あの夏のことを
夏の終わりに感じたこと。私たちが消し去ってはいけないこと。
また、いつの間にか、夏が過ぎていく
陽が短くなって
君の笑い声はどんどん遠くなっていった
目を閉じて
記憶の中の降りしきる蝉時雨に耳を澄ませた
かつてその鳴き声にかき消された
声にならない声があった
誰にも知られることのない思いがあった
また同じように、これまでの多くの夏と同じように
今年も夏が過ぎていく
きっとあの夏は少しずつ忘れられていくのだろう
だけどただ、目を閉じて
夏がまたやって来る度、想いを馳せる
蝉が死んだ夏のことを
70年前の夏のことを
あの夏のことを