今探しだしますからねヤトさんかわいいヤトさんかわいいヤトさん素敵ヤトさんヤトさんヤトさんヤトさんヤトさんヤトさんヤトさんヤトさんヤトさんヤトさんヤトさんヤトさんヤトさんヤトさんヤトさんヤトさんヤトさん」
レリア「わー!!とっても賑やかですね!!なんだかこれだけでもう楽しくなっちゃいます!」
柴千代「ムガアアアアァァァァァ……………」

多くの人でごった返していた。おそらく、所属している生徒はほとんどがこの場にいるだろう。そのせいで広々としていたはずのブリッジは、人混みでかなり狭く感じる。現在ケルベロスは宇宙空間を航海中のため外へ出ることができず、結果このようなスシ詰めのような状況を作りだしてしまっているのだ。柴千代など人と人に挟まれて今にも潰れてしまいそうだ。
そして、そこへ。

ゲン「お、遅れてすいまッせええええぇぇぇえぇぇん!!!!」

けたたましい大音声がひとつ。ガヤガヤとした声に埋め尽くされていたブリッジにいた全員が聞き取れるほどの大声。ある者は驚いた顔で、ある者は呆れた顔で、ある者は敵襲かと身構えて。一斉に声の方向を振り向く。その先には、息を切らしたゲン・ノースの姿があった。

クルス「あっ、ゲンさーん!セーフですよセーフ!!まだ1分前でーす!!」

その大声にすかさず反応したクルスが、ゲンに向かって声をかける。どうやら、なんとか間に合ったようだが、ゲンは集合時間には「到着し、準備を済ませておく」物だという認識が強く根付いているためつい「すいません」と口走ってしまった。だが、目の前の状況を見るに大丈夫そうだ、とはなんとなくだがゲンは感じていた。その予感を確信に変える助け舟が、さらにもうひとつ。

ユナ「ゲンちんだいじょーぶだよー。主催者がまだ来てないもん。」

ユナのその言葉を聞いて、ゲンの全身から力が一斉に抜け出し始め「よかったぁ…」とこれまたなんとも情けない声で呟いた。しかし、どういう事だろう。主催者がまだ来ていない、というのは…。

イグルーシカ「アリーセも来てないの……。朝、ルシカより早く出発したのに…。」

と、心細そうな声でぽつりとイグルーシカも呟いた。ある者はそんなイグルーシカをなだめ、ある者はその二人の名前を聞いて、これは何かありそうだなと考えを巡らせる。
そもそも、何故これほどまでの魔法学園生徒がこの戦艦ケルベロスに集められているのか。それは1ヶ月前に一通のメールが全員に届いたのが事の始まりだ。そこには、あの黒峰七海から今日この場に集まるよう書かれた旨がやたらとお固い文章で記されていたのだ。あの黒峰七海がである。黒峰七海が形式ばったちゃんとした文章をメールで送ってくるなど、それだけで天変地異が起きそうな物だが。しかし、問題はそこではない。集まるよう言われた事以外は、何も書かれていなかったのだ。おかげでこの場にいる全員が訳も分からずつっ立っている。

シエロ「もうとっくに時間なんだが……。」
ビリー「よし、何も無いな。帰る。」
ミライ「待てェい早すぎるわ!!」

時間になっても何も起こらないので、機嫌が悪くなりはじめた者もちらほらといる。一体、黒峰七海は何故ケルベロスにこれだけの人を集めたのか……と、その時。

ゲン「うおおあぁぁッ!!?」
黒峰七海「あっ、わり!誰か倒しちまったか!?」

ゲンが、後ろから何かに押されて盛大に前のめりに倒れた。ゲンの後ろ…入り口であるテレポーターから出てきたのは…。

ノエリア「みそーーーーーー!!!……ってうわあああああああ!!!?は、箱に足が生えてしゃべってるのだー!?」

箱だった。見るとそこには、巨大なダン・ボウル箱に足が生えて、黒峰七海の声で喋っていた。

ヴィルトカッツェ「う、うわあああ!!すごいですすごいです!!七海さんすごいです!!いつの間に箱に変身する能力をお持ちになったのでしょうか!!でっかくてぴょこぴょこ歩いててすごく気持ち悪いです!!もしかして新種のフォトンアーツか何かでしょうか!!?」
黒峰七海「ちげーよっ!!荷物運んでんだよ!!わかれよ!!」

その正体は、全身を覆い隠すほど巨大なダン・ボウル箱を持って現れた、黒峰七海本人であった。

黒峰七海「どうやらみんなちゃんと集まってくれてるみたいだな!へへっ、ありがとな!」
爵「それが何なのかわかりませんけど…とりあえず、おろしましょうよ、ソレ。そのままだと本当に箱が喋ってるみたいで気持ち悪いです。」
カセン「喋る箱が気持ち悪いと」
ミライ「お前の事じゃない」
アリーセ「………はやく……今はどうでもいいので……はやく……ッ……」
ゲン「うおぉっ!?箱がもう一つ!?」

いつの間にやら、黒峰七海(だと思われる箱)の後ろにもう一つ、箱があった。やはり巨大なサイズで、足が生えている。

蒼井 奏「その声は……」
イグルーシカ「アリーセ!!」

その正体は、やはりというかなんというか。アリーセ・バールベリトであった。多くの者の予想通り、どうやら黒峰七海と同行していたようだ。

アリーセ「はやく……おろしたいので……さっさと……ぬ…ぅぅおおおぉぉお……ッ」
イチル「あっはっはっはっは!!!『ぬ…ぅぅおおおぉぉお……ッ(声マネ)』だって!!あっはっはっはっは!!」
アリーセ「いいから前へ進んでくださいナナミッ!!!あっ…腰がっ!!腰があぁっ…!!や、やばい!!腰がやばい!!!う、うわあああああ!!!」
ビリー「無理するな。女の子なんだから。」
アリーセ「誰が女の子ですかッッ!!!!!」

アリーセの悲痛な叫びがブリッジに響き渡る。しかし、その瞬間、何故かアリーセの身体から急に重力が消えていった。

アリーセ「あ、あれ…?か、軽…わっ」
マヤ「だから無理すんなよー?困った時はオレとかみんなを頼れよな!」

どうやらアリーセの事を見かねたらしいマヤが代わりに持ってくれたらしい。だが、その「マヤが代わりに持ってくれた」という事実は、思わぬ形でアリーセにダメージが入ったらしく。

アリーセ「あ……ぁぁ…………。」

と、何か大切な物がぽっかりと失われたような顔で呆然と立ち尽くしているのであった。

マヤ「七海ー、これどこに置けばいーんだー?」
黒峰七海「ああ、あっちに置くぜ!ちょっとみんな、前が見えないから道をあけてくれー!」
マヤ「おっしゃー、任せろー!」
黒峰七海「あと外にまだいっぱい荷物があるんだ!男手は運ぶの手伝ってくれー!」
ゲン「あ、オレ手伝います!」
レオーネ「ったく…しょうがねえな…。」
ミライ「オレも手伝おう。」
ビリー「おう、頑張れよ。」
ミライ「そこは手伝う所でしょうが!!!」

そんなこんなで、ぞろぞろと何人かの男たちはテレポーターで外へと出て行くのであった…。

せめて最低限の対策はできるよう、お互いで訓練をし合おう

あれからいくつかのダン・ボウル箱が魔法学園男子達の手によって運ばれた。そして今。

ヴィルトカッツェ「七海さん!あと少しです!!もうちょっとです!!頑張ってください!!フレーっ!!フレーっ!!」
レリア「わっしょい!!わっしょい!!」
ノエリア「みーそっ!!みーそっ!!」
クルス「ハイどぅー!!!ヨーソロー!!!」
マナ「がーんばれ!がーんばれ!」
イチル「今だ!!!やれッ!!!ジャブジャブ!!左フック!!!トドメのアッパアアアアァァァァァァーーーーーーーー!!!!!」
黒峰七海「お前らうるせえええええええええええええええええ!!!!!!!あと、ちょっとは統一しろよ!!!」

ようやく最後のダン・ボウル箱が、黒峰七海の手によって運び終えられた所だ。戦艦ケルベロスのブリッジ奥の広間には、巨大なダン・ボウル箱がいくつも山積みになっていた。

ミライ「それで、これは一体何なんだ?やたらと重かったが。」
黒峰七海「ああ、これについては後ほど説明するぜ。んじゃ、始めっか!」

ようやくか、とここに集まった各々が、黒峰七海の次の言葉を待つ。何故、魔法学園の一生徒にすぎない彼が、所属する生徒達をここに集めたのか。その目的が、ようやく明らかになる。
黒峰七海は、目の前の光景に改めて圧倒されていた。魔法学園の殆どの生徒が今この場にいる。そして、彼らは今、自分の呼びかけに応えてくれて集まってくれている。それがもう既に、なんだか嬉しかった。と、同時にこれだけの人物が皆自分に視線を集めているのに気がついて、少しだけ緊張感が彼の中で走った。

黒峰七海(うっわぁ…魔法学園の生徒ってこんなにいたんだなぁ…こうしてみると、すげえ壮観だな…! ちょっと緊張してきちまった…大丈夫…練習はめいいっぱいしてきたんだ!頑張れ、俺!)
黒峰七海「みんな、今日は集まってくれてありがとな!早速だけど本題に入らせてもらう。みんな……」

黒峰七海「バトル、しようぜ!!」

…………。

「「「……は?」」」

その場にいた全員がぽかーんとしている。バトル。いったい何をどうバトルするというのか。

アーティ「…バトルとはなんだ?どういう事だ。」
バク「……何かゲームでもするの?」
黒峰七海「違う違う。俺がやりたいのはそういうのじゃなくて……」

詳細を説明しようした所で黒峰七海は、一瞬沈黙し考え込んだ後で、

黒峰七海「あー、やっぱりこの箱の中身を見せた方が早いか!」

と、箱の方向へ身体を方向転換させて歩みを進め、おもむろに1つのダン・ボウル箱を開け始めた。皆が固唾を呑んでそれを見守り、やがて開いた箱から出てきたのは…。

黒峰七海「うっは、注文通りだな…!みんな、これを見てくれ!じゃーん!」

黒峰七海が取り出したのは…ガンスラッシュだった。アークスで正規採用されているモデルで、最下級の性能を持つガンスラッシュ…所謂、コモン武器と呼ばれる類の品だ。

ゲン「ガンスラッシュ…ですか?」
黒峰七海「ちなみに、他の箱にはソードやアサルトライフル、ロッドとかの全種類の武器と、あとはユニット各種があるぜ。」
late-choko「何か大規模な戦闘作戦でもあるのですか?」
マヤ「マガツとかか?」
ナル「うッ……ぷ…」
リーリャ「砂漠エリアの採掘基地防衛戦とか!」
バク「おぇッ……ぅ……」
黒峰七海「違う!あとそこの二人がやばそうだからやめてあげような!」

全員の頭の上にはてなマークが浮かんでいるのが見える。やはり説明するというのは難しいな、という事を、黒峰七海は噛み締めながら。

黒峰七海「みんなにはこれを使って、お互いで戦い合ってもらおうと思うんだ!」
レオーネ「なっ…まさか、仲間同士で傷つけあったり、殺し合いでもしろってのかよ!?」
アルフィーネ「こここここここ殺し合いですか!!?????ひ、ひいいえぇえぇぇぇ!!!」
黒峰七海「ちちち違うからな!?そんな物騒なもんじゃないからな!?」

危ない。危うくパニックになりかける所だった。もう少し慎重説明しないとな、と黒峰七海は心のなかで反省した。
余談だが、この時シエロとテレーサは0.5秒の間にアイコンタクトをして瞬時にテオバルドとノエリアを守れる位置に移動していたが、それに気づいた者はいなかった。
改めて心を落ち着け、そして次に説明するべき言葉のために資料を取り出す。

黒峰七海「えーっと…モニターにも映してっと…よし!」

ブリッジに設置されている巨大モニターに画像が映し出される。見ると4つの円グラフが書いてある。円グラフの色は4種で、白・黄色・オレンジ・赤で塗り分けられている。
全員が不思議そうな顔でモニターを見つめる中、黒峰七海は自分用の手元の資料を見ながら言葉を続ける。

爵「これは…?」
黒峰七海「このデータは、エネミー別にまとめたアークスの遭遇した件数と被害報告の件数の割合をまとめた物なんだ。まずは左上のグラフを見て欲しい。」

七海の言う左上のグラフに注目してみると…大半が白色で塗られていた。残りの色はほんの一部だけ、といったところだ。

黒峰七海「これはウーダンから受けたアークスの被害状況のグラフだ。白色は、被害無しを意味している。」
蒼井 奏「つまり…ウーダンに怪我をさせられたアークスは少ない、という事でしょうか?」
黒峰七海「そういう事だ。次にその隣のグラフを見てくれ。」

今度は右上のグラフを見てみる。白が減り…代わりに黄色が多く、オレンジの割合が少しだけ増えたように感じる。

黒峰七海「黄色は軽度の怪我だ。んで、このグラフはダガンからの被害状況のものだ。」
ユティカ「ふーん…ウーダンよりは怪我してる奴が多いと…」
黒峰七海「そうそう。んじゃ、次は左下のグラフだ。」

次に左下のグラフを見ると…先程のグラフからさらに黄色とオレンジの割合が増え、赤色も少し増えている。だんだんと白のスペースが少なくなってきた。

黒峰七海「これはダーク・ラグネのグラフだ。オレンジは重症、赤は…死亡だ。遭遇件数はさっきの2つのグラフより少ないけど、被害は圧倒的に大きいんだ。」
「「「………。」」」
黒峰七海「それで…ここからが大事なんだ。最後のグラフ…右下のヤツを見てくれ。」
「「「………!」」」

七海の言うとおりに右下のグラフを見てみると…そのグラフは、大半はオレンジ…重症が占めており、他は黄色の軽傷、赤の死亡が占めていたのだ。白の被害無しなど殆ど無かった。

マヤ「こいつは…!」
黒峰七海「このエネミーの遭遇件数は極端に少ない。けれど遭遇した場合、かなりの被害をくらうケースが著しく多いんだ。」
ミライ「このエネミーは…一体何なんだ?」
不知火「そんなの決まってら、ダー…」
黒峰七海「先に言っておくと、実はダークファルスじゃないんだ。」
不知火「んがっ!?」

回答を先取りされた不知火が少しだけよろける。この異常なほどに被害報告が多いエネミーは…ダークファルスではないのだという。では、一体何なのか…。

黒峰七海「ダークファルスの被害が大きいのもそうなんだけどな…これはちょっと違うんだ。」

黒峰七海は、息を深く吸い…言葉を紡ぐ。

黒峰七海「これは…アークス模倣体から受けた被害報告のグラフだ。」
「「「!!!」」」

アークス模倣体。ダーカーが作り出した、アークスのクローンともいえるエネミー。外見こそはアークスそのものなのだが、れっきとしたダーカー種のエネミーである。
アークス模倣体という名称を聞き、皆はそれぞれの反応を見せている。合点がいったと納得した顔をしている者。自らも襲撃された事を思い出し、鋭い表情を見せる者。訳が分からず周囲の様子を伺う者。

爵「え?え?アークスもほうたい……って何ですか?」

何のことか全く知らない様子の爵が疑問の声をあげる。

黒峰七海「アークス模倣体は奴ら…ダーカーが何から何まで俺たちそっくりに作り上げたエネミーだ。これは例えばの話だけど、クエスト中にいきなり俺と全く同じ姿をしたダーカーが現れて、爵ちゃんに襲っていくようなモノなんだ。」
爵「え、ええええええぇぇぇぇ!?そんなのアリですか!?」
エルネスタ「本当…悪趣味な作戦だわ。味方の偽物で攻撃してくるなんて。」

そう、アークス模倣体は、無作為に選ばれたアークスをそっくりそのままコピーして作られるのである。本物と同じ身体、同じ顔、同じ能力、同じ技術…その全てがコピー元の本人と瓜二つなのだ。したがってもしも遭遇し戦闘となった場合、感覚的に言えばアークスそのものと戦っているようなものだ。

黒峰七海「この中にはアークス模倣体に襲撃を受けた経験がある者もいると思う。かくいう俺もその一人だ。相まみえたヤツはわかるだろう…奴らは相当手強い。」
ミライ「………。」
アーティ「たしかに…アークスの実力をそのまま真似されるならかなり厄介な相手になる…。」
黒峰七海「そうだな。でも、それだけじゃない。もし、マネされた相手が…仲間や、知り合い、あるいは恋人や家族なんかもありえるだろう。…そうやって知己の顔をして襲い掛かってくるのが何よりも厄介なんだ。」

その言葉を聞き、意味を悟った皆の表情が一層険しくなる。

蒼井 奏「…そうですね…私も、いつも一緒に戦っている人が急に敵に回ったら…混乱して何が何だかわからなくなってしまいそうです…。」
黒峰七海「しかも、だ。調査したデータによると遭遇した場合…そういった、知り合い…自分と関係の強い者の姿を真似てくるケースが多いらしい。」
アプリリア「んなー…!そんなの卑怯っしょ……」

次第に模倣体の事を知らなかった者も理解を深めていき、場がザワザワとうるさくなり始めた頃。…空を裂くように、口を開いた者が一人。

エグリゴリ「…なるほど。ようやく七海様が皆様をここに集めた理由がお分かりになりました。」
黒峰七海「おっ、分かってくれたかグレゴ!」
エグリゴリ「はい。…もし、万が一模倣体と遭遇した時には…せめて最低限の対策はできるよう、お互いで訓練をし合おう、という事ですね?」
黒峰七海「そうだ!そういう事だ!!いやぁー良かったぁ!!ようやく俺の言いたいことが伝わったぜ!!」

黒峰七海は嬉しそうにしながら額の汗を拭う。しかし、違和感を感じていた。…なんだか皆の自分を見る目がおかしいような…。

黒峰七海「……ど、どうしたんだ皆。オレの顔に何かついてる?」
バク「……いや…なんだかいつもの七海らしくないって言うか……」
ノエリア「ナナミンすっごい頭良さそうだったのだ…。もしかして噂のもほーたい…?」
ミライ「何、いま目の前にいるのは七海の偽物なのか!?」
黒峰七海「ちげーよ!正真正銘モノホンのオレだよ!純度100%の黒峰七海だよ!」
ビリー「じゃあ何か悪いもんでも食ったのか。」
レリア「どうして私の事を見ながら言うんですかビリーさん!」

参った。意気込んで皆に説明したはいいが…こんな事になってしまうとは。ここの説明だけはアリーセに任せた方が良かったかな、と黒峰七海は少し後悔した。別に隠す事でも無いだろう。黒峰七海は、今回の企画の成り立ちについて簡単に説明をしておく事にした。

黒峰七海「や…まあなんていうかその…この企画の発案はアリーセの物なんだ。」

と、少しだけ照れくさそうに告白し。その発言を聞いてあちらこちらで「えー、そうなんだー」「なんだ、やっぱりか」という声が聞こえてきた。よかった。どうやらみんな納得してくれたみたいだ。

イブキ「………ふふーふ…。」

だが、イブキだけは…七海が手に持っている資料を見て…いや、正確には、よく読み込まれた事がわかる「資料の紙のよれ具合」を見て、人知れず微笑んでいるのであった。

ナナミへ 相談したい事があります。僕の部屋まで来てもらえますか。

…時は、三ヶ月ほど前に遡る。
黒峰七海は、学生時代からの親友…アリーセ・バールベリトから「相談したい事がある」とのメールを受けて、彼の私室へと歩みを進めていた。わざわざ部屋まで呼ぶというのは、なかなかに大きな問題事を抱えているのか、それともよほど忙しいかのどちらかだろう。どちらの場合もありえそうではあるので、まあ、困っているなら助けてやらないとな、と、黒峰七海は思い、歩みを少し早めた。
彼…アリーセの私室には数分で到着した。部屋の前で呼び鈴を鳴らし、するとすぐに部屋の中から聞き慣れた声で返事が帰ってきた。

アリーセ「ああ、来てくれたのですね。いらっしゃい。」
黒峰七海「おっす。何だ、用って。」

やがて開いた扉からは、アリーセが現れた。今日はオフの日だったらしい。いつもより少し楽そうな格好である。

アリーセ「ええ、君にしか頼めない事です。立ち話もなんですから、中へ入ってください。」
黒峰七海「おう、お邪魔しまーすっと。」

部屋に入って奥にある机を見て黒峰七海はぎょっとした。山のような書類が積まれていたのだ。恐らく今の今まであの机に座って書類作業をしていたに違いない。ここからではよく見えないが、小難しそうな文章がみっちりと書かれた紙が数えきれない程ある事だけはわかった。休日までデスクワークに追われているとは全く恐れ入る。黒峰七海も休日に書類作業を片付けるハメになった事はそう少なくない経験ではあるが、あそこまでの山盛りの紙の山は見たことが無い。親友の事だ、ただ単にこの書類作業を手伝って欲しいという訳でも無いだろう。用件を聞く……その前に。ささやかではあるが、友へ労いの品を贈る事にする。

黒峰七海「これ、差し入れな。適当に置いとくぜ。」

と、黒峰七海は手近な所にあったローテーブルに缶の緑茶を置いた。

アリーセ「ああ、すみません。気を遣わせてしまって。」
黒峰七海「百万メセタな。」
アリーセ「小学生ですか。」
黒峰七海「それとな…他に寿司を買って……」
アリーセ「え………」

思わぬ差し入れにアリーセの表情に少し驚きと喜びが混ざる。……が。

黒峰七海「……来たんだが、腹が減ったので食べちまった。」

………………。

アリーセ「………僕はどうリアクションをすればいいんですか。それ。」
差し入れをもらうという立場上、強くツッコミをする訳にもいかず。困惑した表情に変わったアリーセが黒峰七海に対して訴えかける。
しかし、七海は手さげのビニール袋を目の前に差し出し。

黒峰七海「冗談だって!ほら、冷めないうちに食えよ!」
アリーセ「…! …お寿司は冷めているうちに食べる物でしょう、全く。……ありがとうございます。」
黒峰七海「へっ、気にすんなって。そういやメシは食っ……」

……ぐう。

黒峰七海「…………。」
アリーセ「…………。」

目の前にいる親友の顔がほんのり紅潮しているのを見るに、どうやらこの音の発信源はアリーセの腹らしい。時刻は昼の時間はとっくに過ぎており、昼ごはんも食べずに作業に没頭していたようだ。

黒峰七海「………まあ、なんだ。」
アリーセ「…な、なんですか!」
黒峰七海「今日の事はソレでも食いながら話そうぜ。ちょっと遅いけどランチタイムだ。」
アリーセ「………はい……………。」

そんな気恥ずかしそうにするアリーセを横目に、腹から響いてきた音については触れてやらないまま、黒峰七海は買ってきた寿司を袋から出してローテーブルの上に広げるのであった。

………。
…………。
……………。

黒峰七海「アークス…模倣体?」
アリーセ「はい。ここ最近、被害件数自体はそう多くは無いのですが、遭遇したアークスのほとんどが返り討ちにあっています。」
黒峰七海「ま、そりゃそうだろうな……アレはやりにくい相手だからな。」

あれからニ十分程時間が経った。ローテーブルの上には寿司が入っていたパックの容器と緑茶の他に、いくつかの資料が置かれている。アリーセは差し入れられた寿司の殆どを食べ終えており、時折緑茶を口に含みつつ黒峰七海に説明を続けている。黒峰七海は最初こそ、アリーセが置いた資料の束を見て露骨に顔をしかめたが、いざ説明が始まると何時になく真剣な顔つきで食い入るように資料に目を向けた。

アリーセ「極端に報告が少ない被害件数が物語っている通り、ダーカーとしては非常に小規模に構成された部隊である事が予想されます。ですが…」
黒峰七海「少ないだけに対策の練りようが無いし、最悪これから増えてくる可能性もある、って事か。」

アリーセはこくりと頷き、それを黒峰七海の問いへの答えとして返した。

黒峰七海「なるほどな。そんなに厄介な敵がわんさか出てくるようになったら堪ったもんじゃねえしな…」

黒峰七海は資料に目を落としながら、自分のアゴを無意識に一撫でし、それから顔を上げ…

黒峰七海「なるほどな。呼ばれた理由がだいたいわかったぜ。」

親友の瞳を見据えてそう告げた。

アリーセ「ええ。このアークス模倣体への対策を、魔法学園全体で取り組みたいと考えています。」

そう。アリーセが今日ここへ黒峰七海を呼び出したその理由。それは、アークス模倣体への対策方を相談するためだったのだ。

黒峰七海「つってもどうするんだ?まさか模倣体を直接捕獲しようってんじゃないだろうな?」
アリーセ「無論です。そのような愚策を取るつもりは毛頭ありません。」

実際に、奇行が確認されたラッピー種や、大型エネミーの捕獲指令は極稀にエマージェンシートライアルとして現地にいるアークスに任務が与えられる事はある。しかし、アークス模倣体は先程説明された通り、遭遇件数は非常に少なく、こちらから探しに行って会えるような存在ではない。その上、危険度が極めて高く、捕獲するとなればそれも上手くいくとは限らない。

黒峰七海「じゃあどうするんだ。」
アリーセ「対策方法なら、身近にたくさんあるではないですか。」
黒峰七海「……ん?どういう事だ?」

話が飲み込めず、腕を組みながら視線を宙の一点に留めている黒峰七海に対し、クイズの答えを教えるようにアリーセは告げる。

アリーセ「アークス模倣体が真似するのは僕らアークスです。そして身近な人物を真似て襲ってくるケースが多い。それならば…」
黒峰七海「ああ!」

そこまで聞いて黒峰七海も理解できたようだ。話の途中でいきなり声をあげ、

黒峰七海「模擬戦をすればいいんじゃないか!」
アリーセ「そういう事です。」
黒峰七海「そうか、模擬戦か…いつ以来だろうな。へへっ、これはちょっと楽しみになってきたぞ!」

アークスが任務として降り立つ惑星に出現するエネミーは、人間達とは違う進化を遂げた生物など、異形の姿をした物が多い。つまり、ヒト型のエネミーに遭遇するケースは極めて少なく、アークスとして活動しているだけでは、対人戦闘の経験を積む事が難しいのだ。
そこでアリーセが考えたのは、魔法学園全体で、大規模な模擬戦闘訓練を行うという物だった。

アリーセ「魔法学園には手練の生徒が数多くいるのは、君が一番良くご存知でしょう。多くの者と戦闘訓練を行う事で、相手のパターンにもバリエーションが増え、結果として万が一遭遇した模倣体の戦闘傾向が読めない場合でも即座に対応し、対策を練ることが可能となり…」
黒峰七海「だーーっ!!わかった!わかったから!OK、もう大丈夫!で、俺は何をすればいいんだ?」

長々とアリーセの解説が始まってしまいそうだったので、黒峰七海は頭が許容限界範囲を超えてしまう前に無理やり話を切り上げた。

アリーセ「…あ、そうですね。ナナミにやってもらいたい事は……」



……………。
…………。
………。

バトル、しようぜ。

ここは、船艦ケルベロス。魔法学園が所持する大型移動要塞。先程から十数分程が経過した頃。

黒峰七海「…とまあ、そんな訳で。俺とアリーセの二人で色々と準備を進めていったんだ。」
Laila「なるほどなるほど!」
黒峰七海「そういう訳で、今日ここにみんなを集めたって訳だな!」
クルス「なるほどなるほど!」

黒峰七海が、事のあらましを話し終えた所である。

黒峰七海「いやーここまで準備すんのホント大変だったからな……教頭から許可取るのとか…」
雨宮零一「なるほどなるほど。」
黒峰七海「うわああああああああああああああッ!!!!?!?!教頭!?いつの間に後ろに回りこんだんだよ!!心臓に悪すぎるわ!!!やめてくれよ!!!!」

黒峰七海の背後にはいつの間にか魔法学園のNo.2、雨宮零一が立っていた。しかし、彼が発言するその瞬間までその姿を捉えられた者は誰一人としていなかった。

雨宮零一「口の利き方に気をつけなさい」
黒峰七海「はい。スミマセンデシタ。」
雨宮零一「もし、私と七海君が対戦で当たったら……」

そう告げながら雨宮零一は静かに、足音も立てずに歩き始め、ブリッジの奥へと消えていった…。

黒峰七海「………いや何か言ってくれよ!!その先を言わずにどっか行くなよ!!こえーよ!!!!!」
ヴィルトカッツェ「七海さん…私、七海さんの事忘れませんからね!!」
クルス「生きて帰ってきてくださいね!!」
ユナ「ぷふふー。」
ビリー「いい奴だった(棒)」
黒峰七海「やめろォ!!!」
ミライ「…七海。そろそろ話しの続きを。」
黒峰七海「あ、ああ。えっとだな、俺とアリーセで一緒に準備を進めてきたって所まで話したっけ。」
ミライ「ああ。……で、そのもう一人の企画者は…」

ミライがブリッジの端を指さし…その先にいたのは。

アリーセ「僕は決して脆弱などでは……そりゃニューマンですけど……だからといってニューマンが貧弱な訳ではなくて……たまに筋肉がつきやすいヒューマンやデューマンが羨ましく思う事も無くはないのですが……ブツブツ……ブツブツブツ………」
ミライ「……あんな状態なんだが。」
黒峰七海「ああ………。」

男性としての大切な何かが粉々に砕かれたアリーセが体育座りで小さくなっていた。しかし、そんなアリーセの元へ迷わずまっすぐ歩いて行く者が一人。その者は、アリーセの側にゆっくりとしゃがみ込み。

ツークフォーゲル「よしよし……大丈夫…………アリーセは……ちゃんと、頼りがいのある男性、だよ…………?」
アリーセ「う、……うう……フォーゲル……」

アリーセをなだめたのは、ツークフォーゲルであった。けれどアリーセは、苦労の色が滲み出た涙を流しながら、

アリーセ「ありがとう……でも君が言うと別の意味に聞こえます……」

と、誰にも聞こえない声で小さく呟くのであった……。

黒峰七海「あー………ゲフンゲフン!エヘンっ!!……アリーセ。そろそろいいか。」
アリーセ「え、あ………は、はい……」

黒峰七海の声がけによって我に返ったアリーセは、小さくなったまま「すごすご」という言葉をそのまま表したような状態で、皆の前…黒峰七海の隣の位置まで移動してきた。

黒峰七海「ええーーっと…ああ、もう全部ぶっ飛んじまった。どこまで話したっけな。」
アリーセ「模倣体に対抗するためにみんなで模擬戦闘訓練をしよう、までです」
黒峰七海「お前話は聞いてたのな。」
アリーセ「はい。」
黒峰七海「ま、そんな訳で訓練をしようぜってとこなんだけど……ただやるんじゃ面白くないからな!今回は、《模倣体との戦闘を想定した状況》である事を前提に、こっちでルールを色々作って、スポーツみたいな感じにしてみたんだ!」
「「「スポーツ?」」」

あちこちから疑問の声が同時にあがった。黒峰七海は、待ってましたとばかりに不敵な笑みを浮かべつつ、口を開いた。

黒峰七海「そうだ!血湧き肉踊る熱いアークス同士のぶつかり合い!見て楽しい!やって楽しい!そんなスポーツとして模擬戦のルールを作った!」
ゲン「そうか……じゃあ、その後ろにある箱の山は……」

はっと気づいた様子のゲンが指差した先は、黒峰七海の背後。山積みになったダン・ボウル達で、先程黒峰七海が説明した通り、箱の中にはアークス達が使う武器種の基本モデルやユニットが詰まっている。

黒峰七海「ああ!なるべく安全で公平な状況にするために、コイツらを使ってもらうって事だ。ちなみに、ここにある武器はみんな特殊なクラフト加工を行っているから、最下級コモン武器よりも威力は落ちている。身の危険が及ばないように、っていう事でな。」
爵「え、これ全部クラフトしてあるんですか!?」
黒峰七海「そうだ。知り合いに腕利きのクラフト職人がいてな。そいつにやってもらったんだ。」
ノエリア「はえー…すっごいのだー……」

そう告げる黒峰七海の瞳は、なんだか少し懐かしさを感じているような気がした。しかし、すぐにはっとして再び言葉を紡ぐ。

黒峰七海「つー訳で、だ!これから俺とアリーセ謹製、《わくわく☆魔法学園大バトルフェスティバル~ポロリもあるよ~》のルール説明を…」
アリーセ「勝手に変な名前を付けないでください。《魔法学園模擬戦闘訓練大会》です。」
暁闇「おやおや、ポロリがあるのかい?」
アリーセ「ありません!!ナナミ、はやくルールの説明を…」
黒峰七海「へえへえ。それじゃ、今からみんなの端末にルールブックを転送するぞ!」

黒峰七海は手元の端末の上で指を滑らせ、目の前の魔法学園生徒全員のアドレスにルールブックを一斉送信した。それを受け取った生徒達は次々と自前の端末の操作をはじめ、データを確認をした。

 ・対戦は二つのチーム同士で行われ、対戦人数は必ず両チームの人数が同数になる事を前提とし、1チーム一人から四人までのパーティで構成される。
 ・装備は特製にクラフトした物を使用する。殺傷能力は極限まで落とされている。(市販のコモン武器より弱い)
 ・サモナーは訓練用のタクトを装備する事に加え、出場させる全ペットに力を制御する特別製のキャンディを装備させる事。
 ・使用できるクラススキルは本人の習得している物と同様になる。これはなるべく実戦に近い形にするためである。ただし、ほとんどのクラススキルの効果は弱体化される。
 ・使用できるフォトンアーツ・テクニックは本人が習得している物と同様。
 ・マグの使用は認められない。よってフォトンブラストも使用不可能。
 ・リングの装備も不可とする。
 ・ユニットも特製にクラフトした物を使用。こちらは防御力の他に耐久性まで落とされており、一定ダメージを受ける事で破壊される。
 ・制限時間は1時間。勝敗はユニットを先に3つ破壊した方が勝利となり決着がつく。(ユニット装備数は背中、右腕、左腕、右脚、左脚で5つとしてカウント)
 ・戦うフィールドは各惑星の完全に安全だと判断されている区画に限定される。(ケルベロスの停泊所にも選ばれているエリア。ぶっちゃけるとチームルーム。)
 ・現地まではキャンプシップで行く。試合開始場所はランダムで決まり、対戦相手とは必ず一定の距離が離れた場所が決定される。
 ・尚、万が一に備えて現地には素のままの装備を所持した魔法学園生徒が付き添う。(この付き添い役には審判も兼任してもらう。)
 ・イベント企画者と対戦参加者全員の合意が得られた場合、多少のルール変更を行っても良い。

 以下が使用できる装備の一覧である。本人が装備さえ出来るなら、武器は何種類でもアイテムパックに持ち込んでもよい。

・訓練用ソード
・訓練用パルチザン
・訓練用ワイヤードランス
・訓練用ツインダガー
・訓練用ダブルセイバー
・訓練用ナックル
・訓練用ガンスラッシュ
・訓練用カタナ
・訓練用デュアルブレード
・訓練用アサルトライフル
・訓練用ランチャー
・訓練用ツインマシンガン
・訓練用バレットボウ
・訓練用ロッド
・訓練用タリス
・訓練用ウォンド
・訓練用ジェットブーツ
・訓練用タクト
・訓練用パワーセーブキャンディ
・訓練用リア
・訓練用アームL・R
・訓練用レッグL・R

黒峰七海「大体の事はそこに書いてある!俺からは特に大事な事だけ説明させてもらうな!んじゃ、アリーセ!よろしく頼んだ!」
アリーセ「ええ!?『俺からは』と言っておきながら僕に振りますか、ソレ!?」
黒峰七海「お前ならできる。」
アリーセ「……はあ……わかりました。では、特に重要な点やいくつかの補足を僕から。」

しぶしぶといった様子でアリーセは資料を取り出し、皆に向かって説明を始める。

アリーセ「まずは流れに沿って説明をさせてもらいます。試合は人数が同数となるパーティ同士で行います。場所は各惑星の安全だと判断された区画。試合開始位置はランダムに選ばれた地点から始まります。」
ゲン「VR空間は使わないんですか?」
アリーセ「スポーツにはしましたけれど、あくまで実戦を想定しての訓練ですからね。なるべく実戦に近い状況で戦ってもらいます。」
ゲン「なるほど…。」
アリーセ「試合の勝敗の分け方ですが、装備したユニットを3つ破壊されたら戦闘不能となり、1時間の制限時間の内に、相手チームを全員戦闘不能にすれば勝利となります。決着がつかずに時間切れになった場合は、生き残った人数や、残っているユニット数で勝敗を決めます。」
不知火「なあ。」
アリーセ「どうしました?不知火。」
不知火「このユニットの破壊って、どういう事だ?実戦でユニットが壊れるなんてそうそう無いよな?」
アリーセ「それについては、僕らも悩んだ事で…」
黒峰七海「お互いぶっ倒れるまでやりあう訳にもいかないしな。今回は武器に加えて、ユニットも特製のクラフトをしたんだ。」
アリーセ「実際に見てもらった方が早いかもしれませんね。」

そう告げながらアサルトライフルを手に取ろうと、ダン・ボウルに向かって歩き出そうとしたアリーセを見て、黒峰七海は。

黒峰七海「待て。こういう事もあろうかと、特別ゲストを呼んでいる。」
アリーセ「え?」
黒峰七海「おーい!入ってきていいぞ!!」

黒峰七海がテレポーターに向かって叫び…やがて一つの巨大な影が現れた。

FB-765 Shasta「うむ。」
アリーセ「え…」
蒼井 奏「シャスタさん!?」

現れたのは、現在ナウシズから離れて活動していたはずのFB-765 Shastaだった。

黒峰七海「おー、よく来てくれたなシャスタ!!さ、こっちだこっち!」
FB-765 Shasta「うむ。」

黒峰七海はFB-765 Shastaに呼びかけながら、ゴソゴソと何か準備を進めており…ダン・ボウルから取り出したユニットを床にいくつか置いていた。

黒峰七海「さ、シャスタ!ジャンプ!」
FB-765 Shasta「うむ。」

黒峰七海が端的に指示を出し、FB-765 Shastaは忠実にそれを実行し…。
グシャッ、と音を立ててユニットが砕け散った。

黒峰七海「うん!!ありがとな!もう大丈夫だぜ!!」
FB-765 Shasta「うむ。」

そしてFB-765 Shastaはテレポーターへ戻っていった…。

黒峰七海「つー訳で、ユニットは耐久性も落とされてて壊れやすく……」
爵「え!?あの人そのためだけに呼んだの!?」
黒峰七海「うん。」
爵「いや、『うん』て!!!」

(2016年9月15日更新。続きます。)

切磋琢磨し練武せよ戦士達

切磋琢磨し練武せよ戦士達

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-25

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
  1. ××月××日、××時に戦艦ケルベロスまでお集まりください。
  2. せめて最低限の対策はできるよう、お互いで訓練をし合おう
  3. ナナミへ 相談したい事があります。僕の部屋まで来てもらえますか。
  4. バトル、しようぜ。