リアルすぎる夢

2012年の頃の噺。ほぼ毎日夢をみます。そして起きても覚えている。
そんな夢の中の一つです。

つい先ほどまで、夢という名の世界を借りて香川県にいました。

始めにいっときます。リアルすぎた。というか、自分がそこに居るとしか言いようのない空気感、物質感、人間の気配。。。

始まりは精神病棟で治療している所からはじまった。
関わった人の人相から、建物、配置すべて覚えている。むき出した建物の配管まで。

自分は、夢遊病でした。それを分かって、夢遊で建物内をふらついていました。この夢遊なのに、そうと分かっている所が恐い。自分は寝ていると分かっているから。現に寝ていたのだから。
俺は確かに寝ている。けれど俺は今ここにいて、なんでかこの建物の中をさまよっていると。

気遣ってついてきていた友達が、俺の肩を抱えて、「先生のところ行って診てもらおう」といってきた。自分も「この症状がでているそのままの方がいい」と思い、ふらつく足取りを支えられながら、賛同しました。そのときの空間は、配管とかが寄り集まっている、電気系統や水道系などを調整する場所で、やたら広かった。

つれられ白衣を着た清潔感がある、張りのある短髪の先生。笑顔が、これまた自然体なら似合うだろうに、外向けの作られた笑顔をふりまいていて気味が悪かった。

寝ている刻と同じく、しっかり夜中の時分だったので、診察室ではなく、なにか理科室のようなところで、薄明かりの中、研究をしていた。
友達は多く並んだ椅子の一つに俺を座らせて、脇にたち、先生は問てきた。
「今はどんな気分?」
「定まりません」
「今自分が何をしてるか分かる?」
「はい」
「絵はかける?」
「絵も文も何もかもかけやしません。」
探るような問い。けど、片手間な対応。こんな時分だし、仕方ないよなと思っていた。
ただ無意味なほど広く、閑散とし薄暗いこの空間が、厭だった。
だから机に適当な絵を描こうとした。するとただ「机に描いちゃだめだよ」と横目で注意された。
夢遊中の相手だからと、適当にあしらっているのが分かる。俺はただ木の机の木目をずっと眺めていた。
研究をしているその先生は、棚の方へと物をとりにいく。
その時、その木目から人の顔が”見つかり”それを一心に、素早くなぞり机に描いてやった。60歳過ぎの褐色の皺だらけの坊主で、遊牧民のような顔つきだった。先生が戻ってくる5分もかからないうちに。
戻ってきた先生は、いつの間にと半分驚いていた。けど、怪訝そうに、もう床に戻りなさいという。
この空間が厭だったから従った。友達は付き添おうとしたが、大丈夫だと断って、別れた。

階段をおりて、一階のまるで学校のような廊下を暗い中を歩いていった。
右手には教室らしき部屋。左手にはガラス窓。外の中庭はしんと静まり返り、街頭一つもない暗闇。眼は暗闇に慣れていた。
過ぎ行く部屋の壇上には、その教室の担当医師らしき人物が、ただぼんやりと虚ろに座っていた。こんな夜分にお前ら医者こそ何やっているんだと、少し恐くなってきた。
どの部屋も男、女と人物は違えど、どれも定まらない視線を空中に向けたまま、虚ろな雰囲気でじっと動かないままどれも明かりもつけずに教壇あたりにいた。気味が悪い。こいつらこそ病んでいる。
各部屋に一人の先生。どれも虚ろ。8つほどそのような部屋を横目に過ぎて、廊下も突き当たり、左手に外の渡り通路につながるガラス戸を開けた。風一つ吹いていなかった。

突き当たった廊下からでてきたので、建物の端の外壁が見える。向かいの建物まで10メートルも無いくらいの短い通路。建物が切れた向こうには、樹々が暗闇に浮かんで見える。渡り通路の中程に至ったときだった。
その樹々の中に、白衣を纏った女性がこちらを向いて立っていた。白衣のせいで、暗闇の中でも、眼についてしまった。
一瞬にして、戦慄が走った。背筋が、凍てつく。明らかに異質。
俺は、向かいの棟に駆け込み、入ってすぐの階段を駆け上がっていった。その階段は、塗装が至る所ではげ落ちボロボロだった。
ただ、そのボロボロの階段だけが映り変わっていく。恐怖のあまり階段しか見えていない。けれどおかしい。3階の踊り場で、肩で呼吸しながら止まって周りを見渡す。
明かり一つも、人影も何もない。埃臭ささえ感じる。今はもう使われていない棟だった。
それに気付き、ここも恐怖に感じ、来た道を駆け下りていった。分かっている。下にはあの白衣の女が居ることは。けどこの棟じゃ助けも呼べない。

扉を弾くように開け放つと、白衣の女は樹々から離れ、間近に迫っていた。
もたつく足を目一杯に動かし、もといた棟の廊下に逃げ込んだ。助けを求めようにも教室ような部屋の奴らはどれも、先ほどと同様、虚ろのままだ。・・・いや一点異なる。白い歯が見え隠れしている。直感的にただ逃げるだけを選んだ。
そのあとを白衣の女は足音無く、どんどん追ってきていた。するすると、口元を緩ませて。

必死に駆けるが、思い通りに足が動かない。迫ってくる。間が縮まる。ほんのあと僅かにまで。
女の束ねていた髪も、ほどけ、その隙間から、飛び出んほどに見開いた眼が垣間見える。頬もこけ、白すぎる肌が異様さを引き立てていた。

俺はとっさに、これまで幾度も”夢で”あったときと同じように、祓いの祝詞を声にだして唱えた。
すると今回は効き目があったようで、白衣の女は悶えだし、ふっと消え去った。
俺は疲れ果てて、膝に手をつき息を荒げていた。


気分と呼吸を落ち着かせるため廊下の壁にもたれかかっていると、ガラス窓の向こうで空が白みはじめていた。
こんな病棟になんか居られるかと、ここをでることにした。
朝日が照らし出す、その病棟の看板には、”丸山精神病棟”と書かれ、脇には香川県と記してあった。。。

リアルすぎる夢

俺はこの辺りで目覚めたわけだが、いつもの部屋にいて「あー夢だったんだ。よかった」というより、外から帰ってきたような感覚だった。続きとして今この部屋に居るという感じで。

この名前の病院が香川県にあるのかは知らない。


また唱えた祝詞はもう5年前になるだろうか。そういった関係の人から教えてもらったものだ。古い神社にいけば、掲示されている神道の短い祝詞。
いつしか、呪いや霊的なものに襲われる夢を見るたびに、夢でも唱えられるようになっていた。時には、恐怖のあまり思い出せず、口も回らず、言えても効き目がなかったりと・・・。

リアルすぎる夢

夢での体験。 それは夢幻とよくいうけれど、実体験のように、毎度襲ってくる。 遠く離れた香川県の丸山精神病院という。 小学校のような建物の病院に、僕はいる。なにか医者は、心ここにあらずで、適当に僕に訊いてくる。 嫌気がさした僕は、建物内をなんの気なしに歩く。各部屋には、色んな医師が授業のようにしていたが、それがどこか異質を覚えさせた。 いつの間にやら、廃墟となった建物に入っていた。そこでもっとも恐ろしい女性が、ただ一人佇んで・・・。

  • 小説
  • 掌編
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-15

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