パーティーの招待状【2】

 「誠に勝手ながら、本日は臨時休業とさせていただきます。」
 そんな文章が書かれた張り紙を張り付けてある果物屋は、一階がお店で二階が住居、住人は三人と一匹。力持ちのパパと優しいママ、小さな女の子ともっと小さな子犬。

 女の子の名前はハナ、子犬の名前はミミといい、この商店街で皆に可愛がられて育ってきました。けれども今は、自分たちをいつも見守ってくれた人達はいません。皆きっと、町長さんの住む町一番の大きなお屋敷に行ってしまっているでしょう。実は今日、そのお屋敷でダンスパーティーが開かれているのです。町の出身者で、今や世界的に有名なダンサーのクヨウが開いたもので、町の人達はとても楽しみにしていました。しかし、そのパーティーの開催が夜からということもあり、小さいハナはミミと一緒にお留守番です。
 パパやママは、ハナ達だけ残して出かけることを最後まで心配していましたが、ハナが「お留守番ぐらいできる!」と胸を張って宣言したため、誰か来ても玄関は開けないこと、キッチンには入らないことを約束させ、心配はしつつも娘を信じて出かけて行きました。まだ、ほんの一時間ほど前のことです。

 そんなハナはミミと一緒に住居の西側にある子ども部屋で、じゃれて遊んでいます。追いかけっこをしてみたり、引っ付いてごろごろ転がってみたり、顔を突き合わせて睨めっこのようにしてみたり。じゃれあう姿は、子煩悩なパパが見たらきっと、だらしなく鼻の下をのばしてしまうようなとても愛らしいものでした。

 一人と一匹は本当に楽しそうです。もうそろそろ夜になろうという時間帯でも、まだまだ元気いっぱいです。

 と、そんな中。

 急に、ミミの動きが止まりました。

パーティーの招待状【2】

パーティーの招待状【2】

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-19

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