探し物

ある町でのことです。
ネコさん、熊さん、うさぎさん、猿さんが遊んでいました。
そこでみんながそれぞれ、大事なものを見せ合う事にしました。
猿さんは、言いました。
「僕は、このラッパ。」
熊さんが、言いました。
「僕は、この本だよ。」
うさぎさんも、言いました。
「私はぬいぐるみ。」
ネコさんだけ、こういいました。
「ぼくは・・・・・。」
ネコさんだけ、大事なものがありませんでした。
そこで、ネコさんは考えました。
「よし、大事なものを探しに行こう。」
こうしてネコさんは大事なものを探しに出かけました。
はじめに行った所は楽器屋さん。
「わー、色々な楽器があるなー。」
太鼓に、ギターに、トランペット。
見たことのない楽器まであります。
ところが、大事なものは見つかりません。
次に行ったところは、本屋さん。
「わー、色々な本があるなー。」
絵本に、漫画に、辞書。
読めない字で書かれた本まであります。
ところが、大事なものは見つかりません。
その次に向かったのはおもちゃ屋さん。
「色々なおもちゃがあるなー。」
人形に、ゲームに、プラモデル。
欲しいものは沢山あります。
ところが、大事なものは見つかりません。
街の中のいろんなお店に行っても、猫さんの大事なものは見つかりません。
ネコさんは考え始めました。
「一体、大事なものってなんだろう?」
ネコさんは色々悩んでいるうちに、すっかり夜になりました。
そこへ、猫さんの耳に、上から呼ぶ声が聞こえました。
「ネコさん、悩んでるみたいだけど、どうしたんだい?」
ネコさんは夜空を見上げました。
「あ、星さん。」
夜空の星さんが、声を掛けてくれました。
ネコさんは星さんに相談しました。
「実はね、大事なものを探しているんだけど、どこに行っても見つからなくて、そのうち、大事なものってなんなのか、分からなくなってきちゃったんだ。」
すると、星さんは考えてくれました。
「私が大事なものを見つける方法を教えましょう。」
「え、ほんとう?ありがとう。それで、どんな方法なの?」
猫さんが大きな瞳を更に大きくして危機舞うす。
星さんは少しにやりと笑って答えました。
「それはね、地面に穴を掘ることです。」
「地面に穴を掘るの?地面に大事なものが埋まっているの?」
猫さんは不思議な顔をします。
星さんは続けて言いました。
「掘ってみれば、きっと分かります。」
ネコさんは『ほんとかな?』と思いながらも、次の日、地面に穴を掘り始めました。
そこへ、猿さんがやってきました。
「ネコさん、一体なにしてるの?」
「大事なものを探すために、穴を掘っているんだよ。」
「ふーん。」
猿さんは暫く見ていましたが、やがて帰って行きました。
次に熊さんがやってきました。
「ネコさん、一体なにしてるの?」
「大事なものを探すために、穴を掘っているんだよ。」
「ふーん。」
熊さんは暫く見ていましたが、やがて帰って行きました。
次にうさぎさんがやってきました。
「ネコさん、一体なにしてるの?」
「大事なものを探すために、穴を掘っているんだよ。」
「ふーん。」
うさぎさんは暫く見ていましたが、やがて帰って行きました。
誰もいなくなりましたが、ネコさんは一生懸命穴を掘り続けました。
暫くすると、猿さんが戻ってきました。
「僕も手伝うよ。」
「ありがとう。」
猿さんと2人で一緒に掘りました。
暫くすると、熊さんも戻ってきました。
「僕も手伝うよ。」
「ありがとう。」
猿さんと熊さん、3人で一緒に掘りました。
暫くすると、うさぎさんも戻ってきました。
「私も手伝うね。」
「ありがとう。」
猿さんと熊さん、うさぎさんの4人で一緒に掘りました。
でも、大事なものはなかなか見つかりません。
気づくとすっかり夜になっていました。
「やあ、ネコさん。」
夜空には星さんが出ていました。
「あ、星さん。」
猫さんは夜空を見上げます。
星さんは、猫さんたちの様子を見て答えまs。
「穴、掘っていましたね。」
「うん、掘ったよ。でも、大事なものは見つからないよ。」
星さんは少し黙り、にやりと笑って答えました。
「大事なものは見つかっているよ。」
「え、一体どこに?」
4人は顔を見合わせました。
すると星さんは言いました。
「ほら、ネコさんの周りに猿さん、熊さん、ウサギさんが一緒にいるよ。」
4人は再び顔を見合わせました。
それから、4人は笑顔になり、それから、笑い出しました。
ネコさんの手には、猿さん、熊さん、ウサギさんの手が握られていました。

探し物

探し物

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-23

Copyrighted
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