FLY

FLY

Prologue

もう死んでしまいたい。
死んでいっそうのこと楽になってしまいたいー

きっかけは彼氏とのプリクラをツイッターにあげたことだった。
翌日から2人の友達以外口を聞いてくれなくなった。
プリクラの事はその2人から聞いた。
すぐに削除したけどハブは続く。
その内物が無くなったり机に傷を付けられるようになった。
2人の友達も離れていき、誰にも相談できなかった。
なんで私が?そればかりを考えていた。
いじめが始まって3か月が経とうとしていた。
今日、体育から戻ってくると誰かの使用済みの生理用のナプキンが
机の上に広げて置いてあった。
くすくすと笑い声。
「まじ汚い」
「汚物」
「汚物」
「汚物」
そんな声が聞こえてくる。


死んでやる


そう心に決意し体操服のまま学校を飛び出して駅へと向かった。
体操服のままの私を皆びっくりして見ているのではない。
堪えきれない嗚咽にびっくりしているのだ。
「彼氏にでもふられたんじゃねーの?」
「つーか駅員さん呼ぶ?」
皆こそこそと話はしているが私に声を掛ける人はいない。
その時だった。

「おじょうちゃん、そんなに泣いてどうしたの。
おばあちゃんの隣に、おいでおいで」
1人の品の良いおばあさんが私に声を掛けてきた、
座りあぐねていると、おばあさんはなおも私に声を掛けてくる。
「だいじょうぶ。そんなドアのところで泣いていたらみんなびっくりしちゃうよ。
ねえ、こっちにお座りなさいな」
「・・・・・・」
言われた通りにおばあさんの隣にちょこんと座る。
ぷーんとお香のいい香りがする。
「はいハンカチ。大丈夫。今日はまだ使ってはいないから」
にっこりとそうハンカチを差し出され流れに逆らわずに受け取る。
顔にあて涙を拭うとおばあさんと同じお香の香りがした。
いつのまにか嗚咽は止まっていた。

「すみません・・・」
思わず謝ってしまう。
「いいのよぉ。若い娘さんがあんなに泣いていたから
おばあさん、びっくりしちゃって。ごめんなさいね、声を掛けて」
そう言っておばあさんは鞄からごそごそと何かを取り出そうとしている。
「あら、ないわねぇ、こういう時はあまいものがいのに・・・
あらら。忘れちゃったのねぇ」
しわしわの顔でにっこりと微笑みかけられるとさっきまで
死のうと泣いていた自分がひどくまぬけな気がしてくる。
「・・・私、チョコ持ってます」
自分の学生鞄からチョコを取り出しておばあさんに見せる。
「まぁおいしそう。今の若い子は幸せねぇ、そういったものが気楽に買えて」
「・・・食べますか?」
「いいのぉ?じゃあいただいちゃおうかしら。
あら、おいしい。中がとろっとしていてこれ、イチゴ?」
「はい」
「落ち着いた?」
「はい」
「何があったのかおばあさんに話してみなさい。
だてに89年生きてないから何かアドバイスできるわきっと」
私は今日まであったいじめのことをたどたどしくおばあさんに話した。
おばあさんは私の目を見つめながら時折相槌を打ちはしたが何も言わずに
最後まで私の話を聞いてくれた。
「そう・・・今の若い子たちはそんなひどいことをするのねぇ。
おばあさんが一番死にたいと思ったのは自分の娘を亡くした時」
・・・唐突にごめんなさいね、なにか思い出しちゃって。
当時は福井の田舎にいて戦後で物がない時代でねぇ、
産湯の桶に顔を突っ込んで号泣したわ」
「・・・赤ちゃんだったんですか?」
「そう。生後2週間。みっちゃんて言うのよ」
そう言っておばあさんが寂しげに微笑んだ。
「死にたいっていう気持ちはまだある?」
「・・・はい」
「ならおばあさんと一緒に死にましょうか」
「え・・・」
「実はね、ひと月ほど前に今流行のおれおれ詐欺に遭っちゃって
2千万円だまし取られたの。
息子や娘からは責められるし、
孫も冷たくなるし、お金はかえってこないし。
全部私の責任なんだけどねぇ。
なんだかもうどうでもよくなっちゃって」
周りの乗客は関心のない振りを決め込んでいるが
耳だけは2人の会話に集中している。
「どうする?私はどちらでもいいわよ」
「私もどっちでもいいです」
「じゃあとりあえず降りましょうか」
「・・・はい」
次の駅でおばあさんと私は電車を降りた。
「怖い?」
「・・・あんまり。今の状況があと2年続くことの方が私は怖いです」
「一緒ね」
そう言っておばあさんは私の右手をきゅっと握る。
驚くほど小さな手だ。
静かにおばあさんが言う。
「次の次にしましょうか」
「快速ですね」
「これでやっとみっちゃんの元へ行けるわ。
旦那さんにも会えるし。なんだろう。
なんだか悲しくはないわね」
「私は少し怖いけど、おばあさんが一緒だから」
「最期になるけどあなた名前は?」
「村木幸伽です」
「さっちゃんね。私は三井ゆうといいますよ」
快速電車が入るアナウンスが駅に鳴り響く。
「白線の内側までお下がりください」
「いーい?せーのよ」
「はい」
「せーの」















「さちかわいそうだったね。みいみいちょっとひどくない?」
「思ったー」
「おーい三井、三井はいるかー?」
「なに先生」
「ご家族が迎えに来られてるから帰る支度をしなさい」
「えー」









「空の名前」






素生月南





CHAPTER1「審判の門」

ふわぁ。よく寝た。こんなに寝たのは久しぶり・・・・
???
ここは、どこ?












ACT1「審判の門」

FLY

物語は続きます。

FLY

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-18

Copyrighted
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