平凡な青二才

共感できる人はできると思いますし、できない人にはできないと思います。
良ければのぞいていただけると幸いです。

序章

 これは、ある少年のお話。
 彼の名前は鈴木解。ごく普通の男子高校生だ。まあ、ありきたりな男子高校生。と、いうこと。
彼は、いつも頭から離れないことがあった。離れる時はだいたい彼が寝ているぐらいのこと。たまに、夢にも出でくることもあるけれど。
彼は、自分の生きている意味が本気でわからないのだった。
いったいどうして僕は生きていなければならないのだろう?
彼はありきたりだと笑われた。そう、誰しも一度は浮かぶこのこと。
 彼は本気だった。
 確かに僕はつまらない人間だよ。けれど、僕は本気だよ。でも、、、、、、、、僕には、、、、、。
 彼は人に心を開こうとしなかった。いや、信用しなかった。結局、この気持ちは僕だけのもの。いくつもの人間が僕と同じことを思おうと。
 彼はつねに幻を見ていた。自分だけの空想を。
 そんな、ある日。解は自殺をはかった。彼には自分のする、全ての行動に意味が感じられなくなり、自分でもわからないあやふやな感情と常に自分に付きまとう劣等感に飲み込まれていった。大人たちはこれを思春期といった。フザけている。
 しかし、大人たちにとっては、こう思うことですら、思春期なのだった。
 僕は確かに大人から見ればケツの青い青二才。けれど、いつまで僕をそうやって、「~期」だの、断定し続けるつもりなのだろう。
 結局、彼は自殺を断念した。
 やはり僕は、、、、、、、。
 解は誤解、決めつけ、人から受ける皮相な目が苦しくて仕方がなかった。
 それでも、、、、、、、。

不思議な女

 六時間目のおわりを告げるチャイムが鳴る。今日は僕は掃除当番の週だ。僕は足早に掃除場へと向かう。たしか、廊下だったと思う。廊下には女子や男子の群れがわんさかとたむろして話をしている。
 (邪魔だな。どうして彼らは、さっさと動かないのか。)
 しかも、その群れは、教室の入り口のど真ん中にたむろするのであった。
 (クソっ、、、、、、。)
 (話し声が煩い。)
 解は、彼らが自分の悪口や噂話をしているような気がしてしょうがなかった。
 「、、、、、、、、、、。」
 解は無言でその群れを突っ切ると、持ち場へと向かった。掃除場に着いた彼は、一番乗りだった。まだ、だれも来ていない。相変わらず、どこかでペチャクチャと、ずるずる会話を続けているにちがいなかった。
 「、、、、、、、。」
 僕は鉄でできた縦に長い箱から、ほうきを取り出すと、掃除をはじめた。
 (ああ、、、、、、。煩い、、、、、。)
 僕が下を向いて、ほうきを使ってすみにあるほこりを取っていると、後ろから誰かが僕の学ランを引っ張った。
 「カイ君。」
 背後でか弱い小さな声が聞こえた。
 「、、、、、、。」
 僕はクルっと頭だけを後ろに向けて、声の主を確認した。
 僕のクラス一の美少女と噂される白鷺シギだった。大きな茶色い瞳。まとまったセミロングのつやのある髪の毛。
 「、、、、、、、。」
 しかし、彼女の目はどこか濁っている。
 「あ、ああ、、、。白鷺さん、、、。」
 僕は慌てて、返事をした。僕は少し彼女が苦手なのだった。シギは優しい表情でニコっと形の良い口をつりあげるといった。
 「カイ君と、私って同じ掃除場所だよね。、、、?」
 「え、、、、?うん。たしか、そうだよ、、、、?」
 僕はぎこちなく答えた。すると彼女は天使のようなふわふわした表情で両手をあわせると、
 「あ、よかった~。」
 と、言ってほうきを取り出した。
 「、、、、、、、、。」
 目が笑っていない。濁っている。深淵、、、、。何かある、、、、。
 僕はそう思った。彼女のまとうオーラはとても裏がありそうだった。シギは同じ場所を何回も、穏やかな表情で、口元をつり上げたまま、はいている。
 「、、、、、、。」
僕は他のメンバーはまだかな~。と思っている。
 「カイ君。」
 突然、彼女に呼ばれた。
 「、、、、、、なに、、、、、?どうか、、、、した、、、、?」
 「ううん、、、、。カイ君、一人で掃除しててえらいなーって。」
 彼女はそう言って僕をみた。
 「、、、、、。、、、、、あはっ、、、、?それは、ありがとう、、、、、。」
 僕は明らかにぎこちない笑みと態度で返答した。そして、若干、エライと言われることに嫌気がさした。
 そんなことを思っていると、他の掃除メンバーたちも続々と集まりだした。
[ねえ、今日のゴミ捨て当番決めておこうか。」
 一人の女子がそう提案したので、僕たちは輪になって集まると、ジャンケンをした。僕は何か嫌な予感がした。
(こういうの、僕絶対に負けるんだよね。しかも、さっさと家に帰りたいときに限って。)
数秒後、決着はついていた。僕の一人負けだった。
 「はいっ今日はカイ君ね。よろしく~。」
僕は、大きなゴミ袋を受け取ると、
(やはり、、、、。)
と思った。しかも、今日のゴミ袋はやたらと重い。前の掃除当番の人たちがきっと、ゴミ出しに行かなかったのだ。
「、、、、、、。」
(まあ、負けてしまったのはしょうがないか、、、、、、。押し付けられたわけでもないしね、、、。)
僕は、さっさと、ゴミを出して帰ろうと、ゴミ袋を持ち上げると裏庭にあるゴミ捨て場へと歩こうとした。が、その時、またしても誰かが後ろから、僕の学ランを軽く引っ張った。
シギだった。
「カイ君、今日のゴミ重いでしょ?ついていってあげるよ。」
彼女はふわふわした声で僕にそう言うと、僕のつかんでいるゴミ袋の端をつかんだ。
「え、、、、?いや、大丈夫だよ、、、、、?」
僕は、混乱していそうな声で答えた。もう、明らかに意識しているとバレているだろう。あくまで苦手意識だけれど。
他の掃除メンバーは、既に解散していなかった。
「うん。私、大丈夫だから。」
彼女はそう言って、テクテクゆっくりと歩き出した。
「、、、、あ、、、、、。うん。じゃあ、、、、、。」
僕は、シギに引っ張られるような体勢で歩いた。僕たちは無言で歩き続けた。周りは、相変わらず煩い。僕はシギの横に並ぶと、目だけをチラリと彼女の方へと向けた。形の良い口は今もニコッとしていて綺麗に弧をえがいている。彼女のサラリとしたセミロングの栗色の髪の毛は、彼女が歩くたんびにサラサラ揺れている。とても可愛らしい。と誰もがおもう容貌。だが、カイが見ていたのは、彼女の目だった。いつも伏し目がちで、淀んでいる大きな瞳。カイは、何か妙な気に包まれる。
「、、、、、、、、。」
 やがて、どこもかしこも煩い校舎をぬけると、僕たちは裏庭へとやってきた。さっきと打って変わって静か。裏庭に植えてある緑の葉がなる木の葉がぶつかり合う音がきこえる。涼しい風が僕たちを包んだ。
「ふう、、、、、、。」
突然、彼女がゆっくりと、ため息をついた。
(、、、、。何も話さない僕といて退屈しているのだろうね。ごめん。)
僕はそう思った。
「私、ああいう場所苦手なのね、、、、、、。」
彼女はそう言って地面を見ている。
「、、、、、え、、、、、、?」
「うん。息苦しくなるの、、、、、。人がいっぱい、、、、。」
彼女はそう言って、ほてる顔を荷物を持たない片方の手でパタパタと仰いだ。
「へ、ふ~ん、、、、、。そっか、、、、。わかるような、、、、、。」
僕は慌てて返事をした。ほとんどまともに考えない返事だった。
「、、、、、、、、。」
彼女は相変わらずの目をしたまま、下を向いている。やはり、僕はこの目を見ていると思ってしまう。彼女はいつも人に気をつかっているのだ。クラスの中でも、いつでもどこでも。裏がある。口は笑っているけど、その瞳はとても退屈げ。いつも楽しい何かを求めているけれど見つからない。し、すぐあきる。人の目線が怖くて、ほとんど外に出ることができない。クラスのかわいこちゃんとして気をつかうのにうんざりか?たとえかわいこちゃんでなくとも、気を遣う。人を信用することもない。いつも疲れている。人の外気にさらされて。そして、何より、精神を病んでいるのかもしれない。僕はそう思っている。そう、絶対に人に見せない。
 お前は目だけでそんなことがわかるのかと思うだろう。ああ。その通りだよ。全て僕の中の妄想かもしれない。
「ねえ、、、、。」
彼女は僕にきいた。
「え、、、、、?うん。どうしたの、、、、、?」
僕はもう、適当に返事をすることにした。僕は暇つぶしの材料として見られたくはないから。僕に面白味を求めるなんてダメだよ。君の求める、味なんてないさ。
「何か、ないかな、面白いこと。」
彼女はそう言って、僕に顔を向けた。期待してそうで、してない目だ。
「さあ、、、、、、どうだろうね~。」
僕は適当に返事をしながら思った。
(君の面白いってなんだよ?)
「、、、、、、。」
僕の返事に彼女は黙ってしまった。
(ああ、、、、。適当すぎたか、、、、、?)
彼女は暫く僕の目を凝視する。
(うん、、、、、?何だ、、、、、?)
彼女の淀んだ目と僕の真っ黒い目がぶつかる。
「、、、、、、、、?どうしたの、、、、、?」
僕は彼女に聞いた。
「、、、、、、。」
彼女は僕の質問に対してしばし、答えなかったが、やがてゆっくりと口を開いた。
「カイ君は、野心があるでしょ?」
彼女は僕の顔を下から覗きこむようにして表情を伺っている。大きな茶色の眼球。
「、、、、、え、、、、、、?」
僕は苦笑いを浮かべながら、返事をした。
カイは明らかに困惑していた。顔の表情に出ていたかはわからない。けれど、内心は困っていた。シギはそれを狙ったのかもしれない。
(-野心、、、、、?)
「ううん、、、、。何でもないよ。」
彼女はそう言って、僕から目を離すと、うつむいて笑った。
 その日の帰り道、カイはずっと、余韻が残っていた。
困惑の。
『カイ君は、野心があるでしょ?』
シギの声が頭の中で響く。
(-野心、、、、、、?僕に、、、、、?それを感じたの、、、、、?)
 次の日。彼女は学校を休んだ。

一話

 それからというもの、カイは彼女のことが恐ろしくなりはじめた。理由はわからない。家でトイレにこもっている時も、寝ている時も、小説を読んでいる時も、テレビゲームをしている時も勉強をしている時も、いつでもどこでも彼女に見られているような気がしてしょうがないのだった。カイは何とも言いようのない不快感に陥っていったのだった。
(僕はあの子のことが好きなのか?それとも、あの子はバケモノなのか?いつでも、どこでもあらわれる。)
カイがシギのことを少なからず、好意なのかはわからないが、意識しているのは事実だった。ついに、シギはカイの空想の中にまで出てきてしまう始末だった。しかも、シギとカイはなぜかいつも一緒にいるのだった。
「、、、、、、、。」
目をつぶると、彼女の深淵の目を思い出す。
(全てを見透かされているような、、、、、、。何か、疲れているような、、、、、、。)
 そんなある日。シギはフラリと学校に姿をあらわした。遅刻である。もう、三時間目の授業である日本史がはじまり、クラスのメンバーが黙々とノートに先生が黒板に書いていく文字を写し取っている。そんな時にシギがやってきたので、クラスの大半の目がいっせいに彼女に向けられる。
「シギちゃん、平気なの、、、、、?」
クラスの女子から声がかかる。彼女はそれに、小さく頷くと、静かに自分の席へと座った。教師はまた、いつもの遅刻か。という目でシギを見ると、板書を続けた。
「、、、、、、、、、。」
僕は、視線を彼女からはずすと、ノート写しの作業へともどっていった。
(-不快、、、、、、、、、、。だ。なぜだ?わからないが。)
「ねえ、カイ君。」
休み時間、僕が一人教室の自分の席に座って読書をしていると、シギがフラリと僕のところへとやってきた。
「、、、、、。」
僕はぎくりとした。彼女は僕の顔を覗き込む。やんわりとした目で僕を眺めている。
「、、、、、、っえ、、、?どうしたの、、、?」
僕は、オロオロと答える。
(ああ、、、、。やばい。苦手なんだよ、、、。こういうの。可愛らしい顔立ちの女の子は。)
「カイ君、何読んでるの?」
「っえ、、、?ああ、、、、。」
僕は、自分の読んでいる本のタイトル名を言うのがイヤだったので、表紙を見せた。
哲学書?
「、、、、、、、。」
(ああ、、、、、。見られたくなかった。誤解されてしまう。哲学者気取りのすかし野郎っと。ああ、、、、、。)
僕はへこんだ。とても、、、、。きっと、、、。
「わあっ、、、、!!カイ君はしっかりしているのね自分が。」
彼女は天使のようなフワフワした表情、口調で僕を見る。
「、、、、、。」
ふざけるな。と僕は思った。
(僕は、、、、、。)
この『ふざけるな。』の意味はシギに自分がしっかりしている。と言われたことに対するものではなく、シギが僕が、この書物を読んでいただけで、しっかりしている。自分が。と言ったからだと思う。決めつけ屋。か?この僕も?まあ、僕はとてつもない不快感におそわれた。すかしやがって?っていわれるかな?
僕が黙っていると、彼女は言った。
「価値のない世界だと自覚して生きればいいんだよ。」
(----はい?うっ、、、、、ん、、、、、?)
どうしたのだろう。いきなり。
僕はその言葉をきいて、読んでいた本を地面に落としてしまった。今、僕の闇の中でこの子が満たされたからであった。僕はこの子がとても恐ろしくなった。
(うわああああああ、、、、、。)
別に自分を見透かされたような気がしたからではない。ただ、単純に気になってしまったのだった。好きというわけではない。僕にはどこでその好きと感じているのかも理解することができなかったからだった。いや、別に空っぽというわけでなく、、、、、、。
オロ、、、、、オロ、、、、、。
彼女は僕が落とした本を拾い上げて、僕の机の上に静かに置くと、ニコっと笑顔をつくった。
(ひいいいいいいいいい、、、、!!)
 それから、彼女はまた学校を休みはじめた。
 そしてまたさらに日がたち、一か月後のこと。日曜日。僕は近所のスーパーへと、甘いものを買いに出かけて行った。すると、そこに彼女の姿があった。真っ白いワンピースを着ている。
シギだった。フヨフヨとした足取りで彼女は店内をうろついている。
「、、、、、、。」
僕はドキっとしたが、見なかったことにして、違う列からお菓子売り場へと向かおうとした。が、彼女が僕に気が付いてしまった。こっちへ向かってくる。
「カイ君だ~。」
ふわりとした調子で僕に話しかけてくる。
「あ、、、、、、うん、、、、。」
オロオロする僕。自然と顔がそっぽを向く。
「何しに~?」
「お菓子買いに。」
「お菓子買ってるの?甘いもの?わたしも好き。」
「あ、、、、うん、、、。そうなんだ。」
困る僕。
「、、、、、、白鷺さんは?」
僕は顔がそっぽを向いたままシギに聞き返してみた。
「え、、、、、、、?わたし、、、、?、、、、、、、。」
彼女は黙ってしまった。
(何?どうしよう、、、、、。)
「あ!それより、わたしも何かお菓子買いたい。」
彼女は何か思いついたような顔で僕を見ているのが横目でチラリと見えた。
「う、、、、うん、、、。そう?」
「うん。そうよ。」
彼女はそう言って、僕の手首をつかむとお菓子売り場へと引っ張っていった。
(うわっ、、、、!!や、やめてくれえ~。)
と、思ったが、表情にはださなかった。僕が選んだのは、チョコクッキー、モンブラン、そして他、チョコ類。彼女が選んだのはせんべい。甘いものではなかった。
「カイ君、そんなに甘いもの食べるの?」
「え?うん。買いだめ用のもあるけど。」
「わあ、、、、!!」
(-、、、、、、?)
それから、僕らはなりいきで一緒に会計へと向かう。レジは二つしかない。一つはうまっていた。
「あ!カイ君からでいいよ?」
「え?」
「うん。」
「じゃ、じゃあ、どうも、、、、、。」
彼女は終始自分の手荷物を見せたがらなかった。せんべい以外は。
「、、、、、、。」
僕が会計をしていると、もう一つのレジがあいたので、シギが会計をし始めた。もう一つの会計レジの店員が僕を凝視してくる。
(-何?)
シギのせんべいに目をうつしながらも、チラチラと僕を見てくる。
(-なんだよ?人の顔じろじろと。)
僕は店員の視線が気になった。

平凡な青二才

平凡な青二才

連載形式でやりたいので、更新ごとに完結っていうのはないです。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-08-16

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Copyrighted
  1. 序章
  2. 不思議な女
  3. 一話